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第二百九十六話 カズキ、魔剣を量産する その3

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「ここが武具庫よ」

 厨房の銀食器全てに魔法を掛けたカズキは、エルザによって武具庫に連行された。
 
「なんか肌寒いですね。それに暗い・・・・・・」

 カズキはそう言うと、暖を取る為に足元を歩いていたナンシーを抱っこした。

「気温と湿度が高いと鉄って錆びやすいからよ。という訳だから、魔法で明るくしてちょうだい」
「わかりました」

 エルザの要請に応じてカズキが魔法の明かりを灯すと、武具庫全体が真昼の様に明るくなる。

「うわぁ・・・・・・」

 そのお陰で武具庫の全貌が明らかになると、カズキが感嘆の声を漏らした。学校の体育館ほどの広さの武具庫の中に、同じ意匠のプレートメイルがずらりと並んでいたからだ。

「感動しているとこ悪いんだけど、これは全部儀礼用よ。ランスリードの騎士は大半が冒険者上がりだから、普段は愛用の鎧にランスリード騎士団の紋章を刻んだのを着用しているわ」
「・・・・・・えぇ~」

 そろいの鎧を着て、整然と行軍する騎士団を幻視していたカズキの感動は、エルザにより現実に引き戻された事によって終了した。

「さ、いつまでも呆けてないで行くわよ」

 エルザはそんなカズキの手を取ると、奥へ向かってズカズカと歩いていく。そうして辿り着いた場所には、見事な意匠が施された女性用と思しき鎧が安置してあった。

「これは?」
「私の鎧。神託によって私が魔王を討伐するメンバーに選ばれた時に、総本山から賜った物よ。見栄えが良いように純銀製にしてるから、防御力は皆無だけど」
「という事は、これも儀礼用ですか?」
「ええ。この国の戦況が落ち着いたら邪神討伐祈念の式典があるから、その時に着用する予定よ。・・・・・・ああ、その時の為に、アナタの衣装も誂えておかないとね。式典の主役なんだし」
「え゛っ?」
「なに驚いてるの? あなたは邪神討伐の切り札なんだから、主役になるのは当然でしょ?」
「それって欠席出来たりは・・・・・・?」
「無理ね」
「そんなぁ~。邪神を倒した後はナンシーとひっそり過ごそうと思ってたのに~」
「ワイバーン丸ごとお持ち帰りなんてド派手な事をしているのに、ひっそりと暮らしていけると本気で思ってるの?」
「みんなワイバーンを見てたから、イケるかと思って・・・・・・」
「そう言われてみれば、そんな気もするわね・・・・・・」

 思い返してみると、確かにカズキに注目していた住民はいなかったように思える。成人もしていない少年がワイバーンを倒したなど、住民には想像出来なかったのだろう。
 そう考えたエルザは、カズキの要望を可能な限り叶えようと動く事に決めた。

「じゃあこうしましょうか。式典には参加してもらうけど、正体が分からないような衣装にする。あなたの事を知っている冒険者ギルドには口止めをする。これでどう?」
「それでお願いします!」
「わかったわ」

 エルザは答えると、数か月ぶりに愛用のメイスを手に取った。
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