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第二百四十話 ナンシーとクレアの場合
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クリスが空間を斬りつけた結果出来上がった疑似的な『門』を通り抜けると、そこには勇者たちの言葉どおり、ロック鳥に似たモンスターが待ち構えていた。
「情報通りだな。確かにロック鳥に似ている。強さは比べる事も出来ない程だが」
炎のブレスや羽を飛ばす攻撃。そして視認できない程のスピードで体当たりを敢行してくる鳥を見て、ジュリアンがノンビリと呟く。
彼が余裕をかましていられるのは勿論、カズキが【アイギス】で皆を護っているからだ。
「ニャー」
「ジズ。レベルは150,000。レヴィアタンやベヒモスと共に、世界の終末に現れる鳥で、部位ごとに違う味わいが楽しめる。味はロック鳥やコカトリスの幼生よりも数段上なので、必ず生け捕りにして欲しい」
「クレアの【鑑定】結果が出たか。そうと決まれば早速生け捕りにして、色々試さねえとならねえな!」
「まずはシンプルに塩焼きでしょうか!? あ、勿論トレントの炭火で焼きますよね!?」
クレアの【鑑定】結果に、盛り上がりを見せるアルフレッドとフローネ。だがクレアによる【鑑定】には続きがあった。
「ミャー」
「後、コイツが現れるのを境にして、全ての境界が崩壊する」
『・・・・・・え?』
クレアの言葉を引き続き通訳するカズキ。その不吉な内容は、盛り上がっていた二人のテンションを急降下させるのに十分な威力を持っていた。勿論、クリスとエルザを除く二人以外も。
「・・・・・・色々と聞きたい事はあるが、まずは一番気になっている事を教えてくれ。クレアはあの鳥型モンスターを【鑑定】出来るのか?」
たっぷり五分程の沈黙の後、肉の焼ける香ばしい薫り――カズキによって捕獲されたジズが、逸早く正気を取り戻したアルフレッドとフローネによって部位ごとに切り分けられ、トレントの炭火によって炙られていたのだ――に我に返ったジュリアンが口を開く。
「ああ。ねーさんとアルさんと一緒にレヴィアタンを捕獲した時、ナンシーとクレアにも力の残滓が流れ込んでいたんだ。だから可能性があると思って再現した儀式を昨日をしてみたら、案の定、二人共ヒヒイロカネが発現した」
「儀式を再現・・・・・・。いえ、カズキだから出来るのでしょう。でもそれにしては、二人共腕輪? はしていないようだけど?」
『カズキだから』を発動したソフィアが、二匹の前脚を見て首を傾げる。だが、そこにはそれらしき物は見当たらなかった。
「面倒の元になると思って消してもらってます。この世界では知られていないみたいだけど、実はこの腕輪、念じれば消えるんですよね」
カズキはそう言って、ナンシーに頼んで腕輪を出したり消したりしてもらう。
「・・・・・・本当にナンシーもヒヒイロカネを手に入れていたのか。その能力も気になるところだが、それは後にしておこう。今はクレアの【鑑定】の話だ」
嫌な予感がしたジュリアンは、ナンシーのヒヒイロカネの能力については後回しにする事にした。
「そうだな。簡単に言うと、クレアのヒヒイロカネの能力は【鑑定】じゃない。AP共有だ。【鑑定】、正しくは【食材鑑定】は、クレアが元々持っていたユニークアビリティ? スキル? まあどっちでもいいが、それだ。クレアはそれを、俺のAPを使って最大まで上げた。ジズの詳細がわかったのは、【食材鑑定】のレベルがMAXになったからだろうな」
「・・・・・・成程」
ステータスはあるが、何故か元から持っているスキルやアビリティのレベルを上げられなかったジュリアンが、羨ましそうにクレアを見る。この現象はジュリアンだけではなく、他のメンバーも一緒だった。そして、この世界で新たに取ったアビリティも”ないよりはマシ”程度の物で、元の世界に戻ると使えない事が判明している。クレアのヒヒイロカネの能力は、その制限も取り払うものだと思ったのだ。
実際には上げようと思えば上げられるのだが、それには大量のAPが必要になるため、その事実を知っているカズキは敢えて口に出さない。口にしたら最後、裏技(消費AP減少とか)を使って、無理矢理レベルを上げようとするのが目に見えているからだ。
「後は『全ての境界が崩壊する』だが・・・・・・」
「さっきは動揺してしまったが、遅かれ早かれこうなる事はわかっていた。それについての対策は既に出来ているから、ガストン殿と話し合って事に当たるとしよう」
因みにその内容は、各地の防衛施設のある町などに人を集め、騎士団や冒険者が協力して防衛に当たるという物で、万が一に備えてカズキ謹製のマジックアイテムを所持したラクト達が分散してバックアップをする手筈となっている。
騎士団や冒険者では手に負えない、レベルの高いモンスターを倒すのが彼らの任務であった。前面に出て積極的にマジックアイテムを使わないのは、それをするとこの世界の人間の為にならないからである。やはり自分達の世界の事は、自分達で守るべきだと思うからだ。
「そうしてくれ。じゃあ他に聞きたいのは、ナンシーのヒヒイロカネの能力という事でいいか?」
カズキの言葉に、ジュリアンを始めとしたエルザ、クリス以外のメンバーが固唾を飲んで頷く。
後回しにしていた一番ヤバそうな問題の答えを、これから聞かされることになるからだ。
「まあそんなに大した能力でもないけどな。ナンシーのヒヒイロカネの能力は、俺限定のステータス共有だ」
「「「「「「「・・・・・・どこが大した事ないんだ!?」」」」」」
あっさりと口にされたカズキの言葉に、一拍置いて理解が追い付いたメンバー達からの総ツッコミの声が上がった。
「情報通りだな。確かにロック鳥に似ている。強さは比べる事も出来ない程だが」
炎のブレスや羽を飛ばす攻撃。そして視認できない程のスピードで体当たりを敢行してくる鳥を見て、ジュリアンがノンビリと呟く。
彼が余裕をかましていられるのは勿論、カズキが【アイギス】で皆を護っているからだ。
「ニャー」
「ジズ。レベルは150,000。レヴィアタンやベヒモスと共に、世界の終末に現れる鳥で、部位ごとに違う味わいが楽しめる。味はロック鳥やコカトリスの幼生よりも数段上なので、必ず生け捕りにして欲しい」
「クレアの【鑑定】結果が出たか。そうと決まれば早速生け捕りにして、色々試さねえとならねえな!」
「まずはシンプルに塩焼きでしょうか!? あ、勿論トレントの炭火で焼きますよね!?」
クレアの【鑑定】結果に、盛り上がりを見せるアルフレッドとフローネ。だがクレアによる【鑑定】には続きがあった。
「ミャー」
「後、コイツが現れるのを境にして、全ての境界が崩壊する」
『・・・・・・え?』
クレアの言葉を引き続き通訳するカズキ。その不吉な内容は、盛り上がっていた二人のテンションを急降下させるのに十分な威力を持っていた。勿論、クリスとエルザを除く二人以外も。
「・・・・・・色々と聞きたい事はあるが、まずは一番気になっている事を教えてくれ。クレアはあの鳥型モンスターを【鑑定】出来るのか?」
たっぷり五分程の沈黙の後、肉の焼ける香ばしい薫り――カズキによって捕獲されたジズが、逸早く正気を取り戻したアルフレッドとフローネによって部位ごとに切り分けられ、トレントの炭火によって炙られていたのだ――に我に返ったジュリアンが口を開く。
「ああ。ねーさんとアルさんと一緒にレヴィアタンを捕獲した時、ナンシーとクレアにも力の残滓が流れ込んでいたんだ。だから可能性があると思って再現した儀式を昨日をしてみたら、案の定、二人共ヒヒイロカネが発現した」
「儀式を再現・・・・・・。いえ、カズキだから出来るのでしょう。でもそれにしては、二人共腕輪? はしていないようだけど?」
『カズキだから』を発動したソフィアが、二匹の前脚を見て首を傾げる。だが、そこにはそれらしき物は見当たらなかった。
「面倒の元になると思って消してもらってます。この世界では知られていないみたいだけど、実はこの腕輪、念じれば消えるんですよね」
カズキはそう言って、ナンシーに頼んで腕輪を出したり消したりしてもらう。
「・・・・・・本当にナンシーもヒヒイロカネを手に入れていたのか。その能力も気になるところだが、それは後にしておこう。今はクレアの【鑑定】の話だ」
嫌な予感がしたジュリアンは、ナンシーのヒヒイロカネの能力については後回しにする事にした。
「そうだな。簡単に言うと、クレアのヒヒイロカネの能力は【鑑定】じゃない。AP共有だ。【鑑定】、正しくは【食材鑑定】は、クレアが元々持っていたユニークアビリティ? スキル? まあどっちでもいいが、それだ。クレアはそれを、俺のAPを使って最大まで上げた。ジズの詳細がわかったのは、【食材鑑定】のレベルがMAXになったからだろうな」
「・・・・・・成程」
ステータスはあるが、何故か元から持っているスキルやアビリティのレベルを上げられなかったジュリアンが、羨ましそうにクレアを見る。この現象はジュリアンだけではなく、他のメンバーも一緒だった。そして、この世界で新たに取ったアビリティも”ないよりはマシ”程度の物で、元の世界に戻ると使えない事が判明している。クレアのヒヒイロカネの能力は、その制限も取り払うものだと思ったのだ。
実際には上げようと思えば上げられるのだが、それには大量のAPが必要になるため、その事実を知っているカズキは敢えて口に出さない。口にしたら最後、裏技(消費AP減少とか)を使って、無理矢理レベルを上げようとするのが目に見えているからだ。
「後は『全ての境界が崩壊する』だが・・・・・・」
「さっきは動揺してしまったが、遅かれ早かれこうなる事はわかっていた。それについての対策は既に出来ているから、ガストン殿と話し合って事に当たるとしよう」
因みにその内容は、各地の防衛施設のある町などに人を集め、騎士団や冒険者が協力して防衛に当たるという物で、万が一に備えてカズキ謹製のマジックアイテムを所持したラクト達が分散してバックアップをする手筈となっている。
騎士団や冒険者では手に負えない、レベルの高いモンスターを倒すのが彼らの任務であった。前面に出て積極的にマジックアイテムを使わないのは、それをするとこの世界の人間の為にならないからである。やはり自分達の世界の事は、自分達で守るべきだと思うからだ。
「そうしてくれ。じゃあ他に聞きたいのは、ナンシーのヒヒイロカネの能力という事でいいか?」
カズキの言葉に、ジュリアンを始めとしたエルザ、クリス以外のメンバーが固唾を飲んで頷く。
後回しにしていた一番ヤバそうな問題の答えを、これから聞かされることになるからだ。
「まあそんなに大した能力でもないけどな。ナンシーのヒヒイロカネの能力は、俺限定のステータス共有だ」
「「「「「「「・・・・・・どこが大した事ないんだ!?」」」」」」
あっさりと口にされたカズキの言葉に、一拍置いて理解が追い付いたメンバー達からの総ツッコミの声が上がった。
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