330 / 346
第三百三十話 カズキ、勇者にブチギレる その4
しおりを挟む
「出てこい。生きているのはわかってるんだ」
御者にロベールの町を解放した事を伝え、馬と共に避難するよう促したカズキは、大破した馬車の中から様子を伺っている二人へ声を掛けた。
「・・・・・・ぐっ、なんだ貴様は。俺たちが勇者だと知ってての所業か?」
カズキの確信を持った声に誤魔化せない事を悟ったのか、二人の男が馬車の残骸から這い出て来る。
二人共にあちこち傷を負っているが、何故か重傷と言えるほどの傷はない。
「成程。仲間を盾にして魔法を防いだのか」
その理由は、カズキが言った通りのものだった。
「仲間? 奴らはいると便利だから傍に置いていただけだ。勇者である我らと対等なわけがないだろう」
「その通り。何しろ我々には、邪神を倒すという崇高な使命があるのだからな!」
勇者二人は何が面白いのか、そう言って高笑いを上げる。不意打ちを受けた事で不覚を取りはしたが、目の前にいるのは少年ただ一人。
若い見た目に反して魔法の威力も高かったが、そういう人間が現れるのもこの世界ではよくある事だと彼らは知っている。
自分達勇者に恨みを持つ人間が、自らの命を省みる事無く魔力切れによるリバウンドで強引に魔力を増やし、彼らに復讐に来るというのはよく聞く話だ。
この類の人間は身体能力で勇者に敵わない事を知っているので、皆が皆、魔法によって自分達を倒そうと考えるのも特徴である。
故に彼らの感想としては、そういった有象無象の中の一人がまた復讐に来たのだと思ってしまったのも無理はなかったのだ。
「街や村を襲い、守らなければならない人々や猫達から搾取しておいて使命? 害虫の間違いじゃないのか?」
だから、カズキから侮蔑の言葉を投げつけられても勇者たちはニタニタと笑うばかりだった。
自分達が圧倒的に強者だと知っている彼らにとって、それ以外の人間の言葉など聞くに値しない。稀に聞く事があっても、それは殺す前に相手の絶望の表情を楽しむためという、極めて質の悪い理由からである。そして今回彼らの琴線に触れたのは、カズキが人と猫を同列に扱った事だった。
「おい」
「ああ」
故に二人の勇者は、カズキが大事そうに抱っこしている猫を攫うべくアイコンタクトを躱すと、同時にカズキに襲い掛かる。勿論、攫った後は目の前で嬲るように傷つけ、自分の無力に絶望的な表情を浮かべるのを堪能するつもりであった。
「ギャアアアアアア!」
「グハッ!」
「・・・・・・お前ら、今何をしようとした?」
誤算だったのは、カズキが魔術師でありながら彼ら以上の身体能力を持っていた事。そして、ナンシーを狙われた事でブチギレたカズキが、自分達以上に残酷で冷酷だった事。
哀れ、カズキの力を見誤った勇者二人は、自分達の両手両足が先端から少しづつ焼かれ、砕かれ、切り刻まれるという光景を見せつけられ、最終的には発狂する事で苦痛から逃れる事が出来たのであった。
御者にロベールの町を解放した事を伝え、馬と共に避難するよう促したカズキは、大破した馬車の中から様子を伺っている二人へ声を掛けた。
「・・・・・・ぐっ、なんだ貴様は。俺たちが勇者だと知ってての所業か?」
カズキの確信を持った声に誤魔化せない事を悟ったのか、二人の男が馬車の残骸から這い出て来る。
二人共にあちこち傷を負っているが、何故か重傷と言えるほどの傷はない。
「成程。仲間を盾にして魔法を防いだのか」
その理由は、カズキが言った通りのものだった。
「仲間? 奴らはいると便利だから傍に置いていただけだ。勇者である我らと対等なわけがないだろう」
「その通り。何しろ我々には、邪神を倒すという崇高な使命があるのだからな!」
勇者二人は何が面白いのか、そう言って高笑いを上げる。不意打ちを受けた事で不覚を取りはしたが、目の前にいるのは少年ただ一人。
若い見た目に反して魔法の威力も高かったが、そういう人間が現れるのもこの世界ではよくある事だと彼らは知っている。
自分達勇者に恨みを持つ人間が、自らの命を省みる事無く魔力切れによるリバウンドで強引に魔力を増やし、彼らに復讐に来るというのはよく聞く話だ。
この類の人間は身体能力で勇者に敵わない事を知っているので、皆が皆、魔法によって自分達を倒そうと考えるのも特徴である。
故に彼らの感想としては、そういった有象無象の中の一人がまた復讐に来たのだと思ってしまったのも無理はなかったのだ。
「街や村を襲い、守らなければならない人々や猫達から搾取しておいて使命? 害虫の間違いじゃないのか?」
だから、カズキから侮蔑の言葉を投げつけられても勇者たちはニタニタと笑うばかりだった。
自分達が圧倒的に強者だと知っている彼らにとって、それ以外の人間の言葉など聞くに値しない。稀に聞く事があっても、それは殺す前に相手の絶望の表情を楽しむためという、極めて質の悪い理由からである。そして今回彼らの琴線に触れたのは、カズキが人と猫を同列に扱った事だった。
「おい」
「ああ」
故に二人の勇者は、カズキが大事そうに抱っこしている猫を攫うべくアイコンタクトを躱すと、同時にカズキに襲い掛かる。勿論、攫った後は目の前で嬲るように傷つけ、自分の無力に絶望的な表情を浮かべるのを堪能するつもりであった。
「ギャアアアアアア!」
「グハッ!」
「・・・・・・お前ら、今何をしようとした?」
誤算だったのは、カズキが魔術師でありながら彼ら以上の身体能力を持っていた事。そして、ナンシーを狙われた事でブチギレたカズキが、自分達以上に残酷で冷酷だった事。
哀れ、カズキの力を見誤った勇者二人は、自分達の両手両足が先端から少しづつ焼かれ、砕かれ、切り刻まれるという光景を見せつけられ、最終的には発狂する事で苦痛から逃れる事が出来たのであった。
40
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる