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第十九章
5 Xの甘さ
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完璧だと思っていた計画に落ち度があった。
ネイルだ。
インターネットで買っているので、捨てる方が不自然だろうか?
購入履歴を確認すると、秋の商品だった。
全て使い切ったと言えば、通じなくもないと思う。箱の中の残りもたった1個だ。
わたくしは、処分することにした。
硬化させて、トイレに流した。
硬化させないと、柔らかなものなので、途中でどこかにくっついてしまうかもしれない。
空き箱は、そのままにした。
他にも空き箱がある。
わたくしは、お片付けが苦手だと言われている。
新しいネイルは、おとなしめのネイルにした。ワントーンのピンクベージュだ。
すぐにできるので、さっさと指先を飾る。
子供達は居間で遊んでいるので、わたくしも居間に行った。
誰もネイルの事は言わない。
わたくしがネイルをしていない方が珍しいので、新しく交換したのも気付かない。
家に警察が来た。
これも想定内だ。
「桜子様、警察の方がお話を伺いたいと言われて来られています」
「すぐに行くわ、車が見つかったのかしら?」
わたくしは玄関に行った。
部屋着のうちでも地味な物にしているので、派手やかさはないと思う。
「昨日はどこかへお出かけになりましたか?」
「いいえ、子供達がおりますから」
わたくしの足元に子供達が走って来た。珍しい警察官を見ている。
「おまわりさん?」
「テレビとおなじせいふくだ」
「けいさつてちょうはあるの?」
「「「「あるの?」」」」
「あるよ」
警察官は子供達に手帳を見せた。
「「「「「ほんもの?」」」」」
「本物だよ」
警察官はタジタジだ。
「ほらほら、あなた達、部屋に行っていて、ママにお話があるんですって。車が見つかったのでしょう」
「車でお出かけしたい」
「そうね、車がなくて不便なの。それで、見つかったの?」
「いいえ」
警察官は、申し訳なさそうに頭を下げた。
「車じゃないんだ?」
雅人が言うと、他の子供達もショックを受けたように、その場に座りこんでしまった。
「車はまだ見つからないのですか?どこにも行けなくて、不便なんです」
わたくしは重ねて言った。
「昨日はお出かけは?」
「車がないのにできるわけ無いでしょう。そうね、朝、コンビニにアイスクリームを買いに行っただけよ」
「何かあったの?」
「いいえ、失礼します」
警察官は、わたくしのネイルを見ていた。
やはりあの子達はネイルの事を覚えていたのだと思った。
それに、生きているのね?
あの寒さの中なら、凍死するかもしれないと思っていたけれど、失敗したのね。
暫くは、何も動かない方がいいわね。
失敗をして、警察に捕まるわけにはいかない。
復讐は、これで終わりにした方がいいかもしれない。
光輝の事だから、警備を強化したはずだ。
今回はチャンスだと思ったけれど、どうやら無駄に終わったようだ。
外に出ると、雪がチラチラ降ってきた。
「雪が降っているわよ」
「どこどこ」
子供達が外に出て行く。
「寒いから、コートを着ていくのよ」
家の外には、まだパトカーが止まっていた。
わたくしは疑われているのね?
「まだ警察がいるわ。家に戻りましょう」
「嫌だ」
「雪で遊びたかったら、コートを着てお庭で遊びなさい。道路で遊んだら危ないでしょう」
「「「「「はい、ママ」」」」」
わたくしは、子供を連れて家に戻った。
…………………………*…………………………
円城寺家に嫁いだ友人から電話が来た。
「今、親睦会でしょう?」
『そうなんだけど、昨日、総帥の子供が二人誘拐されて、朝から大騒ぎだったのよ』
「二人も?」
『末の二人よ。直輝君と大輝君だったかしら。うちの旦那も朝から捜索に出て、海と山に別れて捜索したみたいよ。旦那は山に登ったらしいわ。山頂まで登ったって言っていたわ』
「大変だったのね」
『桜子が来なくて、退屈だわ』
「わたくしは、あまり歓迎されていないようだし、子供連れて来るなって言われたの。そうね、子供がもっと成長したら行く事もあると思うけれど、×1,コブが5つも付いたわたくしとダンスを踊ってくれる人なんていないわ。だから、もういいかなと思って」
『桜子は、学校で一番の美人だったんですもの。やり直せるわ』
「あまり期待持たせないで、子供の世話で大変なの」
『ごめんなさいね。忙しいのに』
「いいわよ。それで光輝の子は助かったの?」
『一人はすぐに見つかったけれど、一人はなかなか見つからなくて、発見時凍死寸前だったようよ』
「大変だったわね。見つかってよかったわ」
『本当に』
「光輝達はまだ親睦会に出ているの?」
『自宅に戻ったそうよ。犯行声明もあったようだから、ホテルは危険だと思ったのでしょうね。奥様も妊娠中だし』
「そう」
『また連絡するわ』
「ありがとう。楽しんでね」
『わたしこそ、ありがとう。今年もよろしくね』
「わたくしこそ、今年もよろしくね」
『それじゃ、また』
友人から連絡をもらって、もう少しだったことに落胆した。
裸で放置した方がよかったかもしれないと思ったが、後の祭りだ。
もう、こんな条件の揃った機会は巡って来ないだろう。
わたくしの愛車は、一生、戻って来ないと思うので、新しい車を買ってもらおうかしら?
ネイルだ。
インターネットで買っているので、捨てる方が不自然だろうか?
購入履歴を確認すると、秋の商品だった。
全て使い切ったと言えば、通じなくもないと思う。箱の中の残りもたった1個だ。
わたくしは、処分することにした。
硬化させて、トイレに流した。
硬化させないと、柔らかなものなので、途中でどこかにくっついてしまうかもしれない。
空き箱は、そのままにした。
他にも空き箱がある。
わたくしは、お片付けが苦手だと言われている。
新しいネイルは、おとなしめのネイルにした。ワントーンのピンクベージュだ。
すぐにできるので、さっさと指先を飾る。
子供達は居間で遊んでいるので、わたくしも居間に行った。
誰もネイルの事は言わない。
わたくしがネイルをしていない方が珍しいので、新しく交換したのも気付かない。
家に警察が来た。
これも想定内だ。
「桜子様、警察の方がお話を伺いたいと言われて来られています」
「すぐに行くわ、車が見つかったのかしら?」
わたくしは玄関に行った。
部屋着のうちでも地味な物にしているので、派手やかさはないと思う。
「昨日はどこかへお出かけになりましたか?」
「いいえ、子供達がおりますから」
わたくしの足元に子供達が走って来た。珍しい警察官を見ている。
「おまわりさん?」
「テレビとおなじせいふくだ」
「けいさつてちょうはあるの?」
「「「「あるの?」」」」
「あるよ」
警察官は子供達に手帳を見せた。
「「「「「ほんもの?」」」」」
「本物だよ」
警察官はタジタジだ。
「ほらほら、あなた達、部屋に行っていて、ママにお話があるんですって。車が見つかったのでしょう」
「車でお出かけしたい」
「そうね、車がなくて不便なの。それで、見つかったの?」
「いいえ」
警察官は、申し訳なさそうに頭を下げた。
「車じゃないんだ?」
雅人が言うと、他の子供達もショックを受けたように、その場に座りこんでしまった。
「車はまだ見つからないのですか?どこにも行けなくて、不便なんです」
わたくしは重ねて言った。
「昨日はお出かけは?」
「車がないのにできるわけ無いでしょう。そうね、朝、コンビニにアイスクリームを買いに行っただけよ」
「何かあったの?」
「いいえ、失礼します」
警察官は、わたくしのネイルを見ていた。
やはりあの子達はネイルの事を覚えていたのだと思った。
それに、生きているのね?
あの寒さの中なら、凍死するかもしれないと思っていたけれど、失敗したのね。
暫くは、何も動かない方がいいわね。
失敗をして、警察に捕まるわけにはいかない。
復讐は、これで終わりにした方がいいかもしれない。
光輝の事だから、警備を強化したはずだ。
今回はチャンスだと思ったけれど、どうやら無駄に終わったようだ。
外に出ると、雪がチラチラ降ってきた。
「雪が降っているわよ」
「どこどこ」
子供達が外に出て行く。
「寒いから、コートを着ていくのよ」
家の外には、まだパトカーが止まっていた。
わたくしは疑われているのね?
「まだ警察がいるわ。家に戻りましょう」
「嫌だ」
「雪で遊びたかったら、コートを着てお庭で遊びなさい。道路で遊んだら危ないでしょう」
「「「「「はい、ママ」」」」」
わたくしは、子供を連れて家に戻った。
…………………………*…………………………
円城寺家に嫁いだ友人から電話が来た。
「今、親睦会でしょう?」
『そうなんだけど、昨日、総帥の子供が二人誘拐されて、朝から大騒ぎだったのよ』
「二人も?」
『末の二人よ。直輝君と大輝君だったかしら。うちの旦那も朝から捜索に出て、海と山に別れて捜索したみたいよ。旦那は山に登ったらしいわ。山頂まで登ったって言っていたわ』
「大変だったのね」
『桜子が来なくて、退屈だわ』
「わたくしは、あまり歓迎されていないようだし、子供連れて来るなって言われたの。そうね、子供がもっと成長したら行く事もあると思うけれど、×1,コブが5つも付いたわたくしとダンスを踊ってくれる人なんていないわ。だから、もういいかなと思って」
『桜子は、学校で一番の美人だったんですもの。やり直せるわ』
「あまり期待持たせないで、子供の世話で大変なの」
『ごめんなさいね。忙しいのに』
「いいわよ。それで光輝の子は助かったの?」
『一人はすぐに見つかったけれど、一人はなかなか見つからなくて、発見時凍死寸前だったようよ』
「大変だったわね。見つかってよかったわ」
『本当に』
「光輝達はまだ親睦会に出ているの?」
『自宅に戻ったそうよ。犯行声明もあったようだから、ホテルは危険だと思ったのでしょうね。奥様も妊娠中だし』
「そう」
『また連絡するわ』
「ありがとう。楽しんでね」
『わたしこそ、ありがとう。今年もよろしくね』
「わたくしこそ、今年もよろしくね」
『それじゃ、また』
友人から連絡をもらって、もう少しだったことに落胆した。
裸で放置した方がよかったかもしれないと思ったが、後の祭りだ。
もう、こんな条件の揃った機会は巡って来ないだろう。
わたくしの愛車は、一生、戻って来ないと思うので、新しい車を買ってもらおうかしら?
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