155 / 343
第百五十五話 いざ、魔物調達へ!
しおりを挟む
「僕(私)たちと、試験のパーティを組まないかっ!?」
「えっ? えっ?」
ゴブリンエンペラーとの戦いで自爆し、ようやく復活出来たタゴサクは、持ち前の方向音痴(本人に自覚なし)のお陰で遠回りしながらも、何とか学院に戻ってくることが出来た。
そして、今日くらいはゆっくり休んでも罰は当たるまいと気を抜いていたところに突撃されて、目を白黒させている。
だが、ラクトとコエンは『そんなの関係ねぇ!』とばかりに強引に話を進めた。
仮にもトーナメントで決勝にまで進んだ実力(フローネに瞬殺されたが)と、数万のゴブリンをたった一人で足止め(タゴサクは殲滅するつもりだったが)しようという胆力。特に後者の方は、学院生が持っていないものだ。
そんなタゴサクなら、相手がAランクの魔物だろうと怖気づかないのは明白。故に二人は彼を仲間にしようと必死だった。
「これから三週間後に試験があるんだが、参加しようにもメンバーが一人足りなくてな。頼りになる前衛を探していたのだ!」
「頼むよ!」
「試験? それってなんだべか?」
二人の気迫に後退りながらも、辛うじてそう問い返すタゴサク。その顔には、初めて知ったと書いてあった。
勿論、彼も入学時に学院についての説明を受けている。にもかかわらず彼が覚えていないのは、『剣帝』、『聖女』、『大賢者』とお近づきになる方法を考えていたので、碌にジュリアンの説明を聞いていなかったためだ。
「その様子だと知らないみたいだね。試験って言うのは――」
タゴサクが試験の事を知らないと言った事に安堵したラクトが、トーンダウンして試験についての説明を始める。
そのお陰で一息付けたタゴサクは、そこで初めて目の前の人物が『大賢者』だと気付いた。
「(まさか、大賢者の方から声を掛けてくれるなんて! それに、よく見ればもう一人はそれに近い実力を持つ、コエンって人じゃねえか! この機会は絶対にものにしねえと!)」
やっと運が向いてきた。そう思ったタゴサクは、迷うことなくラクトのパーティへの加入を決めた。
「ラクトとコエンはタゴサクを選んだのか。・・・・・・あいつ、生き返っていたんだな。壮絶に自爆してたから、復活にもっと時間が掛かると思っていたんだけど」
試験を受けるラクト達とは別行動中のカズキが、学院長室に提出されたラクトたちの申請用紙を勝手に見て、訝し気な顔をした。
「初代勇者の記録には、【ブロウアップ】を使った場合は、即座に復活すると書いてあったぞ?」
書類仕事の手を止めないままカズキの疑問に答えたのは、この部屋の主であるジュリアンだ。
「ふーん。自殺か他殺かで、復活までの時間が変わるのかな?」
「そのようだな。初代はそれを利用して、押し寄せる魔物を撃退したらしい」
「それはまた、何とも献身的だな。・・・・・・いや、単にドМなだけか?」
「そこはせめて、聖人君子と言い換えておけ。曲がりなりにも、一応、辛うじてだが世界を救った偉大な先達なんだからな」
何とも微妙な賞賛の言葉を口にしたジュリアンが、最後の書類を決裁して『次元ポスト』に入れ、キーワードを打ち込む。
「・・・・・・よし、これで終わりだな」
そして、書類が転送された事を確認して立ち上がり、カズキを見る。
「待たせたな。では頼む」
「ああ」
返事をしたカズキが【テレポート】を発動すると、一瞬でランスリードの王城にある、謁見の間へと移動していた。
「遅ぇーぞ、ジュリアン」
「あっ、やっと来た!」
「ニャー」
「ニ゛ャ」
そこには王弟アルフレッド、カリム、クレア、アレンがいて、カズキ達が到着するのを待っていた。
ジュリアンとカズキが、試験で使う魔物を異世界で調達すると聞いて、同行を希望したのだ。
「お待たせして申し訳ありません。では、早速参りましょう」
その言葉にカズキが再び【テレポート】を使用すると、巨大ワイバーンと二度程戦った場所である、センスティア公爵家(マイネの実家)の領有する村へと辿り着く。
ここに、異世界へと繋がる『門』があるからだ。
「じゃあ行くか」
二度の【テレポート】で大量の魔力を失っているにも関わらず、全く息切れした様子もないカズキは、休む間もなく閉ざされていた『門』へと魔力で干渉し、あっさりと抉じ開けると、ナンシーとクレアを抱いて躊躇することなくその身を躍らせた。
「「「・・・・・・」」」
その余りの速さに、未だに【テレポート】後の感覚のズレに慣れていない三人が取り残される。
「ミ゛ャー」
それを予想していたアレンは、『門』が閉じる前にとカリムとジュリアンを器用に体の上に乗せ、一足早く回復したアルフレッドを促す。
「お、おお」
鳴き声に我に返ったアルフレッドがアレンと共に『門』へ踏み込むと、日の光を反射してキラキラと輝いている、三メートル程の柱が林立している場所へ出た。
「ワームとワイアームか。在庫はまだあるんだよなぁ」
氷の柱と化しているワームを見て、アルフレッドは自分の居場所に気付く。
そこは以前、カズキ、ナンシーと共に、あてもなく徘徊した砂漠であった。
カズキのお陰で気温、湿度共に快適に保たれているので、欠片も実感はなかったが。
「ですよねぇ」
そう言ったカズキが剣を振るうと、氷の柱が全て砕け散る。
「それで? こいつらはどれくらい捕獲すればいいんだ?」
「・・・・・・Bランクで手頃な相手かもしれないが、少しデカすぎる。学院のダンジョンには向かないな」
カズキの問いに、ジュリアンは残念そうに首を横に振った。
「そうか? 空間を拡張すればイケるんじゃね?」
「成程。その手があったか」
思ってもみなかった事を平然と口にするカズキに、ジュリアンが同意してしまう。
そのせいで調達する魔物が大型化し、試験の難易度が大幅に上昇する事になるのだが、それを指摘する者はこの場にいなかった。
「えっ? えっ?」
ゴブリンエンペラーとの戦いで自爆し、ようやく復活出来たタゴサクは、持ち前の方向音痴(本人に自覚なし)のお陰で遠回りしながらも、何とか学院に戻ってくることが出来た。
そして、今日くらいはゆっくり休んでも罰は当たるまいと気を抜いていたところに突撃されて、目を白黒させている。
だが、ラクトとコエンは『そんなの関係ねぇ!』とばかりに強引に話を進めた。
仮にもトーナメントで決勝にまで進んだ実力(フローネに瞬殺されたが)と、数万のゴブリンをたった一人で足止め(タゴサクは殲滅するつもりだったが)しようという胆力。特に後者の方は、学院生が持っていないものだ。
そんなタゴサクなら、相手がAランクの魔物だろうと怖気づかないのは明白。故に二人は彼を仲間にしようと必死だった。
「これから三週間後に試験があるんだが、参加しようにもメンバーが一人足りなくてな。頼りになる前衛を探していたのだ!」
「頼むよ!」
「試験? それってなんだべか?」
二人の気迫に後退りながらも、辛うじてそう問い返すタゴサク。その顔には、初めて知ったと書いてあった。
勿論、彼も入学時に学院についての説明を受けている。にもかかわらず彼が覚えていないのは、『剣帝』、『聖女』、『大賢者』とお近づきになる方法を考えていたので、碌にジュリアンの説明を聞いていなかったためだ。
「その様子だと知らないみたいだね。試験って言うのは――」
タゴサクが試験の事を知らないと言った事に安堵したラクトが、トーンダウンして試験についての説明を始める。
そのお陰で一息付けたタゴサクは、そこで初めて目の前の人物が『大賢者』だと気付いた。
「(まさか、大賢者の方から声を掛けてくれるなんて! それに、よく見ればもう一人はそれに近い実力を持つ、コエンって人じゃねえか! この機会は絶対にものにしねえと!)」
やっと運が向いてきた。そう思ったタゴサクは、迷うことなくラクトのパーティへの加入を決めた。
「ラクトとコエンはタゴサクを選んだのか。・・・・・・あいつ、生き返っていたんだな。壮絶に自爆してたから、復活にもっと時間が掛かると思っていたんだけど」
試験を受けるラクト達とは別行動中のカズキが、学院長室に提出されたラクトたちの申請用紙を勝手に見て、訝し気な顔をした。
「初代勇者の記録には、【ブロウアップ】を使った場合は、即座に復活すると書いてあったぞ?」
書類仕事の手を止めないままカズキの疑問に答えたのは、この部屋の主であるジュリアンだ。
「ふーん。自殺か他殺かで、復活までの時間が変わるのかな?」
「そのようだな。初代はそれを利用して、押し寄せる魔物を撃退したらしい」
「それはまた、何とも献身的だな。・・・・・・いや、単にドМなだけか?」
「そこはせめて、聖人君子と言い換えておけ。曲がりなりにも、一応、辛うじてだが世界を救った偉大な先達なんだからな」
何とも微妙な賞賛の言葉を口にしたジュリアンが、最後の書類を決裁して『次元ポスト』に入れ、キーワードを打ち込む。
「・・・・・・よし、これで終わりだな」
そして、書類が転送された事を確認して立ち上がり、カズキを見る。
「待たせたな。では頼む」
「ああ」
返事をしたカズキが【テレポート】を発動すると、一瞬でランスリードの王城にある、謁見の間へと移動していた。
「遅ぇーぞ、ジュリアン」
「あっ、やっと来た!」
「ニャー」
「ニ゛ャ」
そこには王弟アルフレッド、カリム、クレア、アレンがいて、カズキ達が到着するのを待っていた。
ジュリアンとカズキが、試験で使う魔物を異世界で調達すると聞いて、同行を希望したのだ。
「お待たせして申し訳ありません。では、早速参りましょう」
その言葉にカズキが再び【テレポート】を使用すると、巨大ワイバーンと二度程戦った場所である、センスティア公爵家(マイネの実家)の領有する村へと辿り着く。
ここに、異世界へと繋がる『門』があるからだ。
「じゃあ行くか」
二度の【テレポート】で大量の魔力を失っているにも関わらず、全く息切れした様子もないカズキは、休む間もなく閉ざされていた『門』へと魔力で干渉し、あっさりと抉じ開けると、ナンシーとクレアを抱いて躊躇することなくその身を躍らせた。
「「「・・・・・・」」」
その余りの速さに、未だに【テレポート】後の感覚のズレに慣れていない三人が取り残される。
「ミ゛ャー」
それを予想していたアレンは、『門』が閉じる前にとカリムとジュリアンを器用に体の上に乗せ、一足早く回復したアルフレッドを促す。
「お、おお」
鳴き声に我に返ったアルフレッドがアレンと共に『門』へ踏み込むと、日の光を反射してキラキラと輝いている、三メートル程の柱が林立している場所へ出た。
「ワームとワイアームか。在庫はまだあるんだよなぁ」
氷の柱と化しているワームを見て、アルフレッドは自分の居場所に気付く。
そこは以前、カズキ、ナンシーと共に、あてもなく徘徊した砂漠であった。
カズキのお陰で気温、湿度共に快適に保たれているので、欠片も実感はなかったが。
「ですよねぇ」
そう言ったカズキが剣を振るうと、氷の柱が全て砕け散る。
「それで? こいつらはどれくらい捕獲すればいいんだ?」
「・・・・・・Bランクで手頃な相手かもしれないが、少しデカすぎる。学院のダンジョンには向かないな」
カズキの問いに、ジュリアンは残念そうに首を横に振った。
「そうか? 空間を拡張すればイケるんじゃね?」
「成程。その手があったか」
思ってもみなかった事を平然と口にするカズキに、ジュリアンが同意してしまう。
そのせいで調達する魔物が大型化し、試験の難易度が大幅に上昇する事になるのだが、それを指摘する者はこの場にいなかった。
10
お気に入りに追加
334
あなたにおすすめの小説
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる