上 下
286 / 359

第二百八十六話 カズキ、魔法適正を調べに資料室へ行く

しおりを挟む
 カズキが邪神と戦う事を決意したとはいえ、直ぐに邪神と戦いに行くわけではない。
 この世界に来るまで真面に食事をしていなかったせいか、カズキはフローネと同じ14歳にしては発育が遅かったからだ。
 その為、長旅に耐えうる体が出来上がるまでは適度な食事と運動をして、残った時間でこの世界の勉強をする事になった。
 主な内容はこの世界が辿ってきた歴史や地理。そして地球には存在しなかった魔法や魔物について。
 幸いカズキは地頭が良く、また、日本とこの世界の文字や言語は非常に似通っていた為か、勉強は順調に進み、一ヵ月が経つ頃にはクリスよりもこの世界に詳しくなっていた。

「みぃあ。みぃあ」
「よちよち、可愛いでちゅねー」

 尚、勉強している部屋は当然の如くカズキの部屋だ。最初は他の部屋をジュリアンが用意しようとしたのだが、運動以外で産まれたばかりの仔猫たちの傍を離れるのは嫌だろうと、ソフィアとエルザが猛反対したのである。

「今日は、カズキの魔法適性を調べるわよ!」

 そして、とうとうその日がやってきた。カズキの生活をサポートしてきたエルザが、本格的に身体を鍛える事にゴーサインを出したのである。
 とはいえ、産まれたばかりのナンシーの名前がわかった時点で魔法使い寄りの訓練をする事は決まっていたので、そこまで激しい訓練をする予定はないのだが。

「適性というと、火とか光とかの事ですよね? どうやって調べるんですか?」
「この城の資料室に魔法適正を調べる水晶があるの。それに手を置けば、自分が何の魔法に適性があるかが分かるのよ」
「そんな便利な物があるんですね。いやぁ、楽しみだなぁ」

 そんな会話をしながら歩いていくと、あっという間に資料室へと辿り着く。

「エルザ様!」

 そして、いざエルザが扉を開けようとしたところで、一人のメイドが駆け寄ってきた。

「なに? どうかした?」
「騎士団に重傷者が多数! 至急、治癒をお願いしたいとの事です!」
「わかった。直ぐ行くわ」

 エルザはそう言うと資料室の扉を開け、カズキに一本の鍵を手渡した。

「ここの一番奥に部屋があるわ。申し訳ないのだけれど、その鍵で部屋に入って、中の水晶で魔法適正を調べてくれる? その後は部屋にある魔法書を適当に読んでてね」
「えっ? あ、はい」
「ごめんね」

 謝ったエルザは身を翻し、メイドと一緒に駆け出した。残ったのはカズキ一人である。

「行っちゃった。でも人の命が掛かってるんだから仕方ないよね」

 この世界に召喚されてから初めての単独行動に寂しさを覚えながらも、カズキは言われた通りに部屋へ向かう。そして、預かった鍵で扉を開けると、部屋の中央に水晶が鎮座していた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...