【完結】もう我慢できません、貴方とは離縁いたします。その夫は、貴方に差し上げます。その代わり二度と私に関わらないでちょうだい。

綾月百花   

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第2章

59 キラキラ  ♡

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 処置を終えた私は、瞳と同じ色のドレスを身につけた。

 マリアが、水で濡れた髪をタオルで拭いて、結い上げ治してくれた。ついでにドレスに合うように、髪留めも替えてくれた。

 レインは不機嫌に無口になっている。

 こんな時は、何かを考えているので、話しかけても無駄だ。

 お化粧もし直して、気分を変える。

 機嫌の悪くなったレインの機嫌を直すには、熱いキスが一番なのよ。



「レイン、終わったわ」と声を掛けると、レインの胸に抱きついていく。

「なんと美しい」

「キスが欲しいの」


 言い終える前に、レインがキスをしてくれる。

 侍女達は、部屋を開けてくれている。


「レインの機嫌を直さなくちゃ」と言ったので、私を綺麗にしてくださったら、侍女の控え室に行ってくれた。

「ニナを欲しい」

「ベッドに行きますか?」

「いや、このままで」


 私は頷いた。

 レインは寂しがり屋なのだ。

 アルクは今、休暇を取っている。

 アルクは独身だが、実家がある。一週間の休暇の折り返し地点である。

 レインにとっては親であり、兄であり、友でもある。

 きっと寂しかったのだわ。

 私がアルクの代わりになれるとは思えないが、レインを支えたい。

 レインは私の下履きを器用に脱がす。結び合う秘所を指先で濡らすと、いつもより早く私の中に入って来た。

 私が呼吸を整えている間に、もう身体を揺すられ、最奥まで愛される。


「ニナ、愛している」と何度も囁いてくれる。


 私の声は喘ぎ声に変わっている。けれど、きちんと伝わっているようです。

 嵐が収まるように、レインの機嫌がよくなった。


「ニナ、大丈夫か?」

「ええ、もう慣れましたわ」と私は微笑む。


 レインはタオルを濡らして、愛し合った秘部を拭ってくれる。

 下履きを履くと、レインは私を抱きしめて、余韻に浸る。

 私がレインがいないと生きていけないように、レインも私がいないと生きていけないと、二人の合わさった鼓動を聞きながら思う。



「レイン、喉が渇いたわ」

「今度は邪魔されないように、この部屋で飲むか?」

「そうね」


 私をソファーに座らせると、レインのお母様の器を使って、お茶を淹れてくれる。

 アンティックな色調が美しく、うっとりとしてしまう。

 紅茶のいい香りが立つ。

 レインがテーブルにカップを置いてくれた。


「ありがとう」

「まだ熱いよ」

「ええ」


 レインが私にキスをしてくる。

 ドレスのスカートを巻くって、包帯の巻かれた太股に触れる。


「痛いか?」

「もう、それほど痛くはないわ」


 レインは心配性で、痛いと言えば心配するから、私は控え目に答える。



「ニナは、我慢強いから」

 レインは、私の言葉を疑っている。

 触れる手先が、包帯に触れるだけになった。

 今度は足にキスをしている。


「レイン、くすぐったいわ」

「美しい、ニナの足に傷を付けた」

「たいしたことはないわ」

「許さん」

「でも、合同結婚式があるわ。友好国であることを、国民に報せなくては」

「そうだが、あのキラキラのドレスよりキラキラにしてきたら、王妃を換えた方がいい」


 言いたいことは分かるが、エイドリック王子の思い人があのお方なら、それなりに付き合っていかなくてはならないだろう。


 扉がノックされた。


 私はドレスを整えると、レインは扉の方へ向かい、低い声で「誰だ?」と聞いた。

 普通の騎士なら、恐れて出直すだろう。

 機嫌が悪いと声でも伝えている。親切だ。


「レイン、謝罪に来た」とエイドリック王子の声がした。

 レインは扉を開けた。


「この部屋に入ってもいいだろうか?」

「いやよ」

 私は急いで、扉に向かう。

 エイドリック王子の隣には、キラキラなエミリア様が立っていた。

 今まで愛し合っていた部屋に入って欲しくはない。

 私室には、親密な者だけしか入れない暗黙のルールのような物がありますの。

 私は、まだエミリア様と挨拶もしておりません。

「初めてからやりなおそう」

「それなら10分後にサロンで待ち合わせをしよう」とエイドリック王子が提案した。

「待ってやるから、邸に行って、着替えをしてきたらどうだ?」とレインは言った。

 国王陛下と王妃様に、その姿を見られたら、また一悶着有りそうで。

 姫達が、既にお姿を見ていらっしゃるので、王妃様は頭に角が生えてくる可能性もある。

「では、一時間後にサロンで」

「それがいい」

 レインはもう落ち着いた声を出しております。

 反対に、エイドリック王子は、頭を抱えております。

 お心が伝わらないのは、大変でございます。

 たそがれの溜息が漏れてしまう。
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