258 / 363
第二百五十八話 創造神復活 そして帰還
しおりを挟む
痛みに喘いでいたナニカが、ふと不穏な気配を感じて周囲を見回すと、邪悪な(ナニカ視点)顔をしたカズキが注射器を手に迫っていた。
「きっ、貴様! 何をするつもりだ!」
拘束されているので気持ちだけは後退りながらカズキを問い質すと、彼は悪魔のような(ナニカ視点)笑みを浮かべながら答える。
「ん? お前をただ消滅させるのも勿体ないから、創造神の糧にしようと思ってな」
カズキはそう言って、躊躇いなくナニカに注射器をぶっ刺す。
「やっ、止めっ! ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
そして、ナニカの制止の声を無視して、これまた躊躇いなくピストンを引くと、ナニカの力の源であった何かが急速に失われていった。暫くして後に残ったのは、『カズピュ~レ・なんちゃって上位神の力の源』一袋だけ。元になったナニカは、存在の残滓すら残っていなかった。
こうして数多の世界を混乱に陥れたナニカは、その名前を誰にも知られる事無く、あっさりとこの世界から消滅したのである。
「なんちゃって上位神・・・・・・。やっぱり自称だったのね」
エルザがカズピュ~レに記載されている商品名を見て、したり顔で頷く。だがこれは製造元のカズキの主観が反映されているのでこのような表示になっているのであって、ナニカは本当に上位神である。
カズキやエルザが会った事がある神はナニカとこの世界の創造神だけ(邪神は厳密にはモンスター)なので、そう思っても仕方がないのだが。
「それにしても、カズピュ~レにはこんな使い方もあるのね」
そう言いながら封を切ったエルザは、微動だにしない創造神の口にカズピュ~レを突っ込み、勢いよく中身を絞り出す。自分が仕える神ではないからなのか、扱いが雑だった。
「・・・・・・これで良し。後はなんちゃって上位神の力が馴染めば目覚める筈よ」
エルザはそう言うと、長椅子を取り出して転寝する。目覚めるまで様子を見ようとか、そんな事は全く考えていないようだった。
「そっか。じゃあ俺も」
カズキもエルザを見習って長椅子を出す。エルザと違うのは、座るのはナンシーという事だ。
「・・・・・・外部神力の調整を終了。再起動します」
動きがあったのはそれから2時間後。エルザが転寝から熟睡へと移行し、ナンシーの世話をしていたカズキも、いつの間にか眠りについた後の事だった。
「・・・・・・神域への侵入者2名を確認。メモリーをチェック。・・・・・・終了。上位神へのカウンター的存在、3名の内の2名と判明。脅威は無いと判断」
創造神はそう言って、次に3000年前に変えられてしまった世界を隅々まで眺める。
「・・・・・・世界管理システムの復旧は困難と判明。現状維持にて運行する事は可能と判断。続いて、メモリア防衛システムの構築を開始」
世界誕生当初の状態へ戻すのが不可能だと判断した創造神は、次に自分の身を守る事を考えた。ナニカの力を取り込んで多少神格が上がったとはいえ、未だに下級神の域を出ていないのだ。第二第三のナニカが現れる可能性を考えれば、身を守る術を身に着けるのは急務と言える。
「・・・・・・また動かなくなっちゃったわね」
「なんちゃって上位神の力が馴染んでないからね。今までに使った事のない力だから、時間がかかるのも仕方ないんじゃない?」
創造神の再起動と同時に目を覚ましていた二人(ナンシーは寝ている)は、無事に覚醒した創造神を見て長椅子を片付ける。
創造神の救出という目的を果たした事で、ここにいる理由がなくなったからだ。
「なんちゃって上位神の力って事は、空間と時間に関する物だったわね。という事は、【アイギス】みたいな結界でも創るのかしら?」
「そんな感じ。この様子だと、防衛システムとやらが完成するのは、早くても10日後かな」
「結構掛かるのね。まあその間は、あなたが張った【アイギス】があるから問題ないか。そうと決まれば早く帰りましょう」
エルザはそう言って、天使モードになってから【テレポート】を使用した。カズキでなくエルザが【テレポート】を使ったのは、ヒヒイロカネの能力に少しでも早く慣れるためである。
「ただいま」
「おかえりない。終わったんですか?」
ランスリードからこの世界に来ているメンバーがいる、『真・アーネスト号EX』の甲板上へとカズキとナンシー、エルザが姿を現すと、僅かに呼吸が上がっている様子のマイネが近寄ってきた。剣を持っている様子から、素振りでもしていたのだろうか。
「ええ。全部終わったわ。ランスリードに残っている皆も聞きたいだろうから、何があったかは帰ってから
話すわね」
「そうですね。では早速帰りましょう!」
カズキとエルザの姿が見えた瞬間にはノートとペンを取り出していたフローネが、早く早くとカズキを急かす。
こうなった時のフローネを止める術はないので、カズキは全員いる事を確認し、即座に【テレポート】を発動する。
こうしてヒヒイロカネ捜索から始まった異世界メモリアでの冒険は終わったのだが、彼らには一つ忘れている事があった。
「くそっ! お宝は消えるし、ここが何処かもわからねーし、寒いし、腹は減ったし! カズキはいつになったら迎えに来るんだ!」
そう。無様にも見え見えの罠に引っ掛かり、最終決戦? の場に立ち会う事が出来なかった、『剣帝』ことクリストファー・ランスリードの事を。
「きっ、貴様! 何をするつもりだ!」
拘束されているので気持ちだけは後退りながらカズキを問い質すと、彼は悪魔のような(ナニカ視点)笑みを浮かべながら答える。
「ん? お前をただ消滅させるのも勿体ないから、創造神の糧にしようと思ってな」
カズキはそう言って、躊躇いなくナニカに注射器をぶっ刺す。
「やっ、止めっ! ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
そして、ナニカの制止の声を無視して、これまた躊躇いなくピストンを引くと、ナニカの力の源であった何かが急速に失われていった。暫くして後に残ったのは、『カズピュ~レ・なんちゃって上位神の力の源』一袋だけ。元になったナニカは、存在の残滓すら残っていなかった。
こうして数多の世界を混乱に陥れたナニカは、その名前を誰にも知られる事無く、あっさりとこの世界から消滅したのである。
「なんちゃって上位神・・・・・・。やっぱり自称だったのね」
エルザがカズピュ~レに記載されている商品名を見て、したり顔で頷く。だがこれは製造元のカズキの主観が反映されているのでこのような表示になっているのであって、ナニカは本当に上位神である。
カズキやエルザが会った事がある神はナニカとこの世界の創造神だけ(邪神は厳密にはモンスター)なので、そう思っても仕方がないのだが。
「それにしても、カズピュ~レにはこんな使い方もあるのね」
そう言いながら封を切ったエルザは、微動だにしない創造神の口にカズピュ~レを突っ込み、勢いよく中身を絞り出す。自分が仕える神ではないからなのか、扱いが雑だった。
「・・・・・・これで良し。後はなんちゃって上位神の力が馴染めば目覚める筈よ」
エルザはそう言うと、長椅子を取り出して転寝する。目覚めるまで様子を見ようとか、そんな事は全く考えていないようだった。
「そっか。じゃあ俺も」
カズキもエルザを見習って長椅子を出す。エルザと違うのは、座るのはナンシーという事だ。
「・・・・・・外部神力の調整を終了。再起動します」
動きがあったのはそれから2時間後。エルザが転寝から熟睡へと移行し、ナンシーの世話をしていたカズキも、いつの間にか眠りについた後の事だった。
「・・・・・・神域への侵入者2名を確認。メモリーをチェック。・・・・・・終了。上位神へのカウンター的存在、3名の内の2名と判明。脅威は無いと判断」
創造神はそう言って、次に3000年前に変えられてしまった世界を隅々まで眺める。
「・・・・・・世界管理システムの復旧は困難と判明。現状維持にて運行する事は可能と判断。続いて、メモリア防衛システムの構築を開始」
世界誕生当初の状態へ戻すのが不可能だと判断した創造神は、次に自分の身を守る事を考えた。ナニカの力を取り込んで多少神格が上がったとはいえ、未だに下級神の域を出ていないのだ。第二第三のナニカが現れる可能性を考えれば、身を守る術を身に着けるのは急務と言える。
「・・・・・・また動かなくなっちゃったわね」
「なんちゃって上位神の力が馴染んでないからね。今までに使った事のない力だから、時間がかかるのも仕方ないんじゃない?」
創造神の再起動と同時に目を覚ましていた二人(ナンシーは寝ている)は、無事に覚醒した創造神を見て長椅子を片付ける。
創造神の救出という目的を果たした事で、ここにいる理由がなくなったからだ。
「なんちゃって上位神の力って事は、空間と時間に関する物だったわね。という事は、【アイギス】みたいな結界でも創るのかしら?」
「そんな感じ。この様子だと、防衛システムとやらが完成するのは、早くても10日後かな」
「結構掛かるのね。まあその間は、あなたが張った【アイギス】があるから問題ないか。そうと決まれば早く帰りましょう」
エルザはそう言って、天使モードになってから【テレポート】を使用した。カズキでなくエルザが【テレポート】を使ったのは、ヒヒイロカネの能力に少しでも早く慣れるためである。
「ただいま」
「おかえりない。終わったんですか?」
ランスリードからこの世界に来ているメンバーがいる、『真・アーネスト号EX』の甲板上へとカズキとナンシー、エルザが姿を現すと、僅かに呼吸が上がっている様子のマイネが近寄ってきた。剣を持っている様子から、素振りでもしていたのだろうか。
「ええ。全部終わったわ。ランスリードに残っている皆も聞きたいだろうから、何があったかは帰ってから
話すわね」
「そうですね。では早速帰りましょう!」
カズキとエルザの姿が見えた瞬間にはノートとペンを取り出していたフローネが、早く早くとカズキを急かす。
こうなった時のフローネを止める術はないので、カズキは全員いる事を確認し、即座に【テレポート】を発動する。
こうしてヒヒイロカネ捜索から始まった異世界メモリアでの冒険は終わったのだが、彼らには一つ忘れている事があった。
「くそっ! お宝は消えるし、ここが何処かもわからねーし、寒いし、腹は減ったし! カズキはいつになったら迎えに来るんだ!」
そう。無様にも見え見えの罠に引っ掛かり、最終決戦? の場に立ち会う事が出来なかった、『剣帝』ことクリストファー・ランスリードの事を。
20
お気に入りに追加
340
あなたにおすすめの小説
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
魔術学院の最強剣士 〜初級魔術すら使えない無能と蔑まれましたが、剣を使えば世界最強なので問題ありません。というか既に世界を一つ救っています〜
八又ナガト
ファンタジー
魔術師としての実力で全ての地位が決まる世界で、才能がなく落ちこぼれとして扱われていたルーク。
しかしルークは異世界に召喚されたことをきっかけに、自らに剣士としての才能があることを知り、修練の末に人類最強の力を手に入れる。
魔王討伐後、契約に従い元の世界に帰還したルーク。
そこで彼はAランク魔物を棒切れ一つで両断したり、国内最強のSランク冒険者から師事されたり、騎士団相手に剣一つで無双したりなど、数々の名声を上げていく。
かつて落ちこぼれと蔑まれたルークは、その圧倒的な実力で最下層から成り上がっていく。
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
農民だからと冤罪をかけられパーティを追放されましたが、働かないと死ぬし自分は冒険者の仕事が好きなのでのんびり頑張りたいと思います。
一樹
ファンタジー
タイトル通りの内容です。
のんびり更新です。
小説家になろうでも投稿しています。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる