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4 御曹司は玩具に夢中です
4 社長が誰かと抱き合っています
しおりを挟む亜梨子の更衣室兼秘書課は、とても静かだ。
今日の誉の予定は検査室で実験をしているらしい。
アンジュプロダクションの社長さんから電話があった。ウエディングドレスができあがったらしい。社長に用があるなら亜梨子が荷物を取りに行けばいい。
タクシーを呼んで、亜梨子は一人でアンジュプロダクションの社長さんを訊ねた。
「私だけで、申し訳ございません。社長は実験が忙しいようで手が放せなくて」
「いいわよ。タクシーは待たせてあるのかしら?」
「はい」
「それならうちのスタッフに運ばせるわ」
「ありがとうございます」
ドレスはすべて箱に入れられていた。
台車に乗せて、女性のスタッフが二人台車を押した。
「代金は後ほど、振り込ませていただきます」
「ここに、お願いね」
アンジュプロダクションの社長さんは丁寧に、金額と振込先を書いた物を手渡してきた。
「お預かりします」
亜梨子は頭を下げて、台車の後を追った。
25着のウエディングドレスを受け取って、請求金額を見る。
(約3000万か・・・)
25回も披露宴の間に着替えるの?
ウエディングドレスの量を見て、驚いた。
たった1着あれば、それだけで嬉しいのに。
誉の考えていることが、わからない。
研究所に到着すると、守衛さんに手伝ってもらいながら、ウエディングドレスを台車に乗せる。取り敢えず、秘書室に運んでもらう。
山積みにされたウエディングドレスの一番上に乗った箱を、一つ開けると、白いウエディングドレスだった。
(綺麗・・・)
ビーズとスパンコールで飾られたドレスのスカートは、輝いている。
そっと蓋を閉めて、亜梨子は検査室に向かった。
検査室の中を覗くと、明かりがついていて、誰の姿もなかったが、続きになった室内に誉と末長がいた。
亜梨子は検査室の中に入っていった。
ガラス越しに女の子が横たわっていた。
足を抱えられて、女の子は誉に抱かれていた。
信じられないものを見て、亜梨子の思考は停止した。
女の子の髪は長い、何も身につけていなかった。
大きな胸を誉の手が掴んで揉んでいる。
ズボンを緩めて、確かに女の子の秘所を貫いている。貫く度に女体がしなっている。
女の子の顔を反らせると、末長は女の子の口の中に欲望を挿入した。
小さな女の子の体が、上からと下から犯されている。小さな体が、しなっている。
(これはレイプ?)
あまりの衝撃に、亜梨子は手に持っていた請求書を床に落とした。
屈んで拾おうとしたが、机の上に乗っていたファイルが肩に触れて、床にどさっと音を立てて落ちた。
書類を拾って立ち上がったとき、室内の二人と目が合った。
見てはいけないものを見てしまった。
亜梨子を抱いているときと同じ顔をした誉の顔が、そこにあった。
亜梨子は、誉が亜梨子以外と抱き合っていることを知らなかった。
(誰でも抱けるのね)
亜梨子は走るように検査室から逃げ出して、更衣室兼秘書室に逃げ込んだ。
エッチ大魔王だと思っていたが、愛を囁きながら、レイプのように誰でも抱くのかと思ったら、積み上げられているウエディングドレスが無意味な物に見えた。
時計を見ると、また終業時間前だったが、亜梨子はもう帰りたくなった。
帰るって、どこに帰ったらいいのだろう。
亜梨子は迷ってしまった。
誉と暮らしている家には、もう帰りたくない。
それでも、荷物は誉の家にある。
帰ろうとしたとき、机の上の電話が鳴った。
内線電話だ。
電話を無視して、扉を開くと目の前に誉が立っていた。
「どこに行くんだ?」
「早退します」
「仕事の話があるんだ。おいで」
仕事の話と言われたら、逆らうことはできない。
亜梨子は諦めたように鞄を置いた。
誉はウエディングドレスの入った箱を一つ撮ると、部屋を出て行く。
「ついてきて」
「はい」
検査室の中の部屋に末長がいた。
末長は何かをしている。目の前に女の子が座っている。
亜梨子は検査室の入り口で足を止めた。
「どうしたの?入っておいで」
「さっきは勝手に入ってごめんなさい。請求書を届けに来たんです」
「いいから入っておいで」
「検体者さんに失礼になりますから」
亜梨子は頭を下げて、検査室の前から離れていこうとした。
「いいから来なさい」
手を掴まれて、引っ張られる。
「嫌です」
「あれは人形だ。さっきは最終チェックをしていたんだ」
強引に手を引かれて、検査室の奥の部屋に連れて行かれる。
ベッドに寝ているのは、裸の亜梨子そっくりの人形だった。
売り物なら、実際に使って検査しなくてはいけないだろう。けれど・・・。
「ALICEタイプ1・1号だ」
瞬きまでして、話もする。
「ホマレサマ、アイシテイマス」
滑らかな亜梨子そっくりの声だ。
「触ってみるか?」
「嫌です」
誉はウエディングドレス入った箱を開けると、中からさっき、亜梨子が見て心が躍ったビーズとスパンコールで彩られた白いウエディングドレスを、その人形に着せた。
抱き上げると、椅子に座らせる。
ぴったりの寸法で、とても似合っている。
(私のドレスじゃなかったのね)
「ALICE似合うよ。ドレスは気に入った?」
「ホマレサマ、トテモウレシイ」
「言葉も話すんだ。亜梨子のお陰で、完成したんだ」
「おめでとうございます」
亜梨子はそれ以外の言葉を言うことができなかった。
「誉、口の中の挿入は、言語かどちらかに選択したほうがよさそうだ」
「そうか。パターンを2種類にしよう」
(そうだよね、全部仕事のため。ALICEプロジェクトを完成させるために雇われんだから)
亜梨子はしょんぼりして、はしゃいでいる二人の研究者たちから離れていこうとした。
シンデレラストーリーなんて、そんなにあるはずはない。
「亜梨子、すぐにドールに衣装を着せてくれ。5パターンの写真を撮るから準備をしてくれ。限定25体だ。アンジュとコラボでホームページに載せてくれ。詳しい仕様はこちらからメールで送る」
呼び止められて、新しい裸のドールが入った箱を台車に乗せて持ってくる。
箱は5個。
台車は少し重い。
「はい」
台車を受け取り、亜梨子は秘書室に運ぶ。
更衣室兼秘書室兼作業室だ。
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