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オブシディアン領で労働中
武器の輸入問題が浮上しました3
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通された部屋には、座り心地の悪そうなソファーとローテーブルがあった。
一応、応接室と言ったところだろうか。
腰をかけるように促されたので、遠慮なく腰を下ろす。
ルールールは私の足元に座り、他の奴隷達は背後に立っている。
うん、威圧感が半端ないね。
アルカディアは慣れているのか、表情一つ変わっていない。
「領主代理ともあろう方が、先ぶれもなしにお越しになるとは思いもみませんでしたよ」
棘のある言い方で牽制をしてくるアルカディアに対し、
「抜き打ちと申し上げましたでしょう。抜き打ちなのに、先ぶれを出したら無意味ですわ」
と返してやった。
すると物凄く嫌そうな顔をしている。
年下の小娘にあれこれ指示を出されるのは、彼にとってプライドを傷つけるのだろう。
前世でもそういう奴は大勢見て来たから、分からなくもない。
だが、仕事の場で持ち出すのはレッドカードで一発退場だ。
フリックがこの場にいたら、凄くキラキラした笑顔でクビ宣告をしていただろう。
「話しが逸れてしまいましたね。わたくしが着任してから、この領に入ってくる荷物の検査を厳しくしたことで武器の部品が領地を通過し、どこかへ送られていることが判明しています。一つの商会だけでなく、それも複数の商会がです。どこへ届ける予定だったのか、報告をお願いできますか?」
「聞き取り調査の結果、入荷した部品はフレディック領とゴードン領、ヴィッツ領に運ばれる予定と伺っています。こう言ってはなんですが、部品の輸入如きに目くじらを立てて取り締まる必要があるのでしょうか?」
アルカディアの調査報告に、上げられた領に共通点はあったか頭の片隅で考えると共に、目の前の男の無能さに頭が痛くなった。
「貴方は、馬鹿なのですか? 一つ一つは、部品に過ぎません。しかし、それを全部集めて組み立てたら武器になるでしょう。武力を集めるために、ナリスから武器を買い付けている貴族がいたとしましょう。自領を守る為は表向きの建前で、本音は王権争いの介入だとしたら? 内乱を勃発させたいと望んでいたら? 相手の企みが瓦解した時、一番最初に咎が下るのは、武器の受け渡しとなった中継地点であるこの領地だということに気付かないのですか?」
私の考えていることが稀有であれば、取り越し苦労したな~で終わる。
しかし、今のイーサント国の現状は情勢が不安定だ。
表向きは、イグナーツ陛下は不治の病に侵され床に伏しているとされている。
実際は、精霊の怒りを買ったことを重要な役職に就く一部の者は知っている。
更に影の王として存在していたアングロサクソン家が、表舞台に立ったことで水面下での王位継承権争いが勃発している。
パパンも私もその気はないので、すり寄ってきた者達は適当な理由をつけて左遷や社交場からの追放をして火の粉を払っていた。
アンジェリカ妃の出産で男児が生まれたこともあり、アルベルトとユスティーツィアの王位継承権争いが始まっている。
アルベルトがイグナーツの実子でないことを知っている貴族も多分いるだろう。
決闘で馬鹿がルールを破って魔法を使う暴挙に出るとは、私も考えが甘かったと反省した出来事だ。
「それは、流石に考えすぎなのでは?」
アルカディアの馬鹿にした笑みと共に返ってきた言葉に、考え事から現実に引き戻される。
「稀有で済むなら、それにこしたことはありません。わたくしは、最悪の想定をして物事の準備を進めないと気が済まないの。要らぬ火の粉が紛れ込み、放置した結果、大炎上しましたとなったら責任問題ですもの。あなた方には負担をかけますが、引き続きこれまで以上に荷物の検査を行って下さいまし。ちゃんと成果を挙げて頂けるのであれば、わたくしも相応の評価を致しますわ」
「……善処します」
アルカディアの表情は不満気ではあるが、評価の言葉にはピクッと眉が動いたのを見逃してないぞ。
「それでは、本日はこれで失礼しますわ。お仕事頑張って下さいませ」
私は、スッと席を立ち奴隷達を引き連れて保安検査場を後にした。
馬を繋いでいた宿に戻り、護衛で付いてきた奴隷のうち諜報に長けてそうな者を一人残して館に戻った。
レユターレンは戻ってきた護衛の人数が足りないことに気付いたようだが、私が何も言わなかったので何かを察したのか彼女も何も言わなかった。
私は持ち帰った情報の整理をするために、フェディーラを執務室に呼んだ。
一応、応接室と言ったところだろうか。
腰をかけるように促されたので、遠慮なく腰を下ろす。
ルールールは私の足元に座り、他の奴隷達は背後に立っている。
うん、威圧感が半端ないね。
アルカディアは慣れているのか、表情一つ変わっていない。
「領主代理ともあろう方が、先ぶれもなしにお越しになるとは思いもみませんでしたよ」
棘のある言い方で牽制をしてくるアルカディアに対し、
「抜き打ちと申し上げましたでしょう。抜き打ちなのに、先ぶれを出したら無意味ですわ」
と返してやった。
すると物凄く嫌そうな顔をしている。
年下の小娘にあれこれ指示を出されるのは、彼にとってプライドを傷つけるのだろう。
前世でもそういう奴は大勢見て来たから、分からなくもない。
だが、仕事の場で持ち出すのはレッドカードで一発退場だ。
フリックがこの場にいたら、凄くキラキラした笑顔でクビ宣告をしていただろう。
「話しが逸れてしまいましたね。わたくしが着任してから、この領に入ってくる荷物の検査を厳しくしたことで武器の部品が領地を通過し、どこかへ送られていることが判明しています。一つの商会だけでなく、それも複数の商会がです。どこへ届ける予定だったのか、報告をお願いできますか?」
「聞き取り調査の結果、入荷した部品はフレディック領とゴードン領、ヴィッツ領に運ばれる予定と伺っています。こう言ってはなんですが、部品の輸入如きに目くじらを立てて取り締まる必要があるのでしょうか?」
アルカディアの調査報告に、上げられた領に共通点はあったか頭の片隅で考えると共に、目の前の男の無能さに頭が痛くなった。
「貴方は、馬鹿なのですか? 一つ一つは、部品に過ぎません。しかし、それを全部集めて組み立てたら武器になるでしょう。武力を集めるために、ナリスから武器を買い付けている貴族がいたとしましょう。自領を守る為は表向きの建前で、本音は王権争いの介入だとしたら? 内乱を勃発させたいと望んでいたら? 相手の企みが瓦解した時、一番最初に咎が下るのは、武器の受け渡しとなった中継地点であるこの領地だということに気付かないのですか?」
私の考えていることが稀有であれば、取り越し苦労したな~で終わる。
しかし、今のイーサント国の現状は情勢が不安定だ。
表向きは、イグナーツ陛下は不治の病に侵され床に伏しているとされている。
実際は、精霊の怒りを買ったことを重要な役職に就く一部の者は知っている。
更に影の王として存在していたアングロサクソン家が、表舞台に立ったことで水面下での王位継承権争いが勃発している。
パパンも私もその気はないので、すり寄ってきた者達は適当な理由をつけて左遷や社交場からの追放をして火の粉を払っていた。
アンジェリカ妃の出産で男児が生まれたこともあり、アルベルトとユスティーツィアの王位継承権争いが始まっている。
アルベルトがイグナーツの実子でないことを知っている貴族も多分いるだろう。
決闘で馬鹿がルールを破って魔法を使う暴挙に出るとは、私も考えが甘かったと反省した出来事だ。
「それは、流石に考えすぎなのでは?」
アルカディアの馬鹿にした笑みと共に返ってきた言葉に、考え事から現実に引き戻される。
「稀有で済むなら、それにこしたことはありません。わたくしは、最悪の想定をして物事の準備を進めないと気が済まないの。要らぬ火の粉が紛れ込み、放置した結果、大炎上しましたとなったら責任問題ですもの。あなた方には負担をかけますが、引き続きこれまで以上に荷物の検査を行って下さいまし。ちゃんと成果を挙げて頂けるのであれば、わたくしも相応の評価を致しますわ」
「……善処します」
アルカディアの表情は不満気ではあるが、評価の言葉にはピクッと眉が動いたのを見逃してないぞ。
「それでは、本日はこれで失礼しますわ。お仕事頑張って下さいませ」
私は、スッと席を立ち奴隷達を引き連れて保安検査場を後にした。
馬を繋いでいた宿に戻り、護衛で付いてきた奴隷のうち諜報に長けてそうな者を一人残して館に戻った。
レユターレンは戻ってきた護衛の人数が足りないことに気付いたようだが、私が何も言わなかったので何かを察したのか彼女も何も言わなかった。
私は持ち帰った情報の整理をするために、フェディーラを執務室に呼んだ。
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