322 / 355
第三百二十二話 カズキ、勇者の酷さを知る
しおりを挟む
「国内での魔物の出現数が、邪神復活前と変わらない程度に戻ったと報告があった」
クリス、エルザ、カズキの三人がランスリード国内を転戦し、邪神が復活してから発生したと思われる魔物の上位種、エンペラーとクイーンを討伐し続けた結果、ジュリアンが言うように魔物の出現数が落ち着いた。
まあ厳密に言えば、一部の弱い魔物は今も出現頻度は高いままなのだが、それは敢えて放置している状況である。何故ならば、その魔物は食料になるからだ。
「この件の切っ掛けなったサハギンを倒してから三ヶ月経っているけど、エンペラーとクイーンは再出現していないとの報告がリーザからあったわ。その後のオークも同様だし、他の魔物もそう。まだ断言はできないけど、一度倒せばエンペラーとクイーンは再出現しないと考えても良いと思うわ」
ジュリアンに続いて発言したのはソフィア。当初危惧していた、クイーンとエンペラーのおかわりが無い事に安堵したのか、その表情は明るい。
「じゃあこれからは、国外での活動がメインになるのね。予定通り、隣国のザイム王国から始めればいいの?」
「いや、アークバ王国に向かってくれ。ザイム王国には第ニ騎士団を派遣する」
エルザの問いに答えたはジュリアンだった。
「それは構わないけど、どうして?」
「魔物の群れが現れていない地域の村や町が賊に襲撃され、占領されているから助けてくれと『次元ポスト』で連絡が来た。それらの村や町はいずれも豊かな穀倉地帯らしく、このままだと今年の冬は大丈夫でも、来年には国全体が干上がる可能性が高いらしい」
「小さい村ならともかく、穀倉地帯の町ならそれなりに兵士や騎士がいる筈よね? なのに賊に占領されたって事は・・・・・・」
「恐らく勇者だろうな」
「そんな・・・・・・」
話には聞いていたが、この緊急事態に邪神と戦う事を考えもせず、本来庇護するべき町や村を襲った勇者という存在に、カズキが呻き声を上げる。
「気持ちは解るがこれが現実だ。我が国にも勇者寄りの考え方をする貴族や商人がいて、そいつらは騎士団の足を引っ張る事も平気でする。何故ならば、それが自分の利益になるからだ」
「だからと言って・・・・・・」
「勿論、奴らに好き勝手させるつもりはない。勇者とその取り巻きには然るべき報いを受けてもらう」
取り巻きは兎も角、勇者をどうにか出来る存在は少ない。だがジュリアンには秘策があった。
それは勇者を圧倒できるクリス、カズキ、エルザの三人に勇者を捕獲させ、邪神と戦う時に武器として利用する事。
勇者による攻撃で邪神にダメージを与えつつ、容赦のない扱いをする三人に対する恐怖を植え付け、【死に戻り】しても行動に躊躇するように仕向けるという、一石二鳥の策だった。
クリス、エルザ、カズキの三人がランスリード国内を転戦し、邪神が復活してから発生したと思われる魔物の上位種、エンペラーとクイーンを討伐し続けた結果、ジュリアンが言うように魔物の出現数が落ち着いた。
まあ厳密に言えば、一部の弱い魔物は今も出現頻度は高いままなのだが、それは敢えて放置している状況である。何故ならば、その魔物は食料になるからだ。
「この件の切っ掛けなったサハギンを倒してから三ヶ月経っているけど、エンペラーとクイーンは再出現していないとの報告がリーザからあったわ。その後のオークも同様だし、他の魔物もそう。まだ断言はできないけど、一度倒せばエンペラーとクイーンは再出現しないと考えても良いと思うわ」
ジュリアンに続いて発言したのはソフィア。当初危惧していた、クイーンとエンペラーのおかわりが無い事に安堵したのか、その表情は明るい。
「じゃあこれからは、国外での活動がメインになるのね。予定通り、隣国のザイム王国から始めればいいの?」
「いや、アークバ王国に向かってくれ。ザイム王国には第ニ騎士団を派遣する」
エルザの問いに答えたはジュリアンだった。
「それは構わないけど、どうして?」
「魔物の群れが現れていない地域の村や町が賊に襲撃され、占領されているから助けてくれと『次元ポスト』で連絡が来た。それらの村や町はいずれも豊かな穀倉地帯らしく、このままだと今年の冬は大丈夫でも、来年には国全体が干上がる可能性が高いらしい」
「小さい村ならともかく、穀倉地帯の町ならそれなりに兵士や騎士がいる筈よね? なのに賊に占領されたって事は・・・・・・」
「恐らく勇者だろうな」
「そんな・・・・・・」
話には聞いていたが、この緊急事態に邪神と戦う事を考えもせず、本来庇護するべき町や村を襲った勇者という存在に、カズキが呻き声を上げる。
「気持ちは解るがこれが現実だ。我が国にも勇者寄りの考え方をする貴族や商人がいて、そいつらは騎士団の足を引っ張る事も平気でする。何故ならば、それが自分の利益になるからだ」
「だからと言って・・・・・・」
「勿論、奴らに好き勝手させるつもりはない。勇者とその取り巻きには然るべき報いを受けてもらう」
取り巻きは兎も角、勇者をどうにか出来る存在は少ない。だがジュリアンには秘策があった。
それは勇者を圧倒できるクリス、カズキ、エルザの三人に勇者を捕獲させ、邪神と戦う時に武器として利用する事。
勇者による攻撃で邪神にダメージを与えつつ、容赦のない扱いをする三人に対する恐怖を植え付け、【死に戻り】しても行動に躊躇するように仕向けるという、一石二鳥の策だった。
40
お気に入りに追加
337
あなたにおすすめの小説
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました
もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる