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第1章 俺が異世界に来た

1杯目

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「俺、今何がしたいんだろう」

最近は仕事が忙しすぎてまともにご飯が食べられていない現状。
毎食毎食ウィンダーとマロニーメイトを口にしていると飽きてくる。

ああ、駅前の毎月通ったあのラーメン屋にいきたい。
あっさりしたしょうゆラーメンを食べたい。

「真鍋さん、これとこれ追加ね。終わったら上がっていいから。」

時刻は21:00過ぎ。
今日は意外と早い時間に上がれそうだ。
ここ一週間は23:00ぐらいまで仕事が終わらなかったからうれしいんだよな。
先月はあのラーメン屋の大将に会えなかったし、今日行ってみるか。

なんやかんや22:00になってしまったが、あのラーメン屋はまだやっているのだろうか。
会社から家まではいつもチャリ通勤だがその帰路の途中にいきつけのラーメン屋がある。
魚介風味のあっさり系のラーメンが特徴で、昔は飲み会のしめで訪れる客であふれていたが、今や知る人ぞ知る名店になっていた。
大将は50ぐらいの気のいいおっちゃんで、脱サラしてラーメン屋になったそうだ。

「あれ、なべさんじゃないか。前来なかったから、愛想つかされちまったのかと思ったよ。」

「まっさかあ。大将のに勝てるあっさり系はまだくったことないよ。いつものたのめる?」

「あいよ、ツナはどうする?」

「今日はツナあるのか。もちろんいただくよ。」

ツナとはこの店特有のおつまみで、スープづくりで出たマグロのカスを自家製キムチと醤油で和えてネギと味玉と一緒に豆腐にのせたものだ。
スープで出し切ったとはいえ、ツナのうまみとキムチの辛さが病みつきになる一品だ。
また、味玉の持つ濃厚な味わいもたまらない。

「おまちよ、醤油ラーメン味玉トッピングだ。」

「ありがとう、大将。」

カウンターに置かれたのは味玉、メンマ、コーン、ネギに薄切りチャーシューが小山のように乗った醤油ラーメン。
この店の看板メニューでもあり、俺がいつも食べるものでもある。

「いただきます」

スープはまろやかな醤油とマグロベースで魚介の風味があふれるような味わいが、疲れた体に染み渡る。
そのスープに絡みつくようなもちもちの太めのちぢれ麺。
そして、肉々しいのに脂っこすぎない薄切りチャーシュー。
やっぱりこのラーメンに勝てるラーメンはないんじゃないかと思う。

「なべさん、いつにもましてうまそうにがっつくじゃねぇか。」


「しょうがないじゃないか、実際うまいんだし。それに久々に食ったからなおさらうまいんだよ。」


「なんだ、最近いそがしかったのか。愚痴なら聞くぜ?」


「なに、最近仕事でミスが多くなっただけだよ。多分疲れてんのか、はたまた向いてないだけなのかのどっちかだ。もういっそのこと、俺も大将みたいに自分だけの店開いてみようか。」

「お?伝手ならあるから紹介しようか。」

「軍資金がある程度たまったらお願いしようかな。」

実際、ある程度お金がたまったら独立とかも考えてはいたし。
まあ、こんなんでへぼこいているやつが店とかは無理だろう。

「金といったら、この前買った宝くじはどうしたんだい。」

「へ?宝くじ?」

「そうだよ、前来た時にやけ酒してボーナス全部つぎこんだあれだよ。まさか覚えてないってんじゃないだろうね。」

うろ覚えで財布の中を探ると大量の宝くじが出てきた。
確かに、先々月ボーナスもらったのになぜか今月苦しいなぁって思ってたんだよ。

「その様子じゃ結果も見てないだろう。俺が宝くじの番号読み上げるからなべさんは確認してくれ。」

大将に七十枚ほどの宝くじ(こんだけ入ってたのになぜ気づかなかった俺)を渡し、読み上げられた番号をスマホで確認する。
ちなみに、一等のばんごうは385742で3億円だそうだ。
まあ、これで当たればほんとに軍資金に回そうか。
三十、四十ときたが、今のところ当たりは300円や3000円しかない。
まあ、こんなもんだよな。

「次は、385742だ。」

385742な。
え、385742?
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