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第百二話 バジリスクとの遭遇
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コカトリスパーティの翌日。カズキ達はパーティを分割して、本格的に食材集めを開始した。
狙うのは、初代勇者が『美味しいけど食べたら死ぬよ?』と書物に残していた魔物と、実力的に倒せなかった魔物である。
「・・・・・・そろそろバジリスクの目撃情報があった場所だ。毒はカズキのお陰で気にしなくてもいいが、石化は神聖魔法じゃないと治せねぇ。ここからは細心の注意を払って移動するぞ。まかり間違って、バジリスクの視線に晒されたら・・・・・・、諦めろ」
そんな投げやりな台詞を吐いたのは、バジリスク調達の責任者になったアルフレッドだった。
彼と行動を共にするのは、ラクトとエストの二人である。
体長は一メートル程で、八本の手足を持つトカゲであるバジリスク。その血は毒を帯びており、普段は固く閉ざされている瞳には石化の能力を備えている。そんな厄介な魔物の討伐にフローネがいないのは、くじ引きの結果であった。
「・・・・・・まぁ三人いるので、別々の方向から近づけば大丈夫でしょう。二人石化されても、残った一人が倒せばいい訳ですし。特殊能力の厄介さからCランクに分類されていますが、逆に言えばそれだけです。勿論、石化されないに越したことはありませんが」
アルフレッドに答えたのはラクトだった。
「石化されると言っても、一瞬で、という訳でもないしな。複数のバジリスクの視線に晒されれば別だが、一度視線を浴びた位なら、一日は余裕で行動が可能だし」
エストが言うように、バジリスクの石化の視線は厄介だが、それで直ちに行動不能になる訳ではない。どちらかと言えば、毒を帯びた血液の方が問題だった。浴びればその部分から皮膚がただれ、解毒しなければ短時間で死に至る程の毒性を誇るので、バジリスクとの戦いには神官が必須と言われているのだ。
そう、今回三人が挑むのは、『美味しいけど、食べたら死ぬ』方である。
アルフレッドが軽口を叩いていられるのも、カズキが創った【キュアポイズン】のマジックアイテムがあるのと、実力的にはAランクのラクトとエスト、そして、正真正銘Aランクのアルフレッドの三人が揃っているからだ。
「ギャー!」
「下がれ! すぐに解毒して貰うんだ!」
「俺の魔法では駄目だ! 毒が強力すぎる!」
話をしながらも、慎重に進む一行の耳に、悲鳴が聞こえてきた。
「・・・・・・新人が、運悪くバジリスクに遭遇したか? ともかく急ぐぞ!」
「「はい!」」
顔を顰めたアルフレッドが、二人を促して走り始める。ラクトとエストも、返事をすると間髪入れず駆け出した。
「・・・・・・なん、だと?」
アルフレッドがソレを見て、目を見開いたまま絶句する。
「「・・・・・・」」
ラクトとエストは、言葉もなくそれを見上げていた。
駆け付けた三人が見たのは、全長十メートルを超える、巨大なバジリスクの後ろ姿だった。
その足元には逃げ出そうとして果たせなかったのか、五人組の冒険者たちの石像が転がっている。その内の一人は、バジリスクの猛毒を浴びたのか、皮膚がただれていた。
「僕たちが駆け付けるまでの間に石化されたようです。幸い、毒を喰らってすぐに石化されたので、戻ってフローネさんやエルザさんに任せれば、治癒は可能でしょう。・・・・・・どうしますか?」
毒を喰らった上に、石化された冒険者を見て、ラクトが固まったままのアルフレッドに問いかける。その表情から、撤退を進言しているのは明白だった。
「彼らをギルドの本部で見た事があります。確か、Bランクのパーティだった筈。それを簡単に返り討ちにするという事は、Aランク相当の力を持っているという事。石化の視線も強化されているようですし、フローネやカズキがいない状況で挑むのは、危険だと思います。一旦退いて、彼等との合流を目指すべきかと」
「・・・・・・いや、それは駄目だ」
動かないアルフレッドを見て、エストもラクトの言葉に追随する。だが、返って来たのは否定の言葉だった。
「この先には小せぇ村がある。アイツを放っておく訳にはいかねぇ。それに・・・・・・」
「「それに?」」
継承権を放棄したとはいえ、アルフレッドもランスリードの王族の一人。守るべき民の事を考えているのだと思った二人は、高潔な精神を持つアルフレッドの言葉を待つ。そして出て来た言葉は・・・・・・。
「あれだけデカいなら、肉取り放題じゃねーか!」
「「本音が出たーー!」」
欲望丸出しだった。
「はぁ、感心して損した。しかも、発想がカズキと全く一緒」
かつてカズキは、邪神並に成長したワイバーンを見て、アルフレッドと同じことを口した事があるのだ。流石は師弟関係にある二人だった。
「・・・・・・まぁ、最初に言った言葉も、あながち嘘という訳ではないだろう。それよりも今考えるべきことは、どうやってあのバジリスクを仕留めるか、という事だ」
エストの言葉に、アルフレッドが即答する。だが、それはラクトとエストが期待した答えではなかった。
「あ? そりゃあ決まってんだろ。肉を駄目にしないような倒し方、だ」
その言葉に天を仰ぐ二人。それは事実上、ラクトの神話級魔法の使用を禁止されたも同然だからだ。
ラクトの使う【ブリューナク】は強力で、今回のように不意打ちを狙えるならば、一撃で仕留める事も可能だったのだが、その場合は肉を諦めなければならない。ラクトの制御力では細かい調整が出来ず、ただ大威力で相手を滅ぼす事しか出来ないのだ。
「・・・・・・こんな事になると知ってたら、【コキュートス】のマジックアイテムを貰ったのに」
コカトリスに続いて、困難なミッション(主にアルフレッドの所為)になってしまったバジリスク討伐に、ラクトとエストは溜息を吐いた。
狙うのは、初代勇者が『美味しいけど食べたら死ぬよ?』と書物に残していた魔物と、実力的に倒せなかった魔物である。
「・・・・・・そろそろバジリスクの目撃情報があった場所だ。毒はカズキのお陰で気にしなくてもいいが、石化は神聖魔法じゃないと治せねぇ。ここからは細心の注意を払って移動するぞ。まかり間違って、バジリスクの視線に晒されたら・・・・・・、諦めろ」
そんな投げやりな台詞を吐いたのは、バジリスク調達の責任者になったアルフレッドだった。
彼と行動を共にするのは、ラクトとエストの二人である。
体長は一メートル程で、八本の手足を持つトカゲであるバジリスク。その血は毒を帯びており、普段は固く閉ざされている瞳には石化の能力を備えている。そんな厄介な魔物の討伐にフローネがいないのは、くじ引きの結果であった。
「・・・・・・まぁ三人いるので、別々の方向から近づけば大丈夫でしょう。二人石化されても、残った一人が倒せばいい訳ですし。特殊能力の厄介さからCランクに分類されていますが、逆に言えばそれだけです。勿論、石化されないに越したことはありませんが」
アルフレッドに答えたのはラクトだった。
「石化されると言っても、一瞬で、という訳でもないしな。複数のバジリスクの視線に晒されれば別だが、一度視線を浴びた位なら、一日は余裕で行動が可能だし」
エストが言うように、バジリスクの石化の視線は厄介だが、それで直ちに行動不能になる訳ではない。どちらかと言えば、毒を帯びた血液の方が問題だった。浴びればその部分から皮膚がただれ、解毒しなければ短時間で死に至る程の毒性を誇るので、バジリスクとの戦いには神官が必須と言われているのだ。
そう、今回三人が挑むのは、『美味しいけど、食べたら死ぬ』方である。
アルフレッドが軽口を叩いていられるのも、カズキが創った【キュアポイズン】のマジックアイテムがあるのと、実力的にはAランクのラクトとエスト、そして、正真正銘Aランクのアルフレッドの三人が揃っているからだ。
「ギャー!」
「下がれ! すぐに解毒して貰うんだ!」
「俺の魔法では駄目だ! 毒が強力すぎる!」
話をしながらも、慎重に進む一行の耳に、悲鳴が聞こえてきた。
「・・・・・・新人が、運悪くバジリスクに遭遇したか? ともかく急ぐぞ!」
「「はい!」」
顔を顰めたアルフレッドが、二人を促して走り始める。ラクトとエストも、返事をすると間髪入れず駆け出した。
「・・・・・・なん、だと?」
アルフレッドがソレを見て、目を見開いたまま絶句する。
「「・・・・・・」」
ラクトとエストは、言葉もなくそれを見上げていた。
駆け付けた三人が見たのは、全長十メートルを超える、巨大なバジリスクの後ろ姿だった。
その足元には逃げ出そうとして果たせなかったのか、五人組の冒険者たちの石像が転がっている。その内の一人は、バジリスクの猛毒を浴びたのか、皮膚がただれていた。
「僕たちが駆け付けるまでの間に石化されたようです。幸い、毒を喰らってすぐに石化されたので、戻ってフローネさんやエルザさんに任せれば、治癒は可能でしょう。・・・・・・どうしますか?」
毒を喰らった上に、石化された冒険者を見て、ラクトが固まったままのアルフレッドに問いかける。その表情から、撤退を進言しているのは明白だった。
「彼らをギルドの本部で見た事があります。確か、Bランクのパーティだった筈。それを簡単に返り討ちにするという事は、Aランク相当の力を持っているという事。石化の視線も強化されているようですし、フローネやカズキがいない状況で挑むのは、危険だと思います。一旦退いて、彼等との合流を目指すべきかと」
「・・・・・・いや、それは駄目だ」
動かないアルフレッドを見て、エストもラクトの言葉に追随する。だが、返って来たのは否定の言葉だった。
「この先には小せぇ村がある。アイツを放っておく訳にはいかねぇ。それに・・・・・・」
「「それに?」」
継承権を放棄したとはいえ、アルフレッドもランスリードの王族の一人。守るべき民の事を考えているのだと思った二人は、高潔な精神を持つアルフレッドの言葉を待つ。そして出て来た言葉は・・・・・・。
「あれだけデカいなら、肉取り放題じゃねーか!」
「「本音が出たーー!」」
欲望丸出しだった。
「はぁ、感心して損した。しかも、発想がカズキと全く一緒」
かつてカズキは、邪神並に成長したワイバーンを見て、アルフレッドと同じことを口した事があるのだ。流石は師弟関係にある二人だった。
「・・・・・・まぁ、最初に言った言葉も、あながち嘘という訳ではないだろう。それよりも今考えるべきことは、どうやってあのバジリスクを仕留めるか、という事だ」
エストの言葉に、アルフレッドが即答する。だが、それはラクトとエストが期待した答えではなかった。
「あ? そりゃあ決まってんだろ。肉を駄目にしないような倒し方、だ」
その言葉に天を仰ぐ二人。それは事実上、ラクトの神話級魔法の使用を禁止されたも同然だからだ。
ラクトの使う【ブリューナク】は強力で、今回のように不意打ちを狙えるならば、一撃で仕留める事も可能だったのだが、その場合は肉を諦めなければならない。ラクトの制御力では細かい調整が出来ず、ただ大威力で相手を滅ぼす事しか出来ないのだ。
「・・・・・・こんな事になると知ってたら、【コキュートス】のマジックアイテムを貰ったのに」
コカトリスに続いて、困難なミッション(主にアルフレッドの所為)になってしまったバジリスク討伐に、ラクトとエストは溜息を吐いた。
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