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ハルモニア王国 王都
77.神託を受ける
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新幹線で名古屋に向かっている途中で、神託1を30まで上げた。
勝手にスキルポイント使ったけど、これもあのビルを購入するために必要な事だと事後承諾させよう。
名古屋で電車を乗り換えて伊勢神宮に着いたのは、15時を回った頃だった。
外宮を回り、内宮を回る頃には逢魔が時と云われる時間帯だった。
皇大神宮に着いた瞬間、目の前が真っ白になった。
どこもかしこも白い。
サイエスに行くことになった諸悪の根源と似た空間だが、白い空間はとても暖かい。
嫌な感じはしなかった。
「わたくしの声は聞こえますか?」
神々しいまでの光の玉から、鈴の音を転がしたような声が聞こえてきた。
「は、はい」
思わず背筋がピンッとなる。
「そなたの事は見ておりました。最近、我が子らが消える現象が多発しておったのです。原因が掴めず、そなたのお陰で原因が掴めました」
あの邪神、私の他にも召喚していたのか!
ニュースになってないだけで、相当やらかしたんだな。
口を利くのはかなり不敬かもしれないが、
「発言をお許し頂けますか?」
と聞いてみた。
「許しましょう」
「ありがとう御座います。須佐之男命様、櫛稲田姫命様の加護をありがとう御座います。私契約した者にも同様の加護をお与え下さったこと平に感謝致します」
「わたくしの加護はあまりにも大きいのでな。そなたが祀っていた者の加護を与えるようにしたのだ」
「日を改めて須佐之男命様、櫛稲田姫命様に直接お礼を申し上げに参ります」
「そうするがよい」
神棚にお礼は言ったが、神社まで足を運んで直接お礼は言ってない。
早急に参拝しに行かなくてはならないな。
「はい、早急に伺わせて頂きます。後、諸悪の根源をこの手で葬りたいと考えております。ただ、この世界とサイエスの世界での生活基盤を整える必要です。そこで、元は姫嶋神社の分社が祀られていた跡地のビルを購入することをお許し頂きたいのです。阿迦留姫命様とその神使である蛇様も、ビルの屋上に丁重にお祀り致します」
「……人の営みには疎いが、それが必要というのであれば是。許す。阿迦留姫命には、わたくしから良くするようにと申しつけておこう」
「ありがとう御座います」
許可が得れてホッとする。
「ただ、阿迦留姫命の神使も急に住処を壊されたのじゃ。怒りは収まらぬやもしれぬ」
「お怒りはごもっともです。その怒りは、私だけに向けて頂けませんでしょうか?」
「そなたにか? 何も関係ないのに何故だ?」
「壊された社の上に建つビルに居を構える家長として、私だけに怒りの矛先を向けて頂ければ、これ以上神使様を悪しく言うものは現れません」
神使が、自ら評判を落とすのは不憫だ。
神使が蛇であることも、親近感があるのだ。
家族に蛇がいるしね。
私は、この先結婚することもないし、子孫を残すこともないだろう。
Cremaが存続する限りは、私に万が一な事があっても社員が社を大切にしてくれるだろうという打算がある。
「恨みを肩代わりするその心意気や良し。あい、分かった。その願い聞き届けようぞ。蛇の恨みは粘質ぞ。大丈夫か?」
「大丈夫ですとは言えませんが、話し合いが出来るのであればお酒を飲みかわせるまで改善できるよう努めたいと存じます」
私の言葉に、天照大御神はクスクスと鈴の音が鳴るような声で笑う。
「ほんに面白い。やってみるがよい。心を通わせられれば、それは何れそなたの力になろうぞ」
「精進します」
「いかんな。これ以上留めるとそなたに影響が出る。そなたの決意しかと受け止めた。これを渡そう。それを祀るがよい。旨い酒と共にな」
手のひらサイズの翡翠の勾玉がポトリと手の中に落ちてきた。
その瞬間、グラッと意識が飛びかけて慌てて踏ん張ると皇大神宮があった。
「…コ……ヒロ……ヒロコ様、大丈夫ですか? いきなりボーッとなされたので心配しました」
ハッと手の中を見ると、拳よりも一回り小さい翡翠の勾玉があった。
あそこは神域で、神託の力で呼ばれたのか。
「大丈夫。神託が下りただけだから」
「それは、アマテラス様のことですか?」
「天照大御神様だよ。ビルの事も許可を貰ったからね。後は、購入して豪華なお社をビルの屋上に建てる。その前に、みんなで神社へ行って加護のお礼をしに行かないとね」
やる事はいっぱいだと笑えば、
「色々非常識な人だと思いましたけど、神託を貰える人がヒロコ様だとなんか納得してしまいました」
とちょっと失礼な事を言われた。
拡張空間ホームに勾玉を仕舞い、皇大神宮に一礼してその場を後にした。
自宅に戻ると、買い物から戻った容子がゲッソリとした顔をしていた。
アンナの時も一通り揃えるのに結構な金額を使ったから、二人分となると時間もお金も要しただろう。
「お疲れ様。ゲッソリした顔しているけど、大丈夫か?」
「あー、うん……。ワウルは、店員さんに丸投げで良かったのに、イザベラが……」
「何があった?」
「センスが、死ぬほど悪い。もうね、色んな意味で残念過ぎて。軌道修正しようにも、ガンとしてこれが良いって聞かないのよ。悪趣味な服、痛パソコン、痛スマホ。本気でないわー」
呪詛の様に恨み節を吐かれて見せられたイザベラの戦利品を見せられ、思わずウッと言葉に詰まった。
ハーフタレント並みに可愛いのに、アニオタ系の趣味で固められていた。
「えーっと……室内なら良いんじゃない? 外出用は別に買うか、あんたが作れ」
「そうする」
ゲッソリとした顔で私の提案に、容子が即答する辺り相当懲りたんだなと思った。
容子と話していたら、丁度スマートフォンに着信が入った。
電話に出ると、今日会った不動産の人からだった。
「はい、琴陵です」
『●×不動産の渡です。例のビルの件なんですが、3000万円でOKが出ました』
「じゃあ、明日伺いますので書類の用意お願いします。現金用意しておきます」
『分かりました。でも、本当に良いんですか?』
「大丈夫です。宜しくお願いしますね」
『分かりました。では、明日宜しくお願いします』
「はい」
ピッと電話を終えると、容子が何の電話かと聞いてきたので、曰く付きのビルを購入したと言ったら罵られた。
「馬鹿だろう! 何でそんな恐ろしい物購入するかなぁ!!!」
「安いし、立地も良いし、交通の便も良かったから。ちゃんと伊勢まで行って、天照大御神様にお伺い立ててOK貰ったから何とかなるでしょう」
拡張空間ホームから翡翠の勾玉を取り出して見せると、容子の態度が一変した。
「ほぉぉぉーわぁぁぁー! 何これ、超神々しいんですけど」
「そりゃ、神様から直接貰ったものだからな。明日、神社に皆で行って貰った加護のお礼するよ。で、姫嶋神社にも行って非礼と神社再建の報告をしに行く。明日から忙しくなるから覚悟するように」
「神社の再建ってどこにすんの?」
「ビルの屋上。挨拶が済んだら、ビルの内装工事のを担当する工務店とは別に、宮大工に社建設の依頼する。それまでは、簡易のお社を最上階に設置してお祀りするから。容子は、神薙のスキル取得して、レベル30まで上げるように。地鎮祭が行われる間は、容子が神主の代わりが出来るようにしとけよ」
「何ちゅう無茶ぶり!!」
「私は、方々を駆けまわるから忙しい。使えるものは使うのが、琴陵家のルール。社が完成したら、ちゃんと姫嶋神社から神主さん呼ぶから安心しろ」
「全然安心出来んわぁー!」
と絶叫されたが、勿論無視した。
それから何やかんやあって、無事に社も建ちビルへお引越しする事になった。
勝手にスキルポイント使ったけど、これもあのビルを購入するために必要な事だと事後承諾させよう。
名古屋で電車を乗り換えて伊勢神宮に着いたのは、15時を回った頃だった。
外宮を回り、内宮を回る頃には逢魔が時と云われる時間帯だった。
皇大神宮に着いた瞬間、目の前が真っ白になった。
どこもかしこも白い。
サイエスに行くことになった諸悪の根源と似た空間だが、白い空間はとても暖かい。
嫌な感じはしなかった。
「わたくしの声は聞こえますか?」
神々しいまでの光の玉から、鈴の音を転がしたような声が聞こえてきた。
「は、はい」
思わず背筋がピンッとなる。
「そなたの事は見ておりました。最近、我が子らが消える現象が多発しておったのです。原因が掴めず、そなたのお陰で原因が掴めました」
あの邪神、私の他にも召喚していたのか!
ニュースになってないだけで、相当やらかしたんだな。
口を利くのはかなり不敬かもしれないが、
「発言をお許し頂けますか?」
と聞いてみた。
「許しましょう」
「ありがとう御座います。須佐之男命様、櫛稲田姫命様の加護をありがとう御座います。私契約した者にも同様の加護をお与え下さったこと平に感謝致します」
「わたくしの加護はあまりにも大きいのでな。そなたが祀っていた者の加護を与えるようにしたのだ」
「日を改めて須佐之男命様、櫛稲田姫命様に直接お礼を申し上げに参ります」
「そうするがよい」
神棚にお礼は言ったが、神社まで足を運んで直接お礼は言ってない。
早急に参拝しに行かなくてはならないな。
「はい、早急に伺わせて頂きます。後、諸悪の根源をこの手で葬りたいと考えております。ただ、この世界とサイエスの世界での生活基盤を整える必要です。そこで、元は姫嶋神社の分社が祀られていた跡地のビルを購入することをお許し頂きたいのです。阿迦留姫命様とその神使である蛇様も、ビルの屋上に丁重にお祀り致します」
「……人の営みには疎いが、それが必要というのであれば是。許す。阿迦留姫命には、わたくしから良くするようにと申しつけておこう」
「ありがとう御座います」
許可が得れてホッとする。
「ただ、阿迦留姫命の神使も急に住処を壊されたのじゃ。怒りは収まらぬやもしれぬ」
「お怒りはごもっともです。その怒りは、私だけに向けて頂けませんでしょうか?」
「そなたにか? 何も関係ないのに何故だ?」
「壊された社の上に建つビルに居を構える家長として、私だけに怒りの矛先を向けて頂ければ、これ以上神使様を悪しく言うものは現れません」
神使が、自ら評判を落とすのは不憫だ。
神使が蛇であることも、親近感があるのだ。
家族に蛇がいるしね。
私は、この先結婚することもないし、子孫を残すこともないだろう。
Cremaが存続する限りは、私に万が一な事があっても社員が社を大切にしてくれるだろうという打算がある。
「恨みを肩代わりするその心意気や良し。あい、分かった。その願い聞き届けようぞ。蛇の恨みは粘質ぞ。大丈夫か?」
「大丈夫ですとは言えませんが、話し合いが出来るのであればお酒を飲みかわせるまで改善できるよう努めたいと存じます」
私の言葉に、天照大御神はクスクスと鈴の音が鳴るような声で笑う。
「ほんに面白い。やってみるがよい。心を通わせられれば、それは何れそなたの力になろうぞ」
「精進します」
「いかんな。これ以上留めるとそなたに影響が出る。そなたの決意しかと受け止めた。これを渡そう。それを祀るがよい。旨い酒と共にな」
手のひらサイズの翡翠の勾玉がポトリと手の中に落ちてきた。
その瞬間、グラッと意識が飛びかけて慌てて踏ん張ると皇大神宮があった。
「…コ……ヒロ……ヒロコ様、大丈夫ですか? いきなりボーッとなされたので心配しました」
ハッと手の中を見ると、拳よりも一回り小さい翡翠の勾玉があった。
あそこは神域で、神託の力で呼ばれたのか。
「大丈夫。神託が下りただけだから」
「それは、アマテラス様のことですか?」
「天照大御神様だよ。ビルの事も許可を貰ったからね。後は、購入して豪華なお社をビルの屋上に建てる。その前に、みんなで神社へ行って加護のお礼をしに行かないとね」
やる事はいっぱいだと笑えば、
「色々非常識な人だと思いましたけど、神託を貰える人がヒロコ様だとなんか納得してしまいました」
とちょっと失礼な事を言われた。
拡張空間ホームに勾玉を仕舞い、皇大神宮に一礼してその場を後にした。
自宅に戻ると、買い物から戻った容子がゲッソリとした顔をしていた。
アンナの時も一通り揃えるのに結構な金額を使ったから、二人分となると時間もお金も要しただろう。
「お疲れ様。ゲッソリした顔しているけど、大丈夫か?」
「あー、うん……。ワウルは、店員さんに丸投げで良かったのに、イザベラが……」
「何があった?」
「センスが、死ぬほど悪い。もうね、色んな意味で残念過ぎて。軌道修正しようにも、ガンとしてこれが良いって聞かないのよ。悪趣味な服、痛パソコン、痛スマホ。本気でないわー」
呪詛の様に恨み節を吐かれて見せられたイザベラの戦利品を見せられ、思わずウッと言葉に詰まった。
ハーフタレント並みに可愛いのに、アニオタ系の趣味で固められていた。
「えーっと……室内なら良いんじゃない? 外出用は別に買うか、あんたが作れ」
「そうする」
ゲッソリとした顔で私の提案に、容子が即答する辺り相当懲りたんだなと思った。
容子と話していたら、丁度スマートフォンに着信が入った。
電話に出ると、今日会った不動産の人からだった。
「はい、琴陵です」
『●×不動産の渡です。例のビルの件なんですが、3000万円でOKが出ました』
「じゃあ、明日伺いますので書類の用意お願いします。現金用意しておきます」
『分かりました。でも、本当に良いんですか?』
「大丈夫です。宜しくお願いしますね」
『分かりました。では、明日宜しくお願いします』
「はい」
ピッと電話を終えると、容子が何の電話かと聞いてきたので、曰く付きのビルを購入したと言ったら罵られた。
「馬鹿だろう! 何でそんな恐ろしい物購入するかなぁ!!!」
「安いし、立地も良いし、交通の便も良かったから。ちゃんと伊勢まで行って、天照大御神様にお伺い立ててOK貰ったから何とかなるでしょう」
拡張空間ホームから翡翠の勾玉を取り出して見せると、容子の態度が一変した。
「ほぉぉぉーわぁぁぁー! 何これ、超神々しいんですけど」
「そりゃ、神様から直接貰ったものだからな。明日、神社に皆で行って貰った加護のお礼するよ。で、姫嶋神社にも行って非礼と神社再建の報告をしに行く。明日から忙しくなるから覚悟するように」
「神社の再建ってどこにすんの?」
「ビルの屋上。挨拶が済んだら、ビルの内装工事のを担当する工務店とは別に、宮大工に社建設の依頼する。それまでは、簡易のお社を最上階に設置してお祀りするから。容子は、神薙のスキル取得して、レベル30まで上げるように。地鎮祭が行われる間は、容子が神主の代わりが出来るようにしとけよ」
「何ちゅう無茶ぶり!!」
「私は、方々を駆けまわるから忙しい。使えるものは使うのが、琴陵家のルール。社が完成したら、ちゃんと姫嶋神社から神主さん呼ぶから安心しろ」
「全然安心出来んわぁー!」
と絶叫されたが、勿論無視した。
それから何やかんやあって、無事に社も建ちビルへお引越しする事になった。
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