上 下
321 / 355

第三百二十一話 カズキ、空間魔法を使って家を創る その7

しおりを挟む
「ちょっと魔法を調整させてください」

 大半の家具が【次元ハウス+ニャン】への入り口を通らない事が発覚したのを受け、カズキは魔法を改良すると宣言した。

「それは構わないけど、やるなら明日からになさい。いくら魔力が全快しているとはいえ、魔力枯渇を引き起こしたのは今日なんだから」
「・・・・・・わかりました」

 直ぐにでも始めようとしていたカズキは、先回りしたエルザに釘を刺され不承不承に頷いた。
 今なら詠唱で【次元ハウス+ニャン】を何度か発動しても、感覚的に倒れる事はないとわかっているのだが、それはカズキにしかわからない事。世話になりっぱなしのエルザに制止されては、我を通す事など出来る筈もなかった。

「よろしい。じゃあ続きは明日以降、カズキの準備が出来たら教えてくれる?」
「わかりました」

 そんな話をしてからカズキの準備が整ったのは、それから三日後。今回も立ち会うのはエルザ、フローネ、クレアであった。

「先ずはどう変わったのか教えてもらえる?」
「わかりました」

 エルザの言葉にカズキが答えた瞬間、その場にいた三人と二匹の視界が一瞬にして切り替わる。

「・・・・・・ここは【次元ハウス+ニャン】の中よね? いくつか聞きたい事はあるのだけど、扉を通らなくても移動できるようになったの?」
「はい。こうすれば荷物を運ぶ手間が省けると思ったので」
「確かにこれなら重い物を運ぶ必要はありませんね! じゃあ次の質問です! 部屋がこの前よりも大きくなっているのは何故ですか?」

 エルザに次いで言葉を発したフローネが言う通り、前回彼女たちが見た部屋よりも今回の部屋の方が広かった。具体的に言うと2倍くらい。

「意図したわけじゃないのですが、魔法を完成させたら何故か部屋の広さが倍になってました」
「そうなんですか。まあ、家具の大きさを考えたら、こちらの方が圧迫感がなくていいかもしれませんね」
「そうね。じゃあ最後の質問」

 フローネの言葉に同意したエルザが部屋の反対側を指差す。そこにあったのは、前回来た時には存在しなかった、次の部屋へと続くのであろう扉だった。

「あー、あれはですねえ・・・・・・」

 言葉で語るよりも直接見た方が早いと思ったカズキは、身振りで二人を促すと扉の前まで歩いていき、ドアノブに手を掛けた。

「なんでこんな事になったのか全く分からないんですが・・・・・・」

 そして、その言葉と共に扉を開放すると、何もない空間が果て無く続いていた。

「「・・・・・・これは?」」
「御覧の通り、延々と続くだけの空間です。これもやはり、魔法が完成したらこうなってました」
「そう・・・・・・。因みにだけど、この空間に何かを造る事って出来たりするの?」
「やった事はないですけど、たぶん問題ないと思います」
「そうなのね。じゃあ何か思いついたらお願いしてもいい?」
「構いませんよ」
「ありがとう」

 言質を取ったエルザは翌日に大浴場を。更にその翌日にはバス・トイレ付の個室を造らせる事に成功する。
 基本的に彼女が生活しているのは王城なので、それと遜色ない環境がいつでも利用できるのならば、やはり利用したいと思うのが人間という生き物だからだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気が付くと見知らぬ部屋にいた。 最初は、何が起こっているのか、状況を把握する事が出来なかった。 でも、鏡に映った自分の姿を見た時、この世界で生きてきた、リュカとしての記憶を思い出した。 記憶を思い出したはいいが、状況はよくなかった。なぜなら、貴族では失敗した人がいない、召喚の儀を失敗してしまった後だったからだ! 貴族としては、落ちこぼれの烙印を押されても、5歳の子供をいきなり屋敷の外に追い出したりしないだろう。しかも、両親共に、過保護だからそこは大丈夫だと思う……。 でも、両親を独占して甘やかされて、勉強もさぼる事が多かったため、兄様との関係はいいとは言えない!! このままでは、兄様が家督を継いだ後、屋敷から追い出されるかもしれない! 何とか兄様との関係を改善して、追い出されないよう、追い出されてもいいように勉強して力を付けるしかない! だけど、勉強さぼっていたせいで、一般常識さえも知らない事が多かった……。 それに、勉強と兄様との関係修復を目指して頑張っても、兄様との距離がなかなか縮まらない!! それでも、今日も関係修復頑張ります!! 5/9から小説になろうでも掲載中

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...