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第三百八話 カズキ、初めての海へ その9

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「野郎ども! サハギンの脅威は完全に去った! 今日からまた、存分に漁に勤しんでくれ!」
「「「「おおー!」」」」

 リーザの港にアーネストの野太い声が響いた。それに応じて、やはり野太い声の男達が我先にと停泊している船に乗り込んでいく。
 一昨日、昨日と念のために海のパトロールを行い、その結果サハギンの脅威が完全に取り除かた事が確認されたため、港町リーザにいつもの活気が戻ってきたのだ。

「これでやっと、本来の目的を果たす事が出来るわね」
「そうだな。アイツらも張り切って漁をするだろうから、今日一日で城に持ち帰る分は余裕で集まる。勿論、全部買い取ってくれるんだろ?」
「ええ。カズキに聞いたら氷漬けにして持って帰るのは問題ないって言ってたから。帰りはちょっとした騒ぎになりそうだけどね」

 ソフィアはアーネストに答えると、魚の運搬を軽い調子で請け負ったカズキを見る。ナンシーやクレア相手に屈託のない笑顔を浮かべている様子を見て、カズキが人知を超えた魔法を使うとは誰も思わないだろうと考えながら。

「 確かにな! ワイバーンに続いて、今度は魚の群れが城に飛んで行くってわけだ! そりゃあ騒ぎになるだろうぜ!」
「目立ちたくないって言う割に、やる事が一々派手なのよね。変なところで抜けてるっていうか」
「そりゃ仕方ねえよ! 右も左もわからない世界に来て、いきなり世界の命運を託されたんだからな! 余裕があるように見えて、実はいっぱいいっぱいなんだろうぜ!」
「ええ、その通りなんでしょうね。だからこそ、今回は息抜きをしてもらいたかったのだけど・・・・・・」
「来て早々にサハギン退治だもんな。邪神が絶賛活躍中だから、仕方ねえっちゃ仕方ねえんだが・・・・・・。良し!」
「・・・・・・何か思いついたの?」
「ああ。昨日仕掛けた網の引き上げに同行させようと思ってな。昨日まではカズキに操船を任せていたが、今日は全部俺がやる。その間はボーっとしてるも良し、気が向いたら手伝うも良しだ」
「・・・・・・そうね。良いんじゃないかしら」

 どう考えてもカズキを漁師の道に引きずり込もうとしているようにしか思えなかったが、ソフィアはアーネストの意見を採用する事にした。無理強いする気は無いようだし、結果的にカズキが漁に興味を持ったとしても、それは彼自身が選択した結果だからだ。

「みぃあ」
「みぃあ」
「ミャー」
「美味しいです!」
「そうそう、包丁の使い方はそんな感じだ。次は・・・・・・」
「はい! わかりました!」

 まあ最終的にカズキが選んだのは、猫達に自分の料理を食べさせる為、アーネストに弟子入りする事だったのだが。
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