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第二百五十八話 創造神復活 そして帰還

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 痛みに喘いでいたナニカが、ふと不穏な気配を感じて周囲を見回すと、邪悪な(ナニカ視点)顔をしたカズキが注射器を手に迫っていた。

「きっ、貴様! 何をするつもりだ!」

 拘束されているので気持ちだけは後退りながらカズキを問い質すと、彼は悪魔のような(ナニカ視点)笑みを浮かべながら答える。

「ん? お前をただ消滅させるのも勿体ないから、創造神の糧にしようと思ってな」

 カズキはそう言って、躊躇いなくナニカに注射器をぶっ刺す。

「やっ、止めっ! ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

 そして、ナニカの制止の声を無視して、これまた躊躇いなくピストンを引くと、ナニカの力の源であった何かが急速に失われていった。暫くして後に残ったのは、『カズピュ~レ・なんちゃって上位神の力の源』一袋だけ。元になったナニカは、存在の残滓すら残っていなかった。
 こうして数多の世界を混乱に陥れたナニカは、その名前を誰にも知られる事無く、あっさりとこの世界から消滅したのである。

「なんちゃって上位神・・・・・・。やっぱり自称だったのね」

 エルザがカズピュ~レに記載されている商品名を見て、したり顔で頷く。だがこれは製造元のカズキの主観が反映されているのでこのような表示になっているのであって、ナニカは本当に上位神である。
 カズキやエルザが会った事がある神はナニカとこの世界の創造神だけ(邪神は厳密にはモンスター)なので、そう思っても仕方がないのだが。

「それにしても、カズピュ~レにはこんな使い方もあるのね」

 そう言いながら封を切ったエルザは、微動だにしない創造神の口にカズピュ~レを突っ込み、勢いよく中身を絞り出す。自分が仕える神ではないからなのか、扱いが雑だった。

「・・・・・・これで良し。後はなんちゃって上位神の力が馴染めば目覚める筈よ」

 エルザはそう言うと、長椅子を取り出して転寝する。目覚めるまで様子を見ようとか、そんな事は全く考えていないようだった。

「そっか。じゃあ俺も」

 カズキもエルザを見習って長椅子を出す。エルザと違うのは、座るのはナンシーという事だ。

「・・・・・・外部神力の調整を終了。再起動します」

 動きがあったのはそれから2時間後。エルザが転寝から熟睡へと移行し、ナンシーの世話をしていたカズキも、いつの間にか眠りについた後の事だった。

「・・・・・・神域への侵入者2名を確認。メモリーをチェック。・・・・・・終了。上位神へのカウンター的存在、3名の内の2名と判明。脅威は無いと判断」

 創造神はそう言って、次に3000年前に変えられてしまった世界を隅々まで眺める。

「・・・・・・世界管理システムの復旧は困難と判明。現状維持にて運行する事は可能と判断。続いて、メモリア防衛システムの構築を開始」

 世界誕生当初の状態へ戻すのが不可能だと判断した創造神は、次に自分の身を守る事を考えた。ナニカの力を取り込んで多少神格が上がったとはいえ、未だに下級神の域を出ていないのだ。第二第三のナニカが現れる可能性を考えれば、身を守る術を身に着けるのは急務と言える。

「・・・・・・また動かなくなっちゃったわね」
「なんちゃって上位神の力が馴染んでないからね。今までに使った事のない力だから、時間がかかるのも仕方ないんじゃない?」

 創造神の再起動と同時に目を覚ましていた二人(ナンシーは寝ている)は、無事に覚醒した創造神を見て長椅子を片付ける。
 創造神の救出という目的を果たした事で、ここにいる理由がなくなったからだ。

「なんちゃって上位神の力って事は、空間と時間に関する物だったわね。という事は、【アイギス】みたいな結界でも創るのかしら?」
「そんな感じ。この様子だと、防衛システムとやらが完成するのは、早くても10日後かな」
「結構掛かるのね。まあその間は、あなたが張った【アイギス】があるから問題ないか。そうと決まれば早く帰りましょう」

 エルザはそう言って、天使モードになってから【テレポート】を使用した。カズキでなくエルザが【テレポート】を使ったのは、ヒヒイロカネの能力に少しでも早く慣れるためである。

「ただいま」
「おかえりない。終わったんですか?」

 ランスリードからこの世界に来ているメンバーがいる、『真・アーネスト号EX』の甲板上へとカズキとナンシー、エルザが姿を現すと、僅かに呼吸が上がっている様子のマイネが近寄ってきた。剣を持っている様子から、素振りでもしていたのだろうか。

「ええ。全部終わったわ。ランスリードに残っている皆も聞きたいだろうから、何があったかは帰ってから
話すわね」
「そうですね。では早速帰りましょう!」

 カズキとエルザの姿が見えた瞬間にはノートとペンを取り出していたフローネが、早く早くとカズキを急かす。
 こうなった時のフローネを止める術はないので、カズキは全員いる事を確認し、即座に【テレポート】を発動する。
 こうしてヒヒイロカネ捜索から始まった異世界メモリアでの冒険は終わったのだが、彼らには一つ忘れている事があった。

「くそっ! お宝は消えるし、ここが何処かもわからねーし、寒いし、腹は減ったし! カズキはいつになったら迎えに来るんだ!」

 そう。無様にも見え見えの罠に引っ掛かり、最終決戦? の場に立ち会う事が出来なかった、『剣帝』ことクリストファー・ランスリードの事を。
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