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第七十一話 タゴサク、身バレする
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「「「・・・・・・」」」
ラクトとマイネ、そしてコエンは、タゴサクを見て呆然としていた。
漸くタゴサクの実力がわかると思った矢先に、魔法を使って失格になったのだから当然の話である。
観客も同様だが、その中で、なにやらチケットを握りしめている人々はハイテンションだった。
「これはまさかの結末だぁ! タゴサク選手、魔法を使用してしまったため、失格! 失格です! という事で、今回の『ルール違反第一号は誰だ! トトカルチョ』は、タゴサク選手という結果になりました! 倍率は、1.3倍です。やはり一般の部からの参加者であるタゴサク選手に、多くの人が賭けた模様です」
タゴサクのルール違反を咎める者はいなかった。何故なら、賭け事になっている事からも分かるように、毎年の事であるからだ。
「失格してしまったタゴサク選手には、残りの試合を頑張ってもらいましょう! では、気を取り直して次の試合です。出場選手は・・・・・・」
クリスのアナウンスが流れる中、失格を告げられたタゴサクが、肩を落としてすごすごと退場する。それをみんなで見ていると、唐突にジュリアンから魔法を使った連絡が入った。
『すまないが、本日の日程が終了したら、学院長室に来て欲しい。話しておきたい事がある』
「わかった」
突然の事に驚く皆を他所に、カズキがのんびりと答える。
『すまないな』
カズキの返事を聞いたジュリアンは、最後に一言謝ってから、連絡を終了した。
「・・・・・・話しておきたい事? 一体なんだろう」
「・・・・・・タゴサクの使った魔法の事ではないか? 【キロデイン】なんて魔法は聞いた事がないからな」
夕日の中で殴り合った結果(嘘)、すっかり仲良くなったラクトとコエンが、驚きを引き摺ったまま、そんな会話を交わす。
「それよりも、私も行っても良いのだろうか? お前たちとは違い、学院長とはそこまで親しくはないのだが」
「良いんじゃね? 駄目なら魔法の対象にあんたを含めない筈だからな。そうしなかったって事は、あんたも来いっていう事だろ」
コエンの疑問にカズキが答える。ラクトとマイネも同意するように頷いていた。
「そうか。ならばそうさせてもらおう。話は変わるが、古代魔法というのは・・・・・・」
その後はコエンの疑問に答えたり、フローネの試合(圧勝)を見たりしながら時間を潰し、最後の試合が終わるのと同時に席を立って、一行は学院長室へと向かった。
カズキ達が学院長室に辿り着くと、ノックをする前に、向こうから勝手に扉が開かれた。
扉を開けたのはクリスで、室内には学院長であるジュリアン、第二王子のアーネスト、彼らの母親であるソフィア、その姉のリディアがいた。勿論、彼らの愛猫である、エリーとミリアも一緒だ。
「疲れている所をすまないな。話というのは、一般の部を勝ち抜いて、本戦に出場したタゴサクについてだ」
全員が部屋に入ったのを確認して、ジュリアンが話を切り出す。
「ちょっと待った」
だが、それに待ったを掛けた人物がいた。カズキである。
「どうした?」
「ナンシー達の御飯の時間だ。続きは【次元ハウス+ニャン】の中でしよう」
カズキが言うなり景色が変わった。殺風景な学院長室から、一流ホテルの貴賓室へと。
「なっ!」
これに驚いたのは、初体験のコエン・ザイムである。カズキに聞いていたとはいえ、実際に目の前の風景がいきなり変わったのだから、彼の驚きは無理もない。
「ラクト、説明よろしく」
「はいはい」
カズキの言葉に、ラクトが心得たとばかりに説明を始める。毎回の事なので、手慣れた物だ。
「さて、みんなは何を食べたい?」
猫たちに向かって、優しく声を掛けるカズキ。
「ミャー」
「ニャー」
「ナウー」
「ニャッ」
「ふんふん、エリーは魚、ナンシーはワイバーン、ミリアはロック鳥、クレアは・・・・・・全部? 相変わらず、クレアは食いしん坊だなぁ」
そう言って、四匹の猫を撫でてから、厨房で準備を始めるカズキ。
「ワイバーンとロック鳥は私たちで準備するから、カズキは魚を獲ってきてくれる?」
先に厨房に入っていたソフィアが、魔法で肉を解凍しながら言う。その隣では、ジュリアンがフライパンに油を入れて、唐揚げの準備をしていた。
「わかりました。エリーとクレアは何を食べたい?」
「「ニャーン」」
「見てから決める? じゃあ一緒に行こうか」
二匹の猫を伴って、カズキは最近作った生け簀へと足を向けた。
それから三十分後・・・・・・。
「じゃあ、頂きましょうか」
「「「「「「頂きます!」」」」」」
猫たちの御飯のついでに、人間用の食事を用意した一同は、ソフィアの言葉で食事を始めたのだが・・・・・・。
「これがワイバーンか・・・・・・。初めて食べたな」
「にーちゃん、唐揚げ取って!」
「久しぶりのまともな飯だな・・・・・・」
「このお魚美味しいわね」
「ニャー」
「酒は!? 酒はないのか!?」
「ガツガツもぐもぐ・・・・・・」
と、実にカオスな状況に陥っていた。
「それで? 話ってなんだ?」
漸く落ち着いて、カズキがそうジュリアンに聞いたのは、食後のデザートが終了した後である。
「ああ、そういえばその話をする為に集まって貰ったんだったな。・・・・・・察していると思うが、話というのはタゴサクについてだ」
「やっぱり、【キロデイン】という魔法についてですか?」
ラクトの問いに、ジュリアンが曖昧に頷く。
「まあ、それも関係しているが、話したい事というのは、タゴサク自身の素性についてだ」
「タゴサクの素性? なんかあるのか?」
「うむ。・・・・・・恐らくだが、タゴサクは勇者だ」
ジュリアンの言葉に、その場は静まり返った。
ラクトとマイネ、そしてコエンは、タゴサクを見て呆然としていた。
漸くタゴサクの実力がわかると思った矢先に、魔法を使って失格になったのだから当然の話である。
観客も同様だが、その中で、なにやらチケットを握りしめている人々はハイテンションだった。
「これはまさかの結末だぁ! タゴサク選手、魔法を使用してしまったため、失格! 失格です! という事で、今回の『ルール違反第一号は誰だ! トトカルチョ』は、タゴサク選手という結果になりました! 倍率は、1.3倍です。やはり一般の部からの参加者であるタゴサク選手に、多くの人が賭けた模様です」
タゴサクのルール違反を咎める者はいなかった。何故なら、賭け事になっている事からも分かるように、毎年の事であるからだ。
「失格してしまったタゴサク選手には、残りの試合を頑張ってもらいましょう! では、気を取り直して次の試合です。出場選手は・・・・・・」
クリスのアナウンスが流れる中、失格を告げられたタゴサクが、肩を落としてすごすごと退場する。それをみんなで見ていると、唐突にジュリアンから魔法を使った連絡が入った。
『すまないが、本日の日程が終了したら、学院長室に来て欲しい。話しておきたい事がある』
「わかった」
突然の事に驚く皆を他所に、カズキがのんびりと答える。
『すまないな』
カズキの返事を聞いたジュリアンは、最後に一言謝ってから、連絡を終了した。
「・・・・・・話しておきたい事? 一体なんだろう」
「・・・・・・タゴサクの使った魔法の事ではないか? 【キロデイン】なんて魔法は聞いた事がないからな」
夕日の中で殴り合った結果(嘘)、すっかり仲良くなったラクトとコエンが、驚きを引き摺ったまま、そんな会話を交わす。
「それよりも、私も行っても良いのだろうか? お前たちとは違い、学院長とはそこまで親しくはないのだが」
「良いんじゃね? 駄目なら魔法の対象にあんたを含めない筈だからな。そうしなかったって事は、あんたも来いっていう事だろ」
コエンの疑問にカズキが答える。ラクトとマイネも同意するように頷いていた。
「そうか。ならばそうさせてもらおう。話は変わるが、古代魔法というのは・・・・・・」
その後はコエンの疑問に答えたり、フローネの試合(圧勝)を見たりしながら時間を潰し、最後の試合が終わるのと同時に席を立って、一行は学院長室へと向かった。
カズキ達が学院長室に辿り着くと、ノックをする前に、向こうから勝手に扉が開かれた。
扉を開けたのはクリスで、室内には学院長であるジュリアン、第二王子のアーネスト、彼らの母親であるソフィア、その姉のリディアがいた。勿論、彼らの愛猫である、エリーとミリアも一緒だ。
「疲れている所をすまないな。話というのは、一般の部を勝ち抜いて、本戦に出場したタゴサクについてだ」
全員が部屋に入ったのを確認して、ジュリアンが話を切り出す。
「ちょっと待った」
だが、それに待ったを掛けた人物がいた。カズキである。
「どうした?」
「ナンシー達の御飯の時間だ。続きは【次元ハウス+ニャン】の中でしよう」
カズキが言うなり景色が変わった。殺風景な学院長室から、一流ホテルの貴賓室へと。
「なっ!」
これに驚いたのは、初体験のコエン・ザイムである。カズキに聞いていたとはいえ、実際に目の前の風景がいきなり変わったのだから、彼の驚きは無理もない。
「ラクト、説明よろしく」
「はいはい」
カズキの言葉に、ラクトが心得たとばかりに説明を始める。毎回の事なので、手慣れた物だ。
「さて、みんなは何を食べたい?」
猫たちに向かって、優しく声を掛けるカズキ。
「ミャー」
「ニャー」
「ナウー」
「ニャッ」
「ふんふん、エリーは魚、ナンシーはワイバーン、ミリアはロック鳥、クレアは・・・・・・全部? 相変わらず、クレアは食いしん坊だなぁ」
そう言って、四匹の猫を撫でてから、厨房で準備を始めるカズキ。
「ワイバーンとロック鳥は私たちで準備するから、カズキは魚を獲ってきてくれる?」
先に厨房に入っていたソフィアが、魔法で肉を解凍しながら言う。その隣では、ジュリアンがフライパンに油を入れて、唐揚げの準備をしていた。
「わかりました。エリーとクレアは何を食べたい?」
「「ニャーン」」
「見てから決める? じゃあ一緒に行こうか」
二匹の猫を伴って、カズキは最近作った生け簀へと足を向けた。
それから三十分後・・・・・・。
「じゃあ、頂きましょうか」
「「「「「「頂きます!」」」」」」
猫たちの御飯のついでに、人間用の食事を用意した一同は、ソフィアの言葉で食事を始めたのだが・・・・・・。
「これがワイバーンか・・・・・・。初めて食べたな」
「にーちゃん、唐揚げ取って!」
「久しぶりのまともな飯だな・・・・・・」
「このお魚美味しいわね」
「ニャー」
「酒は!? 酒はないのか!?」
「ガツガツもぐもぐ・・・・・・」
と、実にカオスな状況に陥っていた。
「それで? 話ってなんだ?」
漸く落ち着いて、カズキがそうジュリアンに聞いたのは、食後のデザートが終了した後である。
「ああ、そういえばその話をする為に集まって貰ったんだったな。・・・・・・察していると思うが、話というのはタゴサクについてだ」
「やっぱり、【キロデイン】という魔法についてですか?」
ラクトの問いに、ジュリアンが曖昧に頷く。
「まあ、それも関係しているが、話したい事というのは、タゴサク自身の素性についてだ」
「タゴサクの素性? なんかあるのか?」
「うむ。・・・・・・恐らくだが、タゴサクは勇者だ」
ジュリアンの言葉に、その場は静まり返った。
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