上 下
187 / 343

第百八十七話 手掛かり発見?

しおりを挟む
「ん? なんか石っぽいのがいっぱい落ちてるな」

 ゴブリンを倒し、探索を再開しようと歩き始めると、洞窟のあちらこちらに石っぽいのが大量に転がっていた。

「・・・・・・微かに魔力を感じるな。これがレオンの言っていた魔石かな?」

 石を拾い上げ、ジッと見つめていたジュリアンがカズキを振り返る。

「じゃねえの?」

 魔石と一緒に落ちていた棍棒を拾い上げながら、カズキが答える。何の変哲もない棍棒だったので、直後にポイ捨てしたが。

「やはりそう思うか・・・・・・。じゃあ、今まではドロップしなかった魔石が落ちてるのは何故だと思う?」
「ジュリアンの考えてる通りだろ。こっちでハンターギルドに登録したからだ」
「魔力を読み取って、ステータスという物を表示するっていう例のやつよね? 言ってみればそれだけなのに、どうしてそんな事が起こったのかしら?」
「「さあ・・・・・・?」」
 
 ソフィアの疑問に、カズキとジュリアンが揃って首を傾げる。

「わからないなら、詳しそうな人に聞けばいいんじゃない? ハンターギルドの長とかいう人が、あなたたちがこの世界に来るのを知ってたって、カリムに聞いたわよ?」
「そういえばそうだったな。ここの探索が終わったら一回行ってみるよ」

 エルザの言葉にカズキが答える。何故かジュリアンが目を逸らしていたが、それは前回、この世界に来た時に、色々と恥ずかしい言動をしたせいだ。
 その後はカズキが先頭に立ち、時折現れる魔物を瞬殺しながら進んだ。

「・・・・・・また魔石か。食える魔物まで魔石に変わるのはちょっと困るな」

 とはいえ問題がなかった訳でもない。折角美味しい倒し方をしたコカトリスまでも、魔石とドロップ品しか残さなかったからだ。
 
「ここまでしても駄目か。まあ、コカトリスはいくらでも手に入るけから良いけど、コカトリスの鶏冠なんて何に使うんだ? 鶏なら食えるからまだ許せるが、コカトリスのは毒が詰まってるだけだぞ?」
「一応、解毒薬の素材に使えなくもないわね。まあ、そんな物を使わなくても、他の手に入りやすい薬草とかで代用可能だけど」
「そうね。・・・・・・食材の方は、珍しいのが出たら私とエルザで対応しましょう。それが難しかったら、カズキが生け捕りする方向で」
「わかりました」

 方針が決まったところで、再び行軍を再開する。そこからは時折ソフィアが魔物に対応しつつ進んでいたが、2時間程歩いたところで突然、目の前にヒュドラが現れた。
 
「いきなりだな」

 出現と同時に襲い掛かってきたヒュドラの攻撃を、全く動じることなく【アイギス】でカズキが防ぐ。攻撃を防がれたヒュドラはそのまま【アイギス】に対象を変えて噛り付くが、カズキの魔法は小揺るぎもしない。

「【ディバイン・ジャッジメント】」

 そこへエルザから魔法が放たれると、ヒュドラは天から落ちてきた裁きの雷に打たれ、跡形もなく燃え尽きてしまった。

「初めて魔物に使ったけど凄い威力ね。これなら面倒な相手も、時間を掛けて殴り殺さなくて済むわ。ありがとう、カズキ」

 ヒュドラを倒す実力は元からあったエルザだが、如何せん、神聖魔法には攻撃に使える魔法が少なかった。それでも倒そうと思えば、自身と武器防具を魔法で強化し、接近戦を敢行しながら弱い攻撃魔法を併用して、ひたすら殴り続けるしかない。初めてヒュドラに遭遇した時、彼女が戦わなかったのにはそういう理由があったのだ。

「役に立ったのなら良かったよ」

 その状況を打開したのがカズキである。
 どうにか神聖魔法を使用出来ないかと試行錯誤していた時、幾つかの魔法を開発したのだが、自分で使うと効果が著しく低くなることがわかった。これを信仰心の無さが原因だと結論付けたカズキは、結局、魔力のごり押しなら同じ結果が出る事に気付き、それ以降に開発したのは【キュアポイズン】だけだった。その時ふと思ったのが、を、聖職者に使わせたらどうなるかという事である。そこで名乗りを上げたのが、身近にいたエルザとフローネの二人だったのだ(というか、ベースが古代魔法だったので、魔力量的に二人しか修得出来なかったのだが)。
 
「「・・・・・・」」
「? どうやらここで行き止まりみたいね」

 何故か放心しているレットとリックスを不思議そうな顔で見たソフィアが、ヒュドラの巨体に隠れて見えなかった場所を見やる。
 彼らが古代魔法王国を滅ぼす原因を作ったヒュドラを、たった一撃で滅ぼした事に衝撃を受けているとは思いもしないようだった。ソフィアも大分、カズキ達に毒されているようだ。

「明らかに加工された滑らかな壁面に、意味ありげなレリーフ。それを隠すように配置されたヒュドラ、か。これは当たりかもしれんな!」

 興奮したジュリアンの指さす先。そこには、一際大きく禍々しい姿をしたドラゴンと、それと相対する五匹のドラゴンの姿が彫られていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!

蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。 家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。 何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。 やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。 そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。 やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる! 俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!

異世界を満喫します~愛し子は最強の幼女

かなかな
ファンタジー
異世界に突然やって来たんだけど…私これからどうなるの〜〜!? もふもふに妖精に…神まで!? しかも、愛し子‼︎ これは異世界に突然やってきた幼女の話 ゆっくりやってきますー

逆ハーレムエンドは凡人には無理なので、主人公の座は喜んで、お渡しします

猿喰 森繁
ファンタジー
青柳千智は、神様が趣味で作った乙女ゲームの主人公として、無理やり転生させられてしまう。 元の生活に戻るには、逆ハーレムエンドを迎えなくてはいけないと言われる。 そして、何度もループを繰り返すうちに、ついに千智の心は完全に折れてしまい、廃人一歩手前までいってしまった。 そこで、神様は今までループのたびにリセットしていたレベルの経験値を渡し、最強状態にするが、もうすでに心が折れている千智は、やる気がなかった。

処理中です...