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第三百十四話 カズキ、初めての野営をする その5
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「みぃあ」
「ん・・・・・・。おはようナンシー」
朝の5時。ナンシーの鳴き声で目を覚ましたカズキは、素早く身だしなみを整えると、お腹を空かせたナンシーの為に調理場へ移動した。
「みぃあ!」
「今日は魚の気分かぁ。直ぐ準備するからいい子で待っててくだちゃいね~」
ナンシーに話し掛けながらも手を止めないカズキは、予め一食分に小分けされた冷凍のマグロの柵を取り出すと、魔法で解凍してから食べやすい大きさにカットし、皿に盛り付けてお座りして待っているナンシーの目の前に置いた。
「どうぞ、召し上がれ」
「みぃあ!」
返事をしたナンシーが一心不乱に食事をしているのを幸せそうに眺めながら、カズキは最近完成した魔法を使って別の皿に水を満たす。綺麗なのは勿論、回復効果まで持たせたその水を飲めば、塩分の取りすぎや毛玉を吐く事の防止、更には尿路結石や腎臓病まで予防できる、正に夢のような魔法だ。
「おはよう」
食事を終えたナンシーにブラッシングをしていると、エルザが食堂に現れる。彼女の一日は女神レミアへの祈りから始まるので、やはり朝は早い事をカズキは知っていた。
「おはよう。外は面白い事になってるな」
続いて現れたのはクリス。彼も何もない日は朝から鍛錬をしているので朝は早い。だが今朝の彼の様子を見ると、鍛錬をしてきた後にはとても見えなかった。
「面白い事ですか?」
クリスの言う面白い事が何か分からず、カズキの顔に疑問が浮かぶ。その疑問に答えてくれたのは、朝食の準備をしていたエルザだった。
「この砦の周りをオークが取り囲んでいるのよ。もしかしたら、ランスリードに向かっていたのかもしれないわね」
「気配から察するに、数は少なくとも3万。エンペラーがいるのは確定だろうな」
「そうね。後はクイーンがいてくれれば、手間が省けるのだけど」
「いるんじゃないか? この砦なんてスルーしてもいいのに、態々攻撃を仕掛けてきてるんだから」
「ここを拠点に出来れば、安心して子供を産み育てる事が出来るから? ・・・・・・クリスにしては説得力ある発言ね」
「ほっとけ」
エルザの言葉に軽口で返したクリスは、外の気配を感じ取れないカズキが魔法を使って外の様子を映し出している事に気付く。
「気配の大きさ的に、このデカいのがエンペラーだろう。その周りにいるのがキングで・・・・・・、ん? 何か荷車みたいなのに乗ってる、やたらとデカいのがいるな」
そのオークは、身長2メートルはあるエンペラーの3倍ほどの背丈を誇っていた。それだけなら脅威になり得るが、横幅がそれ以上にあるせいか満足に動く事が出来ず、並オークが20匹掛かりで引く荷車に横たわっている。
「これがクイーンか?」
「でしょうね。見た目が妊婦って感じだもの。問題は、どの位の間隔でオークを産むのかだけど・・・・・・。あ」
「産まれましたね。・・・・・・まさか口から吐き出すとは思いませんでしたけど」
図らずも気色悪い物を見せられたカズキは、即座に魔法を解除した。
「ちょっと予想外だったけど、これで確定ね」
「ああ。しかも、産まれてきた時点で成体だったな」
「そうね。どれくらいのペースで増えるのかわからないけど、他の魔物のクイーンも同じような感じだったら、退治しても減らないのも道理ね」
「ああ。後は新しいエンペラーやクイーンが産まれない様、祈るしかない」
「その検証の為にも、先ずは外にいるオークを殲滅する事から始めましょうか」
その後、エルザの用意した朝食を食べた三人は、休憩した後にオークを殲滅した。尚、カズキが造った砦は3万のオークの攻撃にもビクともしなかった為、後に騎士団の詰め所として利用される事になったという。
「ん・・・・・・。おはようナンシー」
朝の5時。ナンシーの鳴き声で目を覚ましたカズキは、素早く身だしなみを整えると、お腹を空かせたナンシーの為に調理場へ移動した。
「みぃあ!」
「今日は魚の気分かぁ。直ぐ準備するからいい子で待っててくだちゃいね~」
ナンシーに話し掛けながらも手を止めないカズキは、予め一食分に小分けされた冷凍のマグロの柵を取り出すと、魔法で解凍してから食べやすい大きさにカットし、皿に盛り付けてお座りして待っているナンシーの目の前に置いた。
「どうぞ、召し上がれ」
「みぃあ!」
返事をしたナンシーが一心不乱に食事をしているのを幸せそうに眺めながら、カズキは最近完成した魔法を使って別の皿に水を満たす。綺麗なのは勿論、回復効果まで持たせたその水を飲めば、塩分の取りすぎや毛玉を吐く事の防止、更には尿路結石や腎臓病まで予防できる、正に夢のような魔法だ。
「おはよう」
食事を終えたナンシーにブラッシングをしていると、エルザが食堂に現れる。彼女の一日は女神レミアへの祈りから始まるので、やはり朝は早い事をカズキは知っていた。
「おはよう。外は面白い事になってるな」
続いて現れたのはクリス。彼も何もない日は朝から鍛錬をしているので朝は早い。だが今朝の彼の様子を見ると、鍛錬をしてきた後にはとても見えなかった。
「面白い事ですか?」
クリスの言う面白い事が何か分からず、カズキの顔に疑問が浮かぶ。その疑問に答えてくれたのは、朝食の準備をしていたエルザだった。
「この砦の周りをオークが取り囲んでいるのよ。もしかしたら、ランスリードに向かっていたのかもしれないわね」
「気配から察するに、数は少なくとも3万。エンペラーがいるのは確定だろうな」
「そうね。後はクイーンがいてくれれば、手間が省けるのだけど」
「いるんじゃないか? この砦なんてスルーしてもいいのに、態々攻撃を仕掛けてきてるんだから」
「ここを拠点に出来れば、安心して子供を産み育てる事が出来るから? ・・・・・・クリスにしては説得力ある発言ね」
「ほっとけ」
エルザの言葉に軽口で返したクリスは、外の気配を感じ取れないカズキが魔法を使って外の様子を映し出している事に気付く。
「気配の大きさ的に、このデカいのがエンペラーだろう。その周りにいるのがキングで・・・・・・、ん? 何か荷車みたいなのに乗ってる、やたらとデカいのがいるな」
そのオークは、身長2メートルはあるエンペラーの3倍ほどの背丈を誇っていた。それだけなら脅威になり得るが、横幅がそれ以上にあるせいか満足に動く事が出来ず、並オークが20匹掛かりで引く荷車に横たわっている。
「これがクイーンか?」
「でしょうね。見た目が妊婦って感じだもの。問題は、どの位の間隔でオークを産むのかだけど・・・・・・。あ」
「産まれましたね。・・・・・・まさか口から吐き出すとは思いませんでしたけど」
図らずも気色悪い物を見せられたカズキは、即座に魔法を解除した。
「ちょっと予想外だったけど、これで確定ね」
「ああ。しかも、産まれてきた時点で成体だったな」
「そうね。どれくらいのペースで増えるのかわからないけど、他の魔物のクイーンも同じような感じだったら、退治しても減らないのも道理ね」
「ああ。後は新しいエンペラーやクイーンが産まれない様、祈るしかない」
「その検証の為にも、先ずは外にいるオークを殲滅する事から始めましょうか」
その後、エルザの用意した朝食を食べた三人は、休憩した後にオークを殲滅した。尚、カズキが造った砦は3万のオークの攻撃にもビクともしなかった為、後に騎士団の詰め所として利用される事になったという。
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