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第百十八話 異世界からの帰還
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「・・・・・・どういう事だ?」
「・・・・・・さあ?」
「・・・・・・ミャア?」
シーサーペントの試食が失敗に終わったカズキとアルフレッド(とナンシー)は、別の食材を探す為、スタート地点に戻ろうとして・・・・・・、途方に暮れていた。
「まさか、一晩休んで外に出たら、全く知らない景色が広がっているとはなぁ」
「流石に予想できませんでしたね」
昨夜、寝る前に確認した時には、キマイラの大群が襲ってきた洞窟への入り口があったのだが、今朝起きて【次元ハウス+ニャン】を出ると、辺り一面砂の世界に変わっていたのだ。
「・・・・・・ここで突っ立てっても仕方ねえし、とりあえず移動するか? 砂漠に棲む魔物がいるかもしれねえし」
「そうですね。手掛かりも何もないので、進む方向はナンシーに決めてもらいましょう。・・・・・・ナンシー、どっちがいいと思う?」
「みゃー」
ナンシーの尻尾が指す方へと、移動を始める二人と一匹。
カズキがいるので水の心配も、食料の心配も、寝泊りする場所の心配も、暑さ寒さへの対策も、果ては砂地の歩き難ささえも考えなくて済むので、緊張感は欠片もない。
「砂漠にもいろんな魔物や動物がいるし、実際に幾つかは調理して食ったが、大物には手を出せなかったんだよなぁ」
不意に襲い掛かってきたワイアーム(翼の生えたワーム)をカズキがあっさりと返り討ちにするのを見て、感慨深げにつぶやくアルフレッド。
砂漠でも奥地に潜むワームやワイアームを倒そうと思えば、それなりの準備が必要になる。
『次元ポスト』の転送システムを活用すれば最低限の荷物で砂漠の移動は可能だが、いつ足元から襲ってくるかわからないワームを、一日中警戒しているのも難しい。
移動による疲労と、精神的に疲弊した状態で、食べられるかどうかも分からないワームを倒す事の困難さを理解していたアルフレッドは、試すことなく諦めていたのだ。
「そうなんですか? じゃあ丁度良かったですね」
魔法を使って一瞬で解体を終えたカズキが、そう言ってワイアーム肉を差し出す。
「・・・・・・サンキュな」
「どういたしまして」
カズキが来てから、諦めていたAランクの魔物肉を調理できるようになり、アルフレッドの世界は一変した。
素直に礼を言えるような性格ではないのでぶっきらぼうな物言いになったが、諸々含めた感謝の気持ちはカズキにはしっかり伝わっていたらしく、照れた様子で返答してきた。
ワイアームの肉を試食し、その味に満足した二人と一匹は、更なる獲物を求めて砂漠を徘徊していた。
ジュリアンが卒倒した程の威力を持つ探査魔法(意味不明)が上手く働かない為、クラーケンを探す時に使った方法は取れなかったが、そんな事をするまでもなく、魔物の方から襲ってくるので、成果はそれなりにある。ワームやワイアームしか現れない事を除けば、だが。
「またワームか。いい加減、他の魔物が出てきても良さそうなものだが・・・・・・」
最初にカズキがワイアームを倒した時の感動はとうに薄れ、うんざりした様子でアルフレッドが言う。
そうは言いつつも、倒したワームはしっかり回収しているが。
「駄目ですね。周囲百キロにいる魔物は全てワームとワイアームだけです。このままでは埒が明かないので、とっとと抜け出しましょう」
カズキが言うなり、目の前の空間に『門』が出現した。
「・・・・・・はい?」
元の世界に戻る為の『門』の場所がわからないから探していたのに、その『門』が目の前にあるという現実に、アルフレッドの目が点になる。
「じゃあ戻りましょうか」
アルフレッドの困惑を意に介さず、カズキは自身が創り上げた『門』を潜る。置いて行かれては堪らないので、アルフレッドも急いでカズキの後を追うと、そこはマイネの実家であるセンスティア公爵家の、巨大ワイバーンが現れた村だった。
「・・・・・・もしかして、いつでも戻れたのか?」
「ええ、まあ」
アルフレッドの質問に、しれっと答えるカズキ。それだけではアルフレッドが納得しないと思ったのか、カズキは言い訳を始めた。
「ほら、元々あっちの世界に行ったのは、新しい食材を調達する為だったでしょ? それに、あの砂漠がどこまで続いていたのかもわからないから、一度戻って仕切り直したほうがいいかなぁーと思って」
「別に怒ってる訳じゃねえよ。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「お前の非常識さに呆れてるだけだ」
そう言ったアルフレッドの口元には、笑みが浮かんでいた。
「・・・・・・さあ?」
「・・・・・・ミャア?」
シーサーペントの試食が失敗に終わったカズキとアルフレッド(とナンシー)は、別の食材を探す為、スタート地点に戻ろうとして・・・・・・、途方に暮れていた。
「まさか、一晩休んで外に出たら、全く知らない景色が広がっているとはなぁ」
「流石に予想できませんでしたね」
昨夜、寝る前に確認した時には、キマイラの大群が襲ってきた洞窟への入り口があったのだが、今朝起きて【次元ハウス+ニャン】を出ると、辺り一面砂の世界に変わっていたのだ。
「・・・・・・ここで突っ立てっても仕方ねえし、とりあえず移動するか? 砂漠に棲む魔物がいるかもしれねえし」
「そうですね。手掛かりも何もないので、進む方向はナンシーに決めてもらいましょう。・・・・・・ナンシー、どっちがいいと思う?」
「みゃー」
ナンシーの尻尾が指す方へと、移動を始める二人と一匹。
カズキがいるので水の心配も、食料の心配も、寝泊りする場所の心配も、暑さ寒さへの対策も、果ては砂地の歩き難ささえも考えなくて済むので、緊張感は欠片もない。
「砂漠にもいろんな魔物や動物がいるし、実際に幾つかは調理して食ったが、大物には手を出せなかったんだよなぁ」
不意に襲い掛かってきたワイアーム(翼の生えたワーム)をカズキがあっさりと返り討ちにするのを見て、感慨深げにつぶやくアルフレッド。
砂漠でも奥地に潜むワームやワイアームを倒そうと思えば、それなりの準備が必要になる。
『次元ポスト』の転送システムを活用すれば最低限の荷物で砂漠の移動は可能だが、いつ足元から襲ってくるかわからないワームを、一日中警戒しているのも難しい。
移動による疲労と、精神的に疲弊した状態で、食べられるかどうかも分からないワームを倒す事の困難さを理解していたアルフレッドは、試すことなく諦めていたのだ。
「そうなんですか? じゃあ丁度良かったですね」
魔法を使って一瞬で解体を終えたカズキが、そう言ってワイアーム肉を差し出す。
「・・・・・・サンキュな」
「どういたしまして」
カズキが来てから、諦めていたAランクの魔物肉を調理できるようになり、アルフレッドの世界は一変した。
素直に礼を言えるような性格ではないのでぶっきらぼうな物言いになったが、諸々含めた感謝の気持ちはカズキにはしっかり伝わっていたらしく、照れた様子で返答してきた。
ワイアームの肉を試食し、その味に満足した二人と一匹は、更なる獲物を求めて砂漠を徘徊していた。
ジュリアンが卒倒した程の威力を持つ探査魔法(意味不明)が上手く働かない為、クラーケンを探す時に使った方法は取れなかったが、そんな事をするまでもなく、魔物の方から襲ってくるので、成果はそれなりにある。ワームやワイアームしか現れない事を除けば、だが。
「またワームか。いい加減、他の魔物が出てきても良さそうなものだが・・・・・・」
最初にカズキがワイアームを倒した時の感動はとうに薄れ、うんざりした様子でアルフレッドが言う。
そうは言いつつも、倒したワームはしっかり回収しているが。
「駄目ですね。周囲百キロにいる魔物は全てワームとワイアームだけです。このままでは埒が明かないので、とっとと抜け出しましょう」
カズキが言うなり、目の前の空間に『門』が出現した。
「・・・・・・はい?」
元の世界に戻る為の『門』の場所がわからないから探していたのに、その『門』が目の前にあるという現実に、アルフレッドの目が点になる。
「じゃあ戻りましょうか」
アルフレッドの困惑を意に介さず、カズキは自身が創り上げた『門』を潜る。置いて行かれては堪らないので、アルフレッドも急いでカズキの後を追うと、そこはマイネの実家であるセンスティア公爵家の、巨大ワイバーンが現れた村だった。
「・・・・・・もしかして、いつでも戻れたのか?」
「ええ、まあ」
アルフレッドの質問に、しれっと答えるカズキ。それだけではアルフレッドが納得しないと思ったのか、カズキは言い訳を始めた。
「ほら、元々あっちの世界に行ったのは、新しい食材を調達する為だったでしょ? それに、あの砂漠がどこまで続いていたのかもわからないから、一度戻って仕切り直したほうがいいかなぁーと思って」
「別に怒ってる訳じゃねえよ。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「お前の非常識さに呆れてるだけだ」
そう言ったアルフレッドの口元には、笑みが浮かんでいた。
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