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第三百三十四話 クリス、終生のライバルを見つける その4

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「あの少年が『大賢者』なのか・・・・・・?」

 『大賢者』という言葉から年配の魔法使いを想像していたアマラントは、それに反して年若いカズキの姿を見て、周囲を見回した。
 『大賢者』なる人物は他にいて、少年はその世話をする付き人かなにかだと思ったのだ。

「ああ。間違いなくあいつが『大賢者』だ。尤も、本人は自分が『大賢者』と呼ばれているとは夢に思っていないだろうがな」
「・・・・・・成程。お前やエルザと同じタイプか」

 クリスの言葉に改めてじっくりとカズキを見たアマラントは、そこにクリスやエルザを初めて見た時と共通するナニカを感じ取る。
 それはAランク冒険者になれる程の才能を持ち、且つクリスやエルザと短いとはいえパーティを組んでいたからこそわかる事だった。

「しかし分からないな。彼がいくら凄腕の魔法使いでも、お前と彼では身体能力に差があり過ぎる。そんなんじゃ、到底お前のライバルにはなり得ないと思うが?」

 それ以前にパーティ内で内ゲバをするなとアマラントは言いたかったが、ライバルに飢えたクリスに理屈は通じそうにないので言わなかった。

「それがそうでもない。ここに来る前に勇者に占拠された町を解放したんだが、その時にカズキは勇者を二匹捕獲しているんだ。それも、会話が出来る距離で」

 クリスはこの話を、勇者にこき使われていた馬車の御者から聞いている。この御者はカズキに逃げるように言われたが、たった1人で残ったカズキが心配になり、少し離れた場所から様子を伺っていたのだという。

「だからライバルを育てるという話をした時、お前は真っ先にここへ来たのか。彼には申し訳ない事をしてしまったな・・・・・・」

 自分の不用意な発言のせいでカズキに迷惑を掛けてしまった事に気付き、アマラントは歯噛みする。

「別にそう深刻になる事もないんじゃない?」

 そんなアマラントに声を掛けたのは、近くの家から出て来たエルザだった。

「エルザか。久しぶりだな。いつものか?」

 エルザの師匠でもあるアマラントは、彼女が時間が空いた時、動けない病人や怪我人のいる場所を回っている事を知っている。それ故の言葉であった。

「久しぶり。ええ、そんなところね」
「変わっていないようで何よりだ。それで、さっきの言葉は・・・・・・?」
「ああ、あれ? 執念深いこいつなら、そのうち同じ結論に達してたという事よ」

 どうやらエルザはクリスの葛藤に気付いていたらしく、あっさりとそう答える。

「だとしても、だ。それは邪神を倒してからでもいい筈だろう?」

 そう、アマラントが一番引っ掛かっていたのはそこだった。ただでさえ邪神を倒す事を期待されているというプレッシャーがあるというのに、更なるタスクをカズキに課すのは心苦しいと思っていたのだ。
 
「大丈夫よ。それ位で潰れる程、柔じゃないから。でもそうね。もしそれでも心苦しいというのなら・・・・・・」
「言うのなら?」
「カズキにあなたの経験を伝えてくれないかしら?」
「・・・・・・そんな事で良いのなら」

 こうしてアマラントは、クリス、エルザに続いてカズキの面倒も見る事になったのだった。
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