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第二百六十三話 One・Two・Three
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カズキの自信満々な表情に、おっさん三人の表情が喜色に染まる。
「・・・・・・それが本当ならば願ってもない事だが、その自信の根拠はどこから出て来たんだ?」
だが、今まで散々手を尽くしても状況が好転しなかった事から、リーダーだけは慎重な姿勢を崩さなかった。
今までアマルテイアの減少の対策や治療に使った金は、凡そ1億ゴールド。円に換算すれば、約100億円にものぼる。
これまではそのミルクの希少性(カズキ達が飲んだミルクが凡そ500㎖=1億円)から、貯めてあった金を使って対策を取る事が出来たが、今では村の貯蓄は底を突いているのだ。
勿論、ボーダーブレイクから村とアマルテイアを守ってくれた事には感謝しているが、それは最後(かも知れない)のミルクを提供した事で報いたと考える事も出来る。
だからリーダーはカズキの自信の根拠を聞いた。もしアマルテイアの問題を解決できるのならば、この世界初のゴッドランクの冒険者を雇う金など、幾らでも取り戻す事が可能だと思っているからだ。
「うん。それは大事だな。じゃあ根拠その1。俺にはエリクサーの手持ちがある」
「「「「エリクサー!」」」」
エリクサー。それは、あらゆる状態異常を回復する上に、HPとMPを全快する最高級のポーションとして知られている。当然おっさん達も方々手を尽くして手に入れようとしたが、入手する事は叶わなかった。
基本的にオリハルコンダンジョンでしか手に入らず、また、手に入ったとしても冒険者が市場に流す事がまずないからだ。稀に市場に出たとしても、その時はオークションに掛けられるため、いくら裕福な村でも落札するのは不可能だったのだ。・・・・・・カズキは数千本単位で持っていて、唯一仲間内で使用する事が出来たタゴサクに、栄養ドリンク感覚で渡しているのだが。
「その2。エリクサーが効かなくても、治せる可能性がある人間が身内にいる」
「「「「『大天使』エルザ!」」」」
エルザはこの世界では『大天使』と呼ばれていた。ヒヒイロカネの能力の副産物なのだが、天使の翼を出していると、教会の人間が率先して協力してくれるからだ。
「その3」
「「「「ま、まだあるのか・・・・・・」」」」
既にカズキを雇わないという選択肢はないのだが、まだ他にも方法があると聞いて、おっさん達は呻き声を上げた。だが、ここまではまだ序の口だったのである。
「アマルテイアを増やす」
「「「「増やす!?」」」」
今までに自分達がいくら努力しても出来なかった事をサラッと言われて、おっさん達は今日一番の叫び声上げた。
「ああ。アマルテイアは昔にあったボーダーブレイクで外に出て来たモンスターだろ?」
「確かにそうだが・・・・・・。何故そう思ったんだ?」
「根拠はミルクを入れていた壺だな。モンスターの中には、時間が経つと消えてしまう食材がある。それを防ぐために、時間を止める効果がある壺を使っているんだろ?」
「な、何故それを・・・・・・」
秘中の秘であるマジックアイテムの事を指摘され、リーダーは無意識のうちに後退った。仮にアマルテイアの問題が解決しても、壺が無ければ外にミルクを売る事は出来ないからだ。
つまり彼は、アマルテイアの問題を解決する対価に、カズキが壷を寄越せと言うと思ったのである。時間を操るアイテムは、それだけ希少で貴重な物なのだ。
「たっ、頼む! アマルテイアの問題を解決してくれるのならば、未来永劫に渡って金を払ってもいい! だからこの壺だけは勘弁して貰えないだろうかっ!?」
「「「頼むっ!」」」
だからおっさん達は、なりふり構わずカズキの足元に縋りついた。壺が無ければアマルテイアが復活しても外貨を獲得できないのだから、彼らも必死である。
「ん? 金? 何の話だ?」
いきなり縋り付かれて困惑しているカズキに、今までニコニコして成り行きを見守っていたカレンが見かねて口を出した。
「ねぇカズキちゃん。オジサマたち、報酬を支払わないといけないと思ってるみたいよ~」
「え? こっちが村に連れて行ってくれって頼んでるのに?」
「カズキちゃんはお金持ちだから報酬なんていらないでしょうけど~、エリクサーってとっても高いんでしょう? それに普通は問題を解決するのに、報酬は必要よねぇ? ゴッドランクとかになると、払わないといけない報酬も、物凄い事になるんじゃないかしら~」
「成程。また言葉が足りなかったか。あ~、安心してくれ、おっちゃん達。報酬は増やしたアマルテイアの世話とミルクだけでいいから」
カズキはそう言って、金には困っていないという事を証明するために、大量のエリクサーを無造作に机の上へと並べた。
「「「「え、エリクサーがこんなに・・・・・・」」」」
「後はこれか」
恐れ慄いているおっさん達を余所に、次はドラゴン肉の塊を取り出し、【時空魔法】で消える寸前まで時間を加速させるとまな板の上で半分に切った。そして片方はそのまま放置し、もう一方をまな板から摘み上げる。すると、摘み上げた方は跡形もなく消え失せ、まな板に乗っている方には変化がなかった。
言うまでもないが、まな板には【時間停止】が掛かっている。その証拠に、その肉を取り上げると、直ぐに跡形もなくなってしまった。
「という訳で、その壺を貰う気もない。そして、エリクサーも俺にとっては大した価値もない。むしろ、アマルテイアのミルクの方が、俺達にとっては重要なんだ。わかってくれたか?」
「「「「・・・・・・」」」」
何やら衝撃を受けている様子のおっさん達が、揃ってコクコクと首を縦に振る。
「じゃあおっちゃん達の村の位置を教えてくれ。善は急げだ」
「「「「・・・・・・」」」」
驚きの連続で声も出なくなってしまったおっさん達は、カズキが広げた地図の一点を揃って指差す。
この直後、カズキが【テレポート】を使って関係者全員が姿を消すのだが、その後のギルドではちょっとした騒ぎがあった。
なんとカズキは、テーブルに無造作に置かれたエリクサーの回収を忘れていたのである。
「・・・・・・それが本当ならば願ってもない事だが、その自信の根拠はどこから出て来たんだ?」
だが、今まで散々手を尽くしても状況が好転しなかった事から、リーダーだけは慎重な姿勢を崩さなかった。
今までアマルテイアの減少の対策や治療に使った金は、凡そ1億ゴールド。円に換算すれば、約100億円にものぼる。
これまではそのミルクの希少性(カズキ達が飲んだミルクが凡そ500㎖=1億円)から、貯めてあった金を使って対策を取る事が出来たが、今では村の貯蓄は底を突いているのだ。
勿論、ボーダーブレイクから村とアマルテイアを守ってくれた事には感謝しているが、それは最後(かも知れない)のミルクを提供した事で報いたと考える事も出来る。
だからリーダーはカズキの自信の根拠を聞いた。もしアマルテイアの問題を解決できるのならば、この世界初のゴッドランクの冒険者を雇う金など、幾らでも取り戻す事が可能だと思っているからだ。
「うん。それは大事だな。じゃあ根拠その1。俺にはエリクサーの手持ちがある」
「「「「エリクサー!」」」」
エリクサー。それは、あらゆる状態異常を回復する上に、HPとMPを全快する最高級のポーションとして知られている。当然おっさん達も方々手を尽くして手に入れようとしたが、入手する事は叶わなかった。
基本的にオリハルコンダンジョンでしか手に入らず、また、手に入ったとしても冒険者が市場に流す事がまずないからだ。稀に市場に出たとしても、その時はオークションに掛けられるため、いくら裕福な村でも落札するのは不可能だったのだ。・・・・・・カズキは数千本単位で持っていて、唯一仲間内で使用する事が出来たタゴサクに、栄養ドリンク感覚で渡しているのだが。
「その2。エリクサーが効かなくても、治せる可能性がある人間が身内にいる」
「「「「『大天使』エルザ!」」」」
エルザはこの世界では『大天使』と呼ばれていた。ヒヒイロカネの能力の副産物なのだが、天使の翼を出していると、教会の人間が率先して協力してくれるからだ。
「その3」
「「「「ま、まだあるのか・・・・・・」」」」
既にカズキを雇わないという選択肢はないのだが、まだ他にも方法があると聞いて、おっさん達は呻き声を上げた。だが、ここまではまだ序の口だったのである。
「アマルテイアを増やす」
「「「「増やす!?」」」」
今までに自分達がいくら努力しても出来なかった事をサラッと言われて、おっさん達は今日一番の叫び声上げた。
「ああ。アマルテイアは昔にあったボーダーブレイクで外に出て来たモンスターだろ?」
「確かにそうだが・・・・・・。何故そう思ったんだ?」
「根拠はミルクを入れていた壺だな。モンスターの中には、時間が経つと消えてしまう食材がある。それを防ぐために、時間を止める効果がある壺を使っているんだろ?」
「な、何故それを・・・・・・」
秘中の秘であるマジックアイテムの事を指摘され、リーダーは無意識のうちに後退った。仮にアマルテイアの問題が解決しても、壺が無ければ外にミルクを売る事は出来ないからだ。
つまり彼は、アマルテイアの問題を解決する対価に、カズキが壷を寄越せと言うと思ったのである。時間を操るアイテムは、それだけ希少で貴重な物なのだ。
「たっ、頼む! アマルテイアの問題を解決してくれるのならば、未来永劫に渡って金を払ってもいい! だからこの壺だけは勘弁して貰えないだろうかっ!?」
「「「頼むっ!」」」
だからおっさん達は、なりふり構わずカズキの足元に縋りついた。壺が無ければアマルテイアが復活しても外貨を獲得できないのだから、彼らも必死である。
「ん? 金? 何の話だ?」
いきなり縋り付かれて困惑しているカズキに、今までニコニコして成り行きを見守っていたカレンが見かねて口を出した。
「ねぇカズキちゃん。オジサマたち、報酬を支払わないといけないと思ってるみたいよ~」
「え? こっちが村に連れて行ってくれって頼んでるのに?」
「カズキちゃんはお金持ちだから報酬なんていらないでしょうけど~、エリクサーってとっても高いんでしょう? それに普通は問題を解決するのに、報酬は必要よねぇ? ゴッドランクとかになると、払わないといけない報酬も、物凄い事になるんじゃないかしら~」
「成程。また言葉が足りなかったか。あ~、安心してくれ、おっちゃん達。報酬は増やしたアマルテイアの世話とミルクだけでいいから」
カズキはそう言って、金には困っていないという事を証明するために、大量のエリクサーを無造作に机の上へと並べた。
「「「「え、エリクサーがこんなに・・・・・・」」」」
「後はこれか」
恐れ慄いているおっさん達を余所に、次はドラゴン肉の塊を取り出し、【時空魔法】で消える寸前まで時間を加速させるとまな板の上で半分に切った。そして片方はそのまま放置し、もう一方をまな板から摘み上げる。すると、摘み上げた方は跡形もなく消え失せ、まな板に乗っている方には変化がなかった。
言うまでもないが、まな板には【時間停止】が掛かっている。その証拠に、その肉を取り上げると、直ぐに跡形もなくなってしまった。
「という訳で、その壺を貰う気もない。そして、エリクサーも俺にとっては大した価値もない。むしろ、アマルテイアのミルクの方が、俺達にとっては重要なんだ。わかってくれたか?」
「「「「・・・・・・」」」」
何やら衝撃を受けている様子のおっさん達が、揃ってコクコクと首を縦に振る。
「じゃあおっちゃん達の村の位置を教えてくれ。善は急げだ」
「「「「・・・・・・」」」」
驚きの連続で声も出なくなってしまったおっさん達は、カズキが広げた地図の一点を揃って指差す。
この直後、カズキが【テレポート】を使って関係者全員が姿を消すのだが、その後のギルドではちょっとした騒ぎがあった。
なんとカズキは、テーブルに無造作に置かれたエリクサーの回収を忘れていたのである。
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