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第百六十話 異世界のハンターギルド長

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「ここが俺の所属している第7コロニーだ。この辺りでは一番大きいし、ハンターギルドの支部もある。ハンターになれば他のコロニーの場所もわかるようになるし、そこへの出入りも出来るようになるから、この世界を探索するのならば、ハンターになっておいた方がいいと思う」

 初めて見る街を、物珍しそうに見ているカズキ達が落ち着いた頃を見計らって、レオンが提案する。

「ハンターギルド?」
「ああ、ハンターギルドって言うのは・・・・・・」

 ジュリアンの質問にレオンが答える。その内容は概ね冒険者ギルドと同じような物だった。
 違うのは、この世界ではモンスターを倒すと消滅し、魔石と呼ばれる物や、アイテムがドロップするという事。それを持ち帰る事で、討伐依頼などの証明とするらしい。
 
「ふーん。随分と違うんだな。向こうでは討伐したら、ギルドに報告して終わりだったのに」
「それはお前だけだ。駆け出しの頃は、討伐証明か、依頼主の証明書が必要だ。Aランクになってくると信用と信頼が積みあがっているから、そこを省略するようになる。勿論、虚偽の報告をすれば一発アウトだ。報酬の倍額の弁済――これにはギルドへの仲介料も含まれるが――とライセンスの剥奪に加えて、十年間の強制労働が待っている」

 カズキの発言をジュリアンが訂正する。

「ふーん。そうだったのか」

 だが、カズキの興味は既にじゃれついてきたナンシーに移っていたので、気のない返事が返って来る。それに慣れているジュリアンは、気を悪くした様子もなくレオンとの会話に戻った。
 


「お帰りなさいレオンさん。ギルドマスターがお待ちです」

 ハンターギルドに到着し、レオンが依頼達成の報告に向かおうとすると、奥から仕事が出来そうな女性が現れた。

「わかった。すまないがあんたたちは・・・・・・」
「お連れの方々もご一緒で構わないそうです」

 そして、レオンの言葉を先回りして、カズキ達の事についても言及する。

「・・・・・・そういう訳だから、付いてきてくれると嬉しいんだが」
「わかった」

 勝手がわからないカズキ達に異存はないため、大人しく女性とレオンの後を付いていくと、やがて両開きの大きな扉がある部屋の前に辿りつく。
 女性はそこで立ち止まり、扉をノックした。

「レオンさんと、からお越しになった方々をお連れしました」
「入れ」
「失礼します」

 中からの返答に女性が扉を開けると、そこにいたのは二十代半ばくらいの、若い男の姿があった。 
 
「ご苦労だったな、レオン」
「いえ、依頼ですので」

 彼は最初に何か言いたそうなレオンを労い、それから改めてカズキ達に向き直った。

「初めまして。私が第七コロニーのハンターギルドの長を務める、ルノセルという者だ。君たちが今日、この世界に来ることは知っていた。だが、名前まではわからなかったので、自己紹介してもらえると助かるのだが?」

 その言葉と同時に、空気が張り詰めた。
 仕事が出来そうな女性(推定秘書)とレオンはその圧力に負けて一瞬体を硬直させるが、対象が自分達でなかった事が幸いして、すぐに落ち着きを取り戻す。
 その一方で、対象となったカズキ達は全く動じず、普通に自己紹介を始めた。

「承知した。私はジュリアン・ランスリードいう」
「俺はアルフレッド・ランスリード。アルでいい」
「俺はカリム・アルテミス!」
「カズキ・スワだ」
「ニャー」
「ミャー」
「ニ゛ャー」

 涼しい顔で四人+三匹が返答すると、張り詰めていた空気が元に戻る。そして、直後にルノセルが頭を下げた。
 
「試すような真似をして申し訳ない」
「構わない。異世界から来た私たちを『勇者』と疑うのは当然の事。奴らなら今ので激昂して、襲い掛かるだろうからな。身の潔白を証明する手間が省けたと思えばどうという事もない。本気だったわけでもなさそうだしな」
「・・・・・・そこまで見抜かれていたのか。だとしても改めて謝罪させてくれ。申し訳なかった!」
「わかった。謝罪を受け入れよう」

 ジュリアンから無事に謝罪を受け入れる言葉を引き出したルノセルは、内心で胸を撫でおろした。
 主に、【威圧】を使ったのに、全く通用しなかった事を悟られていない事の方が大半を占めていたみたいだが。

「さて、ではこれからの事を話そうか。君たちも、色々と聞きたい事があるだろう?」
「確かに色々あるな。まずは・・・・・・」

 ルノセルはこの時、彼らがこの世界に来たことを何故知っているのか? という事や、これからの事についての質問が来ると想定していた。
 この世界にし、右も左もわからない彼らが欲するのは、何よりもこの世界の情報だと思っているからだ。
 だから、次のジュリアンの質問に、『は?』と間抜けな声を上げてしまったのは彼のせいではない。
 ジュリアンの質問。それは即ち、

「スキルを使えるようにしてくれ!」

 という事。
 そう、表面上はまともだったが、ジュリアンの暴走はまだ収まっていなかったのだ。
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