裸足のシンデレラ

綾月百花   

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第十七章

12   調査書

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「総帥、お届け物です」


 ダンスパーティーの後に、部屋に分厚い封筒を秘書が持って来た。


「誰からだ?」

「本社勤務の円城寺雅也と書かれています」



 俺は顔を思い出そうと思考を巡らせた。

 顔を思い出して、ついでに家族構成も思い出した。

 雅人の兄だ。

 確か、本社勤務になって、2年ばかりになる新人だ。

 これは、兄の名前を語って、あの三人組が何かしたのではないか?

 部屋でシャンパンを飲んでいた俺は、ソファーで、その封筒を開けた。

 細かくファイリングしてある。

 去年の夏の親睦会の後からの、有喜と三宅桜子についての調査が書かれている。

 写真付きだ。日付と場所、音声はSDカードNO,A1と書かれている。

 出張の日付、日程、同行者、三宅桜子、宿泊先○○ホテル○○○号室スイートルーム。

 とにかく細かい。

 新しい物は、桜子が5児の出産日の行動。

 有給、10時から16時までラブホテル、三宅桜子と同行。入室から出庫まで写真付きで付いている。

 育児休暇にて、休日。

 出勤簿の写真が載っている。

 子供の出産の日まで、浮気をしていた証拠が出てきた。

 もっと捲ると、雅人の幼稚園見学会の様子だった。

 有喜と有喜の両親と窶れた桜子の姿。

 髪は茶髪に黒髪が伸びてきて、見苦しい。

 着ている洋服は、ブランド物のスーツだが、どんなに綺麗に化粧をしても、髪がプリンになっていて、上品に見えない。

 指先はネイルをしていない。桜子は大学に入ってから、ネイルを欠かした事はない。

 モラハラにて、美容院、エステ、ネイル、クレジットカードの取り上げ、全て禁止されて、暴言を吐かれていた。

 音声データー、NO,Z32と書かれている。

 窓を開けて、外を向き涙を流している桜子の姿も写真に収められている。

 とにかく、会社での事も自宅での事も、細かく調査をしている。

 桜子が家出した後の事も、細かく音声付きで纏められている。

 双子救出。自宅無人、弁護士立ち会いにて救助。育児放棄。音声NO,Z55。

 三宅桜子の自宅に入っていく様子、出て行く様子。音声NO,N55と書かれている。

 学生だから、インターシップや探偵のような事ができたのだろう。

 スマホのSDカードを入れ替えて、聞いてみると、鮮明の物から、聞きづらい物まであるが、内容は理解できる。彼らなりに工夫して、証拠集めをしたようだ。

 桜子が三人の素性を探ったように、三人も桜子の素性を調べたのだろう。そこで、桜子が幸せではない事を知って、いろんな伝を使って、データーを集めたと思える。

 俺が音声を聞いている間、美緒は、書類を読んでいる。

 かなりの量の書類を手早く読んでいく様子は、弁護士時代に見たことがある。



「完璧ですね。探偵より優秀ですね。纏め方も素晴らしい。いい弁護士になれそう」

「あの子達は、確か法学部だったか?」



 美緒が読み終えた書類を、音声を聞きながら読んでいく。

 かなり精神的にキツい状態にあった事が分かる。

 その反面、有喜は自由に会社でも浮気相手の家でも、過ごしているようだ。

 部屋の扉も壁も薄いようで、会話まで聞こえている。

 隣の部屋を借りて調査と書かれている。

 三人が住み込んで、調べていたのだろう。

 日付とナンバーが細かく書かれている。

 執念を感じる。

 桜子が初めて恋した相手は、素晴らしく優秀だ。

 もっと早く……桜子の結婚相手になる年齢に出会っていたら、今頃、幸せに暮らせただろう。

 だが、しかし、彼らは暗闇の中の桜子ではなく、明るい場所でも桜子の事を見守っていた事になる。

 年齢は離れているが、もしかしたら……という事も考えられる。

 ここは、見守るか。

 明日は、弁護士も呼んでいる。

 辞令と離婚届を見たら、有喜はどんな顔をするか?

 3枚のSDカードを聞き終えると、深夜を大きく回っていた。

 美緒は、ソファーで眠っている。

 ずっと男女の交わりのような音声だったから、眠くなったのだろう。

 彩花の育児に、手もかかる。

 疲れているのだろう。

 スマホからSDカードを出すと、自分の物と交換した。

 証拠のSDカードをケースに入れて、封筒に片付けた。

 明日、弁護士に先に見てもらおう。

 自分のSDカードである事を確認してから、美緒の寝顔を写した。

 美緒は三人子供産んでも、出会った頃と同じ38㎏で太らない。

 シンデレラスタイルを維持している。

 美緒を抱き上げて、寝室に連れて行った。

 彩花もよく寝ている。

 晴輝と輝明の顔を見てから、電気を消して、俺も寝る事にした。

 美緒を抱きしめて、眠りにつく。



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