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始まりの町
25.一時帰宅中です
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原付バイクでの移動は、やっぱり楽だわ。
セブールから一番近い村が、目と鼻の先にあるところまで来た。
と言っても、徒歩で移動すれば一時間程度かかるが。
「容子、ストップ! ここから先は、徒歩で移動しよう」
「何でさ?」
「村が、近いからだよ。目視できる場所まで原付バイクで移動するのは、色々と問題があるでしょう」
「確かに、原付バイクが乗り物だと認知しているのは私達くらいだ。知らない人からすれば、未知の存在として恐れられるのは容易に想像できる。徒歩で移動する理由は分かった。でも、疲れた」
容子は、原付バイクを止めて言った。
「このまま、ここで自宅に戻るか? それとも、一時間歩いて村で宿を取るか。容子は、どちらが良い?」
「宿で寝てみたい気持ちもあるけど、今は休息が欲しい。モンスターの脅威に晒されながら寝たくないで御座る」
「了解。家に帰ろうか」
私は、光る原付バイク二台とヘルメット二つをアイテムボックスに仕舞う。
鍵を取り出すと、自宅の玄関ドアが宙に浮かんでいる。
「点呼! 赤白、紅白、サクラ、容子。よしよし、皆いるね」
首に巻き付いていた赤白と紅白を虫かごに入れて、サクラをショルダーバッグの中に納める。
周囲に人やモンスターが居ない事を確認して、鍵を回した。
玄関ドアが宙に浮いている状態に、容子は大興奮している。
少しは落ち着きを持って欲しいと思うものの、口には出さなかった。
「誰かに見られたら面倒な事になるんだから、さっさと入って」
容子の襟を掴んでペイッと放り込むと、ズベッと玄関ですっ転んでいる。
どんくさい奴だ。
「邪魔」
容子を無視して、中に入り玄関ドアを施錠して、リビングに向かった。
容子の背中を踏みつけて行ったのは、態とではない。
決して態とではない!
大事なことなので二回言いました。
「さっさと起きてリビングに来なよ」
リビングに置いてあるズゲージの中に、蛇達を入れる。
サクラは、私の肩から飛び降りてテーブルの上でコロコロしている。
モンスターを轢き殺して入手したドロップアイテムを整理していると、リビングの入り口から恨みがましい視線が飛んできた。
「可愛い妹を踏みつけるなんて酷い! 暴力反対だ」
「退去勧告はした。居座ったお前が悪い。アイテムを整理している最中だから邪魔すんな」
「整理は大事だけど、それよりもっと大事な事があるでしょう。私も宥子と同じように、サイエスの一時間が日本では七時間経過した事になるのか。ちゃんと、検証するべきじゃない?」
容子に指摘され、私は首を傾げた。
「容子は、私に契約されている状態なんだから同じように影響を受けているでしょう」
「裏技を正常と認識している世界が、正常を裏技と誤認識している可能性もあるでしょう!」
その言葉は、やけに説得力があった。
彼女の言っている事は、強ち間違いではないのだ。
確認は、怠るべきではないだろう。
サイエスで過ごした時間は、丁度一日だ。
タブレットの日付を確認すると、きっちり一週間経っている。
契約されたものは、すべからく私と同じ時間で生きることになるようだ。
「契約した者は、私と同じ時間を共有するようだね。サイエスの一時間が、こちらでは七時間過ごしたことになる。これを頭に入れて行動すれば、通院や用事が舞い込んでも調整が出来るようになるね」
時間管理は面倒臭い。
日本とサイエス、二つの世界を行き来きする事が出来ること自体イレギュラーなのだ。
これくらいの不便は仕方がない。
「容子、向こうでスマホ使えるよ。電話・メール・ネット、どれも使用可能だった」
「本気か! 念話が使用できる距離に制限があるのか分からないし、スマホでの連絡は最終手段だね」
ガッデムッと頭を抱えてのたうち回る容子を、白い視線を送る。
サクラは、容子の挙動不審な行動が踊りに見えたらしく、身体を上下に伸縮させてリズミカルに踊っていた。
「明日は、どうする?」
村まで歩かなくてはならないが、通過してしまえばセブールの近くまで原付バイクで行ける。
徒歩を含めれば、半日でセブールに着くだろう。
容子連れてセブール入りするのは、不自然になる。
私がセブール入りして昇級試験を受けた後で、任務を受けて一度街の外に出て容子をサイエスに呼び寄せる必要がある。
容子自身の身分証を作る必要がある。
手続きのことを考えると面倒臭い。
「セブールに着いたら、私を迎えに来て」
「私の用事を済ませて、任務をする体で街の外に出る。迎えは、その時になるよ」
「構わんよ」
「冒険者ギルドに登録はして貰うとして、他のギルドはどうする?」
容子の性格からして、生産ギルドに興味を示す可能性はある。
容子は鍛冶スキルを使って、防具や武器そっちのけでアクセサリー作る気満々みたいだ。
暴走しないでくれると良いが、良い大人なのだから自重してくれると信じよう。
「一週間も音信不通で家を空けたから、久世師匠に連絡取るわ。他のギルドと言われても分からないから、それは追々決める」
「OK。私は、明日セブールまで行って用事済ませてくる。多分、2~3週間は空けるだろうから、久世師匠にはそう伝えておいて」
用事が1日で済んでくれれば良いが、簡単にはいかないだろうな。
だって悪運様様だもの。
絶対トラブルに巻き込まれると思う。
「用事が長引きそうなら、メールするから」
「電話で良いけど?」
無茶な注文来たぁ!
サイエスでは、スマートフォンはオーバーテクノロジーなんだよ。
魔法道具と言い張れば済むかもしれないけど、変な奴に目をつけられたらどうすんの!?
「……誰も居ないところで電話してみる」
「ええーっ」
非難の声が上がったが気にしない!
面倒ごとを持ち込んでいるんだから、これ以上拡散させるのは御免だ。
「じゃあ、電話もメールもなしで」
「分かったよ。誰も居ないところから電話して。私からの電話はOK?」
「即留守電に切り替わるように設定するからOKだよ。着歴見て連絡する」
「了解」
やっと納得したのか、ふんふんと鼻歌混じりにサクラをムニムニしている。
本当、自由な奴だ。その図太さを分けて欲しいものだ。
セブールから一番近い村が、目と鼻の先にあるところまで来た。
と言っても、徒歩で移動すれば一時間程度かかるが。
「容子、ストップ! ここから先は、徒歩で移動しよう」
「何でさ?」
「村が、近いからだよ。目視できる場所まで原付バイクで移動するのは、色々と問題があるでしょう」
「確かに、原付バイクが乗り物だと認知しているのは私達くらいだ。知らない人からすれば、未知の存在として恐れられるのは容易に想像できる。徒歩で移動する理由は分かった。でも、疲れた」
容子は、原付バイクを止めて言った。
「このまま、ここで自宅に戻るか? それとも、一時間歩いて村で宿を取るか。容子は、どちらが良い?」
「宿で寝てみたい気持ちもあるけど、今は休息が欲しい。モンスターの脅威に晒されながら寝たくないで御座る」
「了解。家に帰ろうか」
私は、光る原付バイク二台とヘルメット二つをアイテムボックスに仕舞う。
鍵を取り出すと、自宅の玄関ドアが宙に浮かんでいる。
「点呼! 赤白、紅白、サクラ、容子。よしよし、皆いるね」
首に巻き付いていた赤白と紅白を虫かごに入れて、サクラをショルダーバッグの中に納める。
周囲に人やモンスターが居ない事を確認して、鍵を回した。
玄関ドアが宙に浮いている状態に、容子は大興奮している。
少しは落ち着きを持って欲しいと思うものの、口には出さなかった。
「誰かに見られたら面倒な事になるんだから、さっさと入って」
容子の襟を掴んでペイッと放り込むと、ズベッと玄関ですっ転んでいる。
どんくさい奴だ。
「邪魔」
容子を無視して、中に入り玄関ドアを施錠して、リビングに向かった。
容子の背中を踏みつけて行ったのは、態とではない。
決して態とではない!
大事なことなので二回言いました。
「さっさと起きてリビングに来なよ」
リビングに置いてあるズゲージの中に、蛇達を入れる。
サクラは、私の肩から飛び降りてテーブルの上でコロコロしている。
モンスターを轢き殺して入手したドロップアイテムを整理していると、リビングの入り口から恨みがましい視線が飛んできた。
「可愛い妹を踏みつけるなんて酷い! 暴力反対だ」
「退去勧告はした。居座ったお前が悪い。アイテムを整理している最中だから邪魔すんな」
「整理は大事だけど、それよりもっと大事な事があるでしょう。私も宥子と同じように、サイエスの一時間が日本では七時間経過した事になるのか。ちゃんと、検証するべきじゃない?」
容子に指摘され、私は首を傾げた。
「容子は、私に契約されている状態なんだから同じように影響を受けているでしょう」
「裏技を正常と認識している世界が、正常を裏技と誤認識している可能性もあるでしょう!」
その言葉は、やけに説得力があった。
彼女の言っている事は、強ち間違いではないのだ。
確認は、怠るべきではないだろう。
サイエスで過ごした時間は、丁度一日だ。
タブレットの日付を確認すると、きっちり一週間経っている。
契約されたものは、すべからく私と同じ時間で生きることになるようだ。
「契約した者は、私と同じ時間を共有するようだね。サイエスの一時間が、こちらでは七時間過ごしたことになる。これを頭に入れて行動すれば、通院や用事が舞い込んでも調整が出来るようになるね」
時間管理は面倒臭い。
日本とサイエス、二つの世界を行き来きする事が出来ること自体イレギュラーなのだ。
これくらいの不便は仕方がない。
「容子、向こうでスマホ使えるよ。電話・メール・ネット、どれも使用可能だった」
「本気か! 念話が使用できる距離に制限があるのか分からないし、スマホでの連絡は最終手段だね」
ガッデムッと頭を抱えてのたうち回る容子を、白い視線を送る。
サクラは、容子の挙動不審な行動が踊りに見えたらしく、身体を上下に伸縮させてリズミカルに踊っていた。
「明日は、どうする?」
村まで歩かなくてはならないが、通過してしまえばセブールの近くまで原付バイクで行ける。
徒歩を含めれば、半日でセブールに着くだろう。
容子連れてセブール入りするのは、不自然になる。
私がセブール入りして昇級試験を受けた後で、任務を受けて一度街の外に出て容子をサイエスに呼び寄せる必要がある。
容子自身の身分証を作る必要がある。
手続きのことを考えると面倒臭い。
「セブールに着いたら、私を迎えに来て」
「私の用事を済ませて、任務をする体で街の外に出る。迎えは、その時になるよ」
「構わんよ」
「冒険者ギルドに登録はして貰うとして、他のギルドはどうする?」
容子の性格からして、生産ギルドに興味を示す可能性はある。
容子は鍛冶スキルを使って、防具や武器そっちのけでアクセサリー作る気満々みたいだ。
暴走しないでくれると良いが、良い大人なのだから自重してくれると信じよう。
「一週間も音信不通で家を空けたから、久世師匠に連絡取るわ。他のギルドと言われても分からないから、それは追々決める」
「OK。私は、明日セブールまで行って用事済ませてくる。多分、2~3週間は空けるだろうから、久世師匠にはそう伝えておいて」
用事が1日で済んでくれれば良いが、簡単にはいかないだろうな。
だって悪運様様だもの。
絶対トラブルに巻き込まれると思う。
「用事が長引きそうなら、メールするから」
「電話で良いけど?」
無茶な注文来たぁ!
サイエスでは、スマートフォンはオーバーテクノロジーなんだよ。
魔法道具と言い張れば済むかもしれないけど、変な奴に目をつけられたらどうすんの!?
「……誰も居ないところで電話してみる」
「ええーっ」
非難の声が上がったが気にしない!
面倒ごとを持ち込んでいるんだから、これ以上拡散させるのは御免だ。
「じゃあ、電話もメールもなしで」
「分かったよ。誰も居ないところから電話して。私からの電話はOK?」
「即留守電に切り替わるように設定するからOKだよ。着歴見て連絡する」
「了解」
やっと納得したのか、ふんふんと鼻歌混じりにサクラをムニムニしている。
本当、自由な奴だ。その図太さを分けて欲しいものだ。
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