340 / 355
第三百四十話 クリス、終生のライバルを見つける その6
しおりを挟む
「? なんか雰囲気が変わったわね」
カズキが敬語抜きで自然に話したのを見て、エルザが首を傾げる。
「あー、コボルトエンペラーと戦った後から、偶にそうなるんだ。具体的に言うと、戦いの気配を感じた時だな。その時は敬語も抜けるんだが、戦いが終わるとまた敬語に戻る。今回は、クリスと手合わせが出来るからだろうな」
「・・・・・・そんな! カズキがクリスと同類になってしまったなんて!」
「ぅおい! どういう意味だ!」
アマラントの話を聞いたエルザが盛大に嘆くふりをすると、クリスから抗議の声が飛んでくる。が、当然の様にエルザはそれを無視した。
「確認するけど、カズキはクリスと手合わせをしてやっても良いと思っているのね?」
「うん。今の自分がどこまでクリスに通用するのか知りたいんだ」
「そう。なら私はもう何も言わないわ。ただ、やるからには勝つつもりでやりなさい。いいわね?」
「それは勿論。さ、行こうか」
「おう!」
カズキはエルザに返事をすると、クリスを促してギルドを後にした。その後を跳ねるような足取りのクリスが続く。
「おい! 俺達も行こうぜ!」
そして、世紀の対決を見逃すまいと、その後にアマラント達が続き、最後に『弟の成長は早いわね』と、後方姉貴面したエルザが追いかけた。
「これはまた・・・・・・」
カズキとクリスの手合わせは、周囲への影響を考えて『次元ハウス+ニャン』の中で行われる事になった。
ここには居住空間と、それを遥かに凌駕する何もない空間が果て無く続いているからだ。
最近ではそれを利用してカズキが未完成の魔法を試していて、既にいくつかの魔法は完成を見ている。
そんなところに案内されたアマラント達は、カズキの力のほんの一部しか知らされていなかった事に絶句したのだった。
「良いか? 出し惜しみなんかするんじゃねえぞ? でないと、あっという間に終わるからな?」
「その台詞はそっくりそのまま返してやる。負けた後で手加減してたなんて言っても、ダサいだけだからな?」
クリスの忠告とも取れる言葉に、戦闘モードとでも言うべき状態に入ったカズキは、笑みを浮かべて挑発を返す。
そんな二人の気配に危険を感じたのか、勇者やエンペラーと戦った時もカズキの傍を離れなかったナンシーが、
「ミャーオ!」
とカズキに激励の言葉を掛けると、自分からカズキの傍を離れてエルザの元にやってきた。
「ありがとうナンシー。頑張るよ。・・・・・・ねーさん。合図は任せる」
それで余分な力が抜けたカズキが、必然的に審判の役割を負わされる事になったエルザに声を掛ける。
「ねーさん!? ふふっ、良い響きね! オッケー! 任せなさい!」
姉弟になってから(尚、カズキはこの事実を知りません)初めて自分から姉と言ってくれたカズキにテンションが上がったエルザは、ノリノリでクリスとカズキの立ち位置を調整(互いに5メートル離れた距離)すると、
「死ななきゃ治せるから、思う存分やりなさい! では――」
その言葉に二人が身構えたのを確認すると、エルザは上げた手を思い切り振り下ろし、同時に
「始め!」
と声を張り上げる。それと同時に現れた巨大な炎の剣がクリスを飲み込んだのは、その直後の事だった。
カズキが敬語抜きで自然に話したのを見て、エルザが首を傾げる。
「あー、コボルトエンペラーと戦った後から、偶にそうなるんだ。具体的に言うと、戦いの気配を感じた時だな。その時は敬語も抜けるんだが、戦いが終わるとまた敬語に戻る。今回は、クリスと手合わせが出来るからだろうな」
「・・・・・・そんな! カズキがクリスと同類になってしまったなんて!」
「ぅおい! どういう意味だ!」
アマラントの話を聞いたエルザが盛大に嘆くふりをすると、クリスから抗議の声が飛んでくる。が、当然の様にエルザはそれを無視した。
「確認するけど、カズキはクリスと手合わせをしてやっても良いと思っているのね?」
「うん。今の自分がどこまでクリスに通用するのか知りたいんだ」
「そう。なら私はもう何も言わないわ。ただ、やるからには勝つつもりでやりなさい。いいわね?」
「それは勿論。さ、行こうか」
「おう!」
カズキはエルザに返事をすると、クリスを促してギルドを後にした。その後を跳ねるような足取りのクリスが続く。
「おい! 俺達も行こうぜ!」
そして、世紀の対決を見逃すまいと、その後にアマラント達が続き、最後に『弟の成長は早いわね』と、後方姉貴面したエルザが追いかけた。
「これはまた・・・・・・」
カズキとクリスの手合わせは、周囲への影響を考えて『次元ハウス+ニャン』の中で行われる事になった。
ここには居住空間と、それを遥かに凌駕する何もない空間が果て無く続いているからだ。
最近ではそれを利用してカズキが未完成の魔法を試していて、既にいくつかの魔法は完成を見ている。
そんなところに案内されたアマラント達は、カズキの力のほんの一部しか知らされていなかった事に絶句したのだった。
「良いか? 出し惜しみなんかするんじゃねえぞ? でないと、あっという間に終わるからな?」
「その台詞はそっくりそのまま返してやる。負けた後で手加減してたなんて言っても、ダサいだけだからな?」
クリスの忠告とも取れる言葉に、戦闘モードとでも言うべき状態に入ったカズキは、笑みを浮かべて挑発を返す。
そんな二人の気配に危険を感じたのか、勇者やエンペラーと戦った時もカズキの傍を離れなかったナンシーが、
「ミャーオ!」
とカズキに激励の言葉を掛けると、自分からカズキの傍を離れてエルザの元にやってきた。
「ありがとうナンシー。頑張るよ。・・・・・・ねーさん。合図は任せる」
それで余分な力が抜けたカズキが、必然的に審判の役割を負わされる事になったエルザに声を掛ける。
「ねーさん!? ふふっ、良い響きね! オッケー! 任せなさい!」
姉弟になってから(尚、カズキはこの事実を知りません)初めて自分から姉と言ってくれたカズキにテンションが上がったエルザは、ノリノリでクリスとカズキの立ち位置を調整(互いに5メートル離れた距離)すると、
「死ななきゃ治せるから、思う存分やりなさい! では――」
その言葉に二人が身構えたのを確認すると、エルザは上げた手を思い切り振り下ろし、同時に
「始め!」
と声を張り上げる。それと同時に現れた巨大な炎の剣がクリスを飲み込んだのは、その直後の事だった。
40
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました
もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。
最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。
でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。
記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ!
貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。
でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!!
このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない!
何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない!
だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。
それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!!
それでも、今日も関係修復頑張ります!!
5/9から小説になろうでも掲載中
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
★恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
日間総合ランキング2位に入りました!
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる