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セブール
34.商業ギルドで稼ぎます
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おはよう御座います。
朝です!
今日は、初めての商談なので気合を入れました。
入れまくって、お高めのスーツとパンプスでビシッと決めてみました。
オーダーメイドとまではいかないが、24区のスーツです。
童顔なので、大人っぽく見えるようにお化粧もバッチリですよ。
就活っぽくないように、お洒落可愛めなのがポイントだ。
商談は、見た目が第一。
第一印象は、とても大事なのですよ。
化粧品も売りたいので、先日登録した時の格好とはガラリと印象を変えてみた。
今日は、お気に入りのミュンミュンの黒いトートバッグだ。
使い込んでいるので状態は良くないけど、ビジネスシーンに合わせて使用している。
愛用のブランドバッグの中には、蛇達とサクラが中に入っている。
鞄は硬いが、強度はある。
商談が終わるまでは、彼らには大人しく待って貰うしかないだろう。
全身ブランドで固めて、いざ商業ギルドへ出陣と思ったら容子に出鼻を挫かれた。
「折角来たんだから、町の中見てみたい!!」
「お前、地図持って無いでしょう。絶対、憲兵のお世話になるから却下」
地図買うにはスクロールがいるし、金貨単位での支払いになる。
地図の共有化が出来たら一番楽だし経済的にも優しいが、果たしてそれは出来るんだろうか?
いや、スクロールの使いまわし自体が無理だから考えずとも無理だろう。
スクロールに干渉できれば、その限りではないのだろうが、生憎魔法の知識はゼロと言っても過言ではない。
何事にも地道にするのが一番である。
「必要事項や現在地を教えるのに、念話使えば良いじゃない」
「商談中に、そんな器用な真似が出来るか!」
「商談に乗り込んでやる!」
何を言い出すかと思ったら、容子がアホなことを宣った。
商談をぶち壊す気か?
「……どうしても散策したいなら、気配消して隠密で観光巡りしてろ。隠密効果で姿を悟られないから、最悪道に迷ってもググル先生の地図で検索すれば道案内してくれるよ」
投げやりに言うと、容子は素直に頷いた。
「うぃっす」
容子の念話発言は、彼女が道に迷った場合に有効な手段の一つである。
念話スキルを取得しているに使わないのは勿体ない。
私からの念話による呼びかけはOKにした。
理由は、二つある。
一つは、判断に迷いが生じる自体が起こった場合だ。
今回の商談は、ほとんど纏まっているが何が起こるか分からない。
保険である。
二つ目は、容子が町を散策するついでに市場調査をして貰う。
売り筋の商品や、珍しい商品を容子の目で見て価値があるかどうか判断して貰いたい。
私よりも容子の審美眼は、信用して良いと思っている。
センスも良いし、異世界の文化に触れることでインスピレーションを受けるかもしれない。
そういう期待も込めて、念話に関しては制限付きで許可を出した。
私はというと、ミュンミュンのトートバッグを担いで商業者ギルドの門を叩いた。
受付カウンターに立っているお姉さんに声をかける。
「すみません。アンナさんは、いらっしゃいますかか? ヒロコと申します。商品が入荷しましたので、お届けに参りました」
受付嬢に伝えると、内線でゴニョゴニョ話している。
内線を使うということは、アンナはギルド内でも上の立場の人間かもしれない。
数分後待たされ、アンナが現れる。
通された部屋は、前回より豪華な部屋だった。
完全にVIP待遇ですね。
「砂糖10キロ・塩10キロ・胡椒は1瓶、空の硝子瓶10本になります」
テーブルの上に、注文された商品と硝子瓶を置くとアンナは、
「見せてもらいますね」
と断りを入れて、鑑定を使って真偽を調べている。
「確認出来ました。これほど良質なものを卸して頂けるなんて光栄です。塩は不足しておりましたので10kgを金貨25枚、砂糖は貴重なのでこちらも10kgで金貨35枚、胡椒は金貨60枚で合計金貨120枚になります。大口だと白金貨に替えることも出来ますが、如何なさいますか?」
まずまずの売上だ。
大金を持ち歩くと、ゴロツキに絡まれる。
ここは、預金一択でしょう!
「全部預けます。貯金することで何かメリットはありますか?」
「年会費が1割ほど安くなります。ヒロコ様のように仲介なしで良い商品を取引するとなれば、買取費用も抑えられてギルドとしては満足です」
私の商売は、それをメリットとして売り出している。
元は大幅に取れているので、目先の欲に囚われるのは商売人として三流だ。
値崩れがしない程度に販売しつつ、容子に書かせた料理レシピを執筆して売りに出すのも良いだろう。
正直、サイエスのご飯は不味い。
容子は、散策の最中に飲み食いしてガッカリするが良い。
私は、ここからが本番と言わんばかりに声のトーンを低くして内緒話をするかのように話す。
「試作品なのですが、基礎化粧品と石鹸を作ってまして。そちらも売れるか相談に乗って頂きたいんですが、構いませんか?」
「基礎化粧品とは何でしょうか?」
基礎化粧品の言葉に想像がつかないのか、アンナは頭に? マークを乱舞させている。
初めて就職することが決まった時に、久世師匠から化粧道具一式餞別で貰った記憶がある。
「美を追求した物です」
自作化粧水・乳液・100円ショップの美容液、固形石鹸と泡立てネット。
これらをアイテムボックスか取出して、テーブルの前に並べた。
瓶は、容子が作ったお洒落な小瓶に詰め変えられている。
「アンナさんは、今化粧をされていますね。実際に試してみましょう」
「化粧を落とすんですか?」
「はい。まずは、このクレンジングオイルで白粉などの化粧を落とします。あまりゴシゴシ擦らなくて大丈夫です。撫でるように気になる部分をマッサージしてみて下さい」
クレンジングオイルが全体にいきわたり、人肌ほどの温かさになると水を少しずつ加えてマッサージ。
「マッサージすること5分で顔全体が白っぽくなってきたら不要なものが取れている証ですよ」
アンナさんは、小鼻と目元が気になるみたいだ。
アイテムボックスからタオルと桶を取り出し、桶には魔法で氷水を生成し注ぐ。
「そのまま水か、ぬるま湯で乳化したオイルを流します。しっかり流したら、このネットで石鹸を泡立てます」
ネットで石鹸をゴシゴシ擦ると、ふわふわの泡が出来る。
きょーじ屋で作られたきめ細やかな泡が出来るので、プレゼンには丁度良い。
普通の石鹸でも綺麗に泡立ってくれてホッとしたよ。
「顔をマッサージするように泡を塗ります。この小さなブラシは、小鼻や気になる場所を軽く撫でると汚れがごっそり落ちます。軽く筆を肌に滑らせるようにくるくる円を描くように回してください。気になる部分は念入りにして大丈夫です。洗い終わったら、しっかりと泡をお水で落としてください」
アンナは、指示に従いザバザバと顔に水を掛けて泡を落としている。。
泡が残りやすい部分は、撫でるように落とすのがコツだ。
「洗い上がりが、こんなにスッキリするとは思わなかったわ。それに良い香りだし、肌も突っ張らない」
テンションが上がっているのか、商品の感想を熱弁している。
でもね、まだあります。
「洗顔後に付けるのが、この化粧水・乳液・美容液です! 化粧水は、金貨1枚分くらいの大きさを5~6回に分けて顔に浸透させるように塗ります。コットンに染み込ませて使う方法もあります。パチパチとパッティングするのも良いですよ。乳液は顔全体に、美容液は気になる部分に塗り込むと効果的です」
実演販売をしてみると、徐々に食いつきが凄くなってきた。
美に対する執着は、世界を超えても県債のようだ。
「これだけの物をそろえるとなると、相当お金がかかりそうですね。貴族中心に販売されるんですか?」
「いえ、一般人を中心にします。調合スキルを持ってますので、基礎化粧品を作るのは材料さえあれば簡単です。入れ物が高いので多少値ははりますが、化粧水銀貨8枚・乳液金貨1枚・美容液金貨1枚と銀貨5枚でどうでしょうか。使い終わったボトルを持ち込みされるなら、その分を1割引きしようかと考えています。貴族様用には、入れ物が凝った作りになるのと中身もワンランク上の物になります。化粧水金貨1枚・乳液金貨2枚・美容液金貨3枚を予定しています。石鹸は1つ銀貨1枚です。花の香を楽しみたい方は、専用の石鹸があるので1つ銀貨3枚でと考えています」
貴族用の装飾品の箱は、容子に作らせれば良い。
鍛冶スキルの熟練度アップにも繋がるしね!
「この石鹸でも銀貨1枚はするのに!! 安くないですか?」
取り出されたサイセス産石鹸(劣)を出されて、石鹸の認識をまず変えたい! と切に思った。
「良い品は万人の手に渡ってこそ、利益が上がります。一人の貴族よりも千人の一般人の方が、お金儲けしやすいのです。勿論、商品ですみ分けはさせて頂きますが」
貴族に一個売っても、一般人に百個売った方が利益が上がる。
経済は一般人で回っていると言っても過言ではないのだ。
「これらは個人差があります。人によっては、逆に肌トラブルを起こす可能性あります。宜しければ、アンナさんが実際に使用してみて、商品化しても問題ないと思ったら売り出しましょう。後、髪を美しくする洗髪料と髪のを整えるコンディショナーがあります。シャンプーと言いまして、これをサクランボ大の大きさを出して髪を洗って下さい。汚れが酷い時は泡立たないので、泡立つまで洗って下さい。その後、軽く髪の水分を切ってコンディショナーを塗ります。5分ほど放置して洗い流して下さい。そうすれば、美髪が手に入りますよ。流石にシャンプーとコンディショナーの実演は出来ないので、サンプルとして1カ月ほど持つ容器に入れたボトルを渡しますね」
「美髪……良いんですか?」
基礎化粧品でうっとりしていたので、更に美髪が手に入るとなると食いつきが違う。
「ええ、是非使って感想を聞かせて下さいね」
「ありがとう御座います」
ガシッと両手を掴まれて凄く感謝された。
基礎化粧品が浸透したら、100円ショップのコスメを提案してみよう。
私は、自分の分だけ確保出来れば良い。
品質はサイエスに比べれば、断然良いのだ。
中身が変わっても問題なかろう。
「これも宜しければ使って下さい」
大きなバニティポーチを手渡す。
マチがあって大容量で使いやすい代物だ。
容子に雑誌の付録を処分するように言われていたので、コネを作るためにも渡してみたら喜ばれた。
「凄く可愛いですね、見たことのない布地です。縫製もしっかりしてますし。なによりこの金具を引くと開閉ができるなんて画期的です! これは、特許申請しましょう」
薬師ギルドの婆に渡した時と似た反応が返ってきた。それよりも熱意を感じるのは気のせいと思いたい。
「特許のことは分からないのでお願いしても良いですか?」
「はい! もし予備があるならサンプルとして貰っても良いですか?」
ポーチは腐るほどあるので、キャラクターが描かれたものを渡したら、これも素敵と叫ばれた。
アンナは外見こそ出来るバリキャリ風だけど、実は可愛い物好きなのかもしれない。
「化粧水などはひと月分あるので試しに使ってみて下さい」
「ありがとう御座います。良い商談を」
握手を交わし終えて、商談がやっと終わった! と思ったら、何故か容子が商業ギルドに来ていた。
受付でエリーゼさんの紹介だと喚いている、紹介状らしいものはないので受付嬢も対応に困っているようだ。
「アンナさん、あそこにいるの私の妹なんですけど誰かに紹介されてここに来たみたいですね」
「ヒロコ様の妹さんですか。少し、お話を伺って参りますね」
アンナは、受付で揉めている二人のところに割り込んでいった。
そして、容子を連れて私のところに戻ってきた。
「エリーゼ様からの紹介と仰られているのですが、紹介状などはお持ちではないとのことで対応に困っているんです」
「妹よ、そのエリーゼ様って人の紹介で来たなら紹介状の一つくらい貰っておきなよ」
「名前を言えば分かると言われたんだもん。私だって、紹介状を書いて貰いたかった」
困った顔で答える妹に、嘘はないと判断した。
「何が切欠で紹介の話になったのさ」
「街で美味しいって言われているカフェに入って試作品広げてたら人が集まってきてさ。その時に助けて貰ったの」
装飾品も作っていたのかな?
「アンナさん、妹の作品も見て貰えませんか?」
「ヒロコ様の頼みであれば構いませんよ」
快く承諾してくれてありがとう!!
先程のVIP室に逆戻りして、容子に試作品とやらを出すように言った。
出るわ出るわ試作品の数々。以前狩った素材も使われているじゃないか!
こいつ、素材をぱちっていたな!!
「これは、匠の域ですね。どれも美しく目移りしそうですね」
女性向けを意識したアクセサリーは、売れると確信し売り込みをしてみた。
「どの作品にも刻印が押されていますので一点ものになります。高レベルのモンスターの素材を使っているので、販売するとなると富裕層がターゲットになると思います」
「容子は無名なので、高額では売れないでしょう。ですので、個数限定で一般人に販売し話題作りをしてから、指名依頼という形でオリジナルのアクセサリーを受注するのはどうでしょう? 受付の皆さんから反応を見たいと思います。今回限りということで、格安で販売しますので宣伝お願いします」
私の提案に、アンナは頷いた。
「少し、こちらを持って行っても良いですか。相談してきます」
容子作のアクセサリーを受付カウンターで仕事している受付嬢達に見せている。
キャーキャーいう声が聞こえるので、反応は良い感じだ。
「容子、最低どれくらいで売りたいの?」
「金貨1枚かな。損して元取れって言うしね」
「了解!」
戻ってきたアンナが受付嬢達の了解も取り付けたということで、今回に限り金貨1枚で購入出来るようにした。
52個のアクセサリーを売り捌き、その後ジワジワとアクセサリー作家『容子』の名前がサイエス内に広がっていった。
朝です!
今日は、初めての商談なので気合を入れました。
入れまくって、お高めのスーツとパンプスでビシッと決めてみました。
オーダーメイドとまではいかないが、24区のスーツです。
童顔なので、大人っぽく見えるようにお化粧もバッチリですよ。
就活っぽくないように、お洒落可愛めなのがポイントだ。
商談は、見た目が第一。
第一印象は、とても大事なのですよ。
化粧品も売りたいので、先日登録した時の格好とはガラリと印象を変えてみた。
今日は、お気に入りのミュンミュンの黒いトートバッグだ。
使い込んでいるので状態は良くないけど、ビジネスシーンに合わせて使用している。
愛用のブランドバッグの中には、蛇達とサクラが中に入っている。
鞄は硬いが、強度はある。
商談が終わるまでは、彼らには大人しく待って貰うしかないだろう。
全身ブランドで固めて、いざ商業ギルドへ出陣と思ったら容子に出鼻を挫かれた。
「折角来たんだから、町の中見てみたい!!」
「お前、地図持って無いでしょう。絶対、憲兵のお世話になるから却下」
地図買うにはスクロールがいるし、金貨単位での支払いになる。
地図の共有化が出来たら一番楽だし経済的にも優しいが、果たしてそれは出来るんだろうか?
いや、スクロールの使いまわし自体が無理だから考えずとも無理だろう。
スクロールに干渉できれば、その限りではないのだろうが、生憎魔法の知識はゼロと言っても過言ではない。
何事にも地道にするのが一番である。
「必要事項や現在地を教えるのに、念話使えば良いじゃない」
「商談中に、そんな器用な真似が出来るか!」
「商談に乗り込んでやる!」
何を言い出すかと思ったら、容子がアホなことを宣った。
商談をぶち壊す気か?
「……どうしても散策したいなら、気配消して隠密で観光巡りしてろ。隠密効果で姿を悟られないから、最悪道に迷ってもググル先生の地図で検索すれば道案内してくれるよ」
投げやりに言うと、容子は素直に頷いた。
「うぃっす」
容子の念話発言は、彼女が道に迷った場合に有効な手段の一つである。
念話スキルを取得しているに使わないのは勿体ない。
私からの念話による呼びかけはOKにした。
理由は、二つある。
一つは、判断に迷いが生じる自体が起こった場合だ。
今回の商談は、ほとんど纏まっているが何が起こるか分からない。
保険である。
二つ目は、容子が町を散策するついでに市場調査をして貰う。
売り筋の商品や、珍しい商品を容子の目で見て価値があるかどうか判断して貰いたい。
私よりも容子の審美眼は、信用して良いと思っている。
センスも良いし、異世界の文化に触れることでインスピレーションを受けるかもしれない。
そういう期待も込めて、念話に関しては制限付きで許可を出した。
私はというと、ミュンミュンのトートバッグを担いで商業者ギルドの門を叩いた。
受付カウンターに立っているお姉さんに声をかける。
「すみません。アンナさんは、いらっしゃいますかか? ヒロコと申します。商品が入荷しましたので、お届けに参りました」
受付嬢に伝えると、内線でゴニョゴニョ話している。
内線を使うということは、アンナはギルド内でも上の立場の人間かもしれない。
数分後待たされ、アンナが現れる。
通された部屋は、前回より豪華な部屋だった。
完全にVIP待遇ですね。
「砂糖10キロ・塩10キロ・胡椒は1瓶、空の硝子瓶10本になります」
テーブルの上に、注文された商品と硝子瓶を置くとアンナは、
「見せてもらいますね」
と断りを入れて、鑑定を使って真偽を調べている。
「確認出来ました。これほど良質なものを卸して頂けるなんて光栄です。塩は不足しておりましたので10kgを金貨25枚、砂糖は貴重なのでこちらも10kgで金貨35枚、胡椒は金貨60枚で合計金貨120枚になります。大口だと白金貨に替えることも出来ますが、如何なさいますか?」
まずまずの売上だ。
大金を持ち歩くと、ゴロツキに絡まれる。
ここは、預金一択でしょう!
「全部預けます。貯金することで何かメリットはありますか?」
「年会費が1割ほど安くなります。ヒロコ様のように仲介なしで良い商品を取引するとなれば、買取費用も抑えられてギルドとしては満足です」
私の商売は、それをメリットとして売り出している。
元は大幅に取れているので、目先の欲に囚われるのは商売人として三流だ。
値崩れがしない程度に販売しつつ、容子に書かせた料理レシピを執筆して売りに出すのも良いだろう。
正直、サイエスのご飯は不味い。
容子は、散策の最中に飲み食いしてガッカリするが良い。
私は、ここからが本番と言わんばかりに声のトーンを低くして内緒話をするかのように話す。
「試作品なのですが、基礎化粧品と石鹸を作ってまして。そちらも売れるか相談に乗って頂きたいんですが、構いませんか?」
「基礎化粧品とは何でしょうか?」
基礎化粧品の言葉に想像がつかないのか、アンナは頭に? マークを乱舞させている。
初めて就職することが決まった時に、久世師匠から化粧道具一式餞別で貰った記憶がある。
「美を追求した物です」
自作化粧水・乳液・100円ショップの美容液、固形石鹸と泡立てネット。
これらをアイテムボックスか取出して、テーブルの前に並べた。
瓶は、容子が作ったお洒落な小瓶に詰め変えられている。
「アンナさんは、今化粧をされていますね。実際に試してみましょう」
「化粧を落とすんですか?」
「はい。まずは、このクレンジングオイルで白粉などの化粧を落とします。あまりゴシゴシ擦らなくて大丈夫です。撫でるように気になる部分をマッサージしてみて下さい」
クレンジングオイルが全体にいきわたり、人肌ほどの温かさになると水を少しずつ加えてマッサージ。
「マッサージすること5分で顔全体が白っぽくなってきたら不要なものが取れている証ですよ」
アンナさんは、小鼻と目元が気になるみたいだ。
アイテムボックスからタオルと桶を取り出し、桶には魔法で氷水を生成し注ぐ。
「そのまま水か、ぬるま湯で乳化したオイルを流します。しっかり流したら、このネットで石鹸を泡立てます」
ネットで石鹸をゴシゴシ擦ると、ふわふわの泡が出来る。
きょーじ屋で作られたきめ細やかな泡が出来るので、プレゼンには丁度良い。
普通の石鹸でも綺麗に泡立ってくれてホッとしたよ。
「顔をマッサージするように泡を塗ります。この小さなブラシは、小鼻や気になる場所を軽く撫でると汚れがごっそり落ちます。軽く筆を肌に滑らせるようにくるくる円を描くように回してください。気になる部分は念入りにして大丈夫です。洗い終わったら、しっかりと泡をお水で落としてください」
アンナは、指示に従いザバザバと顔に水を掛けて泡を落としている。。
泡が残りやすい部分は、撫でるように落とすのがコツだ。
「洗い上がりが、こんなにスッキリするとは思わなかったわ。それに良い香りだし、肌も突っ張らない」
テンションが上がっているのか、商品の感想を熱弁している。
でもね、まだあります。
「洗顔後に付けるのが、この化粧水・乳液・美容液です! 化粧水は、金貨1枚分くらいの大きさを5~6回に分けて顔に浸透させるように塗ります。コットンに染み込ませて使う方法もあります。パチパチとパッティングするのも良いですよ。乳液は顔全体に、美容液は気になる部分に塗り込むと効果的です」
実演販売をしてみると、徐々に食いつきが凄くなってきた。
美に対する執着は、世界を超えても県債のようだ。
「これだけの物をそろえるとなると、相当お金がかかりそうですね。貴族中心に販売されるんですか?」
「いえ、一般人を中心にします。調合スキルを持ってますので、基礎化粧品を作るのは材料さえあれば簡単です。入れ物が高いので多少値ははりますが、化粧水銀貨8枚・乳液金貨1枚・美容液金貨1枚と銀貨5枚でどうでしょうか。使い終わったボトルを持ち込みされるなら、その分を1割引きしようかと考えています。貴族様用には、入れ物が凝った作りになるのと中身もワンランク上の物になります。化粧水金貨1枚・乳液金貨2枚・美容液金貨3枚を予定しています。石鹸は1つ銀貨1枚です。花の香を楽しみたい方は、専用の石鹸があるので1つ銀貨3枚でと考えています」
貴族用の装飾品の箱は、容子に作らせれば良い。
鍛冶スキルの熟練度アップにも繋がるしね!
「この石鹸でも銀貨1枚はするのに!! 安くないですか?」
取り出されたサイセス産石鹸(劣)を出されて、石鹸の認識をまず変えたい! と切に思った。
「良い品は万人の手に渡ってこそ、利益が上がります。一人の貴族よりも千人の一般人の方が、お金儲けしやすいのです。勿論、商品ですみ分けはさせて頂きますが」
貴族に一個売っても、一般人に百個売った方が利益が上がる。
経済は一般人で回っていると言っても過言ではないのだ。
「これらは個人差があります。人によっては、逆に肌トラブルを起こす可能性あります。宜しければ、アンナさんが実際に使用してみて、商品化しても問題ないと思ったら売り出しましょう。後、髪を美しくする洗髪料と髪のを整えるコンディショナーがあります。シャンプーと言いまして、これをサクランボ大の大きさを出して髪を洗って下さい。汚れが酷い時は泡立たないので、泡立つまで洗って下さい。その後、軽く髪の水分を切ってコンディショナーを塗ります。5分ほど放置して洗い流して下さい。そうすれば、美髪が手に入りますよ。流石にシャンプーとコンディショナーの実演は出来ないので、サンプルとして1カ月ほど持つ容器に入れたボトルを渡しますね」
「美髪……良いんですか?」
基礎化粧品でうっとりしていたので、更に美髪が手に入るとなると食いつきが違う。
「ええ、是非使って感想を聞かせて下さいね」
「ありがとう御座います」
ガシッと両手を掴まれて凄く感謝された。
基礎化粧品が浸透したら、100円ショップのコスメを提案してみよう。
私は、自分の分だけ確保出来れば良い。
品質はサイエスに比べれば、断然良いのだ。
中身が変わっても問題なかろう。
「これも宜しければ使って下さい」
大きなバニティポーチを手渡す。
マチがあって大容量で使いやすい代物だ。
容子に雑誌の付録を処分するように言われていたので、コネを作るためにも渡してみたら喜ばれた。
「凄く可愛いですね、見たことのない布地です。縫製もしっかりしてますし。なによりこの金具を引くと開閉ができるなんて画期的です! これは、特許申請しましょう」
薬師ギルドの婆に渡した時と似た反応が返ってきた。それよりも熱意を感じるのは気のせいと思いたい。
「特許のことは分からないのでお願いしても良いですか?」
「はい! もし予備があるならサンプルとして貰っても良いですか?」
ポーチは腐るほどあるので、キャラクターが描かれたものを渡したら、これも素敵と叫ばれた。
アンナは外見こそ出来るバリキャリ風だけど、実は可愛い物好きなのかもしれない。
「化粧水などはひと月分あるので試しに使ってみて下さい」
「ありがとう御座います。良い商談を」
握手を交わし終えて、商談がやっと終わった! と思ったら、何故か容子が商業ギルドに来ていた。
受付でエリーゼさんの紹介だと喚いている、紹介状らしいものはないので受付嬢も対応に困っているようだ。
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アンナは、受付で揉めている二人のところに割り込んでいった。
そして、容子を連れて私のところに戻ってきた。
「エリーゼ様からの紹介と仰られているのですが、紹介状などはお持ちではないとのことで対応に困っているんです」
「妹よ、そのエリーゼ様って人の紹介で来たなら紹介状の一つくらい貰っておきなよ」
「名前を言えば分かると言われたんだもん。私だって、紹介状を書いて貰いたかった」
困った顔で答える妹に、嘘はないと判断した。
「何が切欠で紹介の話になったのさ」
「街で美味しいって言われているカフェに入って試作品広げてたら人が集まってきてさ。その時に助けて貰ったの」
装飾品も作っていたのかな?
「アンナさん、妹の作品も見て貰えませんか?」
「ヒロコ様の頼みであれば構いませんよ」
快く承諾してくれてありがとう!!
先程のVIP室に逆戻りして、容子に試作品とやらを出すように言った。
出るわ出るわ試作品の数々。以前狩った素材も使われているじゃないか!
こいつ、素材をぱちっていたな!!
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私の提案に、アンナは頷いた。
「少し、こちらを持って行っても良いですか。相談してきます」
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キャーキャーいう声が聞こえるので、反応は良い感じだ。
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