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第百八十五話 私が開発した最強の魔法
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「・・・・・・つまり、封印された場所からヒュドラが現れたと、カズキはそう考えている訳か?」
『滅亡』というワードから『リントヴルム』を連想したジュリアンがカズキに確認を取ると、案の定、カズキは頷き、仕方なさそうに説明を始めた。
「ミスリルを大量に用意したのは、ただ一点に魔力を放出するだけのマジックアイテムを創るのに使ったんだろう。召喚魔法を試みたって話だけど、実際にやった事は『門』に大量の魔力を注いで、入り口を抉じ開けたんだろうな。自然に生るミスリルをいくら用意しても、【テレポート】に必要な魔力を賄えないし」
「ああ! 空間を移動するという事から考えれば、召喚と【テレポート】は一緒。そういう事ね?」
相変わらず言葉の足りないカズキの話を、ソフィアが補足する。わざわざ言葉にしたのは、今一ピンと来ていないリックスの為である。古代魔法は使えるようだが、彼はどうみても戦士タイプだからだ
「はい。で、『門』を抉じ開けた結果、それに気付いた魔物が押し寄せたんでしょう。何故かは知りませんが、『門』が開くたびに魔物が現れていますから」
「それで研究員と護衛は全滅したわけね? じゃあ、封印した筈の場所からヒュドラが現れたのはどうして? 封印出来たって事は、そこまで強い魔物が現れたわけじゃないわよね?」
エルザの問いにカズキは一つ頷き、説明を続ける。レットとリックスは、研究員と護衛を全滅させた魔物の群れを雑魚扱いしているエルザに、若干引いていたが。
「うん。そこで出てくるのが大量の魔力を注ぐマジックアイテムなんだ」
「「「「あっ!」」」」
リックス以外の四人が、カズキの言わんとしているところを理解して声を上げる。
「発動しているマジックアイテムを残して封印したのか!」
「そう。洞窟からの魔力のお陰で常に稼働しているマジックアイテムが徐々に『門』を大きくして、そこから現れたヒュドラが暴れまわったんじゃないかな? と思ったんだ。それ以上に強い魔物が出てこなかったのは、ヒュドラがマジックアイテムを食べたんだろう。まあ全部推測だし、今となっては確かめようもないけど」
カズキの言葉に、いつの間にか前のめりになっていたレットとリックスが肩の力を抜く。今はそれよりも、目の前の事が大事だったからだ。具体的に言うと、目の前にある、封じられていない『門』のことである。
だがそう思っていたのは、彼らだけだった。
「じゃあ少し休憩してから向こうへ行きましょうか」
そう言ってエリーを愛で始めたソフィアに、レットとリックスは耳を疑う。
まさか、あんな話をした直後に、洞窟の向こうへ挑むとは思ってもみなかったのだ。
「じゃあカズキ、お願いね?」
「はい」
「「・・・・・・」」
ソフィアの言葉に頷いたカズキが、洞窟へと大量の魔力を注ぐのを、レットとリックスは呆然と眺めていた。
いくら【テレポート】を行使できるほどの魔力量を持つカズキでも、自分達の文明を滅ぼしたヒュドラという魔物に出くわせば、勝ち目は無いと思っていたからだ。
「・・・・・・リックス。いざとなれば我らが盾となり、時間を稼ぐぞ。カズキ様の魔力が万全であれば、どうにかヒュドラから逃げる事が出来たかもしれんが、ここに来た時の【テレポート】と、今の魔力の大量消費で、かなり消耗しているようだ」
「承知しております。カズキ様は行く当てのない我々を救って下さったお方。私の命でよければ、如何様にもお使い下さい」
「すまん。恩に着る」
「いえ」
レットとリックスが悲壮な覚悟を固め、率先して先頭を歩きだす。だが戦闘訓練を受けていないレットは、警戒の仕方が分からず、無駄に視線をあちこちに飛ばしていた。
「やっぱり研究者の血が疼くのかしら。忙しなく周囲を見回しているわ」
「念願が叶ったのが嬉しいんでしょう。きっと、何の変哲もない石ころでも、彼にとっては研究対象なのでしょうね。そうじゃないと、あんなに真剣な顔はしないでしょうし」
そんな彼らの後ろを、ソフィアとジュリアンがのんびり歩く。彼らも魔法の研究をする事があるので、レットの気持ちがわかるような気がしていたのだ。勿論、勘違いだが。
「気をつけて下さい! 何かが来ます!」
リックスが叫んで立ち止まったのは、探索を始めて五分が経った頃だった。
「ゴブリンの群れだな。数はざっと一万位だ」
「「一万!!」」
緊張感のないカズキの言葉に、リックスとレットが過剰に反応する。
彼らが生きていた時代にもゴブリンは存在していて、万単位で群れを率いる存在は、現代と同じようにエンペラーと呼ばれ、恐れられていた。何故なら、一万の群れを潰すのに最低でも百人の魔法使いが必要で、それも相当な犠牲を覚悟しなくてはならないと言われていたからだ。
「入って直ぐゴブリンエンペラーとは・・・・・・。図らずも、カズキ様の推測を裏付ける結果となってしまいましたね」
「そうだな。だが、これ位ならばまだ何とかなる。リックスは、私が魔法を放った後に討ち漏らしを頼む。私が完成させた魔法を全力で放てば、キングとエンペラー以外は倒せるはずだ」
「確かに使いどころですね。承知しました。・・・・・・しかしこうなると、あの魔法を封じたマジックアイテムと魔導書を豚親子に取られたのは痛かったですね。カズキ様、ジュリアン様、ソフィア様なら、恐らく覚えられた筈なのに」
優れた古代魔法の使い手が、一生に一度しか創る事が出来ない魔導書。それは水晶の形をしており、一定以上の魔力を持つ者に、魔法の知識を授ける役目を持っている。ただし欠点もあって、本人の能力以上の魔法は覚える事が出来ない仕様になっていた。
「ここを切り抜けたら、お三方に概略をお伝えするさ。きっと、誰かが再開発してくださるだろう」
あるいはそれが、自分がこの時代に来た意味なのかもしれない。そんな事を考えながら、レットは迫りくるゴブリンに向けて【レーヴァテイン】を発動した。
『滅亡』というワードから『リントヴルム』を連想したジュリアンがカズキに確認を取ると、案の定、カズキは頷き、仕方なさそうに説明を始めた。
「ミスリルを大量に用意したのは、ただ一点に魔力を放出するだけのマジックアイテムを創るのに使ったんだろう。召喚魔法を試みたって話だけど、実際にやった事は『門』に大量の魔力を注いで、入り口を抉じ開けたんだろうな。自然に生るミスリルをいくら用意しても、【テレポート】に必要な魔力を賄えないし」
「ああ! 空間を移動するという事から考えれば、召喚と【テレポート】は一緒。そういう事ね?」
相変わらず言葉の足りないカズキの話を、ソフィアが補足する。わざわざ言葉にしたのは、今一ピンと来ていないリックスの為である。古代魔法は使えるようだが、彼はどうみても戦士タイプだからだ
「はい。で、『門』を抉じ開けた結果、それに気付いた魔物が押し寄せたんでしょう。何故かは知りませんが、『門』が開くたびに魔物が現れていますから」
「それで研究員と護衛は全滅したわけね? じゃあ、封印した筈の場所からヒュドラが現れたのはどうして? 封印出来たって事は、そこまで強い魔物が現れたわけじゃないわよね?」
エルザの問いにカズキは一つ頷き、説明を続ける。レットとリックスは、研究員と護衛を全滅させた魔物の群れを雑魚扱いしているエルザに、若干引いていたが。
「うん。そこで出てくるのが大量の魔力を注ぐマジックアイテムなんだ」
「「「「あっ!」」」」
リックス以外の四人が、カズキの言わんとしているところを理解して声を上げる。
「発動しているマジックアイテムを残して封印したのか!」
「そう。洞窟からの魔力のお陰で常に稼働しているマジックアイテムが徐々に『門』を大きくして、そこから現れたヒュドラが暴れまわったんじゃないかな? と思ったんだ。それ以上に強い魔物が出てこなかったのは、ヒュドラがマジックアイテムを食べたんだろう。まあ全部推測だし、今となっては確かめようもないけど」
カズキの言葉に、いつの間にか前のめりになっていたレットとリックスが肩の力を抜く。今はそれよりも、目の前の事が大事だったからだ。具体的に言うと、目の前にある、封じられていない『門』のことである。
だがそう思っていたのは、彼らだけだった。
「じゃあ少し休憩してから向こうへ行きましょうか」
そう言ってエリーを愛で始めたソフィアに、レットとリックスは耳を疑う。
まさか、あんな話をした直後に、洞窟の向こうへ挑むとは思ってもみなかったのだ。
「じゃあカズキ、お願いね?」
「はい」
「「・・・・・・」」
ソフィアの言葉に頷いたカズキが、洞窟へと大量の魔力を注ぐのを、レットとリックスは呆然と眺めていた。
いくら【テレポート】を行使できるほどの魔力量を持つカズキでも、自分達の文明を滅ぼしたヒュドラという魔物に出くわせば、勝ち目は無いと思っていたからだ。
「・・・・・・リックス。いざとなれば我らが盾となり、時間を稼ぐぞ。カズキ様の魔力が万全であれば、どうにかヒュドラから逃げる事が出来たかもしれんが、ここに来た時の【テレポート】と、今の魔力の大量消費で、かなり消耗しているようだ」
「承知しております。カズキ様は行く当てのない我々を救って下さったお方。私の命でよければ、如何様にもお使い下さい」
「すまん。恩に着る」
「いえ」
レットとリックスが悲壮な覚悟を固め、率先して先頭を歩きだす。だが戦闘訓練を受けていないレットは、警戒の仕方が分からず、無駄に視線をあちこちに飛ばしていた。
「やっぱり研究者の血が疼くのかしら。忙しなく周囲を見回しているわ」
「念願が叶ったのが嬉しいんでしょう。きっと、何の変哲もない石ころでも、彼にとっては研究対象なのでしょうね。そうじゃないと、あんなに真剣な顔はしないでしょうし」
そんな彼らの後ろを、ソフィアとジュリアンがのんびり歩く。彼らも魔法の研究をする事があるので、レットの気持ちがわかるような気がしていたのだ。勿論、勘違いだが。
「気をつけて下さい! 何かが来ます!」
リックスが叫んで立ち止まったのは、探索を始めて五分が経った頃だった。
「ゴブリンの群れだな。数はざっと一万位だ」
「「一万!!」」
緊張感のないカズキの言葉に、リックスとレットが過剰に反応する。
彼らが生きていた時代にもゴブリンは存在していて、万単位で群れを率いる存在は、現代と同じようにエンペラーと呼ばれ、恐れられていた。何故なら、一万の群れを潰すのに最低でも百人の魔法使いが必要で、それも相当な犠牲を覚悟しなくてはならないと言われていたからだ。
「入って直ぐゴブリンエンペラーとは・・・・・・。図らずも、カズキ様の推測を裏付ける結果となってしまいましたね」
「そうだな。だが、これ位ならばまだ何とかなる。リックスは、私が魔法を放った後に討ち漏らしを頼む。私が完成させた魔法を全力で放てば、キングとエンペラー以外は倒せるはずだ」
「確かに使いどころですね。承知しました。・・・・・・しかしこうなると、あの魔法を封じたマジックアイテムと魔導書を豚親子に取られたのは痛かったですね。カズキ様、ジュリアン様、ソフィア様なら、恐らく覚えられた筈なのに」
優れた古代魔法の使い手が、一生に一度しか創る事が出来ない魔導書。それは水晶の形をしており、一定以上の魔力を持つ者に、魔法の知識を授ける役目を持っている。ただし欠点もあって、本人の能力以上の魔法は覚える事が出来ない仕様になっていた。
「ここを切り抜けたら、お三方に概略をお伝えするさ。きっと、誰かが再開発してくださるだろう」
あるいはそれが、自分がこの時代に来た意味なのかもしれない。そんな事を考えながら、レットは迫りくるゴブリンに向けて【レーヴァテイン】を発動した。
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