296 / 343
第二百九十六話 カズキ、魔剣を量産する その3
しおりを挟む
「ここが武具庫よ」
厨房の銀食器全てに魔法を掛けたカズキは、エルザによって武具庫に連行された。
「なんか肌寒いですね。それに暗い・・・・・・」
カズキはそう言うと、暖を取る為に足元を歩いていたナンシーを抱っこした。
「気温と湿度が高いと鉄って錆びやすいからよ。という訳だから、魔法で明るくしてちょうだい」
「わかりました」
エルザの要請に応じてカズキが魔法の明かりを灯すと、武具庫全体が真昼の様に明るくなる。
「うわぁ・・・・・・」
そのお陰で武具庫の全貌が明らかになると、カズキが感嘆の声を漏らした。学校の体育館ほどの広さの武具庫の中に、同じ意匠のプレートメイルがずらりと並んでいたからだ。
「感動しているとこ悪いんだけど、これは全部儀礼用よ。ランスリードの騎士は大半が冒険者上がりだから、普段は愛用の鎧にランスリード騎士団の紋章を刻んだのを着用しているわ」
「・・・・・・えぇ~」
そろいの鎧を着て、整然と行軍する騎士団を幻視していたカズキの感動は、エルザにより現実に引き戻された事によって終了した。
「さ、いつまでも呆けてないで行くわよ」
エルザはそんなカズキの手を取ると、奥へ向かってズカズカと歩いていく。そうして辿り着いた場所には、見事な意匠が施された女性用と思しき鎧が安置してあった。
「これは?」
「私の鎧。神託によって私が魔王を討伐するメンバーに選ばれた時に、総本山から賜った物よ。見栄えが良いように純銀製にしてるから、防御力は皆無だけど」
「という事は、これも儀礼用ですか?」
「ええ。この国の戦況が落ち着いたら邪神討伐祈念の式典があるから、その時に着用する予定よ。・・・・・・ああ、その時の為に、アナタの衣装も誂えておかないとね。式典の主役なんだし」
「え゛っ?」
「なに驚いてるの? あなたは邪神討伐の切り札なんだから、主役になるのは当然でしょ?」
「それって欠席出来たりは・・・・・・?」
「無理ね」
「そんなぁ~。邪神を倒した後はナンシーとひっそり過ごそうと思ってたのに~」
「ワイバーン丸ごとお持ち帰りなんてド派手な事をしているのに、ひっそりと暮らしていけると本気で思ってるの?」
「みんなワイバーンを見てたから、イケるかと思って・・・・・・」
「そう言われてみれば、そんな気もするわね・・・・・・」
思い返してみると、確かにカズキに注目していた住民はいなかったように思える。成人もしていない少年がワイバーンを倒したなど、住民には想像出来なかったのだろう。
そう考えたエルザは、姉としてカズキの要望を可能な限り叶えようと動く事に決めた。
「じゃあこうしましょうか。式典には参加してもらうけど、正体が分からないような衣装にする。あなたの事を知っている冒険者ギルドには口止めをする。これでどう?」
「それでお願いします!」
「わかったわ」
エルザは答えると、数か月ぶりに愛用のメイスを手に取った。
厨房の銀食器全てに魔法を掛けたカズキは、エルザによって武具庫に連行された。
「なんか肌寒いですね。それに暗い・・・・・・」
カズキはそう言うと、暖を取る為に足元を歩いていたナンシーを抱っこした。
「気温と湿度が高いと鉄って錆びやすいからよ。という訳だから、魔法で明るくしてちょうだい」
「わかりました」
エルザの要請に応じてカズキが魔法の明かりを灯すと、武具庫全体が真昼の様に明るくなる。
「うわぁ・・・・・・」
そのお陰で武具庫の全貌が明らかになると、カズキが感嘆の声を漏らした。学校の体育館ほどの広さの武具庫の中に、同じ意匠のプレートメイルがずらりと並んでいたからだ。
「感動しているとこ悪いんだけど、これは全部儀礼用よ。ランスリードの騎士は大半が冒険者上がりだから、普段は愛用の鎧にランスリード騎士団の紋章を刻んだのを着用しているわ」
「・・・・・・えぇ~」
そろいの鎧を着て、整然と行軍する騎士団を幻視していたカズキの感動は、エルザにより現実に引き戻された事によって終了した。
「さ、いつまでも呆けてないで行くわよ」
エルザはそんなカズキの手を取ると、奥へ向かってズカズカと歩いていく。そうして辿り着いた場所には、見事な意匠が施された女性用と思しき鎧が安置してあった。
「これは?」
「私の鎧。神託によって私が魔王を討伐するメンバーに選ばれた時に、総本山から賜った物よ。見栄えが良いように純銀製にしてるから、防御力は皆無だけど」
「という事は、これも儀礼用ですか?」
「ええ。この国の戦況が落ち着いたら邪神討伐祈念の式典があるから、その時に着用する予定よ。・・・・・・ああ、その時の為に、アナタの衣装も誂えておかないとね。式典の主役なんだし」
「え゛っ?」
「なに驚いてるの? あなたは邪神討伐の切り札なんだから、主役になるのは当然でしょ?」
「それって欠席出来たりは・・・・・・?」
「無理ね」
「そんなぁ~。邪神を倒した後はナンシーとひっそり過ごそうと思ってたのに~」
「ワイバーン丸ごとお持ち帰りなんてド派手な事をしているのに、ひっそりと暮らしていけると本気で思ってるの?」
「みんなワイバーンを見てたから、イケるかと思って・・・・・・」
「そう言われてみれば、そんな気もするわね・・・・・・」
思い返してみると、確かにカズキに注目していた住民はいなかったように思える。成人もしていない少年がワイバーンを倒したなど、住民には想像出来なかったのだろう。
そう考えたエルザは、姉としてカズキの要望を可能な限り叶えようと動く事に決めた。
「じゃあこうしましょうか。式典には参加してもらうけど、正体が分からないような衣装にする。あなたの事を知っている冒険者ギルドには口止めをする。これでどう?」
「それでお願いします!」
「わかったわ」
エルザは答えると、数か月ぶりに愛用のメイスを手に取った。
41
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた
藤岡 フジオ
ファンタジー
遥か未来の地球。地球型惑星の植民地化が進む中、地球外知的生命体が見つかるには至らなかった。
しかしある日突然、一人の科学者が知的生命体の住む惑星を見つけて地球に衝撃が走る。
惑星は発見した科学者の名をとって惑星ヒジリと名付けられた。知的生命体の文明レベルは低く、剣や魔法のファンタジー世界。
未知の食材を見つけたい料理人の卵、道 帯雄(ミチ オビオ)は運良く(運悪く?)惑星ヒジリへと飛ばされ、相棒のポンコツ女騎士と共に戦いと料理の旅が始まる。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから
ハーーナ殿下
ファンタジー
冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。
だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。
これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる