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エルブンガルド魔法学園 中等部
キャロルの葛藤2
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リリアンから手紙を受け取ったその日に、コレットに関する情報を集めることにした。
証拠は、彼女の優秀な侍女が握っているだろう。
それを当てにするのは簡単だが、当てにしたら最後、何を要求されるか考えただけで恐ろしい。
「コレット・ピューレの悪評は聞いていますが、実際に証拠がなければ手の出しようがないですね」
「ヘリオト商会で写真機なるものを販売されています。購入しますか?」
「……」
エマの言葉に、キャロルは暫く言葉が出なかった。
あの魔法具は、相当高価な代物だ。
馬鹿女如きのために大金を払うのは馬鹿らしい。
そもそも、会員からお金を集めても買えるか怪しい。
「……現実的に高価な魔法具を買う余裕はありません。証拠は、既に揃っているでしょう」
「リリアン様の懐刀が、既に動いていますから証拠は揃っていますね」
エマは、あっさりと購入の提案を引っ込めキャロルの意見に同調した。
彼女は、こういうやり取りをしながら共通の認識に相違が無いか確認している。
「私達に出来ることは、コレット嬢に関する情報操作と現場を押さえて未然にトラブルを防ぐことを求められているのではないでしょうか?」
リリアンにとってコレットは、羽虫にしか思っていないのだろう。
現にアルベルトに擦り寄っていることを報告されているであろう彼女は、学園に戻ってくる気配がない。
しかし、学園の風紀を乱されるのは由々しき事態と重くとらえている。
派閥争いに負けて消滅しかけた白薔薇の会に、リリアンは花を持たそうとしているのではないかと勘ぐってしまう。
保守派に対する信頼は、リズベットやエリーナの一件で地に落ちてしまった。
それでもこうして継続していられるのは、リリアンがキャロル達保守派に敬意を払って接しているからだ。
そして、コレットの件を上手く収めることが出来れば多少なりとも地に落ちた信頼は多少なりとも回復するだろう。
「私もそう思います。歴史がそこそこ長く高位貴族であるという人物から、コレット嬢を諫めることを望んでいるのではないかと」
「新興貴族が収めてしまったら、更に保守派の立場が危ぶまれると考えていると思うのは私の考え過ぎでしょうか」
「愚問ですね」
スパッと切れ味の良いナイフのような返答に、キャロルは大きな溜息を吐いた。
予想していたが、本当に面倒臭い事案を押し付けられてしまった。
フーッと深呼吸を繰り返し、冷めた紅茶を口に含み喉を潤す。
カップをソーサーに置き、キャロルはエマに言った。
「エマ、魔法科Cクラスの生徒とコンタクトは取れますか?」
「まあ、数日頂ければ可能です」
「では、Cクラスの生徒からコレット嬢の普段の振る舞いを聴取をお願いします。それと同時に渡されたリストに載っている男子生徒の婚約者から、コレット嬢に関して何か困ってないか相談を受けれるように態勢を整えて下さい」
「場所は、如何なさいますか?」
「白薔薇の会で押さえているサロンを解放して下さい。相談員は、聞き上手な方を選んで下さい」
「直ぐに手配します。コレット嬢の情報操作は、どうされますか?」
「……今は、情報収集を優先して下さい。これ以上、被害者を出さないようにそれとなくCクラスの方から注意喚起を発信する形を取りましょう。白薔薇の会に所属している者は、コレット嬢が風紀を乱すような言動や行動を取った場合、即座に注意するように通達して下さい」
キャロルの指示に対し、エマは薄く笑みを浮かべて言った。
「ギリギリ及第点と言ったところですね」
エマは、一体何を期待しているのだろうと思う時がある。
時折、キャロルを試すような言動がエマから見え隠れする。
キャロルの力不足な部分は、エマが穴を埋める可能ように上手く立ち回りカバーしてくれる。
有り難いが、こういうやり取りをするのは神経を使うし心労も大きい。
「キャロル様、リストに書かれた場所を巡回することを提案します」
その言葉を聞きながら、詳細に記載されたリストを眺めた。
すると、ある法則を見つけた。
男は変わっても、出現する場所と時間はある程度決まっている。
エマからの提案に、キャロルは二つ返事で了承した。
「これだけ条件が絞り込めていれば、予め人を配置しておけば何とかなるわね」
「おや、気付かれましたか」
クツクツと笑みを浮かべるエマに、人が悪いと軽く睨む。
エマが副会長に就任して他の人よりも一緒に行動する時間が長くなると、彼女の人となりも徐々に見えてくるものだ。
キャロルは、爵位が高い貴族の娘だが実家がド貧乏だ。
メイドを連れてくるお金もない。
その為、寮も相部屋で生活をしている。
奇しくも、その相部屋の相手が目の前にいる彼女だというのは出来過ぎた偶然だ。
遠回しな言い方で重要な事を伝えてくる彼女の癖を知らなければ、大事なことを見逃していただろう。
「気付いていて、肝心なことは言葉にしないのは貴女の流儀でしょう」
「仰る通りで」
「配置する人の性格は、忍耐強く正義感がありハッキリと物を言う方を選んで下さい。」
「この祭、正義感は捨てましょう。そんな方いませんから。忍耐強く物怖じせずハッキリ物を言い、怒っても暴力に走らない方を選びます」
「そんな人いたかしら?」
保守派の貴族は、やたらプライドが高く高飛車な人間が多いのが特徴だ。
エマの提示した人物に思い当たる節がなく首を傾げていたら、彼女はにっこりと笑みを浮かべて言った。
「心当たりがあるので安心して下さい」
エマの笑みの意味が、その時のキャロルには分からなかった。
後に、彼女はエマが配置ように作成した人選リストを見て「ああ……」と呟く事となる。
証拠は、彼女の優秀な侍女が握っているだろう。
それを当てにするのは簡単だが、当てにしたら最後、何を要求されるか考えただけで恐ろしい。
「コレット・ピューレの悪評は聞いていますが、実際に証拠がなければ手の出しようがないですね」
「ヘリオト商会で写真機なるものを販売されています。購入しますか?」
「……」
エマの言葉に、キャロルは暫く言葉が出なかった。
あの魔法具は、相当高価な代物だ。
馬鹿女如きのために大金を払うのは馬鹿らしい。
そもそも、会員からお金を集めても買えるか怪しい。
「……現実的に高価な魔法具を買う余裕はありません。証拠は、既に揃っているでしょう」
「リリアン様の懐刀が、既に動いていますから証拠は揃っていますね」
エマは、あっさりと購入の提案を引っ込めキャロルの意見に同調した。
彼女は、こういうやり取りをしながら共通の認識に相違が無いか確認している。
「私達に出来ることは、コレット嬢に関する情報操作と現場を押さえて未然にトラブルを防ぐことを求められているのではないでしょうか?」
リリアンにとってコレットは、羽虫にしか思っていないのだろう。
現にアルベルトに擦り寄っていることを報告されているであろう彼女は、学園に戻ってくる気配がない。
しかし、学園の風紀を乱されるのは由々しき事態と重くとらえている。
派閥争いに負けて消滅しかけた白薔薇の会に、リリアンは花を持たそうとしているのではないかと勘ぐってしまう。
保守派に対する信頼は、リズベットやエリーナの一件で地に落ちてしまった。
それでもこうして継続していられるのは、リリアンがキャロル達保守派に敬意を払って接しているからだ。
そして、コレットの件を上手く収めることが出来れば多少なりとも地に落ちた信頼は多少なりとも回復するだろう。
「私もそう思います。歴史がそこそこ長く高位貴族であるという人物から、コレット嬢を諫めることを望んでいるのではないかと」
「新興貴族が収めてしまったら、更に保守派の立場が危ぶまれると考えていると思うのは私の考え過ぎでしょうか」
「愚問ですね」
スパッと切れ味の良いナイフのような返答に、キャロルは大きな溜息を吐いた。
予想していたが、本当に面倒臭い事案を押し付けられてしまった。
フーッと深呼吸を繰り返し、冷めた紅茶を口に含み喉を潤す。
カップをソーサーに置き、キャロルはエマに言った。
「エマ、魔法科Cクラスの生徒とコンタクトは取れますか?」
「まあ、数日頂ければ可能です」
「では、Cクラスの生徒からコレット嬢の普段の振る舞いを聴取をお願いします。それと同時に渡されたリストに載っている男子生徒の婚約者から、コレット嬢に関して何か困ってないか相談を受けれるように態勢を整えて下さい」
「場所は、如何なさいますか?」
「白薔薇の会で押さえているサロンを解放して下さい。相談員は、聞き上手な方を選んで下さい」
「直ぐに手配します。コレット嬢の情報操作は、どうされますか?」
「……今は、情報収集を優先して下さい。これ以上、被害者を出さないようにそれとなくCクラスの方から注意喚起を発信する形を取りましょう。白薔薇の会に所属している者は、コレット嬢が風紀を乱すような言動や行動を取った場合、即座に注意するように通達して下さい」
キャロルの指示に対し、エマは薄く笑みを浮かべて言った。
「ギリギリ及第点と言ったところですね」
エマは、一体何を期待しているのだろうと思う時がある。
時折、キャロルを試すような言動がエマから見え隠れする。
キャロルの力不足な部分は、エマが穴を埋める可能ように上手く立ち回りカバーしてくれる。
有り難いが、こういうやり取りをするのは神経を使うし心労も大きい。
「キャロル様、リストに書かれた場所を巡回することを提案します」
その言葉を聞きながら、詳細に記載されたリストを眺めた。
すると、ある法則を見つけた。
男は変わっても、出現する場所と時間はある程度決まっている。
エマからの提案に、キャロルは二つ返事で了承した。
「これだけ条件が絞り込めていれば、予め人を配置しておけば何とかなるわね」
「おや、気付かれましたか」
クツクツと笑みを浮かべるエマに、人が悪いと軽く睨む。
エマが副会長に就任して他の人よりも一緒に行動する時間が長くなると、彼女の人となりも徐々に見えてくるものだ。
キャロルは、爵位が高い貴族の娘だが実家がド貧乏だ。
メイドを連れてくるお金もない。
その為、寮も相部屋で生活をしている。
奇しくも、その相部屋の相手が目の前にいる彼女だというのは出来過ぎた偶然だ。
遠回しな言い方で重要な事を伝えてくる彼女の癖を知らなければ、大事なことを見逃していただろう。
「気付いていて、肝心なことは言葉にしないのは貴女の流儀でしょう」
「仰る通りで」
「配置する人の性格は、忍耐強く正義感がありハッキリと物を言う方を選んで下さい。」
「この祭、正義感は捨てましょう。そんな方いませんから。忍耐強く物怖じせずハッキリ物を言い、怒っても暴力に走らない方を選びます」
「そんな人いたかしら?」
保守派の貴族は、やたらプライドが高く高飛車な人間が多いのが特徴だ。
エマの提示した人物に思い当たる節がなく首を傾げていたら、彼女はにっこりと笑みを浮かべて言った。
「心当たりがあるので安心して下さい」
エマの笑みの意味が、その時のキャロルには分からなかった。
後に、彼女はエマが配置ように作成した人選リストを見て「ああ……」と呟く事となる。
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