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第三百九話 邪神討伐の方針決定

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「・・・・・・という訳」
「報告を聞いた時は驚きましたよ。まさかサハギンにクイーン種とも言うべき存在が生まれていたなんてね」

 リーザからランスリードへと帰ってきたソフィアは、休憩もそこそこにジュリアンの執務室へ顔を出した。
 彼女がいなかった間の国内の魔物退治の状況の確認と、既に報告は『次元ポスト』で行っていたが、文章では伝えきれない、実際に肌で感じたサハギン退治の様子を共有する為である。

「私もこの目で見なければ信じていなかったでしょうね。まあそのお陰で、魔物の活性化と呼ばれている現象の正体が推測出来たんだけど」
「やはり母上も同じ事を考えましたか・・・・・・」
「まあね。以前から疑問に思っていたのよ。活性化という言葉に騙されていたけど、それにしても退治した魔物の数が多すぎるって」
「確かにそうですね。普通なら時と共に魔物の数は減っていく筈。それなのに、時を重ねる毎に魔物の数は増える一方です。今までは『活性化』という言葉に思考停止していましたが、サハギンにクイーン種というイレギュラーが発生した事で、魔物の数の増加に説明がつきます。即ち、他の魔物にもクイーン種がいるのではないか? と」
「そうね。それに加えて、キングやエンペラー種も生まれやすくなっているのだと思うわ。それもクイーン同様、今まで確認されてこなかった魔物にね」
「キングやエンペラー種には、率いた魔物を強化する能力がありますからね。それを今までは邪神の影響で『活性化』していると思い込んでいた。実際には好戦的なキングやエンペラーに率いられた群れが暴れていたかもしれないのに」

 考えている事が一緒だとわかった二人は、この推測を確信に変えるべく考えを巡らせる。とは言ってもエンペラーに勝てる人類など限られているので、結論が出るのは早かった。

「クリス、エルザ、カズキの三人に任せるしかないわね。冒険者ギルドと協力して、まずは国内の魔物を一掃。その後、新たなクイーンやエンペラーが生まれない様なら、隣国に活動の拠点を移して同じ事を繰り返す。 逆にクイーンやエンペラーが生まれるようなら、多少の犠牲を承知の上で邪神の居場所を特定、討伐する事を優先させる」
「出来れば前者であって欲しいですね。後者の場合だと、四百年かけて復興した今までの先人たちの努力が無駄になってしまいますから」
「そうね。是非ともそうあって欲しいものだわ」

 こうして邪神への対応は決まり、各国の首脳陣と冒険者ギルドへ方針が布告された。
 本来、各国の首脳陣や冒険者ギルドのグランドマスターと協議の上で方針を決める筈なのに、この二人だけで世界的な方針を決めている理由は、他国と冒険者ギルドが魔物の襲撃に手一杯なのと、対邪神の切り札である三人共が、ランスリードに帰属しているからだ。
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