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第百五十五話 いざ、魔物調達へ!

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「僕(私)たちと、試験のパーティを組まないかっ!?」
「えっ? えっ?」

 ゴブリンエンペラーとの戦いで自爆し、ようやく復活出来たタゴサクは、持ち前の方向音痴(本人に自覚なし)のお陰で遠回りしながらも、何とか学院に戻ってくることが出来た。
 そして、今日くらいはゆっくり休んでも罰は当たるまいと気を抜いていたところに突撃されて、目を白黒させている。
 だが、ラクトとコエンは『そんなの関係ねぇ!』とばかりに強引に話を進めた。
 仮にもトーナメントで決勝にまで進んだ実力(フローネに瞬殺されたが)と、数万のゴブリンをたった一人で足止め(タゴサクは殲滅するつもりだったが)しようという胆力。特に後者の方は、学院生が持っていないものだ。
 そんなタゴサクなら、相手がAランクの魔物だろうと怖気づかないのは明白。故に二人は彼を仲間にしようと必死だった。

「これから三週間後に試験があるんだが、参加しようにもメンバーが一人足りなくてな。頼りになる前衛を探していたのだ!」
「頼むよ!」
「試験? それってなんだべか?」

 二人の気迫に後退りながらも、辛うじてそう問い返すタゴサク。その顔には、初めて知ったと書いてあった。
 勿論、彼も入学時に学院についての説明を受けている。にもかかわらず彼が覚えていないのは、『剣帝マイネ』、『聖女フローネ』、『大賢者ラクト』とお近づきになる方法を考えていたので、碌にジュリアンの説明を聞いていなかったためだ。

「その様子だと知らないみたいだね。試験って言うのは――」

 タゴサクが試験の事を知らないと言った事に安堵したラクトが、トーンダウンして試験についての説明を始める。
 そのお陰で一息付けたタゴサクは、そこで初めて目の前の人物が『大賢者ラクト』だと気付いた。

「(まさか、大賢者ラクトの方から声を掛けてくれるなんて! それに、よく見ればもう一人はそれに近い実力を持つ、コエンって人じゃねえか! この機会は絶対にものにしねえと!)」

 やっと運が向いてきた。そう思ったタゴサクは、迷うことなくラクトのパーティへの加入を決めた。



「ラクトとコエンはタゴサクを選んだのか。・・・・・・あいつ、生き返っていたんだな。壮絶に自爆してたから、復活にもっと時間が掛かると思っていたんだけど」

 試験を受けるラクト達とは別行動中のカズキが、学院長室に提出されたラクトたちの申請用紙を勝手に見て、訝し気な顔をした。 
 
「初代勇者の記録には、【ブロウアップ】を使った場合は、即座に復活すると書いてあったぞ?」

 書類仕事の手を止めないままカズキの疑問に答えたのは、この部屋の主であるジュリアンだ。
 
「ふーん。自殺か他殺かで、復活までの時間が変わるのかな?」
「そのようだな。初代はそれを利用して、押し寄せる魔物を撃退したらしい」
「それはまた、何とも献身的だな。・・・・・・いや、単にドМなだけか?」
「そこはせめて、聖人君子と言い換えておけ。曲がりなりにも、一応、辛うじてだが世界を救った偉大な先達なんだからな」

 何とも微妙な賞賛の言葉を口にしたジュリアンが、最後の書類を決裁して『次元ポスト』に入れ、キーワードを打ち込む。

「・・・・・・よし、これで終わりだな」

 そして、書類が転送された事を確認して立ち上がり、カズキを見る。

「待たせたな。では頼む」
「ああ」

 返事をしたカズキが【テレポート】を発動すると、一瞬でランスリードの王城にある、謁見の間へと移動していた。
 
「遅ぇーぞ、ジュリアン」
「あっ、やっと来た!」
「ニャー」
「ニ゛ャ」

 そこには王弟アルフレッド、カリム、クレア、アレンがいて、カズキ達が到着するのを待っていた。
 ジュリアンとカズキが、試験で使う魔物を異世界で調達すると聞いて、同行を希望したのだ。

「お待たせして申し訳ありません。では、早速参りましょう」

 その言葉にカズキが再び【テレポート】を使用すると、巨大ワイバーンと二度程戦った場所である、センスティア公爵家(マイネの実家)の領有する村へと辿り着く。
 ここに、異世界へと繋がる『門』があるからだ。

「じゃあ行くか」

 二度の【テレポート】で大量の魔力を失っているにも関わらず、全く息切れした様子もないカズキは、休む間もなく閉ざされていた『門』へと魔力で干渉し、あっさりと抉じ開けると、ナンシーとクレアを抱いて躊躇することなくその身を躍らせた。
 
「「「・・・・・・」」」

 その余りの速さに、未だに【テレポート】後の感覚のズレに慣れていない三人が取り残される。

「ミ゛ャー」

 それを予想していたアレンは、『門』が閉じる前にとカリムとジュリアンを器用に体の上に乗せ、一足早く回復したアルフレッドを促す。

「お、おお」

 鳴き声に我に返ったアルフレッドがアレンと共に『門』へ踏み込むと、日の光を反射してキラキラと輝いている、三メートル程の柱が林立している場所へ出た。

「ワームとワイアームか。在庫はまだあるんだよなぁ」

 氷の柱と化しているワームを見て、アルフレッドは自分の居場所に気付く。
 そこは以前、カズキ、ナンシーと共に、あてもなく徘徊した砂漠であった。
 カズキのお陰で気温、湿度共に快適に保たれているので、欠片も実感はなかったが。

「ですよねぇ」

 そう言ったカズキが剣を振るうと、氷の柱が全て砕け散る。

「それで? こいつらはどれくらい捕獲すればいいんだ?」
「・・・・・・Bランクで手頃な相手かもしれないが、少しデカすぎる。学院のダンジョンには向かないな」

 カズキの問いに、ジュリアンは残念そうに首を横に振った。

「そうか? 空間を拡張すればイケるんじゃね?」
「成程。その手があったか」

 思ってもみなかった事を平然と口にするカズキに、ジュリアンが同意してしまう。
 そのせいで調達する魔物が大型化し、試験の難易度が大幅に上昇する事になるのだが、それを指摘する者はこの場にいなかった。
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