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第百七十一話 陥穽

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 マンティコアを倒し、洞窟の奥へと進んだフローネ達は、いつの間にかスタート地点と酷似した場所に立っていた。

「無事に森林エリアを抜けた・・・・・・んですよね?」
「その筈だが・・・・・・」

 自信なさそうに言うフローネに、エストが周囲を見回しながら答える。その声色には、そうであって欲しいという願望が込められているように思えた。

「通路の先から何かが来ます」

 エストと同じように周囲を見回していたマイネが、不意に警戒を促す声を上げた。
 身構える三人。そして、彼らの前に姿を現したのは――。

「・・・・・・並ゴブリンが三匹、か」
「嫌な感じですね・・・・・・」
「ええ・・・・・・」

 向かって来たゴブリンズを一蹴し、三人は顔を見合わせる。スタート直後と同じ事を繰り返しているのだから、当然の話だった。

「四方の道の先を確認してみませんか? それで昨日と同じだったら・・・・・・」
「同じ場所に戻ってきた可能性が高い、か?」
「はい」

 フローネの言葉に従って、四方の道の先を確認する三人。結果は、海、砂漠、火山、森林で、配置まで全く同じだった。

「全部同じか。恐らくだが、ここはスタート地点だろうな」
「そのようですね。そうなると鍵になるのは・・・・・・」
「「「鉄球」」」

 期せずして三人の声が揃う。その割には、全く嬉しそうではなかったが。

「はぁ。とりあえずこの鉄球は回収して休もう。先に進もうにも、今の状態でどうにもならないからな」
「そうですね」
「賛成です」



 体力と魔力の回復の為、交代で休憩した三人が適当な道を選んで進むと、『ようこそスタート地点へ。心が折れた方はコチラ→』という看板と、矢印の先に地上へと繋がる階段、そして、売店が姿を現した。
 どうやら鉄球を持ったまま移動すると、この場所に移動する仕組みになっていたらしい。

「・・・・・・してやられたな。こっちの考える事など、全てお見通しだったわけか」
「軽く偵察する位なら、スタート地点に戻ってこれるのも質が悪いですよね」
「人の心理を上手く突いてきますよね。考えたのはお兄様でしょうか?」

 彼らがこんな話をしているのは、森林エリアに入って進む方向を相談していた時、突然入り口が消えたからである。

「誰もいませんね」
「そうですね。ん? あれは・・・・・・」
「どうした?」

 一応の警戒をしつつ売店へと足を向けていると、フローネが立ち止まって売店の陰に隠れていた建物をビシッと指さした。

「シャワー室と書いてあります!」
「本当ですか!?」

 風呂の代わりに川の水で体を拭う事はしたが、それだけでは満足出来ない体にされてしまった(注・カズキの創った【次元倉庫】には、バス、トイレ、キッチン、寝室が完備されているのだ)フローネとマイネのテンションが天元突破。そのままエストの意見も聞かず、シャワー室に突撃してしまう。

「はぁ・・・・・・」

 仕方がないので、エストもささっとシャワーを浴び(女性二人と行動しているので、何かと気を使うのだ)、二人が戻ってくるまでの間、売店で役に立ちそうな物を探す事にした。
 そして、シャワーを終えたエストが売店に足を向けようとしたところで、コエンとラクトが土下座しているところに出くわした。

「すまない!」
「ごめん!」
「どどどどど、どうしたべ突然! 二人共、頭を上げてくんろ!」

 何故かタゴサクに向かって土下座している二人の様子に興味を惹かれたエストは、情報を集める為に三人に声を掛ける事にした。
 
「嵌まった?」

 たったそれだけの問いかけに、土下座していた二人はピンときたのか、黙って頷いた。わかっていないのはタゴサクだけである。

「どこを選んだ?」
「森林だ。そっちは?」
「迷宮。最後はミノタウロス三匹。そっちは?」
「マンティコアが六匹だ。・・・・・・お互い、何の足しにもならない、無駄な時間を使わされてしまったようだな」
「へ? へ?」

 コエンとエストの問答についていけないタゴサクに、ラクトが懇切丁寧に説明する。結果的に、鉄球を持っていくつもりだったタゴサクが正解だった事まで全てをだ。
 それに対するタゴサクの返答は、

「仲間なんだから気にする必要はないべさ」

 だった。
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