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第九十二話 今日から出来る! カズキのミスリル作成教室
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【次元ハウス+ニャン】を出た一行は、校舎を出た所に広がる荒野へと足を運んでいた。カズキが入学二日目に十七人の生徒と戦い、エストと知り合ったり、試験の為にと、ジュリアンがソフィアの協力を得て、ダンジョンを造った例の場所である。
「・・・・・・誰もいないね。前来た時は、素振りをする人たちがいたんだけど」
それは、ラクトがカズキ達とパーティを組んで、初めて依頼(ワイバーン退治)を受けた日の事。講義と言うには余りにも内容のない、ただ素振りを繰り返すだけの集団と、それを退屈そうに眺める教官がいたのだ。
「今はそういう講義は行っていないぞ? 教官の講義を受けようという奴は、強制的にダンジョンに連行されるからな」
ラクトの疑問にコエンが答える。
「そういえば、学院長がそんな事を言ってたっけ」
「教官同伴でダンジョンに潜るから、アドバイスを貰えるし、危ない時は助けて貰えるという話だ。まぁ、教官に助けられると、単位をマイナスにされるらしいがな」
「それが嫌なら依頼を受けろって事?」
「その通りだ」
ラクトとコエンがそんな話をしていると、カズキが足を止めた。
「ここでいいかな」
「何がでしょう?」
カズキの呟きに、フローネが反応する。
「ここなら、ジュリアンが造ったダンジョンに影響が出ないからな。ミスリルが大量に必要だから、ダンジョンの真上で魔法を使うと、崩落する可能性があるだろ?」
「それもそうですね」
「・・・・・・どういう事?」
カズキとフローネの会話に、他の面子が首を傾げる。
「こういう事」
説明するのが苦手なカズキが地面に手を着くと、この光景に見覚えがあるラクトとマイネが、顔を見合わせた。
その時は巨大な船を一瞬で造り上げたが、今回必要とするのは、大量のミスリルらしい。その為、『まさか』という思いが強かったが、その『まさか』を現実にしてしまうのが、カズキという男だった。
結果、二人の(当たって欲しくない)予想通り、大量の銀(トン単位)がその場に出現する。
「「なっ!?」」
「「・・・・・・やっぱり」」
銀を創り出すという、前代未聞で言語道断な事をしでかしたカズキに対し、驚きの声を上げたのがコエンとエスト。予想が当たってしまった事に、諦めの声を上げたのが、ラクトとマイネだった。
「まさか、銀を創り出せるなんてね・・・・・・。違和感はあったんだ。お城に行くたびに、マジックアイテムが増えてるのに、銀の値段に変化がないんだから」
ラクトは、ランスリードの王城に使われているマジックアイテムの数から考えて、銀が値上がりしていない事に、ずっと違和感を感じていた。
城のあちこちに使われているミスリルの量を考えると、材料として必要な銀の値段は、軽く国家予算を超えている。
いくらランスリードが裕福とはいえ、それだけの銀を購入すれば財政が傾く筈だし、そこまで市場に流通している訳もないと思っていたのだ。
「ジュリアンとソフィア様に頼まれて、定期的にミスリルを渡しているからな。一応、内緒にしておいてくれ」
「言える訳ないでしょ・・・・・・」
力なく呟くラクト。こんな事実が広まったら、強欲な人間が手段を選ばず大挙して押し寄せてくるのは想像に難くない。しかも、カズキをどうにか出来る人間が存在しない以上、狙われるのは周囲の人間である。
「なんか、学院に入ったばかりの時も、こんな事があったような・・・・・・。ああ、確かあの時は、カズキが魔剣を作れる事を秘密にして欲しいって言われたんだっけ」
遠い目をしたラクトが、入学直後にあった事を思い出す。あれから色々な事があって、自分の実力も大幅に伸びたが、カズキに出会ってから、まだ半年も経っていないのだ。一年前の自分に現在の状況を伝えても、絶対に信じないであろう。
「・・・・・・この大量の銀をミスリルに変えて、マジックアイテムを創るという事か? それならば、かなり大規模な古代魔法を込める事が出来るだろうが、流石にこれを持ち歩くのは無理がないか?」
コエンがそこかしこにある銀塊を見て、そんな感想を漏らす。カズキが銀を創り出した事に関しては、触れない方向で行くらしい。
「普通ならそうだな。そこで、新しく覚えた魔法の出番だ。・・・・・・まずは銀をこぶし大の大きさにカットします。ここで最初のポイント。銀はなるべく純度が高い物を使用しましょう。魔法を使えば簡単に手に入る上に、元手もかからないのでお勧めです」
何故か、料理番組のようなノリで解説を始めるカズキ。
「次に、こぶし大にした銀を魔法で圧縮して一つにしていきます。ここで注意しなければならないのは、圧縮した銀を不用意に持ち上げると、腰を痛める可能性がある事です。なので、手に取る場合は【フィジカルエンチャント】を掛けてからにするか、ミスリルに変えてからにしましょう」
「「「出来るか!」」」
男達からツッコミが入るが、カズキは意に返さずに説明を続ける。
「そうこうするうちに、銀の圧縮が終わりました。次は、銀をミスリルに変える工程です。ポイントは、銀がミスリルに変質するまで、魔力の供給を途切れないようにする事と、それを一瞬で行う事です。多少の魔力が無駄になっても良いと考え、思い切りやりましょう。躊躇ったり、時間を掛けたりすると、質の悪いミスリルになってしまいますよ?」
「あれだけあった銀塊全てを、こぶし大の大きさにまで圧縮したのか? 俄かには信じられん。・・・・・・どれ」
エストが、カズキの魔法によってこぶし大の大きさになった銀を持ち上げようと手を伸ばす。
だが、トン単位の重量を持つ銀を持ち上げる事が出来る筈もない。結果、無理な姿勢で力を入れていたエストは、カズキの忠告もむなしく、腰痛を発症した。
「さて、気を取り直して、ミスリルに変える工程に進みましょう。ポイントは先程言った通りです。では、始めます」
フローネが魔法でエストの腰痛を癒しているのを横目に、カズキがこぶし大の銀に魔力を込める。
「っ! カズキさんが魔剣を創る場面を何度か見ていますが、これまでとは比べ物にならない程の魔力を消費していますね。こうして近くにいるだけで、圧迫感を感じる程です」
マイネがそう言ってカズキの傍を離れようとしたが、その時にはミスリルが完成していた。というか、マイネが言葉を発する頃には終わっていた。
「これで完成です。次回の放送では、今回創ったミスリルを、マジックアイテムにする方法をご紹介します。それではまた来週、この時間にお会いしましょう」
「・・・・・・誰もいないね。前来た時は、素振りをする人たちがいたんだけど」
それは、ラクトがカズキ達とパーティを組んで、初めて依頼(ワイバーン退治)を受けた日の事。講義と言うには余りにも内容のない、ただ素振りを繰り返すだけの集団と、それを退屈そうに眺める教官がいたのだ。
「今はそういう講義は行っていないぞ? 教官の講義を受けようという奴は、強制的にダンジョンに連行されるからな」
ラクトの疑問にコエンが答える。
「そういえば、学院長がそんな事を言ってたっけ」
「教官同伴でダンジョンに潜るから、アドバイスを貰えるし、危ない時は助けて貰えるという話だ。まぁ、教官に助けられると、単位をマイナスにされるらしいがな」
「それが嫌なら依頼を受けろって事?」
「その通りだ」
ラクトとコエンがそんな話をしていると、カズキが足を止めた。
「ここでいいかな」
「何がでしょう?」
カズキの呟きに、フローネが反応する。
「ここなら、ジュリアンが造ったダンジョンに影響が出ないからな。ミスリルが大量に必要だから、ダンジョンの真上で魔法を使うと、崩落する可能性があるだろ?」
「それもそうですね」
「・・・・・・どういう事?」
カズキとフローネの会話に、他の面子が首を傾げる。
「こういう事」
説明するのが苦手なカズキが地面に手を着くと、この光景に見覚えがあるラクトとマイネが、顔を見合わせた。
その時は巨大な船を一瞬で造り上げたが、今回必要とするのは、大量のミスリルらしい。その為、『まさか』という思いが強かったが、その『まさか』を現実にしてしまうのが、カズキという男だった。
結果、二人の(当たって欲しくない)予想通り、大量の銀(トン単位)がその場に出現する。
「「なっ!?」」
「「・・・・・・やっぱり」」
銀を創り出すという、前代未聞で言語道断な事をしでかしたカズキに対し、驚きの声を上げたのがコエンとエスト。予想が当たってしまった事に、諦めの声を上げたのが、ラクトとマイネだった。
「まさか、銀を創り出せるなんてね・・・・・・。違和感はあったんだ。お城に行くたびに、マジックアイテムが増えてるのに、銀の値段に変化がないんだから」
ラクトは、ランスリードの王城に使われているマジックアイテムの数から考えて、銀が値上がりしていない事に、ずっと違和感を感じていた。
城のあちこちに使われているミスリルの量を考えると、材料として必要な銀の値段は、軽く国家予算を超えている。
いくらランスリードが裕福とはいえ、それだけの銀を購入すれば財政が傾く筈だし、そこまで市場に流通している訳もないと思っていたのだ。
「ジュリアンとソフィア様に頼まれて、定期的にミスリルを渡しているからな。一応、内緒にしておいてくれ」
「言える訳ないでしょ・・・・・・」
力なく呟くラクト。こんな事実が広まったら、強欲な人間が手段を選ばず大挙して押し寄せてくるのは想像に難くない。しかも、カズキをどうにか出来る人間が存在しない以上、狙われるのは周囲の人間である。
「なんか、学院に入ったばかりの時も、こんな事があったような・・・・・・。ああ、確かあの時は、カズキが魔剣を作れる事を秘密にして欲しいって言われたんだっけ」
遠い目をしたラクトが、入学直後にあった事を思い出す。あれから色々な事があって、自分の実力も大幅に伸びたが、カズキに出会ってから、まだ半年も経っていないのだ。一年前の自分に現在の状況を伝えても、絶対に信じないであろう。
「・・・・・・この大量の銀をミスリルに変えて、マジックアイテムを創るという事か? それならば、かなり大規模な古代魔法を込める事が出来るだろうが、流石にこれを持ち歩くのは無理がないか?」
コエンがそこかしこにある銀塊を見て、そんな感想を漏らす。カズキが銀を創り出した事に関しては、触れない方向で行くらしい。
「普通ならそうだな。そこで、新しく覚えた魔法の出番だ。・・・・・・まずは銀をこぶし大の大きさにカットします。ここで最初のポイント。銀はなるべく純度が高い物を使用しましょう。魔法を使えば簡単に手に入る上に、元手もかからないのでお勧めです」
何故か、料理番組のようなノリで解説を始めるカズキ。
「次に、こぶし大にした銀を魔法で圧縮して一つにしていきます。ここで注意しなければならないのは、圧縮した銀を不用意に持ち上げると、腰を痛める可能性がある事です。なので、手に取る場合は【フィジカルエンチャント】を掛けてからにするか、ミスリルに変えてからにしましょう」
「「「出来るか!」」」
男達からツッコミが入るが、カズキは意に返さずに説明を続ける。
「そうこうするうちに、銀の圧縮が終わりました。次は、銀をミスリルに変える工程です。ポイントは、銀がミスリルに変質するまで、魔力の供給を途切れないようにする事と、それを一瞬で行う事です。多少の魔力が無駄になっても良いと考え、思い切りやりましょう。躊躇ったり、時間を掛けたりすると、質の悪いミスリルになってしまいますよ?」
「あれだけあった銀塊全てを、こぶし大の大きさにまで圧縮したのか? 俄かには信じられん。・・・・・・どれ」
エストが、カズキの魔法によってこぶし大の大きさになった銀を持ち上げようと手を伸ばす。
だが、トン単位の重量を持つ銀を持ち上げる事が出来る筈もない。結果、無理な姿勢で力を入れていたエストは、カズキの忠告もむなしく、腰痛を発症した。
「さて、気を取り直して、ミスリルに変える工程に進みましょう。ポイントは先程言った通りです。では、始めます」
フローネが魔法でエストの腰痛を癒しているのを横目に、カズキがこぶし大の銀に魔力を込める。
「っ! カズキさんが魔剣を創る場面を何度か見ていますが、これまでとは比べ物にならない程の魔力を消費していますね。こうして近くにいるだけで、圧迫感を感じる程です」
マイネがそう言ってカズキの傍を離れようとしたが、その時にはミスリルが完成していた。というか、マイネが言葉を発する頃には終わっていた。
「これで完成です。次回の放送では、今回創ったミスリルを、マジックアイテムにする方法をご紹介します。それではまた来週、この時間にお会いしましょう」
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