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第百七十七話 伝説の剣 復活
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「そ、そんな・・・・・・」
刀身が半分になってしまった剣を見て、呆然とするタゴサク。
「いやぁ、なかなか鋭い一撃だったな」
「そうですね。【ギガス〇ッシュ】使用時のスピードに、これから覚える『魔力操作』による身体能力強化が加われば、かなり強くなると思います」
「恰好いいなぁ、【ギガス〇ッシュ】。俺も出来るようにならないかなぁ?」
「属性的には使えるようになる可能性はあるんじゃない?」
「そうだな。雷は風と光の複合属性だ。カリムなら使える可能性はある。【フィジカルブースト】よりも、制御は難しくなるだろうが」
「なら、にーちゃんに魔法を創ってくれって頼んでみようかな?」
「あら、面白そうね」
だが、他の人間は誰も気にしていなかった。カズキとの模擬戦では、そりゃあもう毎回のようにポキポキ折られているので、慣れてしまっているのだ。
「これが初代勇者が使っていたという剣ですか。見た目はただの銀の剣ですよね?」
フローネがそう言いながら、折れた剣先を持ってカズキとタゴサクへと近づく。作家という職業柄、伝説とかそういう物に目がないのだ。
「【~スラッシュ】とかを使う関係上、ミスリル製にしたんだろうな。魔力と親和性が高いから。・・・・・・今は何故か、ほぼ銀製になってるけど」
そう言いながらタゴサクから半分になった剣を取り上げると、フローネから受け取ったもう半分の断面を合わせて魔法を使うカズキ。
「はへ?」
目の前で自分の剣があっさりと治ったのを見て、目を白黒させたタゴサクが間抜けな声を上げるが、カズキの仕事? はまだ終わりではなかった。
「な、なんだべ!?」
カズキから一瞬だけ放出された膨大な魔力にビビったタゴサクが、咄嗟に飛び退って身構え、腰に手をやる。だが、その行動は無意味だった。剣はカズキが持っているし、そもそもタゴサクの事などカズキは眼中にない。
何故なら、甦った魔剣にボタンが付いており、カズキの注意はそちらに向いていたからだ。
「マジックアイテムだったんですね! どんな魔法が込められているのでしょう!?」
柄頭に出現したボタンに、興味津々なフローネの声が弾む。
「こういう時は持ち主に聞くのが速いな。という訳で教えてくれ」
話を振られたタゴサクは困惑した。何故なら、彼が知っているのは『力を失っている』という事だけだったからだ。
「知らないならしょうがない、ちょっと試してみるか。ポチッとな」
所有者を差し置いて、マジックアイテムを発動させるカズキ。いつの間にか集まっていた他のメンバーも、固唾を飲んで様子を見守る。
「・・・・・・何も起こりませんね?」
「いや、そうでもない。見ててみ?」
派手な魔法を期待していたフローネに笑みを見せ、カズキがその場で剣を振るう。
「な?」
「いや、な? って言われても・・・・・・」
カズキの言葉に、困惑の声を返すエスト。
「あれ? わからないか?」
首を傾げるカズキに、うんうんと頷く一同。
「おかしいな。普段の俺に比べて、二倍くらいのスピードで剣を振ったんだが」
「「「「わかるか!」」」」
タゴサク以外の男四人からツッコミが入る。
「そもそも私達は、カズキさんの言う通常のスピードがわかりません」
「あ、そうか」
マイネの言葉に得心がいったカズキは、タゴサクの剣をフローネに渡して、今度は自分の剣を振るう。
「な?」
「速すぎて違いがわからん」
今度は大丈夫だろうとドヤ顔を決めるカズキに、代表してエストが答えた。そう、彼らはそもそも、通常時のカズキの動きそのものが見えていなかったのだ。
「ええと、つまりその剣には【フィジカルエンチャント】の魔法が込められているって事?」
「そういう事だ。とは言っても、さっき言った通り、二倍までが限界だけどな」
「二倍でも破格だと思うけどね。でもそっか。さっきマイネさんが言ってた事は、限定的にだけど実現してるんだ」
「【ギガス〇ッシュ】との相乗効果の事か? やはり当時の人間も、同じ事を考えたみたいだな」
カズキと魔法使い二人組がそんな話をしている一方で、フローネら前衛職組は交代で素振りをしたり、軽く打ち合ったりして意見を交わしていた。・・・・・・持ち主であるタゴサクを放置して。
「ふむ。スピードもパワーも、【フィジカルブースト】系を使った時と変わらないみたいだな」
「その様ですね。【フィジカルブースト】との重ね掛けは出来ないのですか?」
「やってみたけど効果は変わらなかった!」
「そう上手くはいきませんか。あ、タゴサクさんが使ったらどうなるのでしょう?」
そこでようやく本来の持ち主を思い出したのか、タゴサクへと目をやるフローネ。
「勇者の為に鍛えられた剣なんですから、私達では性能を十分に発揮できない可能性があります! ほら、そういう物語とかあるじゃないですか!」
いつかのグリフォン退治の依頼の時の様にテンションが上がっているフローネは、タゴサクの手に強引に剣を握らせ、マジックアイテム発動のボタンを押し込む。
「さあタゴサクさん、【ギガス〇ッシュ】です!」
「おっおう。【ギガ〇イン】?」
フローネの手が触れ、またも妄想へと突入しそうなところで発せられた強い言葉に、何が何だかわからないまま剣を翳し、呪文を唱えるタゴサク。
その剣先に雷が落ち、タゴサクの体の表面を雷が覆うのはいつもの事だったが、今回はその先があった。
「これが、オラ・・・・・・? 」
何故か瞳と髪が金色に変化し、雷が下から上へと迸っている影響で髪が逆立った、スーパーサ○ヤ人っぽくなっているタゴサクの姿があったのだ。
刀身が半分になってしまった剣を見て、呆然とするタゴサク。
「いやぁ、なかなか鋭い一撃だったな」
「そうですね。【ギガス〇ッシュ】使用時のスピードに、これから覚える『魔力操作』による身体能力強化が加われば、かなり強くなると思います」
「恰好いいなぁ、【ギガス〇ッシュ】。俺も出来るようにならないかなぁ?」
「属性的には使えるようになる可能性はあるんじゃない?」
「そうだな。雷は風と光の複合属性だ。カリムなら使える可能性はある。【フィジカルブースト】よりも、制御は難しくなるだろうが」
「なら、にーちゃんに魔法を創ってくれって頼んでみようかな?」
「あら、面白そうね」
だが、他の人間は誰も気にしていなかった。カズキとの模擬戦では、そりゃあもう毎回のようにポキポキ折られているので、慣れてしまっているのだ。
「これが初代勇者が使っていたという剣ですか。見た目はただの銀の剣ですよね?」
フローネがそう言いながら、折れた剣先を持ってカズキとタゴサクへと近づく。作家という職業柄、伝説とかそういう物に目がないのだ。
「【~スラッシュ】とかを使う関係上、ミスリル製にしたんだろうな。魔力と親和性が高いから。・・・・・・今は何故か、ほぼ銀製になってるけど」
そう言いながらタゴサクから半分になった剣を取り上げると、フローネから受け取ったもう半分の断面を合わせて魔法を使うカズキ。
「はへ?」
目の前で自分の剣があっさりと治ったのを見て、目を白黒させたタゴサクが間抜けな声を上げるが、カズキの仕事? はまだ終わりではなかった。
「な、なんだべ!?」
カズキから一瞬だけ放出された膨大な魔力にビビったタゴサクが、咄嗟に飛び退って身構え、腰に手をやる。だが、その行動は無意味だった。剣はカズキが持っているし、そもそもタゴサクの事などカズキは眼中にない。
何故なら、甦った魔剣にボタンが付いており、カズキの注意はそちらに向いていたからだ。
「マジックアイテムだったんですね! どんな魔法が込められているのでしょう!?」
柄頭に出現したボタンに、興味津々なフローネの声が弾む。
「こういう時は持ち主に聞くのが速いな。という訳で教えてくれ」
話を振られたタゴサクは困惑した。何故なら、彼が知っているのは『力を失っている』という事だけだったからだ。
「知らないならしょうがない、ちょっと試してみるか。ポチッとな」
所有者を差し置いて、マジックアイテムを発動させるカズキ。いつの間にか集まっていた他のメンバーも、固唾を飲んで様子を見守る。
「・・・・・・何も起こりませんね?」
「いや、そうでもない。見ててみ?」
派手な魔法を期待していたフローネに笑みを見せ、カズキがその場で剣を振るう。
「な?」
「いや、な? って言われても・・・・・・」
カズキの言葉に、困惑の声を返すエスト。
「あれ? わからないか?」
首を傾げるカズキに、うんうんと頷く一同。
「おかしいな。普段の俺に比べて、二倍くらいのスピードで剣を振ったんだが」
「「「「わかるか!」」」」
タゴサク以外の男四人からツッコミが入る。
「そもそも私達は、カズキさんの言う通常のスピードがわかりません」
「あ、そうか」
マイネの言葉に得心がいったカズキは、タゴサクの剣をフローネに渡して、今度は自分の剣を振るう。
「な?」
「速すぎて違いがわからん」
今度は大丈夫だろうとドヤ顔を決めるカズキに、代表してエストが答えた。そう、彼らはそもそも、通常時のカズキの動きそのものが見えていなかったのだ。
「ええと、つまりその剣には【フィジカルエンチャント】の魔法が込められているって事?」
「そういう事だ。とは言っても、さっき言った通り、二倍までが限界だけどな」
「二倍でも破格だと思うけどね。でもそっか。さっきマイネさんが言ってた事は、限定的にだけど実現してるんだ」
「【ギガス〇ッシュ】との相乗効果の事か? やはり当時の人間も、同じ事を考えたみたいだな」
カズキと魔法使い二人組がそんな話をしている一方で、フローネら前衛職組は交代で素振りをしたり、軽く打ち合ったりして意見を交わしていた。・・・・・・持ち主であるタゴサクを放置して。
「ふむ。スピードもパワーも、【フィジカルブースト】系を使った時と変わらないみたいだな」
「その様ですね。【フィジカルブースト】との重ね掛けは出来ないのですか?」
「やってみたけど効果は変わらなかった!」
「そう上手くはいきませんか。あ、タゴサクさんが使ったらどうなるのでしょう?」
そこでようやく本来の持ち主を思い出したのか、タゴサクへと目をやるフローネ。
「勇者の為に鍛えられた剣なんですから、私達では性能を十分に発揮できない可能性があります! ほら、そういう物語とかあるじゃないですか!」
いつかのグリフォン退治の依頼の時の様にテンションが上がっているフローネは、タゴサクの手に強引に剣を握らせ、マジックアイテム発動のボタンを押し込む。
「さあタゴサクさん、【ギガス〇ッシュ】です!」
「おっおう。【ギガ〇イン】?」
フローネの手が触れ、またも妄想へと突入しそうなところで発せられた強い言葉に、何が何だかわからないまま剣を翳し、呪文を唱えるタゴサク。
その剣先に雷が落ち、タゴサクの体の表面を雷が覆うのはいつもの事だったが、今回はその先があった。
「これが、オラ・・・・・・? 」
何故か瞳と髪が金色に変化し、雷が下から上へと迸っている影響で髪が逆立った、スーパーサ○ヤ人っぽくなっているタゴサクの姿があったのだ。
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