上 下
32 / 44
4   色欲は命を削る斧

・・・

しおりを挟む


 
「大丈夫?」 
 とんとんと肩を叩かれ、うっすらと目を開けると、薫はすでに、カジュアルでスマートな余所行き着に着替えていた。 
 オレはバスタオルを腰に巻きつけているだけの、だらしのない格好だ。 
 薫と激しいエッチをして、失神しているうちに、シャワールームに運ばれ、恥ずかしい場所を洗ってもらっている最中に、目をさまし、さんざん泣かされて、ベッドに埋没中だ。 
「大丈夫じゃなーい」 
 声だって掠れちゃって、目も泣きすぎて腫れぼったい気がする。腰はがくがくするし、恥ずかしい場所は、甘く痺れてまだ薫がいるみたいだ。 
「そろそろ起きないと遅刻だよ」 
 ブランド物の腕時計を目の前に見せ、薫はくすっと笑う。 
 時計の針は七時半。 
 すぐに支度を始めなければ、八時半までに学校にたどり着けない。 
「うーっ」 
 三日も放っておいたのだから、この際、あと一日放っておいてくれてもよかったのに。 
 明日からのゴールデンウィークに、おもいっきり甘やかせてくれればさ。 
 恨みがましく見上げると、ふくれっ面のオレにチュとキスをする。 
「どうするんだよ?オレ、動けない」 
 涼しく笑う薫のサラサラな髪を、ひと房指に絡めて引っ張ってやった。 
 おもいっきりオレを愛してるっていう薫の、甘い瞳が近くでみたくて。 
「甘えん坊だな」 
 甘い吐息が、再び唇をくすぐる。 
 ぞくっとするほどの掠れた低い声だった。 
 オレの体を掬い上げる薫の力強さや、綺麗な蜜色の瞳にドキッとして、色白で頼りないオレの肌が、朱色に染まっていく。 
 それに、さんざん薫にかわいがられて、もう出るものがないくらい搾り取られた下半身のオレもビクンと震えてしまう。 
 意識しているのが、もろわかりだ。 
 くすっと耳元で笑う薫も呆れている? 
 でも、仕方ない。オレは薫が大好きだから。 
「今日は特別、学校まで乗せて行ってあげるよ」 
「わーい、ほんと?」 
「可愛い恋人が、通学バスの中で、罪のない男たちを惑わすといけないから」 
 薫の部屋と続きになっている扉をくぐり、クローゼットの前までオレを運ぶと、薫はそっとオレを床に下ろした。 
「なにそれ?」 
「またキスを誘っていけない子だな」 
 言いながら、体をかがめた薫は、口を尖らせたオレの唇を唇で挟んだ。 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】義弟を愛でていたらみんなの様子がおかしい

ちゃちゃ
BL
幼い頃に馬車の事故で両親が亡くなったレイフォードは父の従兄弟に当たるフィールディング侯爵家に引き取られることになる。 実の子のように愛され育てられたレイフォードに弟(クロード)が出来る。 クロードが産まれたその瞬間からレイフォードは超絶ブラコンへと変貌してしまう。 「クロードは僕が守るからね!」 「うんお兄様、大好き!(はぁ〜今日もオレのお兄様は可愛い)」 ブラコン過ぎて弟の前でだけは様子がおかしくなるレイフォードと、そんなレイフォードを見守るたまに様子のおかしい周りの人たち。 知らぬは主人公のみ。 本編は21話で完結です。 その後の話や番外編を投稿します。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

涙は流さないで

水場奨
BL
仕事をしようとドアを開けたら、婚約者が俺の天敵とイタしておるのですが……! もう俺のことは要らないんだよな?と思っていたのに、なんで追いかけてくるんですか!

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

ある日、人気俳優の弟になりました。

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...