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ハルモニア王国 王都
131.弾強化合宿から帰宅しました
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第三回強化合宿も無事終了し、戻ってきました。
どこの軍隊だと思うような規律と行動の徹底ぶりに、Cremaは一体どこへ向かっているんだろうか。
この強化合宿で新たなスキルを手に入れた者もいた。
前回同様、モンスターの入れ食い状態で捌くのが大変だった。
ステータスは『幸運』と表示されているが、悪運の間違いじゃなかろうか。
相変わらず、事務作業もしっかり回される徹底ぶりに辟易した。
アンナ、お前は鬼だ!
迎えに来て来てもらうのも面倒だったので、全員に目隠しさせて、サイエスの自宅の鍵を取出し一瞬で帰宅という荒業を使った。
だって、帰りまでモンスターに襲われるのは嫌すぎる。
お蔭で素材も溜まり経験値も美味しく頂いたが、その代償は大きかった。
私の貴重な睡眠時間とガリガリと削られた精神力が対価だよ!
「ただいま~。疲れたぁ~」
動きたくないで御座る、と大広間のフロアでウンコ座りする私に対し、ニックが苦笑している。
「お疲れ様です。でも、そんな恰好していると他の面々に示しがつきませんよ」
「別に気にしない」
地べたに胡坐をかきながら、くるりと後ろを振り向いた。
地獄の強化合宿に全員生還したことは喜ばしい。
「皆、お疲れさま。諸君、第一関門突破おめでとう。全員生還で戻って来れたのは喜ばしいが、まだ仮雇用中です。次は、実務の第二関門が待ってます。これから希望の配属先と名前を紙に書いて、この箱の中に入れて下さい。一週間の休暇後に、各部署に配置されます。必ずしも希望の場所に配置になるとは限りません。適正と照らし合わせて配属するので、辞退なら配置から三日以内にするように。では、以上。解散!」
「「「「「はい!」」」」」
ビシッと両足を揃えて直立する彼らは、もはや軍人と言っても良いのではなかろうか。
サーッと人が去って、私はそのままゴロンと寝ころんだ。
紅唐白が、私のお腹に陣取っているが気にしない。
「ニックも一週間休暇を満喫しておいで」
「ヒロコ様は、どうされるんですか?」
「アンナに引継ぎして、最初に鍛えた一期生の進捗具合の確認と正規雇用有無の決済が待ってる」
休みを取ったら仕事は溜まる。
しかし、休みを取らなかったら馬車馬のように扱き使われる。
こんな事なら、アンナを雇われ社長に据えて経営を丸投げしたら良かった。
いや、逆に今より低賃金で働かせる可能性があるな。
本当、社長に優しくないブラックな会社だよ。
「程々になさって下さいね」
苦笑いをしながら部屋に戻るニックに対し恨みがましい視線を送った後、少し休憩してから紅唐白を抱っこして自分の執務室へと向かった。
<アンナ、今帰った>
<聞こえてましたよ。執務室にいるので来て下さい>
<了解>
面倒臭いなぁと思いつつも、執務室に足を運んだ。
執務室の扉を開けて、大量の書類の山に思わず無言で閉じた。
「何現実逃避しているんですか。さっさと入室して仕事して下さい」
バタンと扉が開き、私の腕を掴んでずりずり引きずりながら無理やり椅子に座らされた。
「行きよりも書類の数が半端ないんやけど!」
「日本とこちらの書類が溜まってますからね」
「アンナも私と同等のに決裁権持ってるじゃん。そっちで捌けよ」
「給与分の仕事はしております」
ノー残業だと言い切る彼女に、グヌヌヌッと何も言い返せなかった。
「これからハルモニア王国全土に神社を建て捲るんでしょう。だったら、しっかりキリキリ働いて下さい」
「人参もないのに馬は動かない。私は、今しがたまで馬車馬のように働いてきた!」
これ以上は無理と泣き言を言えば、アンナに鼻で嗤われた。
「言い出しっぺが何を言っているんですか。最後までキッチリして下さい」
「もう嫌だ~。強化合宿から帰ってきて、更に仕事なんて! 鬼、悪魔!!」
「これも崇高なる[[rb:理念 > おかね]]の為です。睡眠時間五時間差し上げたじゃないですか」
書類整理に時間が掛るのを見越しての犯行だったのか!
やっぱりアンナは鬼だ。
今度から銭ゲバではなく鬼婆と呼んでやる。
「今何か失礼なことでも考えましたか?」
威圧してくるアンナに、私は冷や汗を垂らしながら誤魔化した。
「別に何も考えてないし。この書類の山を片付けないとね」
書類を手に取りザッと中身を流し見して、各種ボックスの中に入れて行く。
重要案件、通常案件、緊急案件、クソ案件と分類している。
クソ案件は、勿論決済が下りるはずもなく却下のハンコが押されて終了。
緊急案件は、翌日各担当者を呼んで打ち合わせをする。
普通案件は後回しで、重要案件も緊急案件と並行して処理を行う。
此処のところ、強化合宿と一緒に書類整理もしていたので新たなスキル並列思考を取得していた。
並列思考のお蔭で書類整理も格段と早くなったが、全然嬉しくない。
アンナがそれを見越してガンガン仕事を取ってくるので休む暇がない。
「何時になったら王都を出られるんだろう……」
「今日戻って来た面子が、実際に使い物になるようればですね。貴族出も強化合宿を行った結果、肩書がゴミに等しい事をさぞ実感したでしょう。バキバキに折れたプライドを再構築させるには、とても良い手段だったと思いますよ? 脱落者が出てない事が驚きではありますが、実地で使い物にならなければクビですからね」
私は少なからず愛着はあるのだが、この点はアンナはシビアだ。
使い物にならないと思ったら即切る。
「強化合宿に耐えられたなら、Cremaの本採用に落ちても、騎士や冒険者になれると思うけどさ? 平均レベル150台なら問題ないでしょう」
今回も、大物の入れ食いオンパレードだった。
必然的にレベルは上がるし、連帯感も強固になった。
本採用は、全員パスするだろう。
「実務面では、私達が担当します。宥子様は、暫く書類仕事に専念して下さい」
「了解。で、どれくらい扱く予定なのさ?」
「一週間くらい基礎を叩き込みます。そこで適正判断して、どの部署にも適正なしと判断されたら解雇ですね」
結構シビアな回答が返ってきた。
日本だと半年の猶予があるのに、サイエスでは一週間の猶予しか貰えないとは……。
でも、ここで下手に口を挟んだら国外行きも危うくなるので口を噤む。
「神職系の面子は揃って育ってるん?」
「そちらは容子様が指導してくれてますので大丈夫です」
「さよか」
容子も、安月給で馬車馬のように働かされてご愁傷様だ。
特別手当はでないけど、これも仕事ガンバレ! と心の中で応援した。
どこの軍隊だと思うような規律と行動の徹底ぶりに、Cremaは一体どこへ向かっているんだろうか。
この強化合宿で新たなスキルを手に入れた者もいた。
前回同様、モンスターの入れ食い状態で捌くのが大変だった。
ステータスは『幸運』と表示されているが、悪運の間違いじゃなかろうか。
相変わらず、事務作業もしっかり回される徹底ぶりに辟易した。
アンナ、お前は鬼だ!
迎えに来て来てもらうのも面倒だったので、全員に目隠しさせて、サイエスの自宅の鍵を取出し一瞬で帰宅という荒業を使った。
だって、帰りまでモンスターに襲われるのは嫌すぎる。
お蔭で素材も溜まり経験値も美味しく頂いたが、その代償は大きかった。
私の貴重な睡眠時間とガリガリと削られた精神力が対価だよ!
「ただいま~。疲れたぁ~」
動きたくないで御座る、と大広間のフロアでウンコ座りする私に対し、ニックが苦笑している。
「お疲れ様です。でも、そんな恰好していると他の面々に示しがつきませんよ」
「別に気にしない」
地べたに胡坐をかきながら、くるりと後ろを振り向いた。
地獄の強化合宿に全員生還したことは喜ばしい。
「皆、お疲れさま。諸君、第一関門突破おめでとう。全員生還で戻って来れたのは喜ばしいが、まだ仮雇用中です。次は、実務の第二関門が待ってます。これから希望の配属先と名前を紙に書いて、この箱の中に入れて下さい。一週間の休暇後に、各部署に配置されます。必ずしも希望の場所に配置になるとは限りません。適正と照らし合わせて配属するので、辞退なら配置から三日以内にするように。では、以上。解散!」
「「「「「はい!」」」」」
ビシッと両足を揃えて直立する彼らは、もはや軍人と言っても良いのではなかろうか。
サーッと人が去って、私はそのままゴロンと寝ころんだ。
紅唐白が、私のお腹に陣取っているが気にしない。
「ニックも一週間休暇を満喫しておいで」
「ヒロコ様は、どうされるんですか?」
「アンナに引継ぎして、最初に鍛えた一期生の進捗具合の確認と正規雇用有無の決済が待ってる」
休みを取ったら仕事は溜まる。
しかし、休みを取らなかったら馬車馬のように扱き使われる。
こんな事なら、アンナを雇われ社長に据えて経営を丸投げしたら良かった。
いや、逆に今より低賃金で働かせる可能性があるな。
本当、社長に優しくないブラックな会社だよ。
「程々になさって下さいね」
苦笑いをしながら部屋に戻るニックに対し恨みがましい視線を送った後、少し休憩してから紅唐白を抱っこして自分の執務室へと向かった。
<アンナ、今帰った>
<聞こえてましたよ。執務室にいるので来て下さい>
<了解>
面倒臭いなぁと思いつつも、執務室に足を運んだ。
執務室の扉を開けて、大量の書類の山に思わず無言で閉じた。
「何現実逃避しているんですか。さっさと入室して仕事して下さい」
バタンと扉が開き、私の腕を掴んでずりずり引きずりながら無理やり椅子に座らされた。
「行きよりも書類の数が半端ないんやけど!」
「日本とこちらの書類が溜まってますからね」
「アンナも私と同等のに決裁権持ってるじゃん。そっちで捌けよ」
「給与分の仕事はしております」
ノー残業だと言い切る彼女に、グヌヌヌッと何も言い返せなかった。
「これからハルモニア王国全土に神社を建て捲るんでしょう。だったら、しっかりキリキリ働いて下さい」
「人参もないのに馬は動かない。私は、今しがたまで馬車馬のように働いてきた!」
これ以上は無理と泣き言を言えば、アンナに鼻で嗤われた。
「言い出しっぺが何を言っているんですか。最後までキッチリして下さい」
「もう嫌だ~。強化合宿から帰ってきて、更に仕事なんて! 鬼、悪魔!!」
「これも崇高なる[[rb:理念 > おかね]]の為です。睡眠時間五時間差し上げたじゃないですか」
書類整理に時間が掛るのを見越しての犯行だったのか!
やっぱりアンナは鬼だ。
今度から銭ゲバではなく鬼婆と呼んでやる。
「今何か失礼なことでも考えましたか?」
威圧してくるアンナに、私は冷や汗を垂らしながら誤魔化した。
「別に何も考えてないし。この書類の山を片付けないとね」
書類を手に取りザッと中身を流し見して、各種ボックスの中に入れて行く。
重要案件、通常案件、緊急案件、クソ案件と分類している。
クソ案件は、勿論決済が下りるはずもなく却下のハンコが押されて終了。
緊急案件は、翌日各担当者を呼んで打ち合わせをする。
普通案件は後回しで、重要案件も緊急案件と並行して処理を行う。
此処のところ、強化合宿と一緒に書類整理もしていたので新たなスキル並列思考を取得していた。
並列思考のお蔭で書類整理も格段と早くなったが、全然嬉しくない。
アンナがそれを見越してガンガン仕事を取ってくるので休む暇がない。
「何時になったら王都を出られるんだろう……」
「今日戻って来た面子が、実際に使い物になるようればですね。貴族出も強化合宿を行った結果、肩書がゴミに等しい事をさぞ実感したでしょう。バキバキに折れたプライドを再構築させるには、とても良い手段だったと思いますよ? 脱落者が出てない事が驚きではありますが、実地で使い物にならなければクビですからね」
私は少なからず愛着はあるのだが、この点はアンナはシビアだ。
使い物にならないと思ったら即切る。
「強化合宿に耐えられたなら、Cremaの本採用に落ちても、騎士や冒険者になれると思うけどさ? 平均レベル150台なら問題ないでしょう」
今回も、大物の入れ食いオンパレードだった。
必然的にレベルは上がるし、連帯感も強固になった。
本採用は、全員パスするだろう。
「実務面では、私達が担当します。宥子様は、暫く書類仕事に専念して下さい」
「了解。で、どれくらい扱く予定なのさ?」
「一週間くらい基礎を叩き込みます。そこで適正判断して、どの部署にも適正なしと判断されたら解雇ですね」
結構シビアな回答が返ってきた。
日本だと半年の猶予があるのに、サイエスでは一週間の猶予しか貰えないとは……。
でも、ここで下手に口を挟んだら国外行きも危うくなるので口を噤む。
「神職系の面子は揃って育ってるん?」
「そちらは容子様が指導してくれてますので大丈夫です」
「さよか」
容子も、安月給で馬車馬のように働かされてご愁傷様だ。
特別手当はでないけど、これも仕事ガンバレ! と心の中で応援した。
応援ありがとうございます!
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