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8   結婚します

1   新しい生活

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 新しく借りたマンションはすぐに解約することになった。
 誉が手続きを手伝ってくれる。
 電気や水道やガスも止めてもらう。
 メイド喫茶も退職することになった。
 亜梨子は誉を連れて、相川に謝罪とお礼を言った
 相川は、亜梨子の妊娠のことも知っていたので、「安心した」と亜梨子に言った。
「亜梨子を幸せにしてください」
 相川は誉に言った。
「必ず、幸せにします」と誉は約束した。
 誉はメイド喫茶の近くの駐車場に車を預けていた。
 昨夜は亜梨子の部屋に泊まった。
 誉は体を求めるのではなく、亜梨子の体をただ抱きしめて眠った。
 食べ物は何もなくて、二人は近くにある料亭でご飯を食べた。
 亜梨子はコンビニのおにぎりでいいと言ったが、誉は亜梨子を連れて、きちんとしたお店に連れて行った。
「久しぶりのご飯だわ」と亜梨子は微笑んだ。
 やはり亜梨子は毎日、おにぎり1個で過ごしていたようだ。
 車に亜梨子を乗せて、亜梨子の荷物をすべて詰め込むと、誉はまず亜梨子を病院に連れて行った。
 妊娠していて、無理な生活をしていたのなら、体が心配だった。
 亜梨子は貧血を起こしていたが、妊娠は順調だと言われた。
 妊娠四ヶ月で心拍もしっかりしていた。
「本当に産んでもいいの?」
「産んで欲しい」
 亜梨子は、まだ心配していた。
 亜梨子を連れて、自宅に戻った。
「家が散らかっているわ」
「亜梨子がいなかったから」
「埃も溜まっている」
「埃くらいじゃ死なないから」
 誉は亜梨子の手を引きリビングに入っていく。
 トルソーにウエディングドレスが着せられていた。
 亜梨子はドレスを見つめて、足を止めた。
「亜梨子のドレスだよ。気に入ってくれると嬉しいんだけど」
「私のためのドレス?」
「そうだよ」
 人形に着せたドレスより繊細で豪華だ。
 光沢もありお洒落なレースが床に広がっている。
「着てみるか?」
 亜梨子は急いで首を振る。
「どうして?」
「汗をかいてるから」
「それなら触れてごらん」
 恐れている亜梨子の手を掴んでドレスに触れさせる。
「とても柔らかいのね」
「亜梨子のサイズに誂えたから、ぴったりだと思うよ」
 ドレスの横に置いてあった宝石箱を開けると、誉は指輪を取り出した。
 亜梨子の手を取り、左手薬指にはめる。
「綺麗ね」
「普段でも使って欲しいから、少しカジュアルな感じにデザインしてもらったんだ」
 大きなダイヤでできた花が咲いている。
「ありがとう、誉さん」
「もらい手がいなくなるところだった」
 亜梨子は微笑んだ。
「式場も予約してあるんだ」
「いつ?」
「今度の土曜日」
「そんなに急に?」
「サプライズのつもりだったんだ。亜梨子が家を出て行くとは思ってなくて」
「誉さんは、サプライズをしない方がきっと上手くいくと思うの。いつも空回っている」
 誉は笑った。
「そうだな。これからは気をつける」
 綺麗なドレスに可愛らしい指輪。まるで夢を見ているようだ。

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