裸足のシンデレラ

綾月百花   

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第十一章

3   復讐   確保 

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 新幹線乗り場で、警察官二人と合流して、京都に向かった。

 京都では、既にホテルの周りに警察官が張っているそうだ。

 玲奈は観光から戻って来て、部屋に入ったらしい。

 運良く新幹線のひかりに乗れて、2時間ほどで京都に着いた。京都からタクシーでホテルに到着した。

 男5人が玲奈の部屋に入ったと連絡が来た。

 警察官二人と京都府警の刑事と玲奈の部屋に入った。

 玲奈と男達は食事を食べていた。

 大型テレビに美緒が犯されている映像が流されていた。

 男達は皿に載った料理を投げて、戦闘態勢に入っている。

 5人ともナイフを出して、構えた。

 刑事達は拳銃を向けている。


「ナイフを捨てろ!」


 日本語で言った所で、言葉は通じないだろう。


【ナイフを捨てろ!誰が妻を犯した?】


 男5人が俺を見て、ニヤッと嗤った。

 その瞬間、拳銃の音がした。

 どこを狙ったのか?

 ノーコンなのか?

 腕に当たったり胸に当たったり足に当たったり様々だった。

 俺なら、確実に仕留めている。狙った場所に確実に当てる自信がある。

 ナイフを振り上げて、向かってくる男の顔を潰す勢いで殴った。和真もティファも遠慮しなかった。

 拳銃で倒れなかった男達に殴りかかる。

 俺たちは刑事達より腕が立つ。

 刑事達も体術戦に代わっているが、反対に殴られている者もいる。

 5人を床に鎮めて、刑事は倒れている5人に手錠を掛けている。

 俺は玲奈の前に進むと、きっと誰にも叩かれたことのない頬をビンタした。

 玲奈は頬を押さえている。



「何をしたのか分かるか?」

「嫌い、大嫌い。あんな女、殺してって言えばよかった」


 俺はもう一度、玲奈の頬をビンタした。


「痛いわ。暴力は止めてよ」

「美緒は、この痛みより、もっと酷い痛みを背負った。分かるか?」

「私は関係ないわ」


 刑事が来て、玲奈の手に手錠を掛けた。

 和真は玲奈に「婚約破棄するからな」と告げた。


「和真なんかと結婚するつもりはなかったわ。ずっと嫌いだった」


 玲奈も男達5人も刑事に連れて行かれた。

 俺は刑事に言って、男達の毛髪を少しずつもらった。

 警察でも調べるだろうが、円城寺家の研究室でも調べたい。

 証拠の美緒が犯されているSDカードは、押収された。

 誰の目にも晒したくはないが、仕方が無い。

 男達の毛髪を研究室に運ぶのは、和真がしてくれた。


「兄さんは、美緒ちゃんといたいだろう?本当に申し訳ない」


 和真は、俺に深く頭を下げた。


「ティファ、和真と一緒にいてくれるか?」

「おう、勿論、そのつもりだ!」


 戦うために来たティファは、タイトなズボンを着ている。足蹴りもしていた。

 ボブだった頃を思い出す。

 三人で新幹線乗り場に向かう。和真とティファは東京に向かった。俺は熱海で下りた。

 その足で、美緒のいる病院に向かった。

 静かに病室に入ると、すすり泣く声が聞こえた。


「美緒」

「……来ないで」


 拒まれたけれど、俺はまだ美緒を抱きしめていない。
 ベッドの横まで行くと、美緒を抱きしめた。

「犯人は今、逮捕された。主犯は玲奈だった。美緒をこんなに痛めつけたのは、玲奈の友人だ。アメリカから呼んだらしい」


 美緒が泣きながら頷いている。


「和真が謝っていた」

「和真さんは悪くない」

「そうだな。元はと言えば、俺の責任だ。玲奈は俺を慕っていた。それを無下にし続けた。たぶん、俺への嫌がらせだ」


 美緒が頷いた。


「美緒は何も悪くない。美緒を傷つけた俺の傍にいてくれるか?」

「男に犯された私でも愛してくれるの?」

「怖かったと思う。よく耐えてくれた。俺は美緒を心から愛している。元旦に結婚式で誓い合っただろ?俺の気持ちは変わっていない。美緒が愛おしい。心の傷は、少しずつ乗り越えて行こう」

「うん、うん、ありがとう」

「顔のガーゼが涙で濡れてしまっているじゃないか?痛くはないか?」

「心も体も痛くて」

「痛み止めを入れてもらうか?」

「うん」

「待っていろ」



 美緒から離れて、病室を出てナースステーションに行った。

「どうかされましたか?」

「円城寺ですが、妻が泣いて、ガーゼが濡れてしまっているんです。交換していただけますか?あと痛みが強いようで痛み止めは使えますか?」

「すぐに準備をして伺います」


 看護師が準備を始めた。

 俺は心を鎮めながら部屋に戻る。

 どうしたら美緒の心の痛みを和らげる事ができるだろう?と考える。

 美緒と抱き合うのに、ずいぶん時間をかけた。

 やっと普通に結ばれるようになったばかりなのに、見知らぬ男達にレイプされて、恐怖でまた美緒に触れることから始めなければならないかもしれない。

 心が痛いと言われて、どうしたら癒やしてやれる?

 まだつい最近まで、顔を殴られて治療をしていたばかりだ。

 まだ痛みが消えきってない上に更に殴られて、痛みは以前より強いはずだ。

 内臓の腫れも酷いだろう。ベッドの横に掛けられた尿を溜めるビニールは、まだ鮮血の尿が流れている。

 今までで、一番、酷い怪我だと思う。
 できれば設備の整った都心の病院に転院させたいが、この状態で移動できるか?

 真希さんには叱られそうだが、真希さんがいる病院なら、最新医療が受けられるし、自宅のホテルからも近い。

 明日、医師に相談してみるか。

 部屋に入ると、美緒のすすり泣きが聞こえる。

 今は泣かせた方がいい。変に我慢させるより、泣けるだけ泣かせた方が、早く心が回復すると聞いた事がある。

 沈黙される方が危険だ。

 紙袋からタオルを出して、涙を拭う。

 扉がノックされて、看護師が入って来た。

 電気が点けられて、眩しい。


「涙が止まりませんか?」


 美緒は頷く。


「どこが痛みますか?」

「顔と脇腹がとても痛い」

「痛み止めを入れますね」


 美緒は頷いた。

 点滴の横にもう一つ点滴が追加された。



「少し気持ちが落ち着く薬も入れましたから、眠くなったら眠ってください」

「はい」



 看護師は顔のガーゼを外すと、消毒をしてガーゼを張った。



「また濡れたら、交換しますから言ってください」



 美緒は頷いた。



「ありがとうございます」


 美緒に代わって礼を言う。

 看護師は処置台を押して、部屋から出るときに電気を消した。

 美緒にタオルを持たせると、タオルで目元を押さえた。

 ベッドの横にある椅子に座ると、美緒の頭を撫でる。





「明日、転院できるか相談をしようと思う。真希さんがいる病院にも相談したい」

「うん」

「早く、帰りたい。勉強も遅れちゃう」

「そうだな」




 痛み止めが効いてきたのか、涙が止まった。

 髪を撫でていると、美緒が目を閉じる。呼吸が落ち着いてきた。徐々に寝息に代わる。

 撫でていた手を戻すと、美緒を見つめる。

 朝まで眠れるだろうか?

 美緒の手にキスをすると、席を立った。

 一端、ホテルに戻って確認しなければならない。

 席を立って、部屋を出ると、ナースステーションに寄った。

 帰宅することと、明日、担当医と相談したいことがあることを伝えて帰った。





 …………………………*…………………………



 

 ホテルに戻ると和真とティファは、既に戻っていた。


「美緒ちゃん、どうだった?」

「泣いていた。心と体が痛いって。顔のガーゼが濡れてしまっていたから、交換をしてもらった。痛み止めとたぶん精神安定座を打たれたのだと思う。暫くしたら眠った。そっちはどうだった?」

「DNAの検査を至急頼んできた。兄さんの電話に繋がるようにしてきた」

「明日、美緒の担当医に頼んで都心の病院に移れるか聞いてみるつもりだ。いつまでも、ここにいては、できることも少ない」

「転院できそうな状態なの?」

「今回は脳出血と腎臓も傷めて血尿が出ている。今までで一番、重傷だと思う。精神的にも不安定だから、見知った真希さんがいた方が、安心するんじゃないかと思ったんだが、まずは相談してみる」


 時計を見ると、0時だった。真希さんなら、まだ起きていそうな気がしたが、電話は朝にすることにした。仮眠中の可能性もある。

 卓也君と恵麻君の様子も見てこなければ。

 美緒の護衛を頼んだのに、怪我をさせてしまった。

 ご両親にも謝罪をしなければ。
  


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