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2 男のプライドと意地
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「優、寂しくない?」
甘えた声で、オレの腕にまとわりついてくるのは、薫の妹で、オレと同い年の明香里だ。
「寂しいわけないだろう!」
考古学者の寛さんが、遺跡の調査を一区切りさせ、やっと大学に復職することを決意し戻ってきたというのに、一週間もしないうちに、いつもの気まぐれで、今度は沖縄に行ってしまった。
オレは転校したばかりで、また転校するのも嫌だったし、薫が怒っている原因がわからないまま薫と離れ離れになりたくなくて、ひとり残ることにした。
ひとり・・・と言っても、オレの家は堂坂家から徒歩数分だから、まったくひとりになるわけではない。
両親を見送った今も、猛さんの運転するワンボックスカーの中だ。
オレの左肩には茶髪の毛玉(明香里の頭)がのっかっている。三列目の座席には無愛想な顔の薫もいる。
薫はオレが帰ってきてから、まったく口をきいてくれない。
一緒に食事をするときも、目も合わせてくれなくて、一週間もたつのに、薫が何を怒っているのか、全くわからない。
近くにいるのに、離れているときより遠くに感じるのは、薫の気持ちがわからないから?
チャットルームにも続けて送っているけれど、今は既読すらつかなくなった。
春休み前から返信が来なくなっていたってことは、春休み前から薫はオレに怒っていたことになるんだ。
どうして気づかなかったんだろう?自分の鈍さに腹が立ってくる。
オレ、チャットルームで変なこと書いたかな?
不安になって、履歴を調べたけど、全く心当たりがなくて、頭を抱えたくなる。
「でも、優、元気ないよ」
明香里は何も変わってないのにな。
オレはふ―っと重い溜息をもらす。すると背後から「やかましい!」という不機嫌な低い声がした。
「薫、優が帰ってきてから、ずっと機嫌が悪い!」
明香里は背後を振り返って頬をふくらます。オレも明香里にならって振り向いたけど、振り向いたことを後悔した。
薫の冷たい瞳と一瞬視線が合うが、すぐに逸らされた。それだけじゃなく、「やかましいと言っている!」と不機嫌な声で重ねて言われて、オレは苦しかった胸がもっと苦しくなって悲しくなった。
「優ぅ、あんなお兄ちゃん気にしなくていいからね」
明香里の声も虚しいだけだった。
甘えた声で、オレの腕にまとわりついてくるのは、薫の妹で、オレと同い年の明香里だ。
「寂しいわけないだろう!」
考古学者の寛さんが、遺跡の調査を一区切りさせ、やっと大学に復職することを決意し戻ってきたというのに、一週間もしないうちに、いつもの気まぐれで、今度は沖縄に行ってしまった。
オレは転校したばかりで、また転校するのも嫌だったし、薫が怒っている原因がわからないまま薫と離れ離れになりたくなくて、ひとり残ることにした。
ひとり・・・と言っても、オレの家は堂坂家から徒歩数分だから、まったくひとりになるわけではない。
両親を見送った今も、猛さんの運転するワンボックスカーの中だ。
オレの左肩には茶髪の毛玉(明香里の頭)がのっかっている。三列目の座席には無愛想な顔の薫もいる。
薫はオレが帰ってきてから、まったく口をきいてくれない。
一緒に食事をするときも、目も合わせてくれなくて、一週間もたつのに、薫が何を怒っているのか、全くわからない。
近くにいるのに、離れているときより遠くに感じるのは、薫の気持ちがわからないから?
チャットルームにも続けて送っているけれど、今は既読すらつかなくなった。
春休み前から返信が来なくなっていたってことは、春休み前から薫はオレに怒っていたことになるんだ。
どうして気づかなかったんだろう?自分の鈍さに腹が立ってくる。
オレ、チャットルームで変なこと書いたかな?
不安になって、履歴を調べたけど、全く心当たりがなくて、頭を抱えたくなる。
「でも、優、元気ないよ」
明香里は何も変わってないのにな。
オレはふ―っと重い溜息をもらす。すると背後から「やかましい!」という不機嫌な低い声がした。
「薫、優が帰ってきてから、ずっと機嫌が悪い!」
明香里は背後を振り返って頬をふくらます。オレも明香里にならって振り向いたけど、振り向いたことを後悔した。
薫の冷たい瞳と一瞬視線が合うが、すぐに逸らされた。それだけじゃなく、「やかましいと言っている!」と不機嫌な声で重ねて言われて、オレは苦しかった胸がもっと苦しくなって悲しくなった。
「優ぅ、あんなお兄ちゃん気にしなくていいからね」
明香里の声も虚しいだけだった。
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