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稲田柊には、不思議な力があった。
それは、すごく幼い頃から備わっていて、特別な力だと知ったのは、まだ最近だ。
どんな力かというと、『声』が聞こえるのだ。
普通に聞こえる人の声とは違った女性の『声』だ。耳ではなく、頭に直接聞こえる。
あまりに幼い頃から、その『声』が聞こえていたので、それを特別だと思った事もなく、意識したのは最近だ。
授業中に『ここ、テストにでるよ』と彼女は教えてくれる。
『あの子、可哀想に、お弁当忘れてきたわ』
その後に、指摘した生徒は、本当に弁当を忘れて、ついでに、小遣いも忘れて、お昼を抜いていた。
柊は、自分の中に自分以外の人格がいるのかもしれないと思った事もある。
多重人格とか?精神疾患かもしれないと、自分を疑った事もあった。
でも、違うようだ。
ある日、
『その電車に乗っては駄目よ。事故に遭うわ』
目の前に走り込んできた電車の扉が開いたとき、『声』が聞こえた。
柊は、かなり迷った。
乗ろうか?
止めようか?
『声』は、それ以上、何も言わない。
判断は、柊が決めろと言うことだ。
足は動かない。
「退けよ」
柊の後ろに並んでいたクラスの男子生徒が、電車に乗らない柊を押しのけて、電車に乗っていった。
同じ制服を着た学生もたくさん乗っていった。
その中で、柊はただ静止していた。
電車の扉は、柊の前で閉まった。
そうして、電車は出発した。
今まで、『声』に逆らった事はないから、その『声』の静止を破れなかった。
意気地がない?
いや、柊は『声』に従っただけだ。
柊は待合の椅子に座った。
次の電車まで、それほど待たなくても、すぐに来る。
10分くらい待つだけだ。
けれど、椅子に座った柊は、ホームに響いた「電車脱線事故の為、運休となります」という放送を聞いて、無意識に頭に触れた。
今は『声』はしない。
電車に乗っていたら、自分は電車の事故に巻き込まれていた。
料金の払い戻しをしますという放送を聞いて、柊は改札に向かった。
それは、すごく幼い頃から備わっていて、特別な力だと知ったのは、まだ最近だ。
どんな力かというと、『声』が聞こえるのだ。
普通に聞こえる人の声とは違った女性の『声』だ。耳ではなく、頭に直接聞こえる。
あまりに幼い頃から、その『声』が聞こえていたので、それを特別だと思った事もなく、意識したのは最近だ。
授業中に『ここ、テストにでるよ』と彼女は教えてくれる。
『あの子、可哀想に、お弁当忘れてきたわ』
その後に、指摘した生徒は、本当に弁当を忘れて、ついでに、小遣いも忘れて、お昼を抜いていた。
柊は、自分の中に自分以外の人格がいるのかもしれないと思った事もある。
多重人格とか?精神疾患かもしれないと、自分を疑った事もあった。
でも、違うようだ。
ある日、
『その電車に乗っては駄目よ。事故に遭うわ』
目の前に走り込んできた電車の扉が開いたとき、『声』が聞こえた。
柊は、かなり迷った。
乗ろうか?
止めようか?
『声』は、それ以上、何も言わない。
判断は、柊が決めろと言うことだ。
足は動かない。
「退けよ」
柊の後ろに並んでいたクラスの男子生徒が、電車に乗らない柊を押しのけて、電車に乗っていった。
同じ制服を着た学生もたくさん乗っていった。
その中で、柊はただ静止していた。
電車の扉は、柊の前で閉まった。
そうして、電車は出発した。
今まで、『声』に逆らった事はないから、その『声』の静止を破れなかった。
意気地がない?
いや、柊は『声』に従っただけだ。
柊は待合の椅子に座った。
次の電車まで、それほど待たなくても、すぐに来る。
10分くらい待つだけだ。
けれど、椅子に座った柊は、ホームに響いた「電車脱線事故の為、運休となります」という放送を聞いて、無意識に頭に触れた。
今は『声』はしない。
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料金の払い戻しをしますという放送を聞いて、柊は改札に向かった。
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