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第二百十四話 三度の衝撃

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 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

◆◆


名前:エルザ・アルテミス
種族:、漂流者ドリフター
ジョブ:聖女
年齢:22
LV :測定不能
HP :測定不能
MP :測定不能
ATK :測定不能
DEF :測定不能
AGI :測定不能
INT :測定不能
AP :99999999+α

アビリティ
【魔力操作:MAX】【打撃武器:MAX】
【剣術:LV11】【料理:LV10】
【神聖魔法:MAX】

称号
 救済者セイヴァー
 神殺しゴッドスレイヤー

――――――――――――――――――――

「・・・・・・。っ!」

 エルザのステータスを見たリリーが、驚きの余り呆然とした後、我に返って奥へと駆けこむ。雰囲気的にアルフレッドより強いのはわかっていたが、ここまで異常なステータスだと思っていなかったので、ギルドマスターのハルステンの元へ指示を仰ぎに行ったのだ。

「やはりこうなったか」

 エルザのステータスを見て、『さもありなん』とばかりにアルフレッドが頷く。このステータスを見た後では、アルフレッドのステータスなど見向きもされなかったであろう事は想像に難くないからだ。
 
「受付の人はいなくなってしまったけど、用は済んだから食事にしましょうか」
「そうだね。その後適当なブロンズダンジョンに入って攻略。明日は朝一でランクの更新をして、そのままオリハルコンダンジョンを攻略すれば、ヒヒイロカネも手に入ると思うし」

 何やらギルドの奥が騒がしくなっていたが、自分達には関係ないとばかりに食事をして、三人はブロンズダンジョンに向かった。
 その際、ギルドの食堂のルールを知らされたカズキが、全ての冒険者たちの食事代を持つ事になったが、文句を言うことなく多額の支払いをした上に、食材まで置いて行った為、食堂は連日、客の姿が絶える事がなかったという。



「お待ちしていました! 皆さん!」

 翌朝、カズキ達三人がランクアップの為にギルドを訪れると、何故かリリーが待ち構えていた。そして、有無を言わさず受付へと連行していき、あれよあれよという間にランクアップの手続きを勝手に始める。

「「「・・・・・・」」」

 余りの事に顔を見合わせる三人を余所に、テキパキと作業を進めたリリーは、エルザとアルフレッドのギルドカードを見て笑顔を浮かべると、何処からともなく取り出したクラッカーを鳴らし、祝福の言葉を掛ける。

「エルザさんはゴッドランク、アルフレッドさんはオリハルコンランクに昇格です! おめでとうございます!」
「「「・・・・・・」」」

 これだけ事を性急に進めるからには、何かさせたい事があるのだろうと見当をつけた三人は、下手に口出しをせず、黙って成り行きを見守る事にした。勿論、面倒そうだったら即座に【テレポート】で逃げ来る気満々である。

「ところでお二方、ヒヒイロカネに興味はありませんか? 実は、この間カズキさんが攻略したダンジョンと同じ位古いダンジョンが隣国にありまして。今は誰も攻略に掛かっていないという事を小耳に挟んだんですよね。しかも今なら期間限定! 攻略報酬増額キャンペーンを実施中だそうです! どうですか!? ちょっくら行って、ササッと攻略してこようって気になりません!?」

 そして案の定、唐突にリリーがそんな事を話し始めた。カズキ達は知らないが、絶対に首を縦に振らせるようにと、グランドマスター(冒険者ギルドで一番偉い人)から指示が出ているのである。しかも猶予がないから、出来るだけ早くとまで言われているので、リリーも必死であった。

「・・・・・・えーと。いつボーダーブレイクが起きるかわからない古いダンジョンがあるから、攻略してくれないかって話ですよね?」
「そうです!」

 リリーの言わんとしている事を正確に読み取ったカズキが確認すると、彼女は素直に(というか食い気味に)頷いた。
 
「どうする?」

 今回の話から、自分が攻略できるような生易しいダンジョンじゃないと理解したアルフレッドは、その力を持つ二人に判断を委ねようと、カズキとエルザに水を向ける。

「彼女の様子からすると、一刻を争う事態みたいね。予兆みたいなものが出ているのかしら」
「そうみたいだね。今の所はオリハルコンとミスリルの境界がなくなってるだけで済んでるみたいだけど、一週間もすれば全ての境界が破壊されそうかな」

 エルザの問いに、周辺を魔法で調べたカズキが見解を述べる。

「そんなっ!」

 これに驚いたのは、一ヵ月は猶予があると聞いていたリリーだった。何しろ、隣国のボーダーブレイクが起きそう(というか起きてる)なダンジョンまで、馬を使っても三週間はかかる。カズキの話が事実ならば、彼らがギルドのある街に着くころには、隣国が壊滅していてもおかしくないからだ。

「少々お待ちください! 今の話を確認して参りますっ!」

 不思議とカズキの話が間違っていないと思ったリリーが、ショックを受けたのも束の間、そう言って奥へと姿を消す。かと思ったら、ハルステンを伴って数分で戻ってきた。

「カズキさんの言う通りでした! 先程、現地のミスリルランクの冒険者がギルドに駆け込んできて、オリハルコンとミスリルの境界が消滅している事を証言したそうです!」

 戻ってきたリリーに続いて、一緒に姿を現したハルステンが口を開く。

「現在、ボーダーブレイクが発生したダンジョンのある国と最寄りの支部は、付近の住人を避難させる準備に入っている。近隣の国やギルドにも応援を頼み、住人達の避難は5日以内に終わらせる予定だ。避難する場所は隣国の王城。過去に起きたボーダーブレイクの記録によれば、強力な魔物が活動するには濃い瘴気が必要な事がわかっている。そして、王城のある場所まで高濃度の瘴気が到達するのに三週間掛かると、【オラクル】が予知した」
「「「【オラクル】?」」」
「予知や予言、神託を受け取る事が出来るジョブの総称だ」

 三人の疑問の声に律儀に答えたハルステンは、申し訳なさそうな顔をしながら重い口を開く。

「ここからが三人への依頼だ。必要な物資や移動手段、その他、望む物は可能な限り揃える。報酬も言い値で構わない。だから助けてくれ! この通りだ!」
 
 そう言ってハルステンは土下座した。クリスの上辺だけの土下座より、よっぽど心の籠った土下座である。
 世界とそこに住む人々を守るためなら、悪魔にでも魂を売りそうな勢いであった。

「・・・・・・わかりました。但し、移動手段は要りません。後、避難も止めさせてください。無駄に終わりますから」

 カズキの言葉に耳を疑い、思わず顔を上げてしまったハルステンだったが、いつもの飄々とした様子のカズキを見て平静を取り戻した。
 1000階層からなるダンジョンをソロで瞬殺するような人間が断言するのだから、人智を超えた移動手段でもあるのだろうと思ったからだ。

「じゃあ行ってきます。あ、僕らがダンジョンの攻略に向かう事も伝えておいてくださいね」

 そう言って手を振ったカズキの姿が、一緒にいた2人諸共消え失せる。そう、ハルステンが考えた通り、カズキは【テレポート】で移動したのだ。

「「は?」」

 人智を超えすぎていて、リリーとハルステンは呆然とした表情で固まってしまったが。
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