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第二百三十五話 単眼の巨人との戦い
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「状況を整理しましょうか。まず厄介なのは、あの巨体で素早く動き、神話級が直撃しても平気な顔をしていた事ね」
「攻撃力も驚異的ですね。我々が防御魔法の多重起動をしても、金棒の一撃で粉砕されるのは目に見えています」
「そうね。流石に二人掛かりで防御すれば防げると思うけど・・・・・・」
「そうなると攻撃が出来ません。前衛がいればやり様もあるのですが・・・・・・」
ジュリアンはそう言って、魔法を使って動かしている猫じゃらしで遊んでいる、ナンシーとエリー、クレアの様子を楽しそうに眺めているカズキを見やる。
「・・・・・・」
当のカズキは、ジュリアンの視線を受けても全く反応すらしなかったが。
「・・・・・・やはり、二人で戦うしかないようね」
ジュリアンと同じ事を考えていたらしいソフィアも、カズキの態度を見て手助けが無い事を悟る。
「まああの人も一人でボスを倒してヒヒイロカネを手に入れたのだし。私達は二人掛かりなのだから贅沢は言えないわよね」
「はい。では具体的に、どう戦うのか考えましょう。先ずは・・・・・・」
それから二人は本格的に単眼の巨人の攻略法を考え始めた。とは言っても、やらなければならない事は、実はそんなに多くはない。ただ単に、それを実行するのに覚悟が必要だっただけなのだ。
『カズピュ~レ・ファイアドラゴンミックス』で魔力を全快にしたソフィアとジュリアンは、『次元倉庫』の扉をゆっくり静かに開けると、単眼の巨人の姿を探す。
「いたわ。じゃあ作戦通りに動くわよ」
「はい」
ソフィアの言葉に、覚悟を決めた表情でジュリアンが頷き、単眼の巨人の正面(と言っても100メートルは離れている)に向かって駆け出す。一方のソフィアはジュリアンとは別の方向、角度的に巨人の一つ目を狙える場所へと駆け出した。
普段の二人と違うのは、その動くスピード。それも珍しい事に、【フィジカルエンチャント】を使わず、魔力操作による身体能力強化を使っている点だ。
現状の二人が単眼の巨人にダメージを与えるには、古代魔法を圧縮し、威力を上げるしかない。だがそれは、魔法を同時に使うよりも遥かに難しい。とても、【フィジカルエンチャント】を使う余裕などないのである。つまり二人が決めた覚悟とは、戦闘終了後の、全身筋肉痛であった。
「喰らえっ!」
正面に辿り着いたジュリアンが、巨人の一つ目に向かって【クラウ・ソラス】を放つ。神話級の魔法の中で最速の魔法ならば、圧縮していなくてもダメージを与えられるかもしれないと思ったからだ。
だが単眼の巨人には通用しなかった。彼? は光の剣が当たる瞬間、まるで見えているかのように単眼の前に手を翳したのである。しかもその仕草は、眩しいから取り敢えず手で影を作っておくか程度で、光の剣自体に脅威を覚えての行動には見えなかった。
「チッ! 駄目か!」
舌打ちしたジュリアンは、攻撃された事に気付いて突進してきた単眼の巨人から距離を取りながら、多重起動した【クラウ・ソラス】を始めとした神話級を、目に向かって連発する。その際、集中しているソフィアへと巨人の注意が向かないよう、ソフィアとは反対方向へと逃げるのも忘れない。
圧縮魔法を使うには、かなりの集中力と魔力を使う。その為、今のソフィアは魔力による身体能力強化もしていない。巨人にバレて攻撃されようものなら、その時点でアウトである。
だからジュリアンは、付かず離れずの距離で巨人を挑発しているのだ。神話級を使って減った魔力は、『カズピュ~レ・ファイアドラゴンミックス』で補充しながら。
「ゴアアアアアア!」
果たして単眼の巨人は、見事にジュリアンの挑発に引っ掛かった。【ゲイボルグ】と【ブリューナク】を同時に発動した時、偶々【ゲイボルグ】が【ブリューナク】の表面を削り、その破片が一つしかない目に飛び込んだのである。
「また頭に血が上っていたようだ」
それを目の当たりにしたジュリアンは、以前、こことは違う異世界でキマイラの群れと戦った時の事を思い出した。ムキになって神話級の魔法ばかりを使い、悉くキマイラに防がれた挙句、最後には、魔力が尽きかけたところで、カズキが全てのキマイラを倒した時の記憶だ。
その後、再びキマイラの群れと戦った時にリベンジしたのだが、実戦を離れている間に神話級魔法至上主義者に戻っていたらしい。
充分な量の『カズピュ~レ・ファイアドラゴンミックス』用意したと思っていたのだが、気付けば数本しか残っていなかったのがその証拠である。
そこからジュリアンは終始嫌がらせをする事に徹した。単眼に対しては古代魔法の【サンドストーム】を使って目つぶしを行い、目を閉じジュリアンの気配を辿って突撃してきた時には【ガイアコントロール】で地面を柔らかくし、そこへ足を踏み入れたら大量の水を発生させて沼の様にし、身動きを取りずらくなった所へ【トール】をぶち込んだりと、思いつく限りの嫌がらせを実行したのだ。
「・・・・・・冷静さを取り戻したみたいね」
圧縮魔法を使う為に集中しなければいけないにも関わらず、ジュリアンの様子が気になり、魔法の完成が遅れていたソフィアは、ジュリアンが冷静になったのを確認して、完全に集中モードに入る。
それから一分後に完成した圧縮【コキュートス】は、単眼の巨人の全身を覆う形で吹雪が発生し、それが収まった後には巨大な氷像が出来上がっていた。
「攻撃力も驚異的ですね。我々が防御魔法の多重起動をしても、金棒の一撃で粉砕されるのは目に見えています」
「そうね。流石に二人掛かりで防御すれば防げると思うけど・・・・・・」
「そうなると攻撃が出来ません。前衛がいればやり様もあるのですが・・・・・・」
ジュリアンはそう言って、魔法を使って動かしている猫じゃらしで遊んでいる、ナンシーとエリー、クレアの様子を楽しそうに眺めているカズキを見やる。
「・・・・・・」
当のカズキは、ジュリアンの視線を受けても全く反応すらしなかったが。
「・・・・・・やはり、二人で戦うしかないようね」
ジュリアンと同じ事を考えていたらしいソフィアも、カズキの態度を見て手助けが無い事を悟る。
「まああの人も一人でボスを倒してヒヒイロカネを手に入れたのだし。私達は二人掛かりなのだから贅沢は言えないわよね」
「はい。では具体的に、どう戦うのか考えましょう。先ずは・・・・・・」
それから二人は本格的に単眼の巨人の攻略法を考え始めた。とは言っても、やらなければならない事は、実はそんなに多くはない。ただ単に、それを実行するのに覚悟が必要だっただけなのだ。
『カズピュ~レ・ファイアドラゴンミックス』で魔力を全快にしたソフィアとジュリアンは、『次元倉庫』の扉をゆっくり静かに開けると、単眼の巨人の姿を探す。
「いたわ。じゃあ作戦通りに動くわよ」
「はい」
ソフィアの言葉に、覚悟を決めた表情でジュリアンが頷き、単眼の巨人の正面(と言っても100メートルは離れている)に向かって駆け出す。一方のソフィアはジュリアンとは別の方向、角度的に巨人の一つ目を狙える場所へと駆け出した。
普段の二人と違うのは、その動くスピード。それも珍しい事に、【フィジカルエンチャント】を使わず、魔力操作による身体能力強化を使っている点だ。
現状の二人が単眼の巨人にダメージを与えるには、古代魔法を圧縮し、威力を上げるしかない。だがそれは、魔法を同時に使うよりも遥かに難しい。とても、【フィジカルエンチャント】を使う余裕などないのである。つまり二人が決めた覚悟とは、戦闘終了後の、全身筋肉痛であった。
「喰らえっ!」
正面に辿り着いたジュリアンが、巨人の一つ目に向かって【クラウ・ソラス】を放つ。神話級の魔法の中で最速の魔法ならば、圧縮していなくてもダメージを与えられるかもしれないと思ったからだ。
だが単眼の巨人には通用しなかった。彼? は光の剣が当たる瞬間、まるで見えているかのように単眼の前に手を翳したのである。しかもその仕草は、眩しいから取り敢えず手で影を作っておくか程度で、光の剣自体に脅威を覚えての行動には見えなかった。
「チッ! 駄目か!」
舌打ちしたジュリアンは、攻撃された事に気付いて突進してきた単眼の巨人から距離を取りながら、多重起動した【クラウ・ソラス】を始めとした神話級を、目に向かって連発する。その際、集中しているソフィアへと巨人の注意が向かないよう、ソフィアとは反対方向へと逃げるのも忘れない。
圧縮魔法を使うには、かなりの集中力と魔力を使う。その為、今のソフィアは魔力による身体能力強化もしていない。巨人にバレて攻撃されようものなら、その時点でアウトである。
だからジュリアンは、付かず離れずの距離で巨人を挑発しているのだ。神話級を使って減った魔力は、『カズピュ~レ・ファイアドラゴンミックス』で補充しながら。
「ゴアアアアアア!」
果たして単眼の巨人は、見事にジュリアンの挑発に引っ掛かった。【ゲイボルグ】と【ブリューナク】を同時に発動した時、偶々【ゲイボルグ】が【ブリューナク】の表面を削り、その破片が一つしかない目に飛び込んだのである。
「また頭に血が上っていたようだ」
それを目の当たりにしたジュリアンは、以前、こことは違う異世界でキマイラの群れと戦った時の事を思い出した。ムキになって神話級の魔法ばかりを使い、悉くキマイラに防がれた挙句、最後には、魔力が尽きかけたところで、カズキが全てのキマイラを倒した時の記憶だ。
その後、再びキマイラの群れと戦った時にリベンジしたのだが、実戦を離れている間に神話級魔法至上主義者に戻っていたらしい。
充分な量の『カズピュ~レ・ファイアドラゴンミックス』用意したと思っていたのだが、気付けば数本しか残っていなかったのがその証拠である。
そこからジュリアンは終始嫌がらせをする事に徹した。単眼に対しては古代魔法の【サンドストーム】を使って目つぶしを行い、目を閉じジュリアンの気配を辿って突撃してきた時には【ガイアコントロール】で地面を柔らかくし、そこへ足を踏み入れたら大量の水を発生させて沼の様にし、身動きを取りずらくなった所へ【トール】をぶち込んだりと、思いつく限りの嫌がらせを実行したのだ。
「・・・・・・冷静さを取り戻したみたいね」
圧縮魔法を使う為に集中しなければいけないにも関わらず、ジュリアンの様子が気になり、魔法の完成が遅れていたソフィアは、ジュリアンが冷静になったのを確認して、完全に集中モードに入る。
それから一分後に完成した圧縮【コキュートス】は、単眼の巨人の全身を覆う形で吹雪が発生し、それが収まった後には巨大な氷像が出来上がっていた。
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