裸足のシンデレラ

綾月百花   

文字の大きさ
上 下
145 / 184
第十六章

5   カウントダウン

しおりを挟む
 午後から光輝さんと和真さんとティファさんと三人に連れられて、温泉の近場を散策に出かけた晴輝と輝明は、夕方、目をキラキラさせながら帰ってきた。

 ただ歩いて来ただけだと言っていたが、日常と違う場所に出かけたことが楽しかったようだ。

 戻って来た二人をバイキングに連れて行く。

 和真さんもティファさんも、一緒なので部屋からテーブルの予約をした。

 六人座れる座席は、テーブルを二つ並べる事になる。

 夕方の早い時間だったので、比較的空いていた。

 輝明は車の中で眠っていたと言っていたが、晴輝は眠らなかったらしい。

 お風呂の時間まで起きていられるだろうか?

 和真さんもティファさんも、世話を焼いてくれるので、光輝さんと二人で来る時よりも、わたしは楽ができる。

 食事を取ってもらって、晴輝はガツガツ食べる。輝明は食べる量はいつもとあまり変わらない。

 2歳に満たないので、食べる物も限られてくる。

 晴輝が光輝さんとティファさんと料理を取りに行く時に、「ぼくも」と席を立とうとしたけれど、わたしは、輝明のお皿にイチゴを載せた。


「ママと一緒に食べよう」

「うん、ママといる」


 もうお腹はいっぱいのはずだ。

 真似をしたくても、まだ幼い子供だから、無理をするとお腹を壊す。

 戻って来た晴輝は、アイスクリームを持っていた。光輝さんは、輝明用に少なめのアイスの器を持っていてくれた。



「パパ、ありがとう」

「どういたしまして」


 スプーンを受け取った輝明は、ゆっくり食べ始めた。

 いつの間にか、アイスクリームが〆のサインになっている。


「ママは、これをもう1皿食べなさい」


 置かれたお皿は、ステーキだ。

 ここのお肉は有名だと言っていた。



「ありがとう」


 他にもフルーツの盛り合わせが置かれた。

 イチゴとメロンがたっぷり載っている。

 和真さんが置いてくれた。


「美緒ちゃん、しっかり食べて」

「ありがとう」

 美味しいお肉を食べて、フルーツに手を伸ばす。

 この季節はイチゴが甘い。メロンは完熟だし、甘さが違う二つのフルーツを堪能する。

 最後は無糖炭酸水で口をサッパリさせて、冷めた紅茶を飲んだ。

 皆も、フルーツに手を伸ばしている。

 お手拭きで、輝明の口と手を拭き、水を飲ます。


「ごちそうさま」

「ごちそうさま」


 輝明が真似て、その後に「ぼくもごちそうさま」と晴輝も食事を終えた。

 自分で口と手を拭いている。

 フルーツもなくなり、テーブルのお皿は空っぽになった。



「部屋まで送るよ」

「助かる」

【晴輝、おいで】

【はい】



 晴輝はティファさんと手を繋いでいる。

 どうやら、二人の時は英語で会話しているようだ。


 輝明は、光輝さんが抱いている。

 少々、疲れているのだろう。

 お腹も膨れて、眠りそうだ。

 部屋に入ると、和真さんとティファさんは、晴輝と輝明に「おやすみ」と言って出て言った。二人とも「おやすみ」と返事をした。

 お風呂は光輝さんが入れてくれる。

 わたしは、その間に、歯磨きをして、口の中をサッパリさせる。

 二人のパジャマは、水野さんが用意してくれている。

 わたしはバスタオルを持って、お風呂場に向かう。

 三人で温泉に入っている。

 気持ち良さそうだ。

 もう少し時期がずれていたら、わたしも温泉に入れたけれど、まだシャワーしか浴びられない。



「ママ」


 先に出てくるのは、輝明だ。

 頭からシャワーを浴びて、わたしの所に歩いてくる。

 バスタオルで包むと体を、髪をしっかり拭いて、体も拭く。オムツを履かせ、パジャマを着せる。パジャマを着ると、次は晴輝が出てくる。

 バスタオルでしっかり拭いて、パンツを履かせる。後は、自分で着てくれる。

 眠る前に、歯磨きをさせる。最初は自分でさせて、わたしが仕上げ磨きをする。

 順番に仕上げ磨きをすると、うがいをさせる。

 その後に、ドライヤーで髪を乾かす。二人一度に済ませてしまうと、晴輝はトイレに入っていった。

 晴輝が出てくると、輝明も真似てトイレに入る。

 寝る支度を済ませると、晴輝と輝明は光輝さんに「おやすみ」と言って、甘えてから、わたしの所に戻ってくる。


「ベッドで寝ようか?」

「「はい」」



 二人をダッブルベッドに寝かせて、添い寝をする。

 子守歌を歌っている間に、二人とも眠ってしまった。

 三歳になったら、絵本を読んであげようと思っているけれど、寝付きは二人ともいいので、すぐに眠ってしまう。

 今日は特に疲れていたのだと思う。

 わたしは寝室から出た。

 部屋には、光輝さんしかいない。

 皆には食事に行ってもらった。

 今のうちにシャワーを浴びて、サッパリさせる。

 光輝さんは、もうパーティーの準備を始めている。

 お風呂から出て、バスローブを着ると、洗面所に置いておいた化粧品で肌を潤す。櫛で髪を梳かして、ドライヤーをかける。

 それからお化粧をして、パーティー用に髪も整える。

 そこまでしてから、彩花を寝かせている部屋に戻ると、光輝さんが彩花をあやしていた。


「おしめは替えておいた。お腹が空いたのかな?」

「ありがとう」



 彩花を受け取って、お乳をあげる。



「彩花、お腹が減ったの?」


 大きな目に涙が溜まっている。

 お乳を飲ませる時の歌を歌う。

 光輝さんは、わたしの隣に座って、その様子をじっと見ている。

 両乳のオッパイをたっぷり飲むと、縦抱きにして、背中をさする。

 小さくゲップをした彩花を、光輝さんが抱いていてくれる。

 わたしはパーティーの準備を始める。

 今夜は座って話をして、カウントダウンをして、乾杯をして解散になる。

 今夜は紺色のドレスを着よう。夜、冷えるかもしれないので、カシミヤのショールを持って行こう。

 スーツケースからいる物を出して、ベッドに並べる。

 ブラジャーを付けて、ストッキングを履くと、背後から抱きしめられた。

「愛している」

「わたしも」



 キスを交わし、抱きしめ合う。

「今夜は紺にするのか?」

「変かな?」

「新年だから、明るい色にした方がいいだろう」

「うん」

 光輝さんは、スーツケースから白地にオールドローズの柄のあるドレスを取り出した。

 白いショールから、淡いピンクのボレロに交換した。


「さあ、着なさい」

「はい」


 ドレスがゴージャスになって、華やかだ。

 袖もあるので、寒くはない。

 光輝さんは、宝石箱からダイヤモンドのネックレスとイヤリングを出した。それをわたしに付けてくれる。
 髪留めもそれに合わせて出すと、わたしに手渡した。

 部屋に人の気配が戻って来た。

 光輝さんが部屋から出て行った。
 
急いで髪型を変更する。
 
バックにスマホとハンカチと生理用品と口紅を入れて、胸には母乳パットもしっかり入れておく。
 
わたしはメイクの仕上げをした。
 
付け睫毛をして、ポイントメイクをしっかりして、紅を引いた。
 
準備ができたら、ベビーベッドに寝ている彩花を見る。
 
ぐっすり眠っている。


「行ってきます」


 彩花に小さく囁いて、部屋を出た。扉は開けておく。



「子供達は皆、寝ています。パーティーの間、よろしくお願いします」


 光輝さんが言って、わたしは、三人に頭を下げた。



「「「畏まりました」」」



 三人は頭を下げた。

「それでは、行こうか」

「はい」


 わたしは光輝さんの腕に手を絡めた。


「「「行ってらっしゃいませ」」」
「「行ってきます」」


 SPが二人、部屋の外を守ってくれる。

「お願いします」と頭を下げて、背後から多岐さんと男性SPが付いてくる。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

そこは優しい悪魔の腕の中

真木
恋愛
極道の義兄に引き取られ、守られて育った遥花。檻のような愛情に囲まれていても、彼女は恋をしてしまった。悪いひとたちだけの、恋物語。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ
恋愛
義理の兄貴とワケあって二人暮らしをしている主人公の世奈。 しかしその兄貴がイケメンすぎるせいで、何人彼氏が出来ても兄貴に会わせた直後にその都度彼氏にフラれてしまうという事態を繰り返していた。 しかしそんな時、クラス替えの際に世奈は一人の男子生徒、翔太に一目惚れをされてしまう。 「僕と付き合って!」 そしてこれを皮切りに、ずっと冷たかった幼なじみの健からも告白を受ける。 「俺とアイツ、どっちが好きなの?」 兄貴に会わせばまた離れるかもしれない、だけど人より堂々とした性格を持つ翔太か。 それとも、兄貴のことを唯一知っているけど、なかなか素直になれない健か。 世奈が恋人として選ぶのは……どっち?

白衣の下 先生無茶振りはやめて‼️

アーキテクト
恋愛
弟の主治医と女子大生の恋模様

想い出は珈琲の薫りとともに

玻璃美月
恋愛
 第7回ほっこり・じんわり大賞 奨励賞をいただきました。応援くださり、ありがとうございました。 ――珈琲が織りなす、家族の物語  バリスタとして働く桝田亜夜[ますだあや・25歳]は、短期留学していたローマのバルで、途方に暮れている二人の日本人男性に出会った。  ほんの少し手助けするつもりが、彼らから思いがけない頼み事をされる。それは、上司の婚約者になること。   亜夜は断りきれず、その上司だという穂積薫[ほづみかおる・33歳]に引き合わされると、数日間だけ薫の婚約者のふりをすることになった。それが終わりを迎えたとき、二人の間には情熱の火が灯っていた。   旅先の思い出として終わるはずだった関係は、二人を思いも寄らぬ運命の渦に巻き込んでいた。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

処理中です...