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第二百九十三話 カズキ、戦線に投入される
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「あれが魔物の群れだ。邪神が力を取り戻しているからなのかは知らんが、最近は日を追うごとに魔物の数が増えている。今のままだと邪神を倒しにいく余裕もない程にな」
カズキが戦力になる事を知ったジュリアンは、予定を前倒しにしてカズキを戦線に投入する事に決めた。
以前、エルザが戦況が落ち着いてきたとは言ったが、それはランスリードだけの話。それもクリスが一人で国内を走り回り、騎士団の負担を減らしたからだった。
普通の人間ならそんなブラックな任務は御免だと言うだろうが、クリスは嬉々としてその任務を受けた。クリスの借金に目を付けたジュリアンが、国で彼の借金を肩代わりするという条件を付けたからだ。
お陰でカズキの訓練の時間を捻出する事に成功したが、それも不要になった今、カズキに必要なのは殺しの経験だろうと、ジュリアンはクリスを付き添わせて魔物退治に赴かせたのである。
「そんなに多いんですか?」
「ああ。各国とも魔物の対応に追われているせいで、邪神の居場所すらわかっていない。邪神を倒す為に庇護されてきた勇者の末裔は、数十年前に『勇者国家サイトウ』とかいうふざけた国を造ってやりたい放題だしな。・・・・・・だからカズキが女神レミアに選ばれたんだろうが」
クリスはそう言って、勇者の末裔が如何に酷いのかを語り始める。これはジュリアンからの指示で、邪神を倒した後、勇者を排除する為に必要だからだ。
「さて、色々と話をしたが、まずは魔物の群れの殲滅からだ。俺はサポートに回るから、カズキが魔物を倒してくれ」
「・・・・・・わかりました」
返事をしたカズキがナンシーをクリスに預け、魔物の群れの前に立ちはだかる。ジュリアンはカズキが人型の相手を殺せるかどうか心配していたが、クリスは全く心配していなかった。
ナンシーが生まれた時に聞いた覚悟の言葉に、不退転の決意を感じ取っていたからだ。
「グギャ! ゲギャギャ!」
突然現れた少年の只ならない気配を感じ取ったのか、1000を超えるゴブリンの行進が止まる。
だが群れの中心となっている、一際大きな個体が号令を掛けると、ゴブリンたちは気を取り直してカズキに殺到しようとした。
「悪いけど、色々と試させてもらう」
対するカズキは、手始めにワイバーンにも使った【ブリザード】を発動して先頭のゴブリンを氷漬けにし、後続の移動を阻害すると、炎の矢、竜巻、石の礫、雷などの魔法を詠唱なしに同時に使い、一瞬の後に半数を壊滅させてしまった。
「・・・・・・こりゃあ凄ぇ」
それはジュリアンやソフィアなどといった、世界最高峰の魔法使いを身内に持つクリスから見ても信じられない光景だったが、カズキにはまだ上があった。
「紅蓮の炎よ、我が前に立ちはだかる障壁を焼き払い、真理の光を導き出さん。熾烈なる戦いの中で、我が魔力を顕現させ、敵を打ち破る力を示せ! 【レーヴァテイン】!」
今までしなかった詠唱をしたかと思うと、カズキの身体から膨大な魔力が放たれ、その一部が炎の剣を形作ったのだ。
「・・・・・・なんだ!?」
「行け!」
初めて見る魔法にクリスが驚いているとも知らず、カズキが炎の剣にゴブリンの殲滅を命じると、炎の剣は高速で飛んで行き、ゴブリン達の真ん中で爆発。煙が晴れた頃には、ゴブリンの欠片さえも残っていなかった。
カズキが戦力になる事を知ったジュリアンは、予定を前倒しにしてカズキを戦線に投入する事に決めた。
以前、エルザが戦況が落ち着いてきたとは言ったが、それはランスリードだけの話。それもクリスが一人で国内を走り回り、騎士団の負担を減らしたからだった。
普通の人間ならそんなブラックな任務は御免だと言うだろうが、クリスは嬉々としてその任務を受けた。クリスの借金に目を付けたジュリアンが、国で彼の借金を肩代わりするという条件を付けたからだ。
お陰でカズキの訓練の時間を捻出する事に成功したが、それも不要になった今、カズキに必要なのは殺しの経験だろうと、ジュリアンはクリスを付き添わせて魔物退治に赴かせたのである。
「そんなに多いんですか?」
「ああ。各国とも魔物の対応に追われているせいで、邪神の居場所すらわかっていない。邪神を倒す為に庇護されてきた勇者の末裔は、数十年前に『勇者国家サイトウ』とかいうふざけた国を造ってやりたい放題だしな。・・・・・・だからカズキが女神レミアに選ばれたんだろうが」
クリスはそう言って、勇者の末裔が如何に酷いのかを語り始める。これはジュリアンからの指示で、邪神を倒した後、勇者を排除する為に必要だからだ。
「さて、色々と話をしたが、まずは魔物の群れの殲滅からだ。俺はサポートに回るから、カズキが魔物を倒してくれ」
「・・・・・・わかりました」
返事をしたカズキがナンシーをクリスに預け、魔物の群れの前に立ちはだかる。ジュリアンはカズキが人型の相手を殺せるかどうか心配していたが、クリスは全く心配していなかった。
ナンシーが生まれた時に聞いた覚悟の言葉に、不退転の決意を感じ取っていたからだ。
「グギャ! ゲギャギャ!」
突然現れた少年の只ならない気配を感じ取ったのか、1000を超えるゴブリンの行進が止まる。
だが群れの中心となっている、一際大きな個体が号令を掛けると、ゴブリンたちは気を取り直してカズキに殺到しようとした。
「悪いけど、色々と試させてもらう」
対するカズキは、手始めにワイバーンにも使った【ブリザード】を発動して先頭のゴブリンを氷漬けにし、後続の移動を阻害すると、炎の矢、竜巻、石の礫、雷などの魔法を詠唱なしに同時に使い、一瞬の後に半数を壊滅させてしまった。
「・・・・・・こりゃあ凄ぇ」
それはジュリアンやソフィアなどといった、世界最高峰の魔法使いを身内に持つクリスから見ても信じられない光景だったが、カズキにはまだ上があった。
「紅蓮の炎よ、我が前に立ちはだかる障壁を焼き払い、真理の光を導き出さん。熾烈なる戦いの中で、我が魔力を顕現させ、敵を打ち破る力を示せ! 【レーヴァテイン】!」
今までしなかった詠唱をしたかと思うと、カズキの身体から膨大な魔力が放たれ、その一部が炎の剣を形作ったのだ。
「・・・・・・なんだ!?」
「行け!」
初めて見る魔法にクリスが驚いているとも知らず、カズキが炎の剣にゴブリンの殲滅を命じると、炎の剣は高速で飛んで行き、ゴブリン達の真ん中で爆発。煙が晴れた頃には、ゴブリンの欠片さえも残っていなかった。
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