150 / 368
第百五十話 ラウムドラゴンの目覚め
しおりを挟む
「いやー、豊作だな!」
「ミャー♪」
「ですね!」
「だな!」
上機嫌なカズキの言葉に同意したのは、やはり上機嫌なクレア、フローネ、アルフレッドの三人。
ランスリードにいた筈の彼らがここにいる理由は、カズキにも見覚えがない魔物が多数出現したためだった。
取り敢えず捕獲したものの、それが食材なのか否かの判断はカズキには出来ない。そこで、料理人であるアルフレッドと、『魔物の匂いを嗅ぐだけで食用か否かを判別する』という特技を持つクレアを呼びにいったところ、宴会参加者全員がついてきてきてしまったのだ。
ちなみに、最初にクリスとアーネストが遭遇した、『門』の集中的な発生からは既に一週間が経っている。
今は休憩中で、発生する『門』を魔物毎【アイギス】で閉じ込め、新しく食材として追加された魔物の肉を食べていたところだ。
「お? 『門』の発生が止まったな。ロイスの時も吹雪が止まった直後だったし、ファイアドラゴンの時も火柱が止まった直後だったから、そろそろ覚醒か?」
『うむ。もう間もなくであろう』
ロイスに肯定されて、カズキが(恐らくは)最後の『門』と魔物を、【ラグナロク】で消し去る。
「・・・・・・そういえば聞いてなかったな。ラウムドラゴンのエリアっていう奴は、どんなドラゴンなんだ? 敵対する可能性はあるのか?」
そして、今更のようにラウムドラゴンについて質問した。
『・・・・・・フレイのように、人や同族を襲って喰うという事はない。じゃが――』
「「「「「じゃが?」」」」」
「「「「ミャー?」」」」
言葉を濁すロイスの様子に、期待の眼差しを向ける人間と猫たち。
自身の口から一言『敵』という単語が出れば、ドラゴン肉の魅力に憑りつかれた彼らは、躊躇いもなくエリアを食材と見做すだろう。
種の保存の為、そして、個人的にもそれだけは何としても避けたいロイスは、慎重に言葉を選んで説明を始めた。
『少し。そう、ほんの少ーーーーーしだけじゃが気難しい所があってな? いや、根は悪い奴じゃないんじゃ。じゃが、ちょっとばかし――いやもう、ホントにちょびっとだけなんじゃよ? 人間を見下しているところがあってな?」
「「「「「ほほう?」」」」」
「「「「ニャウー?」」」」
『じゃから、最初は儂に任せてくれんか? きちんと説明すれば、エリアもきっと協力してくれると思うのじゃ。じゃから頼む!』
エリアを擁護する発言をすればするほど笑顔になっていく人間たちの様子から、自分の話が全く信じられていない事に気付いたロイスは、自身がエリアを説得するから、それまで手を出さないで欲しいという方向に話の舵を切る事にした。
「・・・・・・どう思う?」
クリスのそれを真似たのか、キレイな土下座を決めているロイスを見て、カズキがジュリアンを振り返る。
「任せていいんじゃないか? 話を聞く限り可能性は低そうだが、どっちに転んでも我々に損はないしな」
「それもそうか。じゃあエリアの説得はロイスに任せる。勿論、俺達に手を出すような事があったら、その限りじゃないけどな」
『助かる!』
礼を言ったロイスがフワリと浮き上がると、人間形態から本来の姿に戻り、『真・アーネスト号EX』の遥か頭上から海中をじっと睨んだ。
「ん? どうして海の中を見詰めてるんだろう?」
「海中で休眠していたからだ。どうやらエリアというドラゴンは水龍のようだな」
「そうなの? なんかイメージと違うなぁ」
ラクトの疑問にカズキが答えていると、何の前触れもなく、突然海に変化が起こった。
『真・アーネスト号EX』を取り囲むような形で、六本の水柱が天に向かって噴き上がったのだ。
「おおーっ!」
「これは・・・・・・、凄いな」
「そうね。水柱の一本一本から、濃密な魔力を感じるわ」
「綺麗ですね!」
『・・・・・・むう』
見物人が歓声を上げる中、ロイスは不機嫌そうな唸り声を上げる。事態が最悪の方向へと向かい始めた事に気付いたからだ。
「ねえカズキ。これってどう考えてもそうよね?」
「うん。間違いなくこの船を狙ってたな。だけどまあ、ロイスが防いだから大目に見よう。何か事情がありそうだし」
本来ならば、六本の水柱は『真・アーネスト号EX』に直撃する筈だった。それが外れたのは、ロイスが魔法を使って『真・アーネスト号EX』を守ったからである。
カズキはその行為に免じて、今回だけは養殖場送りを見送ったのだ。
そんな事を知らない観客達は、突然始まったショーに大興奮している。
「あっ! 水柱が一つになっていく!」
今は誰かが指摘した通り、『真・アーネスト号EX』を逸れた水柱が空中の一点に集まっていくところだった。
「「「「「「・・・・・・ゴクリ」」」」」」
それはやがてシーサーペントに似た、細長い形の何かを模っていき――、形が定まった途端に爆発。
後に残ったのは、細長い胴体に四肢と立派な角を備えた、シーサーペントとは似ても似つかない、神々しい姿をした存在だった。
「ミャー♪」
「ですね!」
「だな!」
上機嫌なカズキの言葉に同意したのは、やはり上機嫌なクレア、フローネ、アルフレッドの三人。
ランスリードにいた筈の彼らがここにいる理由は、カズキにも見覚えがない魔物が多数出現したためだった。
取り敢えず捕獲したものの、それが食材なのか否かの判断はカズキには出来ない。そこで、料理人であるアルフレッドと、『魔物の匂いを嗅ぐだけで食用か否かを判別する』という特技を持つクレアを呼びにいったところ、宴会参加者全員がついてきてきてしまったのだ。
ちなみに、最初にクリスとアーネストが遭遇した、『門』の集中的な発生からは既に一週間が経っている。
今は休憩中で、発生する『門』を魔物毎【アイギス】で閉じ込め、新しく食材として追加された魔物の肉を食べていたところだ。
「お? 『門』の発生が止まったな。ロイスの時も吹雪が止まった直後だったし、ファイアドラゴンの時も火柱が止まった直後だったから、そろそろ覚醒か?」
『うむ。もう間もなくであろう』
ロイスに肯定されて、カズキが(恐らくは)最後の『門』と魔物を、【ラグナロク】で消し去る。
「・・・・・・そういえば聞いてなかったな。ラウムドラゴンのエリアっていう奴は、どんなドラゴンなんだ? 敵対する可能性はあるのか?」
そして、今更のようにラウムドラゴンについて質問した。
『・・・・・・フレイのように、人や同族を襲って喰うという事はない。じゃが――』
「「「「「じゃが?」」」」」
「「「「ミャー?」」」」
言葉を濁すロイスの様子に、期待の眼差しを向ける人間と猫たち。
自身の口から一言『敵』という単語が出れば、ドラゴン肉の魅力に憑りつかれた彼らは、躊躇いもなくエリアを食材と見做すだろう。
種の保存の為、そして、個人的にもそれだけは何としても避けたいロイスは、慎重に言葉を選んで説明を始めた。
『少し。そう、ほんの少ーーーーーしだけじゃが気難しい所があってな? いや、根は悪い奴じゃないんじゃ。じゃが、ちょっとばかし――いやもう、ホントにちょびっとだけなんじゃよ? 人間を見下しているところがあってな?」
「「「「「ほほう?」」」」」
「「「「ニャウー?」」」」
『じゃから、最初は儂に任せてくれんか? きちんと説明すれば、エリアもきっと協力してくれると思うのじゃ。じゃから頼む!』
エリアを擁護する発言をすればするほど笑顔になっていく人間たちの様子から、自分の話が全く信じられていない事に気付いたロイスは、自身がエリアを説得するから、それまで手を出さないで欲しいという方向に話の舵を切る事にした。
「・・・・・・どう思う?」
クリスのそれを真似たのか、キレイな土下座を決めているロイスを見て、カズキがジュリアンを振り返る。
「任せていいんじゃないか? 話を聞く限り可能性は低そうだが、どっちに転んでも我々に損はないしな」
「それもそうか。じゃあエリアの説得はロイスに任せる。勿論、俺達に手を出すような事があったら、その限りじゃないけどな」
『助かる!』
礼を言ったロイスがフワリと浮き上がると、人間形態から本来の姿に戻り、『真・アーネスト号EX』の遥か頭上から海中をじっと睨んだ。
「ん? どうして海の中を見詰めてるんだろう?」
「海中で休眠していたからだ。どうやらエリアというドラゴンは水龍のようだな」
「そうなの? なんかイメージと違うなぁ」
ラクトの疑問にカズキが答えていると、何の前触れもなく、突然海に変化が起こった。
『真・アーネスト号EX』を取り囲むような形で、六本の水柱が天に向かって噴き上がったのだ。
「おおーっ!」
「これは・・・・・・、凄いな」
「そうね。水柱の一本一本から、濃密な魔力を感じるわ」
「綺麗ですね!」
『・・・・・・むう』
見物人が歓声を上げる中、ロイスは不機嫌そうな唸り声を上げる。事態が最悪の方向へと向かい始めた事に気付いたからだ。
「ねえカズキ。これってどう考えてもそうよね?」
「うん。間違いなくこの船を狙ってたな。だけどまあ、ロイスが防いだから大目に見よう。何か事情がありそうだし」
本来ならば、六本の水柱は『真・アーネスト号EX』に直撃する筈だった。それが外れたのは、ロイスが魔法を使って『真・アーネスト号EX』を守ったからである。
カズキはその行為に免じて、今回だけは養殖場送りを見送ったのだ。
そんな事を知らない観客達は、突然始まったショーに大興奮している。
「あっ! 水柱が一つになっていく!」
今は誰かが指摘した通り、『真・アーネスト号EX』を逸れた水柱が空中の一点に集まっていくところだった。
「「「「「「・・・・・・ゴクリ」」」」」」
それはやがてシーサーペントに似た、細長い形の何かを模っていき――、形が定まった途端に爆発。
後に残ったのは、細長い胴体に四肢と立派な角を備えた、シーサーペントとは似ても似つかない、神々しい姿をした存在だった。
10
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
お気楽少女の異世界転移――チートな仲間と旅をする――
敬二 盤
ファンタジー
※なろう版との同時連載をしております
※表紙の実穂はpicrewのはなまめ様作ユル女子メーカーで作成した物です
最近投稿ペース死んだけど3日に一度は投稿したい!
第三章 完!!
クラスの中のボス的な存在の市町の娘とその取り巻き数人にいじめられ続けた高校生「進和実穂」。
ある日異世界に召喚されてしまった。
そして召喚された城を追い出されるは指名手配されるはでとっても大変!
でも突如であった仲間達と一緒に居れば怖くない!?
チートな仲間達との愉快な冒険が今始まる!…寄り道しすぎだけどね。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる