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第2章

50 王命の婚約

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 王宮にお兄様が訪ねてきた。

 国王陛下に相談があるという。

 レインは一緒にお茶を飲もうと誘いに来た。

 サロンに通されたお兄様は、私の顔を見ると微笑んだ。


「顔色がよくなってきているね?」と言った。

 お兄様が私に微笑むことが、先ず珍しかった。

 それで、驚いてしまった。驚いて、返事が遅くなってしまった。


「ありがとうございます」と無難な返事をした。

 レインが私の手を握ってくれている。

「ニナは俺を怖いだろうね。あまり話しかけたこともなかった。威圧のある接し方をしてきた」とおっしゃった。

 意識的にそう言う態度をされていれば、私はお兄様に近づくこともできずに、離れていく。

 実際、私はお兄様を避けていた。

 私はどんな返事をしていいのか分からずに、困惑する。

 怖いのは事実だし。

 話しかけられたこともなかった。

 きちんと話しかけられて、お話したのは、辺境区での悲鳴の後で、ほんの少しだけ、話をした。

「すみません、お兄様。とても緊張しておりますの。どうぞ、お許しください」

「ああ、そうなるように幼い頃から接してきた。リリーと区別もしてきたことを、何度でも謝罪したい」

「いいえ、謝罪はもういりません。私が慣れるだけですわ」

「そうか、今からでも遅くはない。正しい兄妹の関係を築いていきたい」

「はい」

「少しずつでも歩み寄っていこう」

「お時間をくださり感謝いたします」


 私は、丁寧にお辞儀をした。

「それで、今日は国王陛下に相談に来たのだ。両親に言っても、もう無駄だと考えた結果だ。両親はいつまでもレインとニナの暗殺を考えている。実際に傷つけてからでは遅い。両親が何か事を起こす前に、国王陛下からの命令で、シュラハト伯爵家の長女、サーシャ嬢と縁談を組んで欲しいとお願いするつもりだ。俺が落ち着けば、両親は諦めると考えた結果だ。この際、領地に引っ込んでくれるといいのだが」


 兄様は我が家の事を相当考えていらっしゃる。

 ブルーリングス王国の血統についても。

 私とレインが結婚しても、次に生まれてくる子供達のことを心配しているのだ。

 お父様もお母様も異常な考えを持っていることを知ったばかりなので、この際、家督も変わった方が安全ではないかと思います。

 お兄様は、既にお父様から仕事を受け継ぎ、運営しているのはお兄様です。この際、家督もお父様と変わっても、なんら困ることもないでしょう。

 後は、国王陛下との話し合いで決められていくのでしょう。


「レイン、ニナのことをどうか頼む」とお兄様はお願いして、国王陛下の元に面談に行かれました。


 一時間の面談の結果、王命でお兄様はシュラハト伯爵家の長女、サーシャ嬢との結婚を言い渡された。家督もお父様は当主を外され、お兄様がアイドリース伯爵家の当主とされた。


 お父様に中途半端に意見を言える立場を残しておくべきではないと国王陛下は考えられた。

 王命なので、お父様はもう意見を言えない。

 子供も立派に育ったので、隠居でもすればいいとおっしゃった。

 素早く書簡が、文章を書き、国王陛下は名前を書き王家の印を押した物を二時間後には手にした。

 お父様が荒れるかもしれないと、レインに私の事を頼んでお兄様は帰って行った。

 権力を奪われたお父様は、かなり荒れたらしいが、王命である事で、諦めたようだ。

 拗ねたお父様は、怒っているお母様を連れて、領地へと向かったらしい。

 直ぐにお父様の書斎とお母様の趣味のお部屋を調べたそうだ。

 毒薬が見付かり、手遅れにならずにすみ、お兄様はホッとしていた。

 兄の命令で、お父様とお母様の部屋は、綺麗に片付けられたという。

 王命を言い渡されたシュラハト伯爵家の長女、サーシャ嬢とお見合いの席が設けられた。

 お兄様は26才で、サーシャ嬢は15才という年の差カップルである。

 私はサーシャ嬢に会ったことがなかったので、お兄様に招待していただいて、お見合いの席に参加させてもらった。15才の乙女は、愛らしいお顔をしていた。

 髪は白銀ではないが、限りなく白に近い。瞳の色はブルーアイに僅かに薄茶が混ざっているが、綺麗な透明感もある。 

 確かにブルーリングス王国の血を受け継いでいる。


「あの、私、婚約者がいるんです」とか細い声がした。

 それを承知で、王命にしてもらったのだ。

「お相手は、辺境区に行っているビストリ殿であるな?」

 お兄様のこんな優しい声を初めて聞きました。

「はい、私のこの汚い髪色も美しいって言ってくださいました。私が18才になったら結婚をしようと言ってくださいました」

「その髪色が汚いと言ったのはどなただ?」

「ビストリ様ですわ。こんな醜い私を可愛いといってくださいました。きっと汚い髪色を持った私を誰も可愛いと言ってはくれないから、ビストリ様が結婚してやるとおっしゃったのです。私、学校でも、髪の色も瞳の色も汚いと言われているんです。みんなに虐められて、学校も休んでいるのです。学校で誰かに何かを言われるたびに、心が壊れていくのです」


 目に涙を貯めて、一生懸命に話した内容は、聞き捨てならない物でした。

 あのビストリ様が幼い少女の心を壊していたのです。

 なんて酷いことを言うのでしょう。

 幼い頃に受けた傷は、大人になっても忘れない傷となります。

 私がお父様やお兄様に恐怖を感じるのと同じです。

 あの少女を抱きしめてあげたい。

 ぐすっと洟をすすり、サーシャ嬢は話を続ける。


「どうして、国王陛下は私のような醜い子供を貴方のような素敵な男性の妻にするのでしょうか?」


 サーシャ嬢のルーツは、ブルーリングス王国の末姫のお子、生まれたばかりのお子を近衛騎士が連れ出したそうです。そうして、シュラハト伯爵家に保護された。赤子だったこともあり、そのまま養女として召し上げられ、年頃になった時に、ブルーリングス王国の血族と結婚し、生まれたのがサーシャだったという。両親は薄いブラウンの髪色をしている為に、白銀の髪を見たことがなかったのであろう。


「サーシャ嬢、私の髪は汚いか?」

「いいえ、綺麗な白で、美しいです」


 サーシャ嬢は、まだ髪が短いので、髪を下ろしている。


「ニナ、来てくれるか」

「はい」


 私はお兄様とサーシャ嬢の前に行き、お辞儀をした。


「初めまして、私はニナと申します。リックは私の兄です」

「初めまして、サーシャと申します」

 サーシャは椅子から降りて、お辞儀をした。

 子供にしては、綺麗なお辞儀です。

「座ってください」と言うと、元々座っていた席に座った。

「凄く長くて、綺麗な髪です。白が輝いています」

「ありがとう。私は20才ですわ。女性の髪は生きて来た年齢ですわ。サーシャ嬢も綺麗な白色の髪をしているわね。お手入れをすると、この白い髪は白銀の様な輝きをしますのよ」

「白銀ですか、本当に綺麗になるのですか?」

「私の髪に触れてみますか?」

「いいのですか?」

「特別よ。女性の髪は、誰にも触れさせたりはしないのよ。髪に触れる事は、その身体に触れることになりますからね」

「初めて知りました」

 私は結い上げ、下がっている髪をサーシャ嬢に触らせた。

「すごいわ、サラサラでキラキラしているわ。こんなに長くなるのかしら?」

「とても綺麗でしょう」

「あ、瞳もとても綺麗ね。こんなに綺麗な青い瞳は見たことがないわ」

「そんなことはないわ、サーシャ嬢に結婚を申し込んでいる兄も綺麗な色よ」

 サーシャ嬢はお兄様のお顔をじっと見ています。

 その頬が赤くなってきた。


「サーシャ嬢、サーシャと呼んでもいいか?」

「はい、構いません、お姉様もサーシャと呼んでください」

 とても可愛い。
 お兄様はサーシャに、プレゼントを手渡した。

「綺麗」

「これを付けてくれるかな?」

「でも、できないの」

 サーシャはもじもじとしている。

 お兄様は、サーシャに赤い宝石のついた髪留めをプレゼントした。

 なかなか可愛い。


「マリア、お願いします」

「お嬢様、髪を結ってみましょう」

「マリアは上手なのよ」


「お願いします。私、長くしているだけで、結ってもらったことがないの」


 マリアは櫛で、まず髪を梳かして、サラサラにした。

 花の香りのオイルを少し塗り込み、それから、髪を高い位置で結い上げた。

 たぶん、サーシャの両親はサーシャの髪を定期的に切っているのだろう。

 それほど長くはないが、髪が垂れている。


「サーシャ様、どうぞ、鏡です」


 シェロが手鏡を手渡した。

 サーシャは一生懸命に鏡の中の自分を見ている。


「可愛いわ」と、私は賛辞した。でも、サーシャは気に入らないようだった。

「短いわ」

「これから長くしていけばいい」とお兄様が言った。

「お母様がみっともないから切りなさいと言うの。本当は嫌なのに。お母様が切ってしまうの」

 サーシャは涙ぐむ。

「サーシャ、聞きたいことがある」とお兄様は、サーシャと目線を同じにした。

「サーシャは俺と結婚することを国王陛下から命令されたのは理解できているな」

「はい」

「年頃まで実家で両親と暮らしてもいいが、よかったら、俺の邸に来るか?」

「リック様の御屋敷ですか?でも、迷惑ではありませんか?私はまだ15才ですよ」

 シュラハト伯爵家は国王陛下から援助を受けているが、事業を失敗して、経済難になっている。

 お兄様は、シュラハト伯爵家に援助をするつもりだが、その代わりに、サーシャを手元に置きたいと考えている。

 私もその方が、サーシャが傷つかずに健やかに育っていくと思う。

「年齢は関係ない。俺はサーシャを気に入った。その髪を、もっと美しくしてやりたいし、肌も何処の誰よりもすべすべにしてやろう」

「私の実家は事業に失敗したらしく、食べる物もないのです。食いぶちが減れば、お父様もお母様もきっと助かりますね?醜い私をもらってくださるのなら、従います」

「醜くはない。サーシャは自分の生まれについて聞かされてはいないようだな」

「知りません」

「それも、教えよう。いつから我が家に来るか?」

「今日からでもいいです」

「そうか?サーシャには最高の侍女を付けて、誰よりも美しくしよう。ドレスも美しい物を誂えよう。俺のお姫様に相応しく教育もするぞ」

 サーシャの頬が赤くなっていく。

「はい」

「結婚するな?」

「結婚します」

「ウエディングドレスをプレゼントしよう」

「私、ウエディングドレスに憧れていたのです。でも、私は醜いから、きっと似合わないって」

「誰がそう言ったんだ?」

「ビストリ様です」

「その最低な男から、守ってやる」

「でも、ほんとうの・・・」

「サーシャは美しい」

 私は幼い乙女の心を穢したビストリ様が許せなかった。

「お兄様、私も時々、サーシャと会ってもいいですか?」

「ああ、勿論だ。俺の妹はブルーリングス王国の王妃だ。仲良くしたいそうだ」

「王妃様?」

「サーシャはお兄様のお嫁さんだわ。仲良くしてくださいね」

「はい」

 サーシャは年齢より、幼く感じた。

 学校でいじめに遭い、正常な発達ができていないのだろう。

 痩せ細ったサーシャさんは、きっとお兄様が健康な身体にするだろう。

 サーシャは、その日からお兄様と一緒に暮らすことになった。

 午後からは、サーシャのドレスや下着を買いに出かけた。

 私も一緒に連れて行ってもらった。

 マリアとシュロと乗ってきた馬車に乗って、私に着けられた近衛騎士が馬車を囲む。

 レインからのプレゼントというのは、私の護衛でした。

 腕の立つ騎士が五名も配置されました。

 勿体ない配置で、申し訳ないのですが、護衛が付いたことで、私が自由に出かける事ができるようになったのです。

 お兄様はサーシャの実家から、何も持ち出すこともなく、全てサーシャの持ち物を用意しようとしたのです。

 持っていきたい物があれば取りに行くと言ったのですが、サーシャは実家に帰るのを恐れているようでした。

 それが何故か分かったのは、身体の採寸をするときでした。

 サーシャは服を脱ぐのを嫌がって、困ったお店の店員に一緒に部屋に入って欲しいと言われて、付き添いとして入ったのです。

 嫌々、脱いだドレスと下着の下には、紫色の痣がたくさんあったのです。

 ドレスから見えない場所に、赤や黄色い痣もあったので、日常的に虐待があったようです。

 私はお兄様に伝えました。

 お兄様はサーシャと話し合いました。

 痣を見せて欲しいと、お願いしたのです。

 渋々脱いでくれましたが、サーシャは泣き出してしまったのです。

 誰にされているか聞いてみると、両親のようでした。

 知られてしまったことで、叱られると思ったようで、なかなか泣き止みません。

 私はサーシャと甘味のお店に入って、気分転換をさせたのです。

 ケーキを初めて食べたようです。

 一生懸命に頬張る姿は、空腹を満たしているように見えた。


 やっと微笑みが出てきたことにホッとしました。

 サーシャには弟が一人おりました。その子の保護をしなくてはなりません。

 お兄様は、護衛の一人に国王陛下に至急の面会の書類を手渡しました。

 この先、ブルーリングス王国を再建するには、ブルーリングス王国の子の存在は、大切な宝です。

 ニクス王国の国王陛下は、ブルーリングス王国に関する事には、殊更目を光らせているので、その子を救ってもらわなければなりません。

 サーシャの最低限の下着やドレスを調達すると、お兄様は王宮に立ち寄りました。

 馬車が止まると、レインが出迎えてくださいました。

「あの子がサーシャよ」

「手紙は読んだ。国王陛下が待っている」

 お兄様は、サーシャと手を繋いでいます。

 お兄様のあれほど優しいお顔は、初めて拝見しました。

「リック、第二応接室だ」

「ありがとう」

 私もレインと第二応接室に向かった。

 国王陛下と王妃さまと医師が待っておりました。

「こんにちは、サーシャ嬢。私はニクス王国の国王陛下です。隣にいるのは、王妃です」

「こんにちは、サーシャ嬢、私は王妃です。少し身体の診察を医師にしてもらいます。いいですか?」

「はい」

 サーシャは怖々答えた。

 国王陛下とレインとお兄様が部屋から出て行き、マリアが診察の補助をしている。

「痛いですか?」

「いいえ」とサーシャは答える。

「痛いはずですが、変ですね?」と医師は痣を押さえる。

「うっ」

「痛くないのですか?」

「痛いです」

「嘘をついたら駄目ですよ」

「はい、すみません」

 なかなか鬼畜な医師です。痣を押さえたら痛いに決まっている。

 私は未だに、お父様に蹴られた胸が痛むのに。

「誰にされたの?」

「内緒にしてくれる?」

 王宮の医師は、おじいちゃん医師が対応している。

「いいよ」

「お父様とお母様よ」

「何で叩かれているの?」

「手とか棒の時もあるわ」

「弟の名前は何というのだ?」

「レアルタよ」

「レアルタも叩かれているのか」

 サーシャは涙を浮かべ頷いた。

 私はサーシャを抱きしめた。


「辛かったね?」


 サーシャは流れる涙を手で拭っている。

 私はハンカチを握らせてあげることしかできなかった。

 王妃様が扉を開けて、国王陛下達を室内に入れた。

「さて、どうするか?」と国王陛下は言って、近衛騎士に両親を呼び出すように言ったが「やはり家庭訪問すべきだな。どんな環境で過ごしているのか、見てみるのか正確だ。先駆けはいらん」と言い直した。


「リック、レアルタも引き取ってくれるか?」

「それは構いません。我が家は使用人も部屋も余っております」

「成人するまで、世話を見てくれ。成人したらシュラハト伯爵家の当主とする。それまでの後見人を頼む。愛情を知らずに生きて来たのだろう。可愛がってやってくれ」

「畏まりました」

 お兄様は可愛いお嫁さんと、その弟のお世話をすることになりました。

 お嫁さんもまだ子供ですので、サーシャが成人するまで、賑やかになるでしょう。

 問題児のリリーは、今、ハルマ様と避暑地に旅行に行っている。

 二人とも気楽な性格をしています。

 ハルマ様はサーシャのお兄さんのはずです。

 本来なら実家に戻り、弟妹達を気に掛けるべきなのに。
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