偽りの フェイス

ひじり つかさ

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(終話) 逢瀬の世

帰る場所は、つかさの腕の中

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 私が背伸びをしなければ、こんな私が学年王子のハルトを好きにならなければ、こんな事に......
 病院に着くと扉の向こうは慌ただしく、人が行き交い、私は崩れ落ちるように壁にもたれていた。

 どのくらいの時間が経過したのか、経過の説明に看護士さんが傍にいた。

「このまま意識が戻らなければ」そこから、先の
言葉は、私には受け入れる心の余裕は無かった。

 助けて欲しい!こんな私が......お願いしても
でも頼めるのは、つばさしかいない!

 ハルトを助けて!私がそちらの世界に行く!
私の身体は、つばさにあげてもいい!
そもそも、つばさとハルトの方が、お似合いだし、
二人が、この世界で幸せになるのが望ましいはず。


 

 ここは......何処だろう?心地良い薫りと温かさ
そうだ!つかさ、つかさを、助けたんだ!
つかさのポニーテール可愛いかったなぁ......
 
 じゃ此処は......つかさが言ってた......つばさが
居るかもしれない、あちらの世界......か?

 僕の笑顔......つかさに届いただろうか?
きっと......自分を責めているんだろうなぁ、
つかさは偽りの私って言ってたけど、偽っていない人間が、いるんだろうか?

 背を高く見せたり、細く見せたり、化粧をしたり
自分の弱さを虚勢で誤魔化したりと......
僕自身も王子と呼ばれる程の人間じゃない。

「ハルト君......ハルト君」
 
 懐かしい声が聞こえる、そこにはつばさの姿が、
不思議な感じだ!数年ぶりに聞く声は、懐かしい筈
なのに、姿は目にしているので複雑だった。

「ハルト君、来てしまったのね」

「純奈を、怒らせた!僕の優柔不断な対応で、こんな事に......でも、つかさを守れた!つばさに似た人を二人も失いたく無い!これで良かったんだ」

「僕は、この世界を受け入れるよ、つばさの傍に
このまま傍に、いて欲しい」

 そう言って僕は、つばさを引き寄せた、この世界なら触れた感触もあるんだ、あの頃に戻れる!
つばさを抱きしめ僕らは唇を重ねた。
 
 もう......僕は満足だ、このまま二人で旅立とう。

「嬉しい、ハルト君の思いが聞けた、キスもした、
あぁ......つかさも、あの時こんな気持ちだったんだ
ごめん、つかさ!ごめんなさい」

 つばさは僕の顔を見ると下を指差し語った。

「ハルト君あなたは私の様に、亡くなっては、
いないのよ、彷徨っているだけなの」

「その世界とハルト君を繋ぎ止めているのは
つかさの、あなたを想う気持ちよ」

 指した指の先には帽子とガウンに身を包んだ女性が僕の手をしっかりと握っている、つかさだった

「ハルト君は、こちらの世界に来てはいけない、
ハルト君の帰る場所は、つかさの腕の中だけ」

 そう言うと、僕を激しく突き放した。
再び落下して行くような感覚、何かを掴もうとした
その時、温かい手を掴んだ、安心感を得た瞬間
凄まじ激痛と胸の苦しさや咳き込む中その手だけは離せなかったら、いや!絶対、離したくなかった。




 私は夢でも見ていたのだろうか?
誰かに囁かれたような気がした、耳ではなく
心に直接、語りかけるように!

「可愛い妹から彼氏は奪えないよ、掴んだその手は決して離しちゃダメだよ」

 私は確認するように辺りをゆっくり見回した
急に、強い感触で握り返されたと思った瞬間!
付けてあったマスクが激しく曇っては透明にを
繰り返す、計器類は色々、鳴り始め先生たちが
慌ただしく入ってくる、
私は看護士の人に促され部屋の隅へ。
 
 先生たちは口々に「奇跡だ」「奇跡だ」と呟く。
そう!ハルトは意識を取り戻したのだ!

 私は、つばさだ!つばさが奇跡を起こしてくれた
なのに私は、此処に居る!

 入れ替わっても、良かったのに......
さっきの囁かれた言葉が、胸に染み込む。
ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう
何度も何度も私は心に呟いた。

 
 夏休みは棒に振ったものの、あれだけの重症事とは思えないほどの驚異的な回復力のハルト。

「始業式には間に合いそうだね」頷くハルト。

 私たち二人は、つばさに背中を押された!
押した、つばさは天使のように輝く翼を付けて
天に舞い上がって行った。

 ハルトは、あの奇跡の出来事を、つばさに逢った出来事を、何度も何度も話してくれた。
 
 「僕たち、つばさから、卒業しないと」

 私たちは、つばさにさよならと旅立ちを誓いに
お母様の所に行く事にした。



 チャイムを鳴らして、お母様が出て来るのを
深呼吸を、しながら待ちました。
 ゆっくり目線を下げ、つかさちゃんねの、言葉に
私は、胸を撫で下ろしました。

「これが私の本当の姿です」

お母様は、何時もと変わらない優しい声で

「あの時言ったでしょ」
「あなたは、きっと、素晴らしい女性よ」って
「間違っては、いなかったわ」
そう言うと、頬を優しく撫でてくれました。

 下で待たせていたハルトを迎えに行き
部屋に通され私達は、つばさに手を合わし
さよならと感謝を伝えました。

「あの娘は、旅立って行ったのね!こんな良い
お友達に沢山の想いをプレゼントして......」

 
 私達は心から、呟いた!
ありがとう!つばさ!さよなら!つばさ!

 
 私達は家を後にして学校の花壇に向かった
全ては、この場合から始まった。

「ハルト、ありがとう」
「こんな私を好きでいてくれて」
「いつか本当の私を、好きになって下さい!」
って言った事、この気持ち捨てなくて良かった!

「僕こそ、辛い思いや身代わりのような事を、
させてその気持ちに甘えていた」
「実は歩道橋に行く前に携帯を見た!写真を見た時つばさの顔じゃなく、つかさの顔になってた!
もっとしっかり、覚えてさえいれば早く気付けた、
本当に、ごめん」
「でも、僕の瞳に映るのは、つかさだけ!
これからも、その先の未来も、ずっと」
 
 この想い出の花壇で私達は誓う!
この二人の愛が、生涯変わらない事を!

 そっと優しい風が二人の頬を撫でて行ったようなそんな気がした、まるでつばさに触れられた様な!




 十年後......

 ハルトの出張で久しぶりに帰ってきた故郷
「つかさちゃん?」お母様の懐かしい声に!
お久しぶりです。ベビーカーで寝ている小さな手を見て「ハルトさんとの?」私は、力強く頷いた!

「お二人ならきっと良いパパとママになれますよ」
「私の見立ては良く当たるから!」っと笑顔で!

 
 今でも、時折、思い出される不思議な体験!
 
 鏡やショーウィンドウに映る姿を見て悩んだり、
溜め息をついたり、そんな娘達を見ていると、
心の底から頑張ってって、気にしないでって、
中身の良さは、きっと表情に出るからって!

 人を好きになる、優しい気持ちは、きっと輝きと美しさを持って必ず、表情や顔に出るから!

 そうすれば奇跡も向こうからやって来るかも?
頑張って!恋せよ乙女!恋する乙女たち!


-終わり-





 


















 



 
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