偽りの フェイス

ひじり つかさ

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(1話) 出会い

勇気のつばさに、なれるかも

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 私は天城つかさ、高校二年生

 新緑の季節 、クラス替えの掲示板の前で
一喜一憂する人達を横目に私は、ぼんやりと
掲示板を眺めていた。

「つかさーー」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには友人の
小町夏希の姿が「一緒のクラス!よろしく!」

 相変わらず人懐っこい笑顔と
チャームポイントは目っ と言うだけあって  
私から見てもキュート。

「うん  よろしくーー」テンション下げ気味の返事

「ねぇ!今日、何の日か知ってる?」
すかさず夏希がテンションを上げて来る!

 私が不思議そうに夏希を見ると

「これ これ」っと夏希は
身振り手振りでメイクのマネを

 ハッっと気が付き、指でOKマークをする!

 そう!月に数回、私の為?
メイク教室なるものを自室で開いてくれる。
もちろん生徒は、私だけ!
とは、言うものの実際はメイクアップアーティストを、目指す夏希のモデルでもあるのです。

 
 学校も終わり急ぎ夏希の家へ!
洗顔を終え夏希の部屋に行くとメイク道具が散乱
私は夏希の前にぺたんと座ると
「今日は、つかさが気にしてるアイメイクだよ」
流石、アーティストを目指してるだけあって
手際がいい!あっと言う間に片目が完成。
しかし 中々 鏡を見せてくれない。
「ねぇ!見せてよーー」催促する 私

 すると、けたたましい足音が近ずいて来たっと
思った瞬間、物凄い勢いでドアが開いた!

「夏希ーー。また私のチーク持って行ったーー!」

 入って来たのは夏希の姉で五月さんだった。

余りの 一瞬の出来事に 私は目が......
「あっ!つかさ?」
一瞬の沈黙の後
「目!デカっ!」の、ひと言!

 姉御肌の五月さんは、一つ上の高校三年生
その勢いに夏希も 私も つい正座に。

「あのね!あんた血色いい方なんだから無理に
チークなんて入れなくても、ナチュラルが一番 
それに うちの学校 メイク禁止だから しましたーーみたいなメイクだと先生に睨まれるよ!」

「結局のところコンシーラーとリップでも充分」

 すると夏希が一言
「つかさは それじゃダメなんだよ」
私が容姿にコンプレックスを持っていて告白
できないでいる事を五月姉さんに説明してくれた。

「うーーん 気持ちは、わかるけど......」
「好きな人って、うちの学校の子?」

夏希は 私の目を見て「いい?」の合図
私も、すかさず「いい!」のアイコンタクト

「つかさ ハルト先輩が好きなんだよ」

「ハルト?...... 青山ハルト?......王子じゃん」

しばらく考えた後 五月さんが
「それじゃ 背伸びも、したくなるよね 」

「確か準クイーンの純奈が、今年のバレンタインの日に告白して振られたって、聞いたしーー」
 
 今度は夏希が姉の顔を見て不思議そうに
「準クイーン?」

「うん、準クイーンって言っても実質はクイーン
なんだけどね...... 実はクイーンが居たんだよ!
でも去年かな 事故で亡くなったんだよね」

一瞬の間があき 思い出したかの様に五月さんが

「純奈がハルトに好きな人がいるの?って訊いたらハルトは好きな人は、いないって でも想い人ならいるって、言ってたらしいよ」
 
五月姉さんは私の両肩にそっと手を添えて
「つかさ 応援してるから 頑張りなぁ!」
そう言って、静かに部屋を出て行った。
何時も 私の事を親身に考えてくれる姉妹!
気持ちが、少しほっこりとした。

 残りのアイメイクを済ますと、疲れたのか?
夏希先生の、メイク教室は終了したのでした。

 
 翌日、教室に入ると夏希が真っ先に
「あっ目 戻ってる」

 私は可愛く無い、ふくれ顔で、
「当たり前でしょ!」
「あの後 お母さんにも目 デカって言われて」
そう言いながら鞄からペンケースを取り出すと

「買ったんだ!」夏希の素早い反応。

「うん!コンパクトミラーとお揃いで!」
小遣いを貯めて買った私の、お気に入りなのです。

「花のマーク!かわいいよねーー」

「うん!」今日は、これだけで、私は幸せな気分。

 
 お昼休み!
「夏希!お昼どうする?」
「ごめん!部の先輩の呼び出しで部室で食べるから本当 ごめん!」
そう言って夏希は足早に教室を出て行った。

 私は一人の昼食は中庭の花壇と決めている。
でも今日は少し寄り道!本校は学年毎に棟が違う
思い切って三年生の棟に!そう 先輩を見に行く。

 三年生の棟を二年生が歩くのは結構目立つ 。
先輩の教室が近づいて来る 聞き慣れた名前に 
私の足が止まってしまった。
「おい!ハルト知らね!」
「花壇で見たって言ってたな!」
ここから中庭の花壇は階段を降りれば直ぐ!
はやる気持ちを抑えながら足早に降りて行く。

 花壇に先輩の姿が...... 
私は、ゆっくり近づいて行く 。
小さな お弁当箱を胸に抱きしめ、
心臓の鼓動は、徐々に高まり、
身体中の血液が、顔に集まって来るのが、
わかるくらいに、もう耳まで真っ赤!

 私に気付き先輩もこちらに、
鼓動が高鳴って恥ずかしさが、頂点に!

 その瞬間!私の心は、痛みに変わった!
高揚感に染まった私の瞳には、確かに
ハルト先輩が映ってる。
 でもハルト先輩の、その哀しい目に、
私は映っていない、足早に遠ざかる先輩。

 気持ちは次第に冷め、無力感だけが、
私の心に押し寄せた。花壇に辿り着いた時、
私の瞳から涙が、とめどもなく溢れた。

 座り込んだ 私は制服のポケットから
買ったばかりのコンパクトミラーを取り出した。
 
 今日は、これだけで幸せな気分の筈だったのに、
泣きはらした顔は、とても可愛いとは言えない
濡れナプキンで、目頭を押さえ 必死で誤魔化す。
鏡を覗いては、ため息を繰り返し、私は呟いた。

「私に何処か 一つでも、自信が持てる処が有ればハルト先輩に告白が、出来る筈なのに!
もし、彼女になれたなら、絶対......絶対に!
先輩に、哀しい目を、させないのに!」
 
 いつしか、その呟きは、想いの言霊となり、
大きな力を得たかの様に、私の持ち物に、
共鳴し始めた。         
 手に持っていたコンパクトミラーが、
一瞬で光り輝き、辺りが静寂に包まれたかと思うと女の子の声だけが、響き渡った。

「その想いが真実なら 私は あなたの背中を押せる 
勇気のつばさに、なれるかも知れない」

「だれっ」
ハッっとして周りを見渡しても誰もいない。
 何となく鏡を覗くと、そこには、私ではなく
「綺麗な子」と言ってしまう程の、容姿端麗な
女の子が映っていた。思わず顔に触れて見る!
目 鼻すじ 頬 唇 どれをとっても 私じゃない。

 試しに頬をつねって見る......  痛っ!
紛れもなく そこに映った顔は私!
 
 私は鏡の中を、ジッと見据え「あなたは、誰?」っと問いかけた。

 すると「私は天宮つばさ」と鏡の中の女の子が
喋った。

 私は、もう頭の中が混乱して何が、何だか。
映って居るのは私では無い。
 でも触れると実感は有るし、痛みも有る。

 そして、また鏡の中から話しかけられる。
「この容姿は恐らく、ハルト君だけに見えている筈
あなたが、この容姿を手に入れる事で自信と勇気が持てるなら私は、そのお手伝いがしたい!」

 私は鏡を見ながら確かに、この容姿なら彼女の
言う通り、自信も告白する勇気も、出るとは思う。
でも、今の私は他の人には、どう見えているの?

 その時「つかさーー」夏希の声が
部活の人達と、だんだん近付いて来る。
私の泣いた後が残る顔を見て夏希が......

「なんかあった...... 大丈夫?」っと心配そうに顔を見た。私は、とっさにコンパクトを制服のポケットに入れた。
「ありがとう......ちょっと......ね。後で、話すね」と言って、目をそらした。

 夏希は心配しながらも部活の先輩達に、促され
その場を去った。

 夏希の、お陰で理解できた事が、ひとつ!
他の人には鏡に映った容姿端麗な女の子ではなく、
私自身に見えていると言う事。
 
 ハルト先輩の前だけ、偽りの容姿で通用するのか不安だけど、今の私では、ハルト先輩を振り向かせる事すら出来ない、だったら......私は......私は!

 心に決めた!優先したいのは、今の気持ち!
 
 私はコンパクトを開けて再び映った顔を見る。

「私は、天城つかさ!」
「天宮さん!私に勇気を、力を貸して下さい!」
 
 鏡の中から「喜んで」の、彼女の優しい声。

 この関係はパートナー?友達?それとも......
二人の共通の想いは、たった今、始まったばかり。

 


















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