琴陵姉妹の異世界日記

もっけさん

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容子の追憶と暗躍

137.容子、下準備をする

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 姉の武器を調達するべく骨董屋巡りをしたが、今一ピンッと来ない。
 予算も限られているし、今後私の稼ぎだけで琴陵ことおか家の生活を支える事になると考えると、数十万もする刀を買うのは勇気がいる。
 模造刀やクナイを研磨して使えるようにしようかとも考えたが、宥子ひろこならば直ぐに壊しそうだ。
「一度帰って、考え直すか」
 私は自宅に戻り、思考を整理するためにも部屋の掃除を始めた。
 久々に隅々を掃除するとなると、結構埃が溜まっている。
 蛇達の部屋は、宥子ひろこが定期的に掃除しているのを見ていたのでやり方は分かっている。
 てか、お前らは宥子ひろこについて行かなくて良かったのか? 
 契約テイムされても、離れて大丈夫なのだろうか?
 ジッと見つめる私に対し、ウルルとした瞳でこちらを見る蛇達は本気マジで可愛い。
 可愛い存在の前では、些細な問題だと思考を放棄した。
 ふふーんと鼻歌を歌いながら掃除を続けていたら、折角用意した異世界冒険セットを宥子ひろこは持って行ってなかった。
 姉よ、貴様は異世界で死ぬ気か? 馬鹿なのか?
 用意してあれば、持って行く一択だろう。
 それが何か分からないなら、私に一声問いかければ良い話だろうに。
 ここまで宥子ひろこが間抜けだったとは、脱力感に襲われる。
 私にの秘密に隠している生キャラメルを貪るぞ。
 折角、手間暇掛けて荷造りした異世界冒険セットを持って行かないなんて有り得ないわ!!
 私は腹いせに生キャラメルを平らげて、パソコンの前に座った。
 時間の融通が利く作家業でなければ、宥子ひろこのフォローも出来なかっただろう。
 身内の不幸は、話の良いネタになる。
 宥子ひろこは、異世界で何を目指すんだろう?
 戦闘チート、それとも生産系か?
 勇者は却下、聖女はねーな。
 自称神(笑)をぶっ殺すって言ってたから、神殺し希望って事なんだろう。
 なろう系の定番は読み飽きたし、書くのもつまらない。
 宥子アレは、テンプレチートヒロインって感じじゃない。
 ヒロインって柄でもないし、三十路一歩手前に片足突っ込んでるおばさんを題材にした異世界トリップ小説誰が読むだろう。
 想像したら、需要がないと判断し却下した。
 困った。
 主人公の設定を実年齢じゃなく、サバ読んで美化してみるか?
 ……いやダメだ。
 美化出来るところが、一ミリもない。
 顔面平均値50の宥子ひろこが若返っても、老若男女問わずに見向きもされない。
 人間に興味がない宥子ひろこに、恋愛展開を期待するのは絶望的だ。
「姉を投影したキャラは、読者の人気は獲得出来ないな。ヒーロー要素も、ヒロイン要素も無いモブキャラだわ。異世界で、主人公になりそうな子が居れば、小説の題材に出来るのに。私が、直接異世界に乗り込みたい!」
 宥子ひろこを題材にしたら、ギャグ通り越して異世界珍道中譚になってしまう。
 書いては消し、書いては消しを繰り返し、気分転換のためパソコンをスリープモードに切り替えて、気分転換を兼ねて散歩に出かけた。



 外は晴天、丁度良い気温で風も気持ちいい。
 これは、散歩だけでも良い気分転換にもなりそうだ。
 駅の近くの書店に寄り、武器特集を立ち読みしつつ、宥子ひろこが使えそうなの武器をムービーで撮っておく。
 後でパソコンで調べてみよう。
 コストの掛からず簡単に作れる武器があれば、作って渡してやるべきか。
 万が一武器が壊れた時の保険にもなるだろうし。
 私って優しい!
 スタンダードは、火炎瓶にプラスチック爆弾。
 罠を仕掛ける為のワイヤーもいるよね。
 材料と工具一式は、ホームセンターで調達しよう。
 私は、ホームセンターとガソリンスタンドで必要な物を購入し帰宅した。
 帰宅する頃には、宥子ひろこも帰ってくるだろうと思っていた。
 しかし、宥子ひろこは帰って来なかった。
 一日が過ぎ、二日目、三日目になっても帰って来ない。
 武器が、包丁とゴキジ〇ット。
 それで戦って生きているのだろうか? 大丈夫か?と思ったが、何気に宥子ひろこは運が強い。
 早々死にはしないだろうと考え直し、私は武器作成に励んだ。
「火炎瓶は簡単にできたけど、プラスチック爆弾は難しいなぁ。火薬の量とか測るのが面倒臭い」
 ブチブチ文句を言いつつ、宥子ひろこが帰って来なくなってから、五日も経過した。
 その頃には、結構な数の武器が出来上がっていた。
 私も宥子ひろこにくっついて行く前提で、着替え・武器・テントや寝具等の一式を揃えた。
 100円ショップで購入したCZキュービックジルコニアの指輪やピアス、アクセサリーをクリアボックスに仕舞う。
 ジップロックやラップの類は、ビニールバックに入れて分かるようにしておいた。
 早く帰って来ないかなと思いながら、私は宥子ひろこの帰宅を待ちわびた。
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