新たな力で人生リスタート!

もっけさん

文字の大きさ
上 下
24 / 24

24

しおりを挟む
 昼食は、チャーハンと卵スープ、アボカドサラダである。
「モモちゃん、ご飯出来たから手を洗おうか」
「何で?」
 直ぐに食べられると思ったのか、モモちゃんの機嫌は悪い。
「モモちゃん、おーちゃんと遊んでいたでしょう?」
「うん」
「おーちゃんも、モモちゃんもボール以外に色んなものに触っているよね? そこには目に見えないバイキンがいて、手についているんだよ。もし、手を洗わずにご飯を食べたらお腹が痛くなったり、熱が出たりするかもしれないよ。しんどい思いしても良い?」
 出来るだけ分かりやすく噛み砕いた言葉を使いながら、手を洗う重要性を伝えると、モモちゃんも腹痛や発熱、しんどさを体験するのは嫌だと判断したのか、素直に手を洗ってくれた。
 おーちゃんは、数粒のカリカリをエサ入れに入れてあげる。
「じゃあ、食べようか。両手を合わせて頂きます」
「いただきます?」
 頂きますが何を意味しているのか分からないなりに、オウム返しに反復するモモちゃんによく出来ましたと褒める。
 今は、頂きますの意味を伝える必要はない。
 それよりも食べ方が汚かった。
 多分、食事のマナーも一般常識も教わってこなかったのだろう。
 予想はしていたが、これは酷い。
 教育テレビを見せながら、教えられることは教えないとダメそうだ。
 遅れている勉強も教えたいところだが、まずは集団生活が出来るくらいの一般常識は知っていた方が良いだろう。
 昼食後、モモちゃんにセサミストリートを見せて様子を見ることにした。
 テレビをゆっくり鑑賞するのは初めてなのか、ジッと無言で食い入るように見ている。
 多分、面白いのだと思う。
 放置された鶯宿おうしゅくは、私に遊べとじゃれついてくる。
 そんな鶯宿おうしゅくを片手間で遊びながら、お風呂の用意をしたり、夕飯の準備をして過ごした。
 モモちゃんの集中力は人並み外れていると思うほどで、何度声を掛けても返事をしない。
 それもモモちゃんの潜在能力なのだろう。
 興味があれば、人並み以上の集中力を発揮するのは一種の才能と呼んでも差し支えないだろう。
 私は、区切りが良いところでテレビの電源を落とした。
 すると我に返ったのか、モモちゃんは私の方を振り返って怯えた目をしている。
「面白かった?」
 怒るわけでもなく質問をする私に、モモちゃんは目をパチクリさせている。
「ぶたないの?」
「ぶたないよ。ずっとテレビを見てて疲れたでしょう。テレビを見ちゃダメとは言わないけど、30分に1回はテレビを見ない時間を作ろうね。目が悪くなるよ」
 私の言葉に、モモちゃんは混乱しているのか、疑問符を頭に浮かべている。
 モモちゃんの様子からして、集中し過ぎて聞いてなかった事に対して、何度も怒られぶたれた経験があるのだろう。
 それに対して、私の反応は予想外でどう反応したら良いのか分からないと言ったところだろうか。
 モモちゃんの親は、躾とは名ばかりの虐待だ。
 クソったれな親に地味な嫌がらせが降りかかる呪いをかけたれ。
 何て心の中で『小指を机や棚に骨折するまでぶつけろ』と呪詛を吐いた。
「モモちゃんは、並外れた集中力があるから興味があるものなら直ぐに覚えちゃうかもしれないね。今は、それで良いよ。少しずつ、人の声にも耳を傾けられるようにしようね」
 集中することが悪いわけではない。
 寧ろ良いことだと思う。
 でも、し過ぎてしまうと弊害も出てくるだろう。
 こればかりは、訓練してゆっくりと『他人と合わせる』ことを覚えていくしかない。
 一気にアレコレ教えたても、頭がついていかないだろう。
 モモちゃんのペースに合わせて、出来るだけ焦らない様に常識を覚えて貰えるように工夫しないとと決意を新たにした。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

mas文吾
2022.08.01 mas文吾

一気に読んでしまいました。
琴陵姉妹の異世界日記を読んで
こちらの作品にきました。
人生リスタートの続きを書いて下さい。
桜木モモちゃん編の続きが読みたいです。
保護期間の2ヶ月でモモちゃんに称号が発生するとか
色んな展開が有るでしょう?
よろしくお願いします。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。