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第三一〇話 カズキ、初めての野営をする その1
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「・・・・・・以上で式典を終了とする。皆の者! 旅立つ三人の英雄に盛大な拍手を!」
対邪神への方針が決定した一週間後。邪神討伐祈念の式典が開かれた。
とは言っても今は戦時中。式典に予算を掛ける事はあまり出来ないので、集まった民衆の前で着飾ったクリス、エルザ、カズキの三人に、これまた着飾ったセバスチャンが大仰に声を掛け、その後に各宗派のお偉いさんが三人を祝福し、最後は飾り付けたオープンカー式の馬車に乗って三人が旅立つという演出をするだけの簡素なものだった。
「やれやれ、肩が凝ったぜ」
「ホントね」
「疲れましたぁ」
「みぃあ・・・・・・」
街の門を出たところで場所を降りた三人とナンシー(魔法で姿を消し、カズキがずっと抱っこしていた)は、窮屈な衣装を脱いで馬車を降り、門の外の目立たたない場所に停めてあった馬車に乗り込む。
目指すは王都から東へ三日の距離にある、草木が鬱蒼と生い茂る場所である。
ここ最近、その周辺でオークの集団が頻繁に目撃されている事から、そこにエンペラーとクイーンがいる可能性が高いと判断されたのだ。
「今日はここまでだな」
御者を務めていたクリスが、薄暗くなった空を見て馬車を止める。これから行く場所は一応街道は通っているが、資源に乏しく、また農地として開発しようにも他にいくらでも優先する場所がある為、付近に村などもないし、野営の為の広場すらない。その為、野営しようと思った時に停車した場所が野営場所になるのだ。
「俺は適当に動物を狩ってくるから、二人は火を熾した後、テントを組み立てておいてくれ」
クリスはそう言うと、二人の返事も待たずに駆け出した。カズキは野営は初めてだが、エルザが付いているので問題ないだろう。と、この時はそう思っていたのだ。
「お、ウサギ見っけ」
獲物を探し始めて1分後。首尾よく獲物を見つけたクリスは、ウサギに気付かれない程の速度で近づき剣を一閃。その際、僅かに地面が揺れたが、その程度で狙いを違える筈もなく、ウサギは綺麗に両断されていた。
「よし、次だ」
クリスはその後も同じ要領で二羽のウサギを狩ると、三羽まとめて宙に放り、剣を物凄いスピードで閃かせる。すると次の瞬間には、可食部とそれ以外で分けられるという寸法だった。
「ま、こんなこもんか」
常識外れの解体方法を披露したクリスは、食べられない部分を土中に埋めると踵を返す。その際、また地面が僅かに揺れた事を気にしたクリスは、馬車に戻る前に周囲の見回りをする事にした。
もしかしたら巨大な魔物が付近にいるかもしれないと思ったからだ。
「出来れば依頼の出ている魔物が良いんだが・・・・・・」
そう呟きつつ、期待に目を輝かせるクリス。だが彼の願いに反して、周囲に魔物は棲んでいなかった。
「ちっ、無駄足か」
ぼやきながら馬車へと戻ろうとしたクリスは見てしまった。
「・・・・・・はい?」
馬車のある筈の方角に、何故か石造りの頑丈そうな建物が現れているのを。
対邪神への方針が決定した一週間後。邪神討伐祈念の式典が開かれた。
とは言っても今は戦時中。式典に予算を掛ける事はあまり出来ないので、集まった民衆の前で着飾ったクリス、エルザ、カズキの三人に、これまた着飾ったセバスチャンが大仰に声を掛け、その後に各宗派のお偉いさんが三人を祝福し、最後は飾り付けたオープンカー式の馬車に乗って三人が旅立つという演出をするだけの簡素なものだった。
「やれやれ、肩が凝ったぜ」
「ホントね」
「疲れましたぁ」
「みぃあ・・・・・・」
街の門を出たところで場所を降りた三人とナンシー(魔法で姿を消し、カズキがずっと抱っこしていた)は、窮屈な衣装を脱いで馬車を降り、門の外の目立たたない場所に停めてあった馬車に乗り込む。
目指すは王都から東へ三日の距離にある、草木が鬱蒼と生い茂る場所である。
ここ最近、その周辺でオークの集団が頻繁に目撃されている事から、そこにエンペラーとクイーンがいる可能性が高いと判断されたのだ。
「今日はここまでだな」
御者を務めていたクリスが、薄暗くなった空を見て馬車を止める。これから行く場所は一応街道は通っているが、資源に乏しく、また農地として開発しようにも他にいくらでも優先する場所がある為、付近に村などもないし、野営の為の広場すらない。その為、野営しようと思った時に停車した場所が野営場所になるのだ。
「俺は適当に動物を狩ってくるから、二人は火を熾した後、テントを組み立てておいてくれ」
クリスはそう言うと、二人の返事も待たずに駆け出した。カズキは野営は初めてだが、エルザが付いているので問題ないだろう。と、この時はそう思っていたのだ。
「お、ウサギ見っけ」
獲物を探し始めて1分後。首尾よく獲物を見つけたクリスは、ウサギに気付かれない程の速度で近づき剣を一閃。その際、僅かに地面が揺れたが、その程度で狙いを違える筈もなく、ウサギは綺麗に両断されていた。
「よし、次だ」
クリスはその後も同じ要領で二羽のウサギを狩ると、三羽まとめて宙に放り、剣を物凄いスピードで閃かせる。すると次の瞬間には、可食部とそれ以外で分けられるという寸法だった。
「ま、こんなこもんか」
常識外れの解体方法を披露したクリスは、食べられない部分を土中に埋めると踵を返す。その際、また地面が僅かに揺れた事を気にしたクリスは、馬車に戻る前に周囲の見回りをする事にした。
もしかしたら巨大な魔物が付近にいるかもしれないと思ったからだ。
「出来れば依頼の出ている魔物が良いんだが・・・・・・」
そう呟きつつ、期待に目を輝かせるクリス。だが彼の願いに反して、周囲に魔物は棲んでいなかった。
「ちっ、無駄足か」
ぼやきながら馬車へと戻ろうとしたクリスは見てしまった。
「・・・・・・はい?」
馬車のある筈の方角に、何故か石造りの頑丈そうな建物が現れているのを。
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